猫の国
街から街へ移動する『街人』の空夏帆咲は『猫の街』にいた。
「にゃー、にゃー」
と泣き声がする。
辺りを見まわしてみると、至る所に猫がいた。
猫、猫、猫、猫、猫だらけだ。
初めは色々な街猫をカメラに収めていた帆咲だったが次代に撮るのをやめた。
そう。
慣れてきたのだ。
特に何か起こるでもなく、のほほんとした街だった。
だが、ある時気づいた。
彼ら(猫)たちの中に長と呼ばれる猫がいること。
その猫はよぼよぼの老猫だった。
その老猫を取り囲むようにほかの猫たちがいた。
あと、気になったのはこの街は海に面しており、海猫と呼ばれる青系の猫たちもいた。
淡い水色から始まって青、紺、藍と様々な青系の海猫がいた。
そうしてよく帆咲が観察していると街猫と海猫は領土争いをしているようだった。
海と陸の狭間でいがみ合っている街猫と海猫を見かけたからだった。
帆咲はその海猫をカメラに収め始めた。
「パシャ、パシャ」
フラッシュをたくと眩しいのを嫌がる海猫。
どうやら暗いところがお好きなようだ。
ざざっと佐々波の音を聞きながら今度は砂浜の方に歩いていく。
すると、海猫の長であろう猫がいた。
その老海猫が「にゃおう」と一鳴きすると、途端に海猫たちが集まり始めた。
どうやら集会でも始めるらしい。
なにやら「にゃあにゃあ」と話し合っている。
そのときだった。
ポストのような入れ物に、海猫のえさ、街猫のえさ、それぞれ百円と書かれた入れ物が立っていた。
帆咲は街猫のえさを買った。
海猫は集会中でお忙しいらしい。
街猫のいる方へ戻った。