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自販機から始まる異世界転移

『それじゃあお前ら、月曜祝日だから火曜に来いよー。んじゃなー』


つい先程まで喧騒に包まれていた教室も、今では寂しさを感じさせる程静かだ。


好きなアーティストの名前や相合傘などで一杯になっている後ろの黒板を黒板消しで綺麗にする。


書かれていることを読んで呆れた様なため息がこぼれる。


高校校生活なんて九年前のこと。年取ったな、位しか思うことはない。


俺は教室を施錠し、敷地外にある自販機へとやって来る。日課の様なものだ。


俺はスーツの内ポケットから財布を取り出し小銭をとる。


欲しいのは缶コーヒー。140円もする少しお高めの物だ。


小銭を投入しようとして地面に落とす。


いつもなら悪態をつくところだが、今日は違う。明日、明後日、明々後日と三連休なのだ。社会人にとっての唯一の休みと言っても過言ではないだろう。


嬉々として(周りからすれば可笑しなやつだが)自販機の下に入り込んだ百円玉を救い出すべく、潜り込む。


この自販機は床が少し高くなっているので助かったな…


四つん這いになって顔を覗かせると、光る物があった。百円玉だ。


俺は手を伸ばし百円玉を取ろうとしたのだが少し届かない…


俺は財布から使えなくなったカードを取り出し再チャレンジする。


「届いた!」


思わず声が出てしまったのはご愛嬌ということで。


俺はカードを器用に使って百円玉を手繰り寄せる。


瞬間、自販機の下で光が爆ぜる。


「なん、っっ〜!」


驚いた俺は思わず頭を上げてしまい強打する。

声にならない悲鳴を上げる。


あと目が痛い。


目を閉じていても光が残っている。


段々いつも通りの感じに戻ってきたので頭を自販機の下から抜き出し目を開けると、



「どこだ、ここ?」



知らない草原にいた。


一陣の風が吹き、スーツが風に揺れる。


というか、スーツでかくね?


スーツだけじゃない、革靴も腕時計も眼鏡もでかい。


眼鏡合わないな…


外すと掛けていた時よりも鮮明に景色が見える。


目、良くなってる?


取り敢えず手に持った百円玉と財布に入っている十円玉を自販機に投入し、缶コーヒーを購入する。


カコッと音を立てホットな缶コーヒーの匂いが漂う。


流石140円は伊達じゃないね。


ゴクッ、ゴクッ、ゴ…


「っ!苦っ、ペッペッ!」


缶コーヒーってこんなに苦かったっけか?!


缶コーヒーを見ると『選び抜かれた微糖』と記載されていた。


これで微糖なのかよ!と言いそうになったが飲み込んだ。


俺は体を見る。


急に大きくなってしまったスーツ、革靴、腕時計。


逆だ。


スーツなどが大きくなったのではなく、俺自身が小さくなってしまったのだ。


これが有名な『小さくなっても頭脳は大人』というやつなのだろうか?……違うか。


背丈的に高校生位の年齢だろうと推定出来る。


冷静を取り繕っているが、内心は焦りまくりだ。


どれ位焦っているかというのは、怒らせたら怖い先生の授業の一時間前に宿題するのを忘れていたことに気付いた時位に焦っている。


「まずここどこだ?市役所に言いに行かないと…信じてくれないか…」


そもそも、俺小さくなったんだよ!と言われてはいそうですかと言う人は少ないだろう。


どうしようか路頭に迷っている俺の頭上に一つの影が横切った。


大きい影だな。


そう思い空を見上げるとそこには飛行機ではなく、ファンタジーのテンプレモンスターであるドラゴンが飛翔していた。


「……」


俺は思わず唖然としてしまう。


え?ドラゴン?何で?え?


ここはそもそも地球じゃなかったのか?だとしたらここどこなんだよ…


草原には両膝を地面に着け頭を抱えた男と、自販機だけが佇んでいた。


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