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天国からのラブレター

作者: 天音 奏

他の小説を進めずに書くとかいう暴挙。


だって書きたかったんです。


--拝啓、この手紙を読んでいる最愛の君へ。





そんな書き出しの手紙を見つけたのは彼が亡くなってから半年近く経った頃だった。

手紙には余命宣告をされていた事、その事を伝えなかった事に対する謝罪、それまでのいろいろな思い出、そういった事が何枚、何十枚にもわたって書き綴られていた。



--君はたぶん僕が死んじゃっても泣かないんだろうね。

いや、泣けない、が正しいのかな。

不器用で優しい君のことだから周りの人を心配させないようにとか考えているんだろうけど僕はそんな君が心配だなぁ。

だからこの手紙読んで泣いて欲しいな(笑)

初めて人を泣かせようと思って手紙を書いているんだけど僕ってどうしようもない奴だなって実感したよ。

だってこの手紙読んで泣いている君を想像して顔がニヤけるぐらい泣いてくれればうれしいと思ってるんだから。



馬鹿なんじゃないだろうか。手紙を読みながら呆れたように笑おうとして涙が零れた。徐々に視界がぼやけていく。彼にはなんでもお見通しだったらしい。彼が亡くなってから一度も泣いていなかったのだ。


「ほんと馬鹿。泣かないように頑張ってたあたしの苦労どうしてくれるのよ。」


思わず口に出た文句も涙に濡れていて、それでもちゃんとわかってくれていた彼がうれしくて泣き笑いの文句なんていうややこしいものになってしまった。

泣かされてうれしいなんて思う自分も相当な馬鹿なのだろう。



--人間って欲張りだね。

僕はもっと生きたかったよ。でもね、流石に僕にもわかる。いや、僕だからこそわかるのかな。余命宣告を受けた時には感じていなかったタイムリミットがすぐそこまできているのが。あと5年なんて言われてたけどもってあと2年ぐらいだろうね。

生きたいな。君ともっといろんなところに行きたい。いろんなことをしたい。飽きるぐらい沢山話もしたい。

でもダメだね、もう体のあちこちにガタがきてる。

無信教者だから神様は残酷だなんて言わないけど、どうして僕なんだろうね。



--本当は君に僕のことは忘れて幸せになってとか言うべきなんだろうけどそんな事言わないよ。

だって嫌じゃん。折角君が僕のものになったのに、やっとの思いで手に入れたのに、にこにこ笑って手放すとか馬鹿だよね。

ほら、よくドラマとか小説でさ『泣かないで笑ってて』とか『いつまでも俺に縛られてないでさっさと幸せになれ』とか言ってるのあるじゃん?

僕あれ嫌いなんだよね。泣くの我慢させてどうするのとか、そんな事言うから縛られるんじゃんとか思うわけよ。いやぁ、捻くれてるねぇ。



人の見てる連ドラ片っ端から消してくれたのはこの所為なのね…。確かにそんなこともあったなぁなんて思うけど理由もなしにいきなり邪魔される身にもなって欲しかったわ。



--今ちょっと呆れてるでしょ。いや、僕だってこんなに長くなっちゃうとか思ってなかったからもう少し付き合ってよ。

僕ねぇ、欲張りな上に我が儘だから君に忘れられるのは嫌みたいだ。

だから最後のお願い。

本当は誰にも渡したくないけどそれは君にとってあんまりだからもし君が僕と過ごしたように過ごしたいと思う人が出来たら僕のこと話して欲しいな。

昔から死人に勝てる人はいないって言うからさ、虫除け(笑)

君がそうだったように君の中にいる僕ごと君のことを愛してくれる、そんな人を見つけて幸せになって。



--僕はちゃんと幸せだったよ。

あとは1日でも長く君と居られたらそれでいい。

あ、それからこの手紙を読んで少しでも泣いてくれればいい。

願わくばこの先君が幸せであることを。



今さら何格好つけてるんだか。こんな何十枚も手紙書くぐらいならもっと話そうとか思ってよ。あ、思ってたか。

こんな手紙読んで泣かない方がおかしいよ。

あーもう、なんで簡単に泣かせてくれるかなぁ。



--そろそろ終わらないと君が怒ってきそうだね(笑)

それじゃあ君より一足先に天国で待ってるよ。

地獄じゃなくて天国でね。胡散臭そうなもの見る目で見るのやめて(笑)

あっちで腐るほど話が聞けるの楽しみにしてるから。





--君を誰よりも愛する僕より、敬具。










--P.S.本当にちゃんと泣いてよ?




流石にしつこいし言われなくても泣いちゃってるわよ。

でも…



「ありがとう。」



そっと手紙を撫でながら呟いた。

本編まさかの2000文字いかなかったっていう短編小説というよりも小話程度のものになりました…。

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