令嬢は見た!××な浮気現場 001
「さあ! 婚約破棄ですわ!!」
「ま、待ってくれ! ロゼット・・・いやロゼティット!!」
「ここはとあるパーティー会場で、まさにダンスが始まろうとしているその時でした
突然響いた婚約破棄の言葉に会場中の観客が一斉に注目を集める」
「ざわざわざわ・・・」
「なぜだ!ロゼティット!
私とは子供の頃からの婚約者じゃないか・・・一体なぜそんな事を言い出すんだ!?」
「婚約破棄を申し渡された相手には悲痛な顔を相手に向けて問いただすが、
ロゼッティットと呼ばれた少女は顔色を変えずに扇子で口元を隠したまま優雅に返答を返す」
「あら、アインベルフ様
私が知らないとでも思っていますの? 私以外の女の影を!!」
「アインベルフと呼ばれた婚約破棄を突きつけられた少年は、その言葉と周りの観客たちと共に固まってしまった
そこに少女がさらに追い討ちを掛ける」
「これがあなたの未来ですわ!第2王子殿下!!」
そう告げる少女はもちろん私ロゼットでございます
改めまして、3度目の転生を経験した『転生者』です
1番最初の人生は既に遠い昔の記憶のようで痴呆症のようなものでしょうか?
時々「ハッ!」と思い出すことがある程度です
2度目・3度目の人生は剣と魔法の世界でしたが
何か凄く活躍したという事もなく至って普通の人生を送りましたわ
まあ色々と失敗してしまう事もありましたが、その失敗を今世では生かしていこうと思っておりますのよ? オーホッホッ!
「ちなみに主演は私ロゼットと双子のアインベルフ兄様
そしてナレーションは私付きのメイドのメイリン
最後にエキストラはうちの使用人たちですわ!」
と護衛と共に未だに固まったままの第2王子に向かって丁寧な補足を付け加える
「ロゼェェットォォ!!!」
第2王子の隣で固まっていた我が伯爵家当主のお父様が声を高々と上げる
「お前はいつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも!」
ひたすら「いつも」を繰り返してお父様が近寄ってきます・・・色々な意味で恐ろしい光景ですわ
「なんで来客があるたびに寸劇なんてするんだ! しかも今日は婚約者になるかもしれない第2王子殿下のご来訪だと伝えておいただろう!!」
「あら、お父様ったら嫌ですわ
第2王子殿下でしたからこその、この寸劇をしたのではなくて?」
皆さんもそろそろお気づきになられたと思いますが、ここは学園ではございません
もちろん我が伯爵家になります
プロローグが未来のお話だとすると10年ほど先の未来でしょうか?
つまり今は過去という事になりますわ
「貴様! 王子に向かって無礼であるぞ!!」
先ほどまで固まっていて職務もまともに果たせていない護衛の騎士が、ようやく動き出して喚いてきた
その言葉に第2王子も反応して厳しい視線を向けてくる
「で、殿下...誠に申し訳ありま」
「お父様! 謝る必要はございませんわ!!」
護衛の騎士と第2王子へ向かって頭を下げようとしている伯爵家当主の行動を当然のように引き止める
「貴族として、その誇りを侮る相手に礼儀を尽くす謂れはございません!
ましてや突然の事にもまともに反応もできずに、今ようやく動き出すような無能の護衛ごときが口を挟む事すら許しません!!」
「なっ!」
8歳児の厳しい言葉に言い淀んでしまった護衛の騎士と第2王子・・・おまけに伯爵家当主へさらに言葉を投げかける
「婚約者候補を絞る目的であった先日の王家主催のお茶会でこの王子がやらかした事はお父様にも報告したはずです!
それでもなお第2王子に組するというのであれば、私は伯爵家を捨てます!!」
この言葉に心当たりのある第2王子とお母様である伯爵夫人が怖い伯爵家当主が顔を真っ青に染める
「王家に対してその口の聞き方はなんだ! 不敬罪で切り捨てられても文句は言えぬぞ!!」
無能呼ばわりされて激怒した護衛の騎士が、たかだか8歳児に対して権力を振りかざして威圧してくる
この言葉に顔を真っ青に染めていた伯爵家当主が身体を挟んで私を庇ってくれる
普段は権力に弱く、何事も弱腰で、お母様に決して頭の上がらないお父様だけど、こういう所はちゃんとしてくれるので、今世でも家族に恵まれた事だけは感謝したい
「お父様、大丈夫ですわ!」
そういって庇われているお父様の後ろから躍り出る
「こんな子供にまで権力を行使するというなら容赦は致しません
自身の行いを悔い改めなさい!」
激怒していた護衛の騎士でさえ威圧返される程の雰囲気に第2王子もガタガタと震えだす
伊達に2度の貴族人生を送っていた訳ではございませんことよ?
「この件は既に王太子である第1王子殿下に、側近であるアインベルフ兄様経由で許可を頂いております」
第1王子は第2王子の2歳年上にあたり、10歳にして既に王太子として認められるほど優秀なお方だ
そんな優秀なお方に双子の兄であるアインベルフ兄様が側近になれたのは、ひとえに私の教育の賜物でしてよ?
「この通り妹のロゼットも歓迎しておりませんので、本日はお引取り願います」
っと伯爵家当主に変わって、教育済みのアインベルフ兄様が来客である第2王子へお帰り頂くように促す
ただし、その手には何故かお土産を持って・・・
「ただ足を運んで頂いただけでは申し訳ないので、こちらはご帰宅の馬車の中でご堪能下さい」
そう言ってお土産を差し出す
あれは我が伯爵家自慢の料理人の作ったおやつだ! 本来は私の口に入る予定だったのに!!
おやつはともかく・・・王太子の許可を得ていると伝えられた護衛の騎士も何も言えずに第2王子と共に帰途に着く
「本日の態度につきましては王太子殿下へちゃんと報告しておきますので、お土産はしっかり味わってお帰り下さいね」
最後に食べ物の味も分からなくなるような一言を護衛の騎士と第2王子へ投げかける
( 我が家の貴重なおやつを美味しく頂けると思うなよ! )
やっぱり諦め切れなかった食べ物の恨みも返して我が伯爵家にようやく平穏が訪れる
協力してくれた私付きのメイドのメイリンや他の使用人たちにも言葉を掛けて労い、無事に事を成し遂げた達成感がこみ上げてくる
「お父様、アイン、ロゼット」
感傷に浸っていると、本日第2王子を出迎えた面々の名前を呼ぶ声が聞こえる
「お母様に皆を呼んでくるように言われたのだけど、何か家族会議の心当たりはありまして?」
そうして我が家No2であるお姉様の家族会議宣告で、ようやく平和になった我が家が、今度は絶望の我が家と成り果てる事となった
私はただただ悲鳴を上げるしか出来なかった
-後書き-
2017/07/22より一時的に連載を再開します。
色々と不出来な為、途中で止めてまた時間をかけて書き直して投稿するかもしれないです。
勢いだけで書き上げていると思っていた作品と違う方向へ進んでいく事が時々………頻繁にあります。
無事完結だけじゃなくって自分で納得のいく完結に出来るように頑張りたいと思います。
書き上げている分は2日おきに投稿予約してあります。