神の仕事編 2
俺とレナが黒い影に遭遇して3時間は経った。
俺は元の世界で似たような経験があったのでまだ良かった。
だけどレナには精神的な負担がかなりあり、いまだに顔が青い。
部屋の天井をずっと見ている。
村の人が様子を見に来てくれたが、気を使ってすぐに出ていった。
俺は保険をかけてレナが前日に作った結界よりも強力なやつを村を囲うように作ることにする。
ヤツが来た場合、効果がないかもしれないけどないよりはマシだ。警戒もしないといけないから今夜は寝れないな…
一応、村人にも説明はした。俺の顔を見てみんな信じてくれた。
「隣座るよ。」
レナは"コク"とうなずく。気休め程度に回復系魔法の"ヒール"と"リフレッシュ"をかけてあげる。"リフレッシュ"は精神安定剤的な効果もあるようで、会話が出来るくらい回復した。
「ありがとうございます。もう、大丈夫です。」
「無理はしないでね、ここにいるから寝てな。」
俺はレナを横にならせて結界を作る。
イメージは…
「神様くらいの強い魔法で、光系の安全地帯…理想郷…天国?」
「大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫。村に結界を貼ろうとしてイメージ中。…ヘブンズウォール?いやいや…」
「無理しないで下さいね…」
レナが手を握ってきた。そうだな、名前的なイメージより神聖な属性の濃度を上げよう。
「エデンオブエデン!」
俺が魔法を発動すると、村は青白い半透明の壁に包まれた。イメージとしては球体で地中にも結界があるはず…多分。
「凄い…とっても心が落ち着きます。ツカサはやっぱり凄いです。」
「別にそんな大したイメージはしてないよ。
レナが洞窟で俺を死ぬ気で守ってくれたのと同じで、俺が死んでもレナを守ってくれる結界をイメージしただけだよ。」
「私を守るイメージは"大したことじゃ"ないんですね!」
「あ、そっちで解釈する?"他の事は考えないでレナの事だけ考えた"って意味だったんだけど…」
レナはニコニコしながら「知ってます♪」と答え、俺も隣で横になった。
「あれは何だったのでしょうか?」
レナが聞いてきた。俺も正体がわかる訳じゃない。
「昔あれに似たヤツに会ったことがある。
ソイツは、いるだけで人を殺せるくらいの恐怖の塊で普通の人じゃ倒せない。」
「ツカサが前にあったのも黒い人ですか?」
「いんや、女の人の生首だよ。
夜中目が覚めて天井を見たらいた。恐怖で動けないし、息もできないし…」
「それは何かしてきました?どうやって切り抜けたんですか?」
「ヤツがしてきたことは"気持ち悪く笑う"事と、ひたすらに"見つめる"事だけだったよ。多分、レナより見つめ合ったと思うよ。」
「そんな事言われてもあまり悔しくないですね…」
「まぁ、布団被って朝日が出る頃にはいなかったよ。」
「面白い話だな。僕にも聞かせてくれないか?」
「なっ!」「っ?!」
突然部屋の中に神様が現れた!
「まだ大丈夫そうだな。…?この結界はなんだ?!」
「あ、それ俺が作りました。レナを守るためだけに。」
「マジか…」
神様が頭に手を当てて落ち込んでいた。
こんなに砕けた言葉は初めてかもしれない。
「やっぱりヤツにはこんな結界じゃ無理ですか?」
「…いや、僕が来た理由は、結界を作り村人を避難させる事だったんだ。」
「なるほど、全然作り直してください。安心感が違います!」
「いや、ここまでの結界は僕には作れない。
この結界は例えるなら神域にいるのと同じだ。」
やば、俺は天国を作ったらしい。
「神様になる気は…」「ないですよ!」
神様は残念そうな顔をして言ってきた。
「では、本題に戻ろうか…今日、君たちが見つけた"ダンジョン"そして"大きな鏡"君達の予測は?」
「封印、もしくは寄代。怨霊、もしくは邪神かと思ってます。」
「おお!流石だな!!そうだ、あれは邪神に関わる物だ。話からして鏡はやつらが身を隠す為に使っているものだろう。」
「なぜ身を隠す必要が?てか、複数形ってことは他にもいるの?!」
「ああ、あいつらはこの世界のあちこちに身を隠して力を溜めている。昔、僕達があいつらと戦って辛うじて追い払ったんだ。」
「では、また神達を集めて戦うのですか?」
俺は神が戦うならこれ以上は危険な目に遇わないから安心した。…と思ってたのに。
「いや、戦うのは僕と君達の三人だけだよ。」
・・・?
「いや、無理でしょ!俺もレナもザ・一般人ですよ!死ぬ!絶対に死ぬ!」
「そうですよ。私達は装備スキルのおかげで普通の人より強くなってるだけです!」
猛抗議する俺たちを見て"やれやれ"な顔をしている。
「君達は装備スキルで強くなった。それは事実だ。その強さで多少冒険をして一般人のレベルを遥かに超えていたのは知ってたかい?」
「いや、超えたとしてもせいぜい5レベルくらいでしょ?」
俺の話を聞いて、神様はタメ息を吐いた。
「君達、この世界は魔法や特技を使ってもレベルが上がるんだよ。もちろん、一般人の魔法ぐらいでは経験値にもならないが。でも、君達は?」
「私達は魔法を遠慮無しに使ってますね。結界魔法も維持したままですし。」
「自分達に鑑定スキルを使ってみてくれ。レベルが上がれば人間のレベルや、ステータスも見ることが出来るぞ。」
「えっと、ツカサのレベル・・・74」
は?なんですと?
レナが調べた結果
ツカサ74レベル レナ152レベル
攻撃15224 攻撃30061
防御10512 防御29111
すばやさ7850 すばやさ8020
魔力22042 魔力42009
マナ8066 マナ9999
体力8012 体力7465
スキル無しでこの値だそうです・・・
レナはレベルだけなら神様以上あるらしく
原住民最強になっていた。
「神様、俺達はアレに対抗できる気がしませんでしたけど…」
「ああ、それは君達が"神"じゃないからだ。」
「ああ!・・・ってそのまんまじゃん!!」
「ツカサ落ち着いてください!神様、それでは私達はこのままだと今日の二の舞になってしまいます。何か方法があるのですか?」
レナは冷静だ。本当は俺が冷静にならないといけないハズなのだけど…子供だな…
俺は一人落ち込んでいたが、神様は話を続けた。
「君達には本当の恩恵を授かってもらう。」
「本当の恩恵?じゃあ、今まで使った魔法とかは?」
「それは君達が元々持っていた力を外に出すためのキッカケを授けていただけだよ。本当の恩恵は、神の子になる事。」
神様いわく"神の子"とは、
神化した者に接触できるスキルで
ステータスに神通力というのがプラスされる。
神通力の値が高いほど神化した者に対するダメージが増えるらしい。
「それだと俺達は神様にも攻撃出来るようになりますよ?」
「それは大丈夫だ"子"は"親"に歯向かえない。ただし、他の親には攻撃できる。」
つまり、
闇の神の子は、親である闇の神は攻撃できないが
他の属性の神々を攻撃することができる。
「一応決めるのは君達だが、どうする?」
俺はレナを見て返事をした。
「やります!」「やらせてください!」
レナも返事をした。
「分かった。では、契約を交わそう。一応、最後にもう一回聞くからな。」
そう言って神様は右手を前に出した。
右手からは凄い勢いで闇が溢れる。
部屋が闇に飲まれて真っ暗になった。
俺とレナは手を繋いで闇の神が出てくるのを待った。
念話が聞こえる。
[我が子よ、この時より人を捨て神の子として世を見守り、正し、邪なる者を滅する剣となれ!]
闇の奥から闇の神が現れた。
黒い髪、漆黒の鎧、漆黒の剣を2本腰に下げ
黒い翼を広げている。
「綺麗…」
「そうか?」
感想は人それぞれ。俺には堕天使にしか見えない。それに天使の輪ないんだ…
[恩恵を与えるうえで覚悟してほしい事がある。君達は子供が作りにくくなるだろう。]
ん?なんて言った?
「それはどうしててですか?!」
レナが聞き返す。
[僕達"神"の恩恵は、普通の人間を神に神格化する事で受けられる。神のマナは人のとは違う。多少なりとも人体に影響が出る。悪いとは思うが、受け入れてくれることを僕は願うよ。]
レナは涙を流してる…それだけ子供がほしいということなんだな。自分が子供だと思っている俺は、子供を作る事なんて考えたこともない。
俺一人ならあっさり受け入れただろう。でも、レナは違う。彼女が大切なものを失ってまでする事ではないだろう。だから、レナの気持ちを第一に考えてあげたい。
「レナが決めていいよ。レナがいてくれたら俺は幸せだし、この世界で人生終わってもいい。」
「…わたしは…」
[…]
「恩恵を受けます!そして子供も作ります!」
レナは俺の手を強く握ってきた。俺もそれに合わせて強く握った。レナが人生賭けたんだ、
俺も人生賭けてやろう。
俺達は覚悟を決めた。
[心から感謝する。では行こう神の台座へ…]
真っ黒だった世界は徐々に真っ白な世界に変わり、神殿の中に変わっていた。
そこには10の椅子があり、扇状に並んでいた。一番右側に闇の神が座っている。
[ここが僕達の世界…もう、僕だけになってしまった。]
「他の神はどうなさったのですか?こちらに帰ったと聞かされましたが…」
俺もレナから聞いたな。そんで残ったのが、うちの神様だったハズ…
[帰ったのではない。堕とされたのだ。みな邪神に敗れて邪神の配下になってしまった。僕が人の力を抑えてる本当の理由は…]
「邪神の標的にならないようにするため。そして邪神に対抗できる者を探すため。」
俺は推測を言ってみた。
[御名答。邪神は、強いものにしか興味がない。人間に強い者がいるとなればその者を捜すために無関係な者の命をも刈り取ってしまう。]
「では、邪神とは?」
[邪神は、元々私の初めての子になった者だ。最後に邪神を見た時、邪神のレベルは600を超えていたな。]
「ろ、600?!む、無理でしょ!」
[誰も邪神には勝てなかったよ。邪神を倒そうと僕も戦ったけど・・・ただ、邪神は僕の子だから僕の事は殺せない。だから他の神を堕として僕と戦わせるつもりなんだろう。]
「・・・ちなみに、レベルの上限は?」
[分からない。邪神のレベルも我々神の予想の遥か上だったのでな。]
「了解!なら、洞窟のやつをぶっ飛ばしてからレベルあげるわ」
俺の中で何かが吹っ切れた。
もう神に敬語とかめんどくさい(笑)
「なら、さっさと戻ろう。あいつ倒して子供作らないとな!」
俺はレナを見る。レナは涙を流しながら微笑んでた。
[分かった…では、恩恵を受け取ってくれ。]
神様が手のひらから黒い炎を出した。その炎はゆっくりとこちらに飛んできて俺とレナの腕に当たり激しく燃えた。
「あつっ、くないな…」
「そ、そうですね…」
腕を巻くって燃えた場所を見てみる。黒い炎のタトゥーがワンポイントで付いていた。
「ツカサ…子供が出来ないかもしれませんけど、こんな私でも愛してくれますか?」
「レナはレナだろ?なにも変わらないさ。子供出来ないなら、俺達の想いを託せる子供を探せばいいよ。」
俺はいつものようにレナの頭を撫でた。レナもいつもの通り嬉しそうだ。
「ちなみに、レナは本当は何歳なの?ネーミングは違うけど、俺の知ってる種族と一緒だと思うんだ…夫婦なんだし隠し事は無しね。」
「う、74です…」
「大変良くできました~」
俺はまたレナの頭を撫でた。
[すまない、お客さんが村の近くまで来たようだ。]
「さてさて、一発デカイのかましてやろうかな(笑)」
「ラジャ!」
[ではいくぞ!]
神の声と同時に宿屋へと戻った俺達は外まで急いだ。夜中だったが、四の五の言っていられない。
「かみ…じゃなくてアッシは入り口前で村の防衛!、レナは村人を町に避難!俺は先制攻撃で一発デカイのかますから!」
「ラジャ!」「了解した!」
各自持ち場に着く。俺はゲームで見た一番強そうな広範囲魔法を叫んだ!
「メテオ!」
空から大量の隕石が森に隠れているモンスター目掛け飛んでいく。爆音と地響きが村全体を飲み込んだ。
村人たちは血相を変えて広場までやってくる。
「皆さん落ち着いてください!ただの敵襲です!今、ツカサと魔神さんが相手をしてくれています。皆さんは私の魔法で町まで避難してください!」
レナはちゃんとやってるな。俺も大盤振る舞いで出しまくろう。
「メテオ、メテオ、メテオ、メテオ、メテオ」
いくら魔法を出しても回復するから疲れることを知らない。
「あ、手っ取り早い方法があった!」
サーチで敵の位置を確認する。洞窟から村まで真っ赤になっている。レナの結界は消されたようで赤いマークも消えることがない。
俺は村の入り口から洞窟の方向に向かって立つ。この場所から、一直線に向かって結界で壁を作る。さてさて、この中で特大の雷を流したらどーなるでしょう?
「仮説を立てたら推測する。そして実験・・・サンダーウェーブ!」
俺は洞窟目掛け雷の波を最大魔力(イメージ力)で唱えた。
俺の考えた通り、雷が当たらなかった敵にも結界で逃げ場のない電気が流れ感電している。
「凄いな・・・一人で殲滅したのか・・・」
神様、驚愕。レナ、ポカーン。
「行くよ!残ったのがまだいるから殲滅しつつ洞窟目指すよ!」
「了解した!」「ラジャ!」
レナも村人の避難が完了したようで俺達に合流した。神様が前衛。レナが遠距離攻撃。俺が策敵&2丁銃乱射。かなり俺達が優勢になった。
「ツカサ、敵はまだ沸いているか?」
神様に聞かれた。人の姿だと出来ることに制限があるのか?
「洞窟からワチャワチャ出てきてるよ。」
「ツカサの真似してもいいですか?」
レナが何か思い付いたようだ。
「まかせる!」
「ハイ!」
元気な返事をしてレナは洞窟に結界を作り始める。
「いきますよ~・・・燃やします!」
レナが唱えた魔法は、炎の壁ファイヤーウォールだった。
「ナイス!今のうちに洞窟まで行こうか。」
「了解した。」「ラジャ!」
策敵で見る限り敵はもういない。洞窟まではただの散歩になった。
「この調子だとダンジョンも敵だらけだろう。気を付けてくれよ。」
「ラジャ!」「ラジャ!」
神様の言葉に二人で同じ返事をした。
顔を合わせて笑う。
「君達はいつもこうなのか?
緊張感が無いな…でも、それもいいのかもな!」
神様は呆れながらも俺達をちゃんと認めているようだ。
「さて、目の前まで来ましたけど…結界を消すと敵がワチャワチャですよ?」
レナが聞いてきた。そうだな…アレ使うか!
「最深部まで俺が道を作るよ。」
「出来るのか?」
「任せて。」
神様に聞かれて軽く答える。
俺の武器には"疾風剣"という剣技がある。
一回の攻撃で複数回切りつける技だ。これを無限に出し続ける。
「準備OKいつでもいいよ。」
「解除します!ツカサ頑張って!!」
「あいよ!」
レナが結界を解除した。死霊どもが洞窟から出てきた。
俺は構えて。
「お披露目だよん。疾風剣!」
俺は一定のテンポで刀を振る。刀一本で十発切りつける技なので狭い場所なら簡単に殲滅できる。しかも、この技は敵の背後に一瞬で移動するため移動しながら攻撃できる。
「ツカサ凄い…」「…」
レナは誉めてくれたけど、神様無言かよ!まぁ、いいけど。
楽勝だな(笑)
俺達はこのまま簡単に最深部まで到達した。
後ろから敵が来ると悪いので、最深部の入り口は結界をしておく。
意外だったのは、最深部に雑魚がいなかった。
どっから出てきてたんだよ…
照明魔法はまだ明かりを灯している。
鏡は…無い。ちょっと不安だ。俺とレナと神様は、背中合わせになり全方位を警戒する。
どこにいる?
「探知魔法に反応がないけど、外にいる?」
「いや、ツカサの話しから相手は水の堕神だろう。水になって擬態してるハズだ!」
じゃあ、簡単だな…水だし。
「俺が先制でいいかな?」
「構わないぞ。」「ラジャ!」
「じゃあ、いくよ。二人は警戒したままね。」
俺は三人分の結界を作ると全方向に魔法を唱える。
「サンダーブラスト!」
雷がフロア全体に広がり花火のように綺麗だった。
「ぎゃぁぁぁっ!」
「発見しました!上です!!」
レナの言葉に上を見上げる。…いた!
雷に耐え兼ねて落ちた。
前見た黒い影ではなく、ちゃんとカラーである。まぁ、そうだよね。
容姿は水色の長い髪がポニーテールになった女の人のだ。レナより少しお姉さん顔かな。
「い、痛いじゃない!」
「あ、普通に喋った。」
「ツカサ、失礼ですよ。」「まったくだな。」
え、味方に非難されてますけど…
「いきなり攻撃するなんて酷いと思わない?
君、名前は?」
「ツカサです…すいません…」
なぜ、敵に怒られるのか…
「あ、あの~」「なに!!」
怖っ!
「敵ですよね?俺達の…」
「そうよ。敵よ。なに?敵だから不意討ちしていいと思ったの?最低なやつね!」
「神様…心が負けました…」
「ドンマイだ…」
「ツカサ、いい子いい子。」
レナに慰めてもらう…ぼく、悲しいです!
「あら、あなたは闇の神様?久しぶりね。」
「そうだな、何十年振りか・・・挨拶ついでですまないが、今日は死んでくれ。」
神様はそう言うと水の神に切りかかる。
水の神は空中に水の槍を出現させ応戦する。
「神様!」
「なんだ?」「何よ?」
うう、ややこしい。
「いえ、なんでもないです・・・レナ」
「なんですか?」
「あそこで座ってようか。」
「わかりました。邪魔しちゃ悪いですもんね!」
俺達はとても"ゆるい"のでマッタリすることにした。
二人の神様は同等の力のようで、見てて面白い。戦い方の勉強になるわ。
隣のレナはあくびしてるし…
どれくらい時間が経ったかな?
「レナ、どれくらい時間経った?」
「んー、わかりません!」
"えへへ"な顔したレナにデコピンしてやる。
「痛い~…なにするんですかぁ!」
レナがポコポコ叩いてきた。
「だって暇だし。」
「理由がひどい…」
レナがあきれ顔になったところで神達の戦いも休憩になったようだ。
「なかなかやるわね。正直、私達は力が同じだから勝負にならないわよ。」
「知っている。」
じゃあ、なんで戦ったんだよ!
「聞いてもいい?」
俺は水の神に質問をする。
「何よ?卑怯者。」
「あ、まだ根にもってる…」
「当たり前でしょ!痛かったのよアレ!」
「すいません…」
「で、なに?」
「いや、見た感じ普通そうなので倒す必要がない気がしたんだけど…やめない?」
神達は"はぁ?"て顔にになる・・・なんか悪いこと言った?
「悪いことするのやめてくれたら戦わなくても済む気がしたんだけど…ダメなの?」
「卑怯者は面白いこと言うのね♪私は堕神になった時点であの人に逆らえないの。もし、私にやめて欲しいなら私に勝ちなさい。負けた神は勝者に対して絶対服従する決まりになってるのよ。そして勝った者は神になる事が出来るわ。」
「その理屈だと邪神が水の神じゃないですか?」
レナが水の神に聞いた。確かにその通りだと思う。
「残念だけど、そうじゃないわね。あくまで水の神のオリジナルは私なの。だから邪神はコピーした水の神ね。あなた達の誰かが勝てばその人も水の神のコピーになるの。能力はオリジナルと同じよ。良い話でしょ?
さぁ、誰が私と戦ってくれるのかしら?」
「アッシ、別に殺さなくてもいいんでしょ?」
「ああ、その実力があればだがな。」
「やってみる。ってことでヨロシク!」
水の神にこれから戦うことを宣言する。面倒だからやりたくないな。でも、レナだと手加減出来なそうだし…しゃーないよな。
「あなたが手加減しても私は殺す気でいきますので、覚悟はしておきなさい。」
「あいよ…じゃあ、行ってくるね」
「ツカサ大丈夫?私を一人にしないでくださいね…」
「約束あるからね。ちゃんと帰るよ。」
そう言って水の神の方に振り替える。
「いつでもいいし、全力できてね。あと、もう一回とかは無しでOK?」
「ふん!自惚れるなよ人間、その言葉後悔させてやるわ!」
水の神の周辺に水の玉が複数出現した。俺は歩いてみんなから離れる。
「水刃!」
浮かんでいた水の玉が刃になって高速で飛んできた!俺は構えて反撃する。
「疾風剣!」
水の神が放った水刃を疾風剣を使いギリギリの所で避け、そして水の神に剣を突き立てた。
「勝負ありでいい?」
「な?!どうやって間合いを…」
「この技はね、一瞬で敵の背後に移動しながら攻撃する事が出来るんだ。途中でキャンセルしたから目の前で止まったんだよ。」
俺は分かりやすく説明した。
「どうする?」
「殺れっ!…と言っても殺さないのだろ?」
「女の人のにそれはできませんな♪」
俺の中での決め事で女の人は殴らないと決めてるので殺せるわけもなく…まぁ、何回でもやるけどね。
「・・・私の負けで構わないわよ。」
「聞き分けがよくて助かるよ。」
俺は水の神の頭を撫でた。
「!」「!」「?!」
ん?なんか驚いた顔してるぞ。
「どしたの?みんな」
「神の頭を撫でたやつは初めて見たぞ!君は本当に面白いヤツだな(笑)」
闇の神が笑っている。
「うぅ、私の特権なのにぃ…」
レナは悔しがっているようだ…
「・・・もう一度聞くわ、お前、名前は?」
「ん?ツカサ。」
「・・・私の名前はウォルタよ。ツカサ、お前は私に何をしてほしい?」
俺が勝ったので処遇を決めてほしいようだ。
「う~ん…好きにすればいいと思うけど?ウォルタの人生だし、自由にしなよ。」
レナもアッシも笑ってる。まあ、ゆるいよね俺(苦笑)
「分かったわ。」
そう言って、ウォルタが近づいてきた。
"まだ何かあるのか?"なんて思っていたら、ウォルタは顔を近づけて俺にキスをした!
「?!」「ちょっ?!」
「な、何をしてるんですかっ!!!」
レナは涙目でかなり怒っている…なぜか俺に…
「え、いや、ええ?!俺っ?!なんで俺が怒られるんだよ!」
「そこは気合いで阻止してくださいよ!」
「いやいやいや、俺じゃなくウォルタに言え!」
事情を説明しろと目でウォルタに訴える。
ウォルタ?な顔をして俺達に話しかけた。
「私はこの世界の習わしに従ってツカサのお嫁さんになるわ。それがどうしたの?私の自由なんでしょ?」
「・・・誰か説明しろ。」
言っていることの意味が分かりません!
レナを見る・・・ダメだ、レナも"?"になってフリーズしてる。
俺が戸惑っていたらアッシが口を開いてくれた。
「僕の記憶の片隅に、そんな時代があったと思ったが・・・ああ、君がいなくなったのはその頃だったか。」
アッシがウォルタに聞いた。
「そうよ、強い男に付き従うのが私の夢だったのよ。神の私に勝てる人間なんていないもの。やっと相手を見つけたわ♪」
おい、俺の意思は関係ないのかよ。
俺はレナを見て言った。
「レナ!バシッと言ってやれ!」
「はい!…ツカサは私と結婚しています。」
うんうん!
「なので、ちゃんと私とツカサの二人を愛してください!」
・・・ん?レナがなにか言ったぞ・・・
「レナさん?何か凄いこと言った?」
「え?家族が、増えたんですよね?これからは三人で頑張りましょうね♪」
「私も早く二人と打ち解けるように努力するわ♪これから末長くヨロシクね!」
・・・俺フリーズ・・・
闇の神・・・笑っていやがる・・・
「よし!僕は公務があるから帰る。後は3人でやってくれ!何かあったら対応する。」
そう言ってアッシは去って行った。
・・・もう、いいや・・・俺も帰ろう。
仲良く話してる女性二人を置いて帰り始める。
疲れた、帰って寝よう。
「待ちなさいよ!」「待ってくださ~い!」
この世界に来て二週間、嫁が二人になりました。
完