落ちこぼれ
雲一つない、晴れ渡る青空。
鳥達は大空を自由に飛び回り、今朝から続く暖かな陽気に誘われて、野生の動物達はちらほらと顔を覗かせる。
森の中には、あたり一面を緑が包み、葉の隙間から木漏れ日が差し、陰鬱な雰囲気など感じさせない、心地良い風が木々の隙間を通り抜ける。
舗装された道などはないが、幾度も人が通ったのであろう、草木がなく、土が剥き出しで一本道のようになっており、今日の様に天気が良い日には、この道を通って森の中を散歩するというのも中々に趣がありそうだ。
そんな、平穏な雰囲気を醸し出すこの美しい森に……。
「——右からゴブリンが来ます、迎え撃ってくださいっ!」
———全くもって似つかわしくない、怒号が響き渡る。
「わかった、任せろ!」
そんな声を受け取り、俺は腰の辺りにさしてある一振りの剣を抜き取って、雑草だらけで凹凸のある道を駆け抜ける。
対するは、濁ったような黄土色の体色を持つ、子供くらいの体格の耳の尖った醜い怪物、『ゴブリン』と呼ばれる生き物だ。
「ぎゃあっ」
半円形状の汚れた兜を被り、腰に布を巻いた格好をしたそのゴブリンは、剣を構えて向かってくる俺に気付いたのか、手にしているそりのあるサーベルを振り回し、威嚇の声を上げた。
「らぁっ…!」
勢いのまま、俺は剣を振りかぶり、そのままゴブリンに叩きつける。
しかし、ゴブリンはそれを読んでいたのか、横っ飛びに攻撃を避け、カウンターの要領で持っているサーベルで斬りつけようとする。
「——いやっ、ちょ、まって…!」
一撃目を俺は半ば転がるようにして避け、続けざまに振り下ろされる二撃目を、剣を使って防ぐ。
少しの間鍔迫り合いの様になっていたが、今度は俺がそれをいなして、斬り返すも、ゴブリンはそれすらも避けてしまい、結果的に擦り傷程度しか与えられなかった。
ゴブリンは果敢に攻めて、それを俺は何とか剣を使って防いでいる。
こいつらは意外と力が強く、こうも体格に差があるのに押し負けることがある。
「うわっ、わわぁ! くるなぁっ!」
俺がゴブリンと死闘を演じていると、今度は俺の左前方から助けを求める声が聞こえた。
「…っま、まずいです! 誰かドラケンのサポートに行ってください!」
後ろで小柄なエルフの少女が叫ぶ。
ドラケンと呼ばれた人物の方を見ると、一人に対してゴブリンが三匹ほど集っていた。
ドラケンはその身を固めた重厚な鎧と、長方形の大きな盾、そして身の丈ほどの槍を駆使して振り回し、ゴブリン達を近づけさせないようにしていた。
「いや、サポートっていったって……!」
しかし、助けに行きたいのは山々だが、こっちはこっちでゴブリン一匹に苦戦を強いられているのだ。
むしろ、俺の方を助けてほしい。
「私に任せるにゃーっ!!」
すると、場の雰囲気に合わないふざけたような、そんな言葉を言いながら、頭に猫耳を生やした少女が、ナイフを構えて素早く駆け出した。
少女は駆け出しざまに拾い上げた小石を、集っているゴブリンの集団に向かって投げつける。
小石は三匹のうち一匹の後頭部に見事命中し、そのゴブリンは怒ったのか、小石を投げた少女に対して奇声を上げながら剣を振り回して突っ込んできた。
少女はそのまま右にそれながら、ゴブリンをドラケンから引き離す。そのまま右へ右へと引っ張っていき……。
「——いや、待ってください! 離れ過ぎです、戻ってきてくださいコレット!」
またしてもエルフの少女が叫んだ。
コレットと呼ばれた少女は、引き離したは良いものの完全に陣形から離れて、一人孤立した状態になってしまっている。
あのままでは危ない時にカバーするのが難しくなってしまう。
「みっ、みなっ、さん! おおち、おちおちつつ、落ち着いて、くだっ、さい!」
「落ち着くのは貴方ですティターニア!」
すると、エルフの少女の隣にいる、これまたエルフの女性神官が、落ち着きのない様子で、それでも必死に声を出しているが、少女に一喝されてしまった。
「っく、こんの…!」
そんな周りに気を取られて、擦り傷程度だが俺もゴブリンに斬られてしまった。
その隙を狙ってもう一度斬りつけようとするゴブリンを、俺は剣を横薙ぎに振るって牽制する。
———ああ、またグダグダだ。
パーティーを組んで早一ヶ月、未だにゴブリンに苦戦を強いられる毎日だ。
内心で苦言を漏らしながら、俺はもう一度剣を握り直して、ゴブリンを迎え撃った。
◇
四方を海に囲まれた広大な大陸、リキュア大陸は、自然豊かで気候も穏やかな、様々な種族が暮らしている場所だ。
竜人族、獣人族、エルフ、ドワーフ、小人族、そして人間族を含めた計六種族が一般的に『人族』として扱われ、その他の魔物などを含めた種族は主に『蛮族』とされてきた。
人族と蛮族の間には深い溝があり、遥か昔から争い続けてきた。
リキュア大陸の歴史の中では、何度も何度も歴史を変えるほどの大きな争いが起きており、それは蛮族だけにとどまらず、時には人族同士、蛮族同士で内輪揉めに似たようなものもあった。
そんな中、この現状に不安を抱いた人族側の傭兵達は、遥か未来で、子供達が生き抜く為に、戦う術を教えた。
何人かの子供達や、一般市民を集めて行った講習は、最初は多くの批判を受けながらも長く続き、徐々にその実用性が認められていった。
初めの頃は青空教室のようなものだったが、時を重ねるごとに小さな民家のような建物や、道場のような広い場所と、規模を増すごとに大きくなり、いま現在では大陸中に広まった。
当初は傭兵と呼ばれていた者達は、次第に名前を『冒険者』へと変えて、市民からの依頼を受けて日銭を稼ぐ立派な職業となった。
リキュア大陸の北東部にある、コートル地方と呼ばれる海に近い地方にも、その冒険者の学校があった。
ポリス王国と呼ばれる、コートル地方内ではそこそこ規模の大きい国の中にある、『コリント魔法武術学校』という冒険者学校がある。
リキュア大陸最大の冒険者学校で、そこには学生どころか職員、さらには市民のほとんどが冒険者の資格を持っており、ポリス王国は別名『冒険者の国』とまで呼ばれていた。
ポリス王国はコリント魔法武術学校が国を仕切っており、また敷地の半分ほどが学校であるため、そこも冒険者の国と呼ばれる所以だろう。
コリントには初等部と高等部に分かれており、生徒と教師を合わせると4000人に近い人数の、様々な人族がいる。
ここでは冒険者としての知識、戦術、戦い方を学ぶことができ、高等部になるとそれぞれ『役職』というものを選ぶことができて、自分の役職に沿った内容の授業を受けられる
役職は基本的に前衛職の『戦士』、中衛専門の『盗賊』、後衛担当の『魔法使い』、回復役の『神官』の四職で、そこからさらに細かく分かれている。
13歳から入学が可能で、13〜16歳が初等部、17〜20歳までが高等部となっている。
高等部は、一学年15クラスで、一クラス42人の構成だ。
高等部に入ると、役職の選択と、クラス内でパーティーを組むことになる。
そして、俺、アーミック・ベレロポーンも、コリント魔法武術学校に通う、高等部一年の人間だ。
二ヶ月ほど前に高等部に上がったばかりで、ようやく役職につくことができるようになった。
いろいろと事情があり、なかなかにパーティを組ませてもらえなかったが、つい一ヶ月前、ようやく俺もパーティーに入れてもらえて、やっと冒険者らしくなってきたと思ったのだが……。
「んぁ〜〜。今日も散々な結果だったにゃあ」
「ですから、あれほど危険な行為は控えてくださいと言ってるでしょう。あそこまで離れたら、私達も援護ができないんですからね?」
掌を組んで上へと伸びをする猫耳の少女と、その少女に対してお説教を垂れている耳の尖ったエルフの少女。
袖口が肩までのぴっちりとした黒のインナーに胸当てをして、ホットパンツのようなものに布製のブーツ、革でできた籠手を身に付け、腰にはポーチと少し大きめのナイフという、かなり軽装の少女。頭には猫耳と、腰からは尻尾がぴょこっと顔を出している。
彼女の名前はコレット・シャルトニュー。獣人族の中でも猫人と呼ばれる種族で、聴覚や視力がずば抜けて優れている。役職は盗賊だ。少し自由人気味である。
その左の、コレットよりも少し背の低い彼女の名は、ソフィア・スクルド。エルフではあるが、エルフと他種族の間から生まれた、いわゆるハーフエルフと呼ばれる種族に当たる。
少しぶかぶかではないかと思われるほどに大きなフード付きの黒ローブを身に纏い、自身の背丈よりも大きな杖を背負っている彼女の役職は魔法使いの中でも『メイジ』という、攻撃魔法を主軸とした役職である。
明確には決まっていないが、パーティーのリーダー格であり、頭脳でもある。
しかし、少し慎重すぎるきらいがあり、いつも破天荒なコレットとは相性が悪いのか、いつも説教をしている。
「ご、ごめんね。僕が臆病なばっかりに……」
「で、でも、本当に倒せてよかったです。大事にも至らなかったですし」
コレットの右側では、体調が2メートルほどある竜のような大男が、弱々しそうに肩を落とし、その隣におっとりとした雰囲気のエルフの少女が苦笑している。
大柄な男の名前はドラケン・ウェールシュ。こいつは6種族の中でも圧倒的な身体能力を誇る竜人族だ。プレートメイルからのぞかせる顔や肌には、竜の象徴である鱗があり、背負っているバンプレート付きの巨大なランスから、彼は戦士職の中でも『騎士』の立場にいることがわかる。
騎士は主に、その防御力を生かした壁役としての戦術が主流なのだが、彼は少し臆病なところがあるため、戦うときはいつも臆してしまう。
また、エルフの少女の名前はティターニア・アルベリヒと言い、こちらは純エルフであり、しかもエルフの中ではお嬢様の様な立場らしい。
神官服に身を包み、短めのロッドと呼ばれる杖を持った彼女の役職は神官で、『ビショップ』という回復魔法のほかに補助魔法も使えるパーティーの要である。
だが、彼女はあがり症で、テンパって戦闘中に魔法を成功させたことはほぼない。
俺たち五人は、パーティーを組んだもののそれぞれ問題があって、ゴブリンをギリギリ相手にできるという程度の実力しかない、いわゆる『落ちこぼれパーティー』であった。
今朝も、授業の内容で、学校の敷地内である森の中にいる魔物を狩ってくるというものだった。
魔物によってもらえる評価は違い、大きいものでゴブリン何十匹分の評価がもらえるものもある。
しかし、俺たちのパーティーの結果はゴブリン四匹。
朝からこの授業が始まり、先ほど帰ってきて報告を済ませたのが2時頃だったから、五、六時間ほど狩りをしてやっとゴブリン四匹という、なんともむなしい結果である。
しかし、いくら戦果が乏しいからといって、やはり疲れるものは疲れるし、腹も減る。
俺らはいつも通り泥だらけの体から汚れを落として、食堂へと少し遅めの昼食を取りに行く。
制限時間はだいたい午後四時あたりの為、大体皆この時間帯に狩りを終えてくるだろう。
食堂に行って、空いてる席を見つけ、メニューを見て注文する料理を決めたら、注文して料理が運ばれるまでしばらく待つ。
食堂はとても広く、俺たち六人が広々とスペースを取っても全く問題ないほどだ。
壁はガラス張りのところもあり、そこから見る景色はとても綺麗で、俺たちは密かに気に入っている。
料理が来るまでは暇なので、いつもは今日の反省や、談笑などをする。
「やっぱり俺たち前衛が問題か? 俺とドラケンで負担を分割できればいいんだが……」
「いえ、あまり前衛にこだわってもしかないのかもしれませんね。特にあなたの場合、2体同時は厳しいものがあるでしょう」
「ドラケンがもうちょっとどっしりとしてればいいんだにゃー。せっかくそんなに力があるんだからもったいないにゃー」
「ご、ごめん。ぼくが怖がりだから……」
「誰にでも怖いことはありますよ。私もそうですし」
「まあそうだけど、実際ドラケンはもうちょい自信持っていいと思うんだけどね」
あれよこれよと、今日の反省点、などを話していると、
「おまちどうさまぁー」
という、少し間延びした声が聞こえ、一人のウェイトレスが料理を運んでくる。
数々の料理からは湯気が立ち上り、辺りに美味しそうな匂いを充満させる。
「……とりあえず食べるか」
俺がそう言うと、皆が手を合わせてそれぞれ料理を口に運ぶ。
俺は普通だが、ドラケンなんかは肉料理をガツガツと平らげている。よほど腹が減っていたのだろう。
コレットは魚料理に目をキラキラとさせているし、ソフィアやティターニアにいたってはヘルシーな野菜料理ばかりだ。
野菜ばかりというのもあまり体に良くない気もするが……まあ、そこは本人の自由だろう。俺が口を出すことではないな。
そうして黙々と運ばれた料理を口にし、半ばまで食べ終わった頃だ。
「ん? んん〜? おやおやおや〜?」
何処かわざとらしく、粘っこいような声を上げながら、誰かが歩いてくる。
集団で歩く音が聞こえるので、気にしたくはないが一応顔をあげると、そこにはとても見知った顔があった。
「おやおや、これはこれは。我がクラスの第七班の皆さんではないですか〜。御機嫌よう」
「……またお前か、クロード」
目の前に立っているのは、クラスメイトのクロード・プーシキンだった。人間族で、テカテカの分けてある金髪が特徴だ。後ろの5人はパーティーメンバーだろう。名前は覚えてないが。
「何の用だよ」
「何の用かって?」
俺が嫌々としながらそう聞くと、クロードはわざとらしく聞き返して、腰に手を当ててどこか偉そうに話し始める。
「いやなぁに、僕は君達が今日どんな素晴らしい戦果を挙げたか気になってね。結構帰りが遅いようだから、それはそれは心配したものだよ」
絶対嘘だ。
毎度毎度、クロードは何かと俺らに対してそのような嫌味を言ってくる。
ドラケンの隣に座るコレットが、「絶対嘘にゃ」と、ぼそっとつぶやくのが聞こえた。だろうな。
しかし向こうは聞こえていないのか、先ほどから返答を求めているのかチラチラとこちらを見ている。
だんだんと疲れてきた俺は、溜息を吐いて答えた。
「……ゴブリン四匹だよ」
「な、なんだってぇ!?」
クロードは俺の答えに、わざとらしく大声を出して驚く。
いつものパターンだ。
というか、いつも同じ事をして飽きないのだろうか。後ろのパーティーメンバーも先程からくすくすと笑っている。
いや、面白くないから。
「あれだけ遅かったのにゴブリン三匹だなんて、君達には毎回驚かされるよ!」
「一匹減らすな。四匹だ」
さりげなく減らしたクロードに対して俺は訂正した。
しかし、クロードはいつもの得意顔で、フンッと小馬鹿にしたように鼻で笑うと、身振り手振りを大袈裟にしながらまた話し始めた。
「三も四も大して変わらないじゃないか。ゴブリン程度ならどれでも同じさ。そんなんじゃあ一流の冒険者にはなれないな。僕らの戦果を聞きたいかい? オーガを一匹狩ってやったさ。それはもう激闘だったよ。君達が想像もつかないようなね。僕たちならゴブリンなんて百は狩れるんじゃないかな。まあそんなことをしたってオーガ一匹の足しにもならないんだけどね。それに……」
クロードは聞いてもいないし、聞きたくもないような長話を一人で勝手に話し始めた。ここら辺もいつも通りだ。
コレットは「きいてねえよ」と結構大きめに言ったが、それでもクロードには届かなかったようだ。遠すぎるだろ。
「……とまあ、こんなところさ。でもまあ、君達がその程度の結果しか出せないのはしょうがないよ。だって……」
話し終えた様子のクロードは、今度は俺の方をニヤニヤとして見つめながら言い放った。
「君のような『落ちこぼれ』がパーティーにいるんだからね」
その言葉に、周りのみんなは敵意を剥き出しにしてクロードを睨みつける。
俺自身、何も言い返せないでいるが、別段そこまで悔しくはない。
話は変わるが、このアキュリ大陸に住む人族は、人間族が圧倒的に多い。
人間族はほかの種族と比べ、身体能力は低く、魔力量もそこまで多くはない。
ならば人間族は冒険者をやる上で向いていないのかというと、そうではない。
人間族には、ほかの種族にない力がある。
ここで、『加護』について説明しよう。
アキュリ大陸には、聖なる力や魔の力など、様々な神秘的力が存在する。
それによって、この地にはたくさんの精霊や神などの存在も確認されているのだ。
『加護』とは、存在するたくさんの神様を信仰することによって、その神様の司る力をほんの少し授かることができる。
例えば、剣術の神様なら剣の扱いが数段上がり、知識の神様なら考える力がついたり魔法の力をあげることができる。
他にも、鍛治の神様や商売の神様など、様々な神様の加護を受けることによって、普段の自分の持つ能力をあげることができる。
そして、人間族はほかの種族よりも加護の力を受けやすいという特性がある。
それは個人差があるが、基本的には獣人並みの身体能力を得ることが可能である。
特に、神様に纏わる家系のものならばその力は計り知れず、記述には片腕でトロールを薙ぎ払った例もある。
人間族とは総じて、『神に愛されし種族』と呼ばれているのだ。
話を戻すと、なぜクロードが俺のことを落ちこぼれと呼ぶか、その理由は、
「こんな、神の加護を受けることの出来ない人間、使えないにもほどがあるよ」
その言葉を最後に、クロード達パーティーは声を上げて笑った。
つまりは、そういうことだ。
俺は神の加護を受けることが出来ない。
少ししか受けられないではなく、ほとんどゼロに近い、というかもうゼロと同じだ。
そのおかげで俺はそれなりの身体能力しかないし、戦いでもゴブリン相手に苦戦する。
まあ、原因は分かっているのでそこまで気にしてはいないが、やはり毎度やられると鬱陶しい。
「……要件は、それだけですか」
ソフィアは忌々しそうにそう呟く。
「おお、そうだった。ついうっかり長話を」
その言葉を聞き取り、またもや大袈裟に反応すると、先程と同じように、見下す様にニヤニヤと笑い、背を向けて遠ざかっていった。
「じゃ、精々頑張りたまえよ。落ちこぼれ君」
またもや笑い声を上げて、クロード達パーティーは食堂の扉から出て行った。
なんも面白くねえし、というかあいつら何しに来たんだ。話すだけ話して行きやがった。
「……あんな言葉、気にする必要はありませんよ」
ティターニアは心配そうに俺にそう言った。俺の横ではドラケンがぶんぶんと顔を縦に振っている。
「いまに見返してやればいいのです。あんな人」
「そうにゃー、あんな分け目の言うことなんか無視するにゃ!」
ソフィアやコレットまでも、俺に励ましの言葉を贈る。
「———ああ、ありがとう。俺は気にしてないよ」
みんなの優しさに触れながら、俺は笑ってそう答えた。
まあ、実際に気にしてないから良いけど。
俺は長引いた分け目の話のせいで食べ損ねた料理に、手にしたフォークを突き立てて口に運ぶ。
……うげ、冷めてらぁ。
あいつのせいだな、と結論付けて、俺は残りの冷めた料理をもそもそと食べ進めた。
読んでいただき、誠にありがとうございます。
ファンタジー系の小説が書きたくなって衝動的に書きました。
あまり文体は良い法ではありませんが大目に見てやってください。
誤字、脱字の報告、またはここが良かったとか、ここは変だったなどの評価をしてくださると幸いです。
なるべく続けていこうと思います。