令嬢は見た!××な浮気現場 002
「 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」
一通り叫んだ後にお母様付きの侍女に連れられてお説教部屋ことお母様のお部屋を目指すというか連行されました
気分は完全にドナドナだ
連行されている間にすれ違った他の使用人たちにも目を逸らされてしまった・・・この世界には、やはり神様はいないようだ
「さて、我が家の3馬鹿たちに尋ねますが、何か言い訳はありますか?」
お説教部屋で、これぞ正座と言わんばかりに床に座らされてされている哀れな子羊が3匹・・・言わずも知れた私、お父様、そして双子の兄のアインベルフだ
4度目の人生を迎えた私は、神様の間違いか?運命の悪戯か?
2度目・3度目の人生では今世の双子の兄と同じ『伯爵家次男』で『アインベルフ』として転生しましたが、双子というのがいけなかったのか・・・今世は伯爵家次女のロゼティットに転生してしまいました
転生直後はそれは大変混乱しましたが、人生の総計が軽く100年を超えたある種の悟りを開いた私をもってすれば、女の子の身体にもすぐに順応出来ましたわ
それでも双子という事もあって、魂がふたつに分かれて兄のアインベルフにも転生の記憶が受け継がれているのかもと念のために考えましたが、「クラリッサが追ってくる」「ローゼマリーのドリルが刺さる」等のアプローチをしてみまして、全く無反応でしたので杞憂という結論に至りました
まあ、そんな事は一番最初の人生の頃の名前が思い出せなかったので、便宜上『阿印 部留不』という名前をつけている位に、どうでも良い話でしたわ
お母様の「言い訳はありますか?」という刑が既に確定している前提の言い回しに現実逃避するしか手段しか思いつかず、つい隣に座っているお父様を覗き見ると、顔から凄い量の液体を溢れさせておりました
お父様は運動もせずに執務で座りっぱなしのはずなのにスリムな体型をされているのは、こうやって定期的に汗的な何かを流されているからでしょうかしら?
あ、また現実逃避してしまった・・・
「お母様、言い訳はございません
全て父上とロゼットがやった事でございます」
打開案が全く思いつかない中、突如どこかで聞いたような事がある台詞が、お父様と反対に座っている人物の口から出てきた
( アインベルフゥゥゥゥゥゥゥゥ! やっぱりお前も記憶があるんじゃないのかぁぁぁぁ!! )
そんな心の声を他所に、裏切り者のアインベルフが私とお父様に変わって説明を続けてくれた
「母上と姉上が自領にお戻りになられている2ヵ月ほどの間に、王太子殿下と第2王子殿下の婚約者候補や側近を探す目的のお茶会がございましたのは、兄上から送られたお手紙をお送りさせて頂いたのでご存知かと思います」
兄上と呼ばれた我が家で最も影の薄い長男がコクンと頷く
私たちを見て余計な事を言わないのが良いと判断したのか全く口を開く素振りを見せない長男の処世術に、次代の伯爵家も女性によって支配される姿を見た
「その場で起こった出来事やお茶会の成果につきましては、父上より報告は止められておりましたのでご連絡致せませんでした」
そのアインベルフの言葉に長男が必死に何度も頷いている・・・そんな姿に遠い昔の記憶の『あかべこ』を思い出した
お父様はこれから地獄へ連れてかれるんじゃないかという位の感想が出るほど、お顔に絶望の色が浮かんでいる
「この場を借りて、まずはお茶会の成果からご報告いたします
私は王太子殿下の側近候補に選ばれ、ロゼットも同じく王太子殿下の婚約者候補に選ばれました」
そうです、私の今の立場は王太子の婚約者候補です
権力を振りかざす事は出来ませんが、理に適わない理不尽な要求には第2王子相手とはいえ、きっぱり断れるくらいの立場となりましたわ
ただし、全く嬉しくはないです
来年から始まる王妃教育という名の地獄の招待状が我が家に届いているからです
「途中の経過は省かせて頂きますが……先日我が伯爵家へ王太子殿下が訪れて頂いた際に、殿下より直々に側近への名指しを頂きました
この件についてはロゼットの助力があってこそ適いましたゆえ、なにとぞロゼットへ恩赦を賜るようお願い申し上げます」
お仕置きがほぼ確定の状態だった中で、我が身可愛さに裏切っていたと思われた双子の兄がそんな救いの言葉をお母様に告げる
さすが私の半身! 敵はお父様のみですわ!!
「アインの出世は大変喜ばしい事です
こんな大切な事をなぜ報告してくれなかったのかしら? ねぇ、あなた?」
双子の兄による誘導により、ますます立場の悪くなったお父様は真夏の炎天下に曝されているかの如く液体を体外に出し続けていた
床にささやかながら水溜りが出来はじめている
もしかしたら、大人がしてはいけない液体の可能性も・・・いえ、これは言うべきではございませんでしたわね オホホホ
「アインは8歳だというのに立派に説明を果たしているのに、あなたは説明すら出来ないのかしら?」
伯爵家当主であるが婿入りしてきた立場のお父様は、ただでさえ低い立場が今の言葉によって双子の兄の下に序列された事になる
第2王子にも媚を売ろうとした良い罰よ オホホホ
「あら? ロゼット
あなたにそんな余裕があるのかしら?」
無事に事態を乗り切れるかと思われた矢先に、またしても姉上からお声を掛かる
このお姉さまは絶対にSな人だ!
「そうだったわね、ロゼット
王太子殿下の婚約者候補になった事は素直に褒めてあげますが、お茶会であなたがやらかした事に何か弁明はないのかしら?」
( いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! )
そのお母様の言葉にお説教から逃れると思っていた私は、心の中で再び叫ぶしか出来なかった