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川崎アレクの診療所  作者: 上代湊
二章
7/7

美人が得かどうかは考え方次第


 アルシエさんの話を纏めるとこうだ。


 メシアさんは中学生の頃、ゲームや漫画などが好きな、少しオタクチックな女の子だったらしい。

 部活は美術部に入っており、絵の才能があり、良く賞を取っていた。

 少し人見知りな性格だが、社交性があり、男女問わず友達が多かった。

 また、そのアイドルクラスの見た目から、クラス・学年問わず、男子生徒から毎日のように告白を受けていた。

 しかし、当時のメシアさんはオタク活動と美術部の二本の草鞋でいっぱいいっぱいだったため、男子生徒の告白を全て断ってきた。そのことで姉のアルシエさんに良く相談していたらしい。

 ある日の放課後、メシアさんはクラスの不良チックな女子生徒2人に体育館裏へ呼び出された。

 何のことか分からなかったが、とりあえず体育館裏に向かったメシアさんは、


 2人の女子生徒からボコボコに殴られたのだ。


 後にアルシエさんがメシアさんから聞いた話では、メシアさんを殴った女子生徒の内の一人が好きだった男子生徒が、メシアさんに告白したことでイラついて行った犯行だったらしい。

 しかも、殴られたことを誰かに言ったり、これ以上男子生徒から告白されたら、美術部の仲間も同じようボコボコにすると脅されたのだ。

 この事件以降、メシアさんは男子生徒に告白されないよう、必死に本当の自分を隠し続けた。

 男子生徒の声掛けは無視し、極力目立たないように日々の学校生活を送った。

 そんな生活を送っている内に、メシアさんには男子生徒のみならず、女子生徒の友達もいなくなった。

 最終的には美術部の仲間達にも嫌われ、クラスでは孤立し、不登校気味となってしまった。

 アルシエさんとメシアさんの両親は、二人がまだ幼い頃に他界したため、メシアさんの保護者代行であるアルシエさん(当時大学生)に学校の先生から連絡があり、三者面談等をしながら何とか中学校を卒業し、高校進学も決まった。

 しかし、メシアさんの負った心の傷は深く、かろうじて高校一年間を通うことは出来たが、友達は一人も出来なかった。

 


「そんなことがあったなんて……酷い」


 理由は違うが、僕も中学校の頃いじめを受けていたのでメシアさんの気持ちは分かる。

 いじめは人の心に取り返しのつかないぐらい深い傷を負わせるのだ。


「メシアの元々の性格はそんなに根暗でもなく、むしろ人と話すのが好きなぐらいの子なんです。だから、ずっと話す相手は私ばっかりで、同年代の友達はしばらくいないから、かわいそうで……」


 アルシエさんの目には涙が浮かんでいた。

 そんなにまで妹のメシアさんのことを思っているなんて……素晴らしいお姉さんだな。


「よし、分かりました。演劇部に入るかはまだ未定ですが、僕、メシアさんと友達になります!

そして、メシアさんがより多くの友達を作れるようにサポートします!」


 僕は決心して、涙を流すアリシエさんにそう言った。

 我ながら男らしいな、僕は。

 アリシエさんは僕の決心を聞くと、涙ながらの笑顔になり、


「本当ですか! ありがとうございます風見鶏さん!」


 するとアレクさんが会話に入ってきた。


「なら、今回のミッション名は『メシア友達100人出来るかな? ブライアン初登場! 昼飯奪還大作戦!』ってとこかな」

「急に意味わからないタイトル付けるのやめてもらっていいですか? ってか誰だよブライアン」


 僕のさりげない突っ込みが終わると、アリシエさんが頭を下げた。


「本当にありがとうございます。どうか、妹のために宜しくお願い致します」


 この人、本当に妹思いのいいお姉さんだな。

 こんなにしっかりお願されたら、何が何でもメシアさんの友達を増やさなくては。


「はい、僕達に任せて下さい!」


 僕の言葉にアリシエさんはまた涙を流し、


「ブライアンさんにもお礼を伝えておいてもらえたら幸いです」


 だから誰だよ、ブライアン。

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