職人の街
「了解した」
暫くしてバスが来た。
バスに乗ってからは無言だった。
また少したって今度は海に出た。
海沿いを通りながらテンションが上がる帆咲。
「私は街猫だからテンションはさほど上がらない」
などと会話した。
海沿いを終えると今度は田んぼと畑の田舎に来た。
「田舎かあ」
「さっきの街とは真逆だね」
と風雨が言う。
「うん」
とワクワクしながらバスの運転手に聞く。
「ここらへんはどういう町ですか」
バスの運転手は気づいたように言う。
「ここらへんは職人さんが集まるってこと以外何もないよ。でも星空が唯一の自慢だあ」
「星空かあ」
「ロマンチックなところにシェリーは住んでいるんだな」
と帆咲の耳元で風雨が囁く。
運転手を驚かさないように風雨なりに気を使った。
運賃を払って、『星空丘駅』で降りた。
「ここだ」
「ここにシェリーがいるのか!」
と今度は風雨のテンションが上がる番だった。
「そうだよ」と二人で向かい合って両手をつないで喜び合った。
でもまだ喜び合うのはまだ早い。
「屋敷に行ってみよう」
「ああ、うん」
「不安?」
「会いたいけど、怖いっていう思いがあるんだ」
「へえ」
「分からないだろう、この複雑な気持ち」
「……」
「やっぱり、シェリーならわかってくれた」