2話
「――!? どうしたの?」
ボクの突然の行動に驚きを隠せない真帆。
そんな真帆の背中に顔を押し付けると。
「やっと反応してくれた」
と、もし周りに人がいたら二人にしか聞こえないような音量でぼそりと呟く。
「そう?」
「そうだよ。ずっとボクのこと無視してたじゃん」
「…………で、何?」
さっきボクがいきなり抱きついたことをなかったことにするような、唐突な話しの変え方をする真帆に心の中で思わず苦笑するボク。
だが、それと同時に、ボクがただ無視されてたから抱きついただけではないと察し、この質問をしてくることには関心を覚えた。
だからボクもちゃんとその質問に答えた。
「眠い」
と。
すると、真帆は少し後ろに下がり、もう一度正座を組みなおす。
ボクは真帆の横に座ると、そのまま横たわり、ふとももの上に頭をのせる。
つまり、膝枕だ。
眠くなったときに真帆が近くにいると、ボクはいつもこうして寝るのだ。
真帆も嫌がっている様子は見せない。
「ねえゆき」
「何?」
「別に膝枕をするのはいいんだけど、わざわざスカートめくって素肌の上で寝るのはやめてくれないかな?」
「いやだ」
ボクの即答に思わず苦笑する真帆。
だってこっちの方が気持ちいいのだ。
快適な睡眠のためには必要な行為である。
やめるわけがない。
「まあいいや。おやすみ」
そう言うと、真帆はボクの髪を優しくなで始める。
真帆が髪をなでる度にボクの意識はゆっくりとどこへ向かうのか分からない暗闇に落ちていった。