令嬢は見た!××な浮気現場 005
「やっぱり今日みたいに殿下の土俵じゃなくって、私たちの土俵で話を聞かないと本音を話してくれないと思うの」
伯爵家の令嬢といえども緒戦はただの8歳児、その年齢という事実の前には権力も何も持ってあったものではなかった・・・
要約すると、結局メイリンにも屈して色々と意見を貰った結果、我が家で出迎えた際に話を聞く事しかないと分かった
「幸い、殿下も私たちが行なう小芝居も、他の方から話を聞いていたみたいで大変興味を持たれていたご様子でしたし、そこで驚かせてずっと意表を突き続ければあの何を企んでいるか分からない仮面もはがせるはずですわ!」
本音を隠すのが上手い狸というのは経験があってこそで、数々の失敗を糧にして作られるのが本物のポーカーフェイスであって、2歳年上と言っても王太子もまだまだ10歳児でお子様ですわ! きっとまだまだ甘くてよ オホホホ
「で…ロゼット、その王子の本音の見立ては既に立っているんじゃないかな?」
「そうですね、お嬢様が相手の意表を突く為の観察を怠る訳がないですからね」
双子であるアインベルフになら気づかれるのは分かるとしても、メイリンにまでそう言われるとは思いませんでしたわ
あらやだ、まあまあ! このメイドに完全に見られてましてよ…きっと私生活の全てを!!
「えぇ、お嬢様は何かしでかさないか良く監視するように奥様から言われてますので」
しれっとまた心を読んで返答をしてくるメイリンに対して双子の兄も顔を引き攣らせて距離をとる
「アイン様、大丈夫でございます
私が奥様に申し付かっているのはお嬢様だけでございます」
「メ、メイリン…その話を後で詳しく教えて貰って構わないかしら?」
我が家の『メイドは見た!』がどこまでお母様に筒抜けになっているかによって私の命に関わってくるのだ
「では、お嬢様がお気づきになられた事を全てお話になられて下されば、それでご報告は控えるように致したいと思います」
にっこりと微笑みながら笑顔で脅迫をしてくるメイドのせいで、我が家に安住の地がない事を悟った8歳の秋だった
「私は何も聞いていない…」とブツブツ呟く双子の兄は放置して、私の命の為に素直に白状する事にした
「お茶会に行く前から気づいていたのよ、公爵家と侯爵家の中から誰も婚約者候補に選ばれていない事で、殿下は本気で婚姻を結ぶ相手を探していないんではないかと思っていたわ」
普通に考えれば伯爵家の令嬢たちが参加する前に既に何名か候補が選ばれていてもおかしくないはずである
「その理由として考えられるのが、殿下が優秀で王太子になられた理由でもあると思っているの」
この理由というのを本当は王子をお迎えしたときにネタ晴らししたかったのに!
「王太子になられた事は婚約者を決めない為という事でしょうか?
ただし、それですと先ほどお嬢様がおっしゃられた、殿下自らがお茶会を開かれたというのと反してしまいますが…」
「いえ、殿下が選びたかったのは婚約者『候補』ですわ
ついでに条件をつけるなら、あとで縁を切っても後々問題にならなそうな『候補』と言った方がよいかしら」
「それって、ロゼット…」
「えぇ、アイン兄様
殿下が求められていたのは『虫除け』ですわ」
あんなにフレンドリーに接してきたにも関わらず、まったく腹黒い10歳児ですこと!
「でも安心して下さって、虫除けとしての役目を終えてもアイン兄様を側近としてお傍に置き続けてくれると思うし、側近の家族でもあるから要が済んだからといって始末とかされる心配はないわ」
「それではお嬢様があんまりです!」
私の説明を聞いてメイリンが声を張り上げる
今まで私たち双子を怯えさせていた張本人とは思えないほど真剣に私へ向かって視線を向けている
「メイリンの言うとおり、そんな相手に仕えるなんて冗談じゃない」
と双子の兄も怒りを露わにする
「アイン兄様、メイリン、2人とも落ち着いて
あくまでこれは私の予想であって現実もそうだという事ではないわ」
「た、確かにそうでございますが…」
「それに殿下もそこまで非情な方には見えなかったし、虫除けだけに使うなら他に良い候補もいたと思うの」
私の中では既に確信をしている今回の婚約者候補選びが殿下自身に群がってくる令嬢たちからその身を守る為と
2人とも王太子への怒りで忘れてしまっているが、10歳にして王太子になったフレデリック殿下の理由の事もあるというのに………
「それでも殿下の本心が分からないと、俺は側近候補からも外れるつもりだ
だから今回の件は嫌々じゃなくって、ちゃんと協力するよ」
と、双子の兄が普段もノリノリで付き合ってくれていたのに今回も変わらず仕方がないから協力してやるスタイルを貫く
「まあ、それは殿下が我が家がいらっしゃった時の反応で全て分かる事でしてよ?」
そう2人を強く説得して何とか次に行なう小芝居の準備にようやく取り掛かるのであった




