ラーメンはざまぁを救う? 前編
どうも、アインベルフです
伯爵家次男で
友達はこの国の第3王子様と研究の為に飼い始めたスライムだけです
別に寂しくないですよ?
趣味は『ラーメン』です
ここまで言えば分かってくれると思いますが
そうです!転生者です!!
剣と魔法の世界に生まれて
物理法則が何から何まで違うこの世界でチートも出来ていません
前世での死因は過労死でした!
それはもう馬車馬のごとく働かされましたよ!!
いや~それでもまさか2度転生するとは思いませんでしたよ
しかも名前も伯爵家次男ってところまで前世と一致ですよ!
前世の反省を生かして
今世では自分の趣味に生きようと思っています
まあ、そんな思いと前々世の
(あぁ、最後にラーメン食いたかったな・・・)
この思いだけを糧に魔法研究を重ねて
5歳から苦節8年!
13歳のときにようやく麺を完成させました
世界で唯一自分だけのオリジナル魔法
ラーメンの麺生成魔法だ!
「ちなみに材料にスライムは使っていないよ?
食材表示に偽装絶対にダメ!!」
っとそんな話はおいておいて
なんでラーメンの話をしたかというと
今食っているからだ!!
「づるづる ちゅるん!」
この世界に醤油や味噌が存在しない為、
塩らーめんがメインになっている
「もぐもぐ」
学園に来て早3年
卒業までの間、週3回限定で食堂に出すスープ作りと
魔法で麺作りを続けてきた
その集大成となる採算度外視といえる豪華ラーメンを
卒業パーティ限定で出していた
「ラフィーネ嬢、婚約破棄をさせてもらう!!」
「つるつる」
「お前が私が愛する・・・である・・・を苛め・・・を傷つけた
そんな心もとない・・・と・・・
・・・を邪魔し・・・を奪った!
そんな相手・・・相応しくない!!」
「つるつる ちゅるん」
「・・・数々・・・知らないとは言わせないぞ!!」
「もぐもぐ」
学園の卒業パーティといえば婚約破棄という風物詩が今年?もやってきたようです
なにやら言っているが、
まあ、特に興味がないので真面目に聞いていない
っというか第2王子の声が小さくて殆ど聞こえない
周りのパーティ参加者たちも同様の様子で聞き耳を立てて困惑しながら聞いていた
「もぐもぐ あれは兄上ですね」
「もぐもぐ あれが有名な第2王子殿下でしたか」
この学園は王都にある貴族学校だ
貴族はもちろん王族もこの学園にて
人脈作りや将来の職の為になんて説明はいまさら不要ですね
「去年も確か公爵家の嫡男がやらかしたらしいですね ごくごく」
「一昨年は市井の幼馴染同士の痴情のもつれでしたよ ごくごく」
この国の第2王子の他に騎士や官僚候補が揃って
悪役令嬢っぽい婚約者を糾弾している最中だ
一昨年は庶民・去年は公爵家・今年は王家
来年は国王陛下が王妃様に破棄を言い渡したりしないよね?
「つるつる もぐもぐ」
「いい加減に食べるのを辞めろ!」
ちょっと失礼な事を考えていたら自体が進展したようだ
騎士候補の1人が悪役令嬢?の持っていたラーメンを
振り払った!!
( 液体の入ったどんぶりを振り払うとか!? )
結果はいうまでもなく
会場にいる全員がスローモーションで頭からどんぶり被る騎士候補の姿を見た
幸いな事に悪役令嬢?は猫舌だったおかげか
スープは温く騎士候補は火傷もなく無事だった
アクション芸人ばりのリアクションが見れなかったのが
心残りではあるが
( 麺が伸びると美味しくなくなる )
婚約破棄劇場『喜劇編』を見ながらラーメンを食べ続ける
第3王子も気にせずに食べ続けているようだ
特にチャーシューが気に入ったのか味わって食べているのが分かる
「カラン! カララン!! カラララン!!」
どんぶりが床に落ちて回転している音が聞こえた
卒業後に屋台も考えて落としても割れない食器の開発もおいた
食器も食文化の重要なファクターだからね
「貴様!よくもやったな!!」
我に返った騎士候補がアホな事を言い出した
さすがにこの言い分は婚約破棄を言い渡した第2王子も
固まっている
「いや!お前が自分でやったから!!」
さすがに第2王子側も予測不能だったのか
第2王子側の取り巻きの1人が恥ずかしそうに
騎士候補をその場から連れ出そうとしていた
「スパーッン!!」
綺麗な平手打ちの音が響き
会場の固まった空気が華麗な音と共に元に戻り
平手打ちを喰らった騎士候補が逆に固まった
「殿下、これはどういう事でしょうか?」
スープが跳ねて汚れたドレス姿の悪役令嬢?が
第2王子へと振り向きようやく口を開いた
「いや、これは・・・」
断罪して婚約破棄を言い渡していた時の面影もなく
悪役令嬢?のお怒りの視線を受けて言い淀んでいた
「このように場が汚れていては話も出来ませんわね
給仕の方々、申し訳ないのだけど片付けて頂けるかしら?」
そう指示を出して扇子で口元隠す
騎士候補に平手打ちをした拍子に飛んだナルトが
悪役令嬢の持っていた扇子にくっつき見事な模様と化していた
「私の衣装も汚れてしまいましたので一度退席させて頂きますわね」
ナルトのついた扇子を振り払い華麗に退席する
もちろん、ナルトは固まっていた騎士候補の頬にくっついた
お約束は守らないといけないよね
そして、手早く給仕たちが片づけを始める頃になると
撒き散らされたスープの香りが辺りに漂い
歓談を優先して食事を取っていなかった人々は空腹を刺激していく
だが誰がこの空気で食事が出来ようか・・・
「ずるずる」
それにしても第2王子と取り巻きの中にヒロインらしき人物がいない
登場待ちでもしているのかと辺りを見回してもピンク頭は見当たらなかった
「もぐもぐ」
そもそも一緒に働いていた食堂の噂好きのおばちゃんたちに
第2王子浮気疑惑を聞いた事もない
「ごくごく・・・コトン」
婚約破棄劇場『喜劇編』の主演の1人である第2王子は
未だに脳細胞の活動が止まったままだ
「おかわり!」
「いや! おかわりじゃないだろ!
一体どういうつもりだ!!」
ようやく我に返った第2王子からツッコミが返って来た
「兄上こそ、この状況は一体どういうおつもりでしょうか?」
質問と共に、隣にいる第3王子が鋭い視線を第2王子に投げかける
その目は猛禽類を思わせる鋭い目つきだった
第2王子はせっかく動き出したのに再度固まってしまった
「何ゆえに婚約破棄などなさろうとしておられるのですか?
あ、麺は硬めでお願いします」
っと思ったがどうやらお腹を空かした、ただの野獣だったようだ
その目は麺を茹で始めた給仕の方へ向いてしまった
「2年年下で1学年生であるお前がなぜ卒業パーティーのこの場にいる!?」
第3王子の鋭い視線が外れた為か
固まっていた第2王子が再起動を始めた
「私は在校生代表として参加しております
出来ればチャーシューを3枚にして下さい」
返事をする時だけ第2王子を睨みつけ
麺を茹で上げて湯切りをしている給仕に向かって更なる注文を追加する
「バタンッ!」
睨みつけられる度にビクッ!としていた第2王子が
更なる言葉を発しようとした時
勢いよく入場用の扉が開いた
「私に、もう一杯
麺は少なめ、スープは温めでお願い致しますわ!」
派手な登場と決め台詞(?)と共に
婚約破棄劇場『喜劇編』のもう1人の主演が着替えを終えて会場入りしてきた
「ラフィーネ嬢、そなたは非を認めて逃げ出したのではなかったのか?」
新たにラーメンを追加する注文する令嬢に対してのツッコミはそうじゃないだろう!
「あら、第2王子殿下
殿下の取り巻きの方が私の召し物を汚したせいで
着替えに出ていただけですわ
それより、食べ物を粗末にするのは褒められたことではなくってよ」
「あ、うん
まあ、それについては正直すまなかった」
婚約破棄なんてやらかす割には肝の小さい第2王子だ
こんなんで王族どころか貴族としてやっていけるか心配になるが
ただ素直に謝る姿勢は好感が持てる
誰だとは言わないが完成したチャーシュー3枚乗せラーメンを
この空気を読まずに食しているどこかの第3王子より好感が持てた
「それよりも私の非とはどういう事でしょうか? 殿下」
「先ほど伝えた通りだ! 婚約を破棄してもらう!!」
ラフィーネ嬢は、困った顔してチラチラとこちらを見ていた
いや、正確には麺の茹で上がりを気にしているようだ
「そういったお話であれば、私の父に申し上げて下さい」
貴族同士の婚約はあくまで家同士のものだ
それを踏まえてラフィーネ嬢は正しい返答をする
「それに人が食事をしている際に話しかけるのはマナー違反でしてよ!
どうしてもお話をしたいなら
私が食べ終わるまで待って頂きますわ」
有無を言わせず、そう言って第2王子を睨みつける
うん、あれは完全に肉食獣の目だ絶対に逆らいたくない
案の定、ウサギのように震える第2王子が出来上がった
ラフィーネ嬢はその様子を確認すると出来上がったラーメンを受け取る
何とも言えない空気が流れるが
空腹に耐え切れなくなった周りの観客たちも近くの料理に手をつけ始める
ただ限定ラーメンを注文に来る勇者はさすがに居なかった
(せっかく満足のいく出来だったのに・・・)
「つるつる」
「もぐもぐ」
「はむはむ」
「もぐもぐ」
私の隣にいる第3王子が食事をしている音だけが聞こえる
「もぐもぐ」
「ごくごく コトン」
「それでは兄上のお話をお聞きしましょうか?」
食事を食べ終えた第3王子がラフィーネ嬢に怒られてシュンとしていた第2王子に話しかける
その声に周りの観客たちも食事の手を止めてなりゆきを見守る
( ようやく劇の再開のようだ )
もちろん第3王子ほど神経が太くなかった私は食事も食べずに、
前世の経験から余計な事をせずに壁の染みの如く、|ただ様子を見守っていたよ?《スルースキル万歳!》
「ハッキリとお答え頂けませんでしたが、私の非とは何を指しておっしゃっているのでしょうか?」
第3王子より早く食べ終えて待っていたラフィーネ嬢も扇子で口を隠し余裕の態度で第2王子へ問いただす
シュンとしていた第2王子が心なしか小さくなったように見える
「なにやら私が苛めみたいな事をなさっていたようにお聞きしましたが
何かの聞き間違いでしょうか?」
周りの観客たちも同情するような視線へと変わるほど
ぶるぶると震え出した第2王子に代わって取り巻きの1人が躍り出た
「入学当時に食堂にてとある貴族に対して苛めを行っていた事実は明白である!
その貴族に対して行なった暴言により食堂が一時期騒然となっていたのは
周りの者たちも知っている周知の事実だ!!」
周りの観客たちもその言葉に困惑の様子を示す
私も入学当初から週3回ほど食堂でラーメンを提供していたが
残念ながらそのような話は聞いた事がない
学園にはある食堂は2つある
個室やサロンのように複数で利用出来る『貴族用』食堂
沢山の席があり座る場所も早い者勝ちの『一般用』食堂
私含めて公爵や侯爵クラス以外は『一般用』を利用している事が殆どだ
王子や公爵令嬢なら『貴族用』を利用していただろうから
周りの観客たちを含めて知らない出来事だったのだろう
「?」
っと思ったがラフィーネ嬢は心当たりがない様子だった
結局、彼女は回りも気になっている質問を投げかけてくれた
「そのとある貴族という方が第2王子殿下の愛される方なのでしょうか?」
「違う!愛などではない!!
あの方は学園での我々を支えて下さった素晴らしいお方だ
愛というなら、そう!敬愛だ!!」
震えていた獲物とはまるで別人のように勢いあまる口調で主張してきた
( ・・・ )
どうやら頭がお花畑を通り越して聖女を崇拝している信者のような状態に
ラフィーネ嬢も戸惑いを様子を隠せない
「兄上、相手をするのも面倒なので早くその敬愛する方のお名前をおっしゃって下さい」
ここで空気を読まずに面倒くさそうに第3王子が口を開く
まあ、ようやくヒロインの登場かと
巻き込まれない為に周りを見渡しつつ心の準備をする
「名前など知らん!」
そういう第2王子の発言に会場中の全ての人は沈黙するしかなかった
-後書き-
『ラーメンはざまぁを救う?』は前編と後編だけです
次回で完結します
後編は少し短いかもしれませんが待って読んで頂けると幸いです
あと関係ないですが久しぶりにサザ○さんのじゃんけんに勝ちました
はい、本当に関係ないですね