言の葉の呪縛
幼い頃、私が汚い言葉を使うと周りの大人はよく私を叱りました。
怒られることが怖かった私は、正しい言葉を覚えました。
私が正しい言葉を使うようになると、周りの大人達は悲しそうな顔をするようになりました。
私は周りの大人が悲しむのが嫌だったので、口を閉じました。
大人達は私に冷たい視線を向けるようになりました。
なにが間違っているのかもわからない私は、答えを大人に求めました。
その時にはもう、私の周りに人はいませんでした。
この時の私は内心ほっとしていました。
私はもう、話し方を忘れてしまっていたのです。
月日は流れ、私もそれなりに年をとりました。
今の私はどうなのか、察しの良い方はもうお気づきかもしれませんね。
時が経った今でも私は話し方が思い出せないので、こうして文字でのみ口を開いているのです。