旅の始まり編 3
心地好い風が吹いていた。
天気や気候も快適で、旅をするには絶好の日だった。
隣には可愛い女の子が一緒に歩いている。
金髪ロングの胸はあまりないけど、可愛い顔したエルフのレナだ。
左右の腰には魔剣と聖剣を下げている。
いくら可愛くても"とてつもなく強そう"に見えるだろう(笑)。
ただ、上が黒のパーカー(俺の)で、下がボロボロの緑のスカートなのでファッション的には変だ。
2日前にゴブリンに襲われていた彼女を助けた時点でボロボロだったので仕方ないのだが気になる。
逆に俺はパーカーを渡したので、黒の長袖Tシャツに七分丈のジーンズにグレートソード…めっちゃ弱そうだな(苦笑)
「(レナお金あるかな?服が買えませんでは話しにならない。遠回しに聞いてみるか。)
レナ、ちょっと良い?
お金について聞きたいんだけどさ、物を売る以外で稼ぐ方法教えて。」
俺の目の動きで察してくれたのか、レナは"ああっ!"という表情で
「服ですか?」
と聞き返してきた。
「そうそう!二人とも格好が変だから服をちゃんとした方がいいと思うんだけどさ、お金ある?」
「無くはないですけど、二人分の服を買うと食糧が買えませんね。」
「やっぱり…」
「お金の稼ぎかたはいくつかありますよ!」
レナが言うには、
物の売買
真面目に働く
人害になるモンスターの討伐
各領にある闘技場で稼ぐなどの方法があるらしい。
「ちなみに、レナのおすすめは?」
「そうですね…やっぱり薬草や薬味になる植物の採取が安全でいいと思いますね。」
「却下っ!」
「ええっ!? ヒドイです、ちゃんと考えたのに…」
レナが"しょぼーん"となった。やっぱ可愛い。
「では問題です!俺達の仕事は?」
「神様の依頼です。」
「正解、で・す・が!さっき言った稼ぎかたで一番適しているのは…」
「モンスターの討ば、つ…」
レナの顔があからさまに暗くなった。
「レベルあげよう。」
「はい…」
嫌々ながらも納得はしてくれたようで安心した。
「この近くにダンジョンかモンスターのよく出る所はある?」
「うぅ、この近くですと…あそこです…」
俯きながらレナは草原に一本だけ立っている枯れた木を指差した。
「それじぁ行こうか!」
「はい…」
目的の場所までは500mくらいだけど雑草が邪魔だ。
魔法で切ろう。
俺は木に向かって手を伸ばす。
「ウィンドウカッター」
魔法を唱えると伸ばした手から風の刃が出て目的地の手前で飛散した。
イメージ次第で距離の調整も可能なことがわかった。
楽しいな魔法。
「凄いですね!本当に魔法のない世界から来たんですか??」
「やっぱ疑う?自分でもビックリしてるけど(笑)
まぁ、冒険のイメージトレーニングの遊び(ゲーム)をしてたからそのおかげかな。」
「私の旦那様は勤勉なのですね。私もがんばります!」
「(おっ!やる気になってくれたみたいだ。RPGやってて良かった。世の中のお母さん、ゲームだって役に立つんですよ!!)」
ドヤ顔である。
「ここは何がでるの?」
目的地に着いたのでレナに聞いてみた。
「確かゴブリンとスライムですね。ゴブリンの牙が討伐部位だと聞きました。スライムは駆除対象ですけど、倒すと溶けちゃうので立会人が必要です。余程の事がなければ依頼主が立ち会うハズなのでここでお金になるのはゴブリンだけですね。」
「なるほど、じゃぁ乱獲ですね」
俺が笑顔で言うとレナが
「意味がわかりませんっ!」
と答えたので
「レベル上げとはダンジョン引きこもることなのですよ。」
「嫌ですよそんなのぉ」
「ですよね~(笑)」
「もぅ!」
レナにポカポカ叩かれていると、木の裏から以前廃村で聞いたゴブリンの声がした。どうやら入口は裏にあるようだ。
俺達二人は剣を抜いて木の裏にゆっくり進んだ。
ダンジョンは洞窟だった。
一応の為に探知系の魔法を唱える。名前は"サーチ"にしよう。アイテムと魔物とマップが見れるイメージで…
「サーチ…おっ、成功した!」
「なんですか?コレ?」
レナが聞いてきたので答える。
「ここの地図を一時的に魔法で作ったんだ。赤い点が敵で、青いのが宝箱とかアイテムね」
「えっ?!魔法で地図なんて作れるんですかっ?
それってかなり凄くないですか!?」
俺の斜め上に出現したホログラムマップを見てレナが興奮している。
「そんなにマナ使わないよ。
でも、歩かないとマップ完成しないからね。
今見れるのは敵とアイテムの位置だけだよ。」
「それでも凄いですよ!!
今度私にも教えて下さい!それ、覚えたいです!!」
「ん、わかった。」
そう言って近くにいる赤い点に向かう。ゴブリンがいるからなのか、ダンジョンの仕様なのか松明が一定の間隔で設置されている。着いた場所は少し広い空間で、戦闘するには問題がなさそうだった。明るさも申し分ない。
「何もいませんね…」
「(レナは地図を見ながら辺りを確認しているけど、敵がいない…魔法失敗か?)」
あるのは冒険者らしき人の亡骸だけだ。骨が装備を着て倒れている。
ツカサはファンタジーの定番の展開を思い出した。
「レナ離れてっ!!」
「きゃっ?!…なんですか!急に!!」
ツカサを見たレナの後ろで亡骸が立ち上がる。
「間に合えっ!!うるぁっ!」
全力で飛び出すと亡骸に思いっきり蹴りを入れた。
ツカサの蹴りが胸に命中して亡骸はバラバラになった。
(良かった…)そう思いながら振り返りレナを見た。
レナの目が点になっている。
「大丈夫?」
「はい、私は大丈夫ですけど…壁が…」
「壁?」
再び前を向くと、スケルトンに放った俺の蹴りが壁に当たり陥没させていた。
「どんだけぇ~…」
「これも装備の"力"ですか?」
「多分…鑑定した方がいいかもしれない…」
「そ、そうですね、人間なんて簡単に
"ケチョ"ってなちゃいますよ!」
"ケチョ"っておい…可愛い顔して表現が、怖いぞ嫁!
鑑定スキルとかどうやって覚えるんだ?
「う~ん…」と唸っていると、レナが寄ってきて
「鑑定しましょうか?」
「へっ?」
「私、鑑定スキルありますよ♪」
「何で持ってるの?」
「もちろん、生活のためです!」
腰に手を当ててピースをするレナを見て
"もっと早く言えよっ!!"と思ったけどここは抑えた。
「お願いします。魔剣と聖剣とブーツの鑑定してください。」
「は~い。…」
魔剣・黒龍 攻撃1500 力300 魔力800
抜刀時、龍の加護発動
龍の加護=力・物理・魔法防御力+200
聖剣・エンドオブエデン 攻撃1000 魔力500 マナ1500
抜刀時、装備者の物理・魔法防御力+300
神器・神風 物理防御200 魔法防御200 素早さ500
装備者の体力・マナを毎秒5%回復
「です。」
レナの鑑定が終わった。
「これは凄いの?」
恐らくとんでも装備だろうけど聞いてみる。
「ちなみに」
グレートソード 攻撃20
「…」
結果、武器性能が強すぎて"ゴブリン"ごときではダメージを負わない事が判明した。
「…ツカサの服、防御力1」
「ぷっ!」
ツカサ達は笑いながらゴブリン討伐に戻る。
ツカサは肉弾戦、レナは双剣で戦いの練習をした。
結果、討伐部位が50ほど集まったのでダンジョンを出ることにした。
「結構集まったね。これでどれくらい?」
「ゴブリンの相場は一匹5シルバなので25ゴールドくらいです…多分♪」
レナの目が"キラキラ"しているが、
この世界の通貨の事はよく知らない。
「レナ、通貨の事を教えて。」
「いいですよ♪」
レナはまだ上機嫌で、歩きながら教えてくれた。
「まず、最低通貨のロンズがあります。ロンズ10枚で普通通貨のシルバ相当になります。シルバ10枚で高級通貨のゴールド相当になります。でもって、ゴールドが1000枚で最上級通貨のクリスタになるんですよ♪」
「なるほど、思ったより種類があった。」
「更にですよ!クリスタも白、青、赤、黄、黒の順に高くなります。黒クリスタ1枚でお屋敷が買えて毎日寝て過ごせるくらいの豪遊ができるんですよ。」
「ほぇ~」
アホな顔して聞いていたらまだ話があるようだ。
「でも、クリスタは通貨であって通貨ではないんですよね~」
「なにそれ?」
「証といいますか、それを持ち歩くと特別な待遇が受けられるんですよ。」
「勲章みたいなもの?」
「そうですね、お金で貰う勲章ですね。」
「勉強になりました。」
「見た目も教えますね。」
「レナ先生お願いします。」
「は~い♪…ロンズが銅、シルバが銀、ゴールドが金、白クリスタが白銀、青クリスタがアダマンタイト、赤クリスタがモンスターの紅玉、黄クリスタがオリハルコン、黒クリスタが黒龍の鱗だそうですよ。」
"だそうです"の理由は、聞いた話しだからで"現物"は見たことないそうだ。
ちょっと不思議に思ったのは、鉱物系は冒険者が頑張ったのだろうと思う。だけど、モンスター系はどうやって手に入れてるのか…"黒龍"は多分、空き巣だな!紅玉は…?
などと考えていたら出口まで来た。
「お疲れさま。双剣には馴れた?」
「一応、戦えば馴れると思いましたけど難しいですね。」
「考えながら戦えば馴れると思うよ。…多分…」
当たり前だけど素人な俺には根拠なんてものはない!
「お日様も傾いてきましたから頑張りましょう!後少しで町には着きますよ…多分♪」
俺のせいでレナは"多分"が口癖になってきたかもしれない。
「魔法で楽しない?」
「どういうことですか?」
「例えば空を飛ぶとか、スピードを上げるとか、転移するとか…てかさ、レナは町に行ったことあるんだから転移にしよう!」
「ええっ!?出来ませんよぉ…」
「簡単だよ、町の一番安全で広い所を強くイメージして呪文を言えば行けるよ…多分」
「自信ないなぁ…多分♪」
レナが笑いながら手を差し出してきた。俺はレナの手を握りレナに一言言った
「レナの無意味な"多分"俺は好きだよ。」
レナの顔が真っ赤になった。俺がニヤニヤしていると
「いきますっ!」
「ちょっ!心のじゅ・・・んびがっ!!」
?
ここはどこ?
「着きましたよ。」
「あ、ああ…」
"いきますっ!"って呪文かよ!相変わらずそのままだな!と思いながらレナを見ると"エッヘン!"のポーズで小さい胸を張っている。
とりあえず頭をくしゃくしゃにしてやる。
「ああ、ヒドイぃ~…」
「急に行くからだ!」
「うぅ、髪型がぁ~」
「ざまぁ♪」
などとふざけていた二人だが、あることに気づいた。それもとんでもなく大変なことだ。
ツカサ達から少し距離をとって大勢の人がこっちを見ている。
なぜならレナが転移した場所は町のど真ん中の広場だった。
「皆さんこっちを見てますよ…どうしたんですかね?」
レナは何を言っているのか、この世界の人間が大した魔法が使えないと言ったのはお前だろう…俺は頭を抱えてうつむいた。
「やっちまったぁ…終わった…」
俺の雰囲気でヤバイと思ったのかレナが言ってくる
「逃げます?」
「いや、無理でしよ(苦笑)」
笑うしかない。完全に俺のミスだ。町の一番安全で広い所=町の広場に決まっている。どーしようかと悩んでいたら、住民から通報を受けたのか衛兵みたいなのが現れた。
「騒ぎを起こしたのはお前達か!ちょっと詰所まで来てもらおう!」
「拒否権はあります?」
「そんなもんあるわけないだろうが!」
怒られてしまった。レナを見る、しょぼーん…
行くしかないよな。
「ついて来いっ!」
そう言われてツカサ達は衛兵(?)についていった。
しばらく歩くと目的地に着いたのか"ここでしばらく待て"と言われたのでレナと話そうとレナの方を見るが何故か暗い。
とんでもなく暗い。ツカサがどうしたのか訪ねようとした時、誰かやって来た。
「この者達かね?突然現れたというのは」
「はっ!住民からの話しによりますと、光に包まれていきなり現れたとのことです。」
「ふむ」
男は立派な髭を指で撫でながらツカサ達を見ている。
一通りツカサを見たあとレナの方を向いた。
「久しぶりですねぇ、レナ・ロックフォードさん。いつまで待っても来ないから使いの者でも出そうかと考えていたところでしたよ。」
「(ん?この街でレナが嫌がるレナの知り合いといえば…)」
「お久しぶりです。領主様…」
「ふん、誰かこの娘を屋敷に連れていきなさい!!」
「はっ!」
「(いや、それは困る。俺、旦那だし…)」
ツカサは兵士の前に立割って入った。
「俺の嫁なんで勝手に連れていかないでもらえます?もし連れていくならそれなりの覚悟してもらいますよ?」
ツカサの言葉を聞いて領主の眉間にしわが寄る。
「貴様は領主たる私の言うことを不服とし、さらには邪魔をするというのか?
ふんっ!貴様こそ覚悟した方がいいぞ」
そう言うと領主は、空に向かって魔法で照明弾の様なものを数発打ち上げた。
それからすぐに衛兵がゾロソロと現れた。
「手も足も出ないだろう。クックックッ、さぁ早く連れていけっ!!」
何の正当性もなく権力で事を終わらせようと
する領主にツカサは少しキレた。
「ふぅ…」
っと一息入れて思い切り地面を踏んだ。
轟音と地響きで衛兵達の動きが止まる。
「な、なんなんだコイツ!?」「化け物か!?」「ひぃぃっ!?」
様々な声が聞こえた。
ツカサが踏んだ地面は、ツカサを中心に10メートルくらいひび割れ陥没している。
天然の洞窟と違い、石畳の地面は簡単に壊れるのだ。
まして今の時代と違い、下地を踏み固める技術も低い。
それを知らない兵士達は、壊れた地面がツカサの実力だと思い込んだのだ。
「トドメ刺すかな…レナっ!」
「ハイッ!」
「空に向かって魔法!」
「は、ハイッ!…燃やします!」
物凄くデカイ炎が夕空に広がり、それを見た連中は口を開けたまま動けないでいる。
「な、なんなんだこの魔法は…」
領主は驚き顔が青冷める。
他の兵士達も身動き一つとれなくなった。
「まだうちの嫁にご用がありますか?」
「ぐっ!…い、いやない。」
完勝!俺はレナの方に振り返り、手を上にあげハイタッチした!
「それじゃあ、換金に行こう。」
「ハイッ!」
ツカサ達が歩き出すと衛兵達は慌てて道を開けた。レナの魔法の威力を目の当たりにして
二人を止めよう等と思う輩は一人もいない。
ツカサとレナは堂々と通り過ぎ、
しばらく歩いてからレナに一言だけ言った。
「潰すって言ったろ?」
「はい…多分…」
レナは町にツカサの背中に頭を当て泣きだし、
ツカサはそのまま立っていた。
一方、領主は…
「くそっ!なんなのだっ!ついこの間までは気の弱い小娘だったではないかっ!・・・あの魔法、一体どこでも覚えた?
あの強さを相手にするとなると十賢者を呼ぶ他ないな・・・クックックッ!レナ・ロックフォードォっ!!逃がさんぞお前は私のものだぁ…」
領主が次の手の算段をしているときツカサ達は、泣き止んだレナの道案内で
換金と冒険者登録をする手続きをしに噂の"教会"に来ていた。
「それじゃあ、この紙にお名前と希望する神様を書いてください。」
「えーっと、ツカサ …名前だけにしよう。所属する神は、闇の神様っと…」
「ツカサ、書けましたか?」
「まぁ、何とかね。レナも正直に書いた?」
「はい、騒ぎを起こしたから隠す意味がないと思いましたので…」
レナはちょっと申し訳なさそうな顔をした。
「確かにそうだね。」
「書けましたか?」
受付の人が聞いてきた
「はい、どうぞ」
紙を渡して確認してもらう。
「あの~闇の神様の信者になることは現在出来ませんよ。
まぁ、過去にもないですけど…」
そういう設定だったな、忘れてた。
「あ、闇の神様の信者になりたいんじゃないです。
俺達は信者です。」
「は?嘘はよくありませんよ。そんなことを軽はずみで言うと牢屋行きになるから気をつけてください。」
「本当ですよ。魔法でも見ます?
何がいいかな・・・あ!これにしよう♪
ダークミスト!」
そう言って俺は魔法(威力ゼロの闇の煙)を出して足元を黒い煙で覆っていく。
「ええっ!?あの闇の神様が信者をお二人も作るとは…何かあったのですか?」
「仕事をいくつか頼まれただけですよ。」
「しょ、少々お待ち下さいっ!」
そう言って受付の人は慌てて奥の部屋に入っていった。
しばらくすると"神父"的な人が、受付の人とやって来た。
「こちらの方達です!」
「ふむ、ようこそ教会へ…ここでは少し目立ちますので奥へどうぞ。」
神父は優しくツカサ達を誘導すると、部屋のなかに入るなりキャラが変わった。
「いやぁ、悪いね堅苦しい職種だから人前では言葉遣いをちゃんとしないといけなくてね…
少し碎けるけど勘弁してほしい。
私は話し方の方が楽なのでね。」
「「 は、はぁ・・・ 」」
「で、君達が闇の神様"初"の信者ということになっているわけだけど…外であった
『突然人が現れた』と『空に凄い炎があがった』というのは君達か?」
「そうです。転移魔法と炎魔法は隣のレナが使った魔法です。」
レナはちょっと恥ずかしそうになり、モジモジしていた。
「時空魔法と炎魔法か…いやはや、闇の信者の恩恵は"複数の属性の使用"なんだな…
しかも威力が十賢者並み」
違いまーす。装備補正とみんなが知らないだけでーす。
てか、十賢者?
「十賢者とは?」
「この大陸最強のトップ10人のことです。」
レナが答えた。
「そんなに強いの?」
「一人が1000の軍に相当するとか…私も噂しか知りません。」
「その噂は正しいが、補足がある。彼らは聖騎士団の各部隊の軍団長を勤めている。そして、その中の最も強い三人に
鬼神、軍神、魔神の二つ名がついてる。」
「ヤバイ?」
「ヤバイです…多分」
「まあ、君達も強いのだろうけど彼らとは関わるな。奴ら派閥争いが好きだからな、闇の信者なんて出てきてはこちらも面倒が増える。」
こっちも面倒は御免なんです。
「はい、そうします。」
「私の話しは以上だ。何かあれば出来る限り協力する。何かあるかね?」
レナが口を開く
「私達夫婦になったのですが…」
結婚=やっぱ教会?どこの世界もさほど変わらないのかな?
「待っていたまえ」
神父はニコニコしながら奥の分厚い扉へ向かい、中から木箱を持って来てテーブルに置いた。
「さぁ、好きな物を選びなさい。」
神父が箱を開けると中には指輪が複数入っている。
「わぁ♪どれがいいですか?」
「レナに任せる!」
「ハイッ!、ツカサは私の選んでくださいね♪」
「わかった。…どれがいい?」
「聞いちゃダメですよぉ。」
分からない、女の子にプレゼントしたことがないから何が正解なんだ?
神父に横目使ってアピールするとニコニコしながら首を横に振った。そんなぁ~。
「これがいいです!」
レナが選んだのは、ドラゴンの装飾がされた指輪だ。
そうだ!レナのイメージに合わせよう。
「これでいい?」
俺が取ったのは、天使の羽の装飾がされた指輪だ。レナもイメージで選んだと思うので俺もそうしてみた。
「ハイッ!、ありがとうございます♪」
嬉しそうでよかった。指輪を神父に見せてお互いに指輪をはめあった。。
「ではっ!」
神父が魔法で指輪のサイズを直してくれた。錬金術かな?
「神よ、この夫婦に永遠の祝福を与えたまへ・・・
はい、これであなた達は夫婦になりました。彼の指輪には力の魔法が、彼女の指輪には守りの魔法が込められています。偶然とはいえ、対になる指輪を手にしたあなた達に神の御加護がありますように。」
「今上手いこと言ったと思ったでしょ?」
俺がニヤニヤしながら言った。
「わっはっはっ!バレたか(笑)」
神父が頭をかいている。そしてレナは、
「もぉっ!雰囲気が台無しです!!再度やり直しを申請します!」
怒っている(笑)
「神父だって忙しいんだ、後はお前らでやってくれ(笑)」
「了解で~す(笑)」
そう言った神父は今までが嘘のように真面目な顔になり意味深なことを言ってきた。
「そうだお嬢ちゃん!分かっているとは思うが、十賢者の何人かはアンタを狙ってくると思うから気を付けなさい。」
「はい…」
レナは一礼してドアを閉めた。
「今の話しだけど、後でゆっくり聞かせてね。」
「はい…」
それからツカサ達は"ゴブリンの牙"を換金して宿に向かった。
宿までの道のりを誰かが後を着けてきていたようだがバレバレだ。
"ヘタクソなやつだなぁ。"と思いつつ、とくに何もしてこないのでツカサはスルーすることにした。
宿に着いたら保険をかけて広い部屋を借りて腰を下ろす。
もしもし戦闘になったときのため広い部屋が必要だったからだ。
「さてさて、明日の予定とさっきの話の続きをしようか。」
「はい…」
レナが暗いので安心させなければ。
「とりあえず、ダメっ!」
「へ?」
レナは、?な顔をしている。そりゃそうだ、誰だっていきなり"ダメ"と言われたら?になるな(笑)
「暗い、暗すぎる。正式に結婚したんだからもっと喜んでよ。十賢者が襲ってきたら、ぶっ飛ばせばいいんだしさ。ちゃんと守るよ。いや、守らせてよ。」
「はい…」
レナは泣き出した。いや、泣かせてしまったが正しい。
ツカサはレナを抱き寄せて頭を撫でる。
泣きながらレナが言ってきた。
「私の種族は、この世界では奴隷扱いなんです…
長い耳は悪魔の証、ツカサはそれを知らないから今まで普通に接していけました。でも、私が原因で十賢者と戦うかもしれない。あなたが傷付くかもしれない…」
レナの話によると、レナの種族は"エルフェン"と言うらしい。
エルフェンは長い耳のせいで人間扱いされず、綺麗な顔立ちのせいで性奴隷にされるんだそうだ。
レナのいた村の人は"いい人"ばかりで特に虐待とかは受けてこなかったらしい。
ただ運悪く領主に見つかり"手込めにされに行く"道中でゴブリンに襲われ、俺に出会ったという事でした。
まぁ、俺はレナが好きだし、人種差別とかどーでもいいし(笑)
「別に俺が好きじゃなきゃどこか安全な場所で別れてもいいよ。レナが好きだから俺としては悲しいけど…」
「私も!ツカサが好きです!ツカサの見た目が醜くなっても、他に好きな人ができても離れませんっ!!」
「じゃあ、離れないでね。この世界でレナは俺のたった一人の家族なんだから…」
「はい…」
「(神様と相談してみるか)
ちょっと神様と話すから…レナ、待っててね。」
そう言って俺は目を閉じて神様と今後の話をする。
夜も遅く町の明かりはほとんどなくなっていた・・・
完