プロローグ
ボク、雪は友人である真帆の家に出向いていた。
相談事をするためだ。
「まーほー」
ドアの前で名前を大声で呼ぶことで、ボクが来たことを示す。
すると、ドア越しに『はーい』という間延びした返しの言葉が聞こえ、鍵が開けられる。
「あっ、ゆきちゃーん」
甘い声でボクの名前を呼ぶと、優しく抱きついてくる。
これが僕の友人の真帆だ。
「毎度毎度抱きつかなくていいから」
ボクは抵抗する様子も見せずに制止の言葉をかける。
正直呆れて抵抗する気もでない。
「ブー。ケチ」
というと、意外と直ぐ解放してくれる真帆。
本気で拘束する気は無いようだ。
「……で、今日は話があって来たんだけど」
「ふーん、珍しいね。一体どんな話?」
さっきまでの甘い顔はどこへやら。
いきなり真面目な顔に戻る真帆。
その様子を確認すると、ボクは少し言うのを渋っていたその言葉を言い放った。
「――抵抗軍に入ろうと思うんだ」
真帆は一瞬黙った。
抵抗軍と言うのは、百年程前に突如現れたモンスターと呼ばれる謎の生命体を殺し、世界の破滅を阻止するために集められた高い能力値を持った集団だ。
「……一体どうして?」
「それは……」
ボクは言うのをためらった。
その様子を見て、
「別に言わなくてもいいよ」
と、真帆が気を使って言葉をかけてくれる。
その言葉を聞いて、ボクは少し安心する。
「じゃあ……、いつこの村を出るの?」
ん?
いつ? いつかー。
正直あまり考えていなかった。
ボク少しだけ首をかしげて考えた。
で、その結果。
「今日の夕方」
という答えを導き出した。
「は?」
次の瞬間、さっきまでの冷静な表情が消え、何を言っているのかよく分からないといった表情を浮かべる真帆がそこにいた。