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『深淵の樹海』第二階層 巨鳥と巨兵

「うわー、また凄いね」


僕は、下に降りてすぐにそう言った。


理由は簡単。僕達の目の前には、第一階層に負けず劣らずの樹海が広がっていたからだ。


「迷いそうだね」

「そうですね。見渡す限り森ですから。次の階層の入口はどちらでしょう?」


僕とマールさんは、見渡す限りの森から道らしきものを探した。


「それはあっちだな」


道が見つからないなっと、思っているとブラドが進行方向を教えてくれた。


「じゃあ、あっちに向かって《スター》を発射すればいいの?星遊戯盤のLevelが上がったから、効果範囲もかなり広くなってると思うし、ここからでもわりと減らせると思うよ」

「それはいくらなんでも短絡すぎよ。まずは人がいないかの確認からよ。下手にあの魔法を発射したら、誤爆する可能性があるんだから」

「あー、その可能性はあるよね」


よかった、確認しておいて。下手したら、助けにきた相手を巻き込んじゃう可能性があったよね。なんというか、遠征組は十層にしかいない気でいたよ。もう少しものを考えて行動しないと。


「それじゃあ、どうする?」


反省をしたら、次はどうするかだよね。


「普通に歩いて行きましょう。あんまり集まるようだったら一階みたいにすれば良いわ」

「そうだね」


僕達は、その方針で森に入って行った。


「この階層は上みたいになっていないね」


しばらく森を進んだが、この階層では上みたいに連続で戦闘とはならなかった。時たま山蛭型モンスターのマウンテンリーチや、茸型モンスターのウォークマッシュなどが出て来る程度だ。ただ、進んで行くにつれて少し違和感を覚えた。


「ねぇ、皆。なんか変じゃない?」

「やっぱりお前もそう思うか。実は、俺もさっきから何か違和感を覚えてるんだ」

「ブラド達もなの?私もそうなの」

「皆さんもですか?実は私もそうなんです」


どうやら、違和感を覚えているのは僕だけではないらしい。


「いったい何が引っ掛かっているんだろうな?」

「それがわかれば苦労はしないよ」

「まあ、そうだな。だが、全員が違和感を持っているということは、確実に何かあるな」

「そうね。全員が違和感を覚える何かがね」

「けど、それが何なのか見当もつかないんですよね」

「そうなんですよね。ただたんに、出て来るモンスターが少ないせいではないよね?」

「それも違和感と言えばそうだが、もっと別なことのような気がするんだよな?」

「そうよね。それくらいだったら、せいぜい不思議か不審止まりだし」

「そうですよね」


一旦進むのを止めて、皆違和感の正体につれて考えた。


「あっ、わかった!」

「わかったのですか?」

「うん、多分だけどこれだと思うのがありました」

「それは何なんだ?」

「出て来るモンスターだよ」

「それはさっきも言った数のことか?」

「違うよ。数じゃなくて、種類だよ!」

「種類?」

「うん!」

「種類、種類。あら?たしかにこの階層で戦ったモンスターの種類はおかしいわね」

「でしょう」

「おいおい、ラキアもわかったのかよ。いったいモンスターの種類がどうしたんだよ?」

「わからないのブラド?この階層で今まで戦ったモンスターを思い出してみなさい」

「この階層で戦ったモンスターをか?えっとだな・・・」


ブラドは記憶をたどりはじめた。


「うん?たしかにおかしいな。よくよく思い返してみると、全階層にいるはずのアレとこの階層では戦っていないな」

「そうでしょう。けど、違和感の原因はそれだとしても、なんで出て来ないのかしら?」

「可能性としては幾つかあるね」

「例えば?」

「そうだねぇ?例えば、みんな上の階層に上がって来てたとか。それなら上の階層であれだけいたことにも納得がいくよ」


これはわりとありそうだ。


「状況だけならそうね。けれど、それはありえないわね」

「なんで?」


普通にありそうなのに、なんでありえないんだろう?


「理由は簡単よ。ダンジョンのモンスターは、自発的に階層移動なんてことはしないからよ」

「へぇー、そうなんだ。けどそれって自発的ならでしょう。人為的ならありえるんじゃないの?例えば、遠征組から逃げ出したとか」

「それもないわね」

「人為的な可能性も無いの?」

「ええ。ダンジョンのモンスターは基本的にその階層からは出ないし出られないの。もちろん、人力で移動させたりすれば他の階層に持っていくことは可能よ。けど、今回の場合は人力の移動は無理だし、する意味も無いでしょう?」

「たしかに思いつかないね」


逆に、どんな理由があってもする人はいない気がする。


「そうなると、あとは上の階層みたいにモンスター同士で潰しあったとかかな?」

「それはあるかもな」

「けど、私達とのLevel差を差し引いても、そんなに強いモンスターはいなかったわよ」

「たしかにそうだな」

「あとはどんな可能性があるかな?」

「「「「うーん?」」」」


またみんなで考えたが、今は他の可能性は思いつかなかった。


「あのーみなさん、こうして考えていてもしかたありません。先に進みましょう」

「そうですね」


僕達は、移動を再開した。そして、その結果やはりあのモンスターがこの階層にいない可能性が高くなった。

いったい何故いないんだろう?


「おっ!階段見があったぞ!」


そうこうしているうちに、僕達は次の階層への階段まで辿り着いた。


「このまま行けば、この階層ははそのまま行けそうだね」

「そうだな。けど油断はするなよ。今このダンジョンはわりとおかしいんだからな」

「わかった」


ブラドの言うとおりだな。ここまでは問題なかったけど、ゲームだったら階層ボスとかが出て来るタイミングだ。それでなくてもダンジョン。罠とかが無い保証も無いし、気を引き締めておかないと。


さっきよりも周囲に気を配りながら僕達は進んだ。




「うわー、何かいる」


僕達が階段の近くまで来ると、階段の両脇に大型モンスターがいることがわかった。


こちらから見て左側にいるのは、上の階にいた梟型モンスター、サイレントオウルが巨大化したような全長3m近くある巨大フクロウ。

その右側にいるのは、こちらも上の階にいた鷹型モンスター、ハンターホークの巨大化版。大きさも隣のフクロウ型と同じくらいで、3m近くある。

「あれがフロアボスかな?」

「いや、フロアボスなんてのがいるのは、5の倍数の階層だけだ」

「じゃあ、アレは?」

「さっき予想した内の後半が当たりだったってことだろう。この階層にいたシードラーウ゛ァは全部あいつらの経験値にされちまったんだ」

「その結果が、アレと」


僕はブラドの言葉に納得した。他の可能性は、やっぱり思いつかないのだ。それに、あの二体は上で見た奴よりもかなり強そうなことも納得出来た理由だ。


「で、どうする?みんなで一斉に襲い掛かる?それとも、僕の『星』で一撃必殺でもする?」


「みんなで戦いましょう。あなたのあの魔法に、頼り過ぎるのは危険だわ。このダンジョンの下の階層もこうなっているのなら、私やブラドもLevel上げをしておいた方がいいし」

「わかった。ちなみに作成とかある?」

「あるわ」

「どんなの?」

「それはね・・・」


僕達は、ラキアちゃんの作戦を聞いた。そして聞いた後で、みんなで作戦の打ち合わせを行った。


「じゃあ、これで決まりだね」

「そうだな」

「そうね。作戦の成否はあなたにかかっているわ。頑張ってね」

「任せておいてよ。それじゃあ、トドメは頼むよ」

「任せておけ」

「お気をつけて」

「はい!」


僕は、一人モンスター達のもとに向かった。


「さあ、始めよう。《アウェイク》、《アレインヂメント》!」


二体の前に立ったら即行動。作戦の第一段階の準備を始めた。まずは星遊戯盤を発動。次に作戦に必要な駒をボード上に配置した。


現在、僕の正面には盾役のスケルトンが立っている。そして、脇には上の階で得た魔石でランクアップさせたポルターガイストとファントムを配置している。


ただ、能力はわかっていても、ポルターガイストとファントムは実際に戦ったことのあるモンスターではないので、姿を見るのは初めてだ。


ポルターガイストの姿は、目視しにくいが空中に浮かぶ無数の手に見えた。能力の方も、物を動かすことに特化していて、その方面ならランクアップ前のゴーストよりも自由度が高そうだ。


ファントムは、薄い靄の姿をしていた。能力は、名のとおり幻、錯覚の類いを扱える。


今までは星遊戯盤のLevelや、魔力の関係で複数の駒を配置出来なかったが、上でのLevelUPで今は普通に出来るようになった。ただ、戦闘で動かせる数はそう多くはない。これが普通のボードゲームなら相手に待ってもらえば良いが、現実ではそうはいかないからだ。


駒の同時操作なんて、プレイヤー視点と化身視点で二つ。アイディアルを動かさないこと前提で三つが良いところだ。


だから、残りの配置残量は動かさないこと前提の捨て駒を配置することになる。


僕は、残りのコスト一杯シードラーウ゛ァ達を敵の目の前に配置している。


「さて、準備はここまで。作戦を開始する。ポルターガイスト!」


僕は、ポルターガイストでシードラーウ゛ァ達を動かした。


その結果、ポルターガイストによって浮された大量の芋虫という、大変生理的嫌悪を引き出す光景を作り出すことになった。


まあ、気持ち悪くてもこれも作戦だと割り切るべきだろう。


僕の作戦での役割は陽動だ。せいぜい派手に敵の注意を引き付けないといけない。


だから僕は、ポルターガイストを使って二体を翻弄するつもりなのだ。


バサッ!!


狙いどおり、周囲を飛び交うシードラーウ゛ァ目指して二体が動き出した。


僕は二体の動きに合わせてポルターガイストを動かした。


今回はブラド達が倒すので、ただ状況を維持すれば良い。上の階層でたくさん手に入ったので、捨て駒には事欠かない点も良い。


ホウッ!?


それからしばらくの間僕が二体を撹乱していると、周囲に動きがあった。


飛んでいる二体の体力が減少しだしたのだ。


「始まったか」


作戦は第二段階。ブラド達が、モンスター達の体力を削りにかかり始めたようだ。


シードラーウ゛ァの影から、剣と鞭が飛び出して二体を攻撃していっている。


「へぇー、あんなことも出来るんだ」


けっこう羨ましいな。今度のLevelUPの時に、あんな能力を願ってみるのもいいかな。


ホウッ!!


そんなことを考えながら戦況を見守っていると、新たな動きがあった。


サイレントオウルが叫び声を上げて、一気に上空に舞い上がったのだ。それだけではない、それを追いかけるようにハンターホークの方も上空に上がった。


「制空権を抑えにかかったのかな?」


あるいはよりやりやすい場所に戦場をうつしたのか・・・。


モンスターの考えなんて、考えてもわかるはずはないか。


今回僕は、陽動とバックアップをしておけばそれでいいんだし。


モンスター達の行動理由がわからなかったので、役割に集中することにした。

サイレントオウルとハンターホークは、上空を旋回しだしている。


屋内なのに空間が広くて、二体のもとまでボードが届かない。さっきみたいな支援は無理そうだ。なら、せいぜい美味しそうに見えるようにシードラーウ゛ァ達を動かすとしよう。


「ポルターガイスト!」


ポルターガイストで動かしていたシードラーウ゛ァ達を全て地上に降ろした。


あとは、適当に動かせばいいだろう。そして、有効範囲に入ったらまたさっきみたいにすれば良い。


バサッ!


僕がそう思っていると、上空にマールさん達が出現した。そう出現。飛んで来たとかではなく、突然サイレントオウル達の傍に出て来たのだ。


「《影渡り》かな?」


おそらく間違いないだろう。端から見ると、ああいう風に見えるんだ。


「空中戦が出来るのが、お前達だけだと思うなよ!」


ブラドは、そう言いながらサイレントオウル達に切り掛かって行った。


ラキアちゃんとマールさんもブラドに続く。

ラキアちゃんは鞭を振るい、マールさんは上の階でのLevelUPで覚え直した《ライトアロー》(光の矢)を放って攻撃していく。


一人だけのけ者みたいで、なんか嫌な感じだ。空中戦用の能力を先に得た方が良いかもしれない。


僕は、気分が悪くなりながら三人の戦いを観戦した。


上空での戦いは、どうやらブラド達の方が優勢のようだ。Level的なものだろうか?


ブラドのLevelは35。ラキアちゃんのLevelは34。マールさんのLevelが7。たいするサイレントオウルのLevelが23。ハンターホークのLevelが28。なにげに二体共僕よりLevelが高かった。


やっぱり同じワンフロア分の経験値を得ても、アイディアルのせいでLevelの上がりが悪いようだ。それとも、あの二体のLevelUPに必要な経験値が低かったのだろうか?それはそれでありそうだ。


ともかく、Level的にはブラド達の方が上だ。いや、マールさんも互角に戦っているところを見るに、これが経験の差というものかもしれない。


みんなの戦闘を見て、そっちの結論に到った。




「それにしても暇だ。もう上の方で決着が着きそうだし」


あれから十数分。もう二体の残りの体力は三割を切ろうとしていた。


「うん?」


もう終わりかと思って気を緩めていると、ボード上に新しい名前が出現した。


イグジスタンス Level20


「イグジスタンス?存在?どんなモンスターだろう?」


名前から興味が出たので、上は三人に任せて自分はそのモンスターのもとに向かった。




「何だろうアレ?ロボット?いや、この世界ならゴーレムかな?」


向かった先にいたモンスターを見て、僕は困惑することになった。なぜなら、そこにいたのが自分の知識でロボットと呼べるものだったからだ。


全長は5m程度。全身が鈍く光る銀色の金属のようなもので出来ているように見える。体格も、ゴーレムかロボットとしか言えないような感じの大柄なものだ。その体格の中でも手足が太く、端から見ても力が強いことが想像出来た。もしあの腕で殴られたら、耐久力の低い僕では一撃で倒されてしまうだろう。少なくとも、接近戦を挑んではいけない相手だろう。


「これは、ブラド達と合流してから戦った方がいいな」


僕は、そう決断を下してゆっくりと後退を開始した。相手に背を向けないようにして、少しずつ後ろ歩きで移動して行った。


ギラッ!


「うん?」


移動している途中、イグジスタンスの頭部。正確に言えば、目に当たる部分が急に発光しだした。気になったので、一旦足を止めてイグジスタンスの様子を窺った。


キュイーーン


イグジスタンスの様子を見ていると、目の部分の発光が段々強くなるだけではなく、妙な音まで聞こえてくるようになった。


「ファントム!」


その光景を見て寒気を覚えたので、今まで使用していたファントムの能力を強化した。


カッ!


ファントムの能力を強化した直後、イグジスタンスの目から閃光が放たれた。


チュドォーン!!!


放たれた閃光は僕の数m隣を通過して、轟音を響かせながら後方に着弾した。


「レーザー!?」


僕は、イグジスタンスの今の攻撃に身体を震わせた。


光の速さで襲い来る、不可避の攻撃。

あんなもの回避のしようがない。


僕は恐怖に突き動かされ、慌てて走り出した。


チュドォーン!!

チュドォーン!!


「ひぃっ!」


僕が走っている間も、イグジスタンスはレーザーを撃ってきた。


しかし、その全てが僕の脇を通過していく。


僕は攻撃が止むまで走り続け、次の階層への階段がある所まで逃げた。


そこまでたどり着く頃には、イグジスタンスのレーザー攻撃はおさまっていた。


「ふー。何なんだアレ」


僕は膝を着き、息を吐いた。


「はぁー。ファントムで安全策をとっておいてよかった」


深呼吸を少しした。そして、イグジスタンスのレーザーの着弾地点を見て、そう無意識に口にした。


しかし、本当にファントムを使った安全策をとっておいてよかった。ファントムの能力で自分のいる位置をズラして見せてなかったら、最初の一撃で倒されているところだよ。


今頃になって、冷や汗も出て来る始末だ。


「あんな化け物がこの階層にいるとわ。ブラド達は大丈夫かな?」


みんなのことが心配になり、上空に視線をさ迷わせた。


「いた!」


そして、今だに戦闘中の三人を見つけた。とりあえず全員無事のようだ。それと、敵の体力はもうすぐ尽きそうだ。これなら、すぐに合流出来そうだ。


そう思っていると、三人の周囲に黒い星が見えた。



僕は、視線を慌ててイグジスタンスの方に向けた。すると、イグジスタンスがブラド達のことを見ているのが見えた。


「まずい!《スター》×10!やれ、ポルターガイスト!」


三人の危険を察した僕は、イグジスタンスの視線を遮るように『星』を向かわせた。


ギラッ カッ!!


『星』がイグジスタンスの視線に割り込んだちょうどその時、僕の予想通り三人に向かってイグジスタンスがレーザーを発射した。


発射されたレーザーは、僕が向かわせた『星』の重力の影響を受けてあらぬ方向に飛んでいった。


「ふー。間に合った」


僕は攻撃を防げたことに安堵した。そしてすぐに三人の様子を確認した。


三人はちゃんと無事だった。しかし、かなり驚いた顔で僕とイグジスタンスを見ている。そして、それはサイレントオウルとハンターホークも同じだった。全員が戦闘を中断して、地上を見ている。


ホウッ!!


僕が上空を見上げていると、突然サイレントオウルとハンターホークが急降下を始めた。進路から推察するに、二体はイグジスタンスに向かっているようだ。どうやら二体は、野性の勘というもので僕達よりもイグジスタンスの方がヤバイと判断したみたいだ。


僕としても、二体のこの判断は間違っていないと思った。単純な攻撃力なら、イグジスタンスの方が脅威だろうからだ。しかも、イグジスタンスの攻撃からはあの二体が逃れる術は無いだろうとも思う。


ギラッ カッ!


その考えはすぐに証明された。

イグジスタンスに向かっていた二体は、イグジスタンスが発射したレーザーの餌食となり、一瞬のうちに爆散した。


「あー。やっぱり駄目だったか」


そう言った後に僕は、二体に黙祷を捧げた。

さすがに今の攻撃を見た後だと、二体に同情を覚えたからだ。次の瞬間には、同じ末路を迎える可能性があることも大きな理由だろうけど。


「竜星さん!」


僕がそんな嫌な未来を考えていると、近くからマールさんに呼ばれた。視線を声のした方に向けると、マールさん達三人が立っていた。


「お帰りなさい、マールさん」

「お帰りなさいではありません!竜星さん、無事でしたか?」

「はい。ご覧のとおり僕は無事ですよ」


マールさんの前でクルッと一回転してみせた。


「そうですか。よかった」


マールさんは、僕が無事なことで安堵してくれた。


「マールさん達の方は大丈夫でしたか?」

「はい。私は大丈夫です」

「俺も大丈夫だ」

「私も大丈夫よ」


僕は、三人を間近で確認したが、三人の言うとおり大丈夫そうに見えた。


「なら全員無事ということですね。よかった」

「そうですね」

「だが、さっきの光は何だったんだ?」

「それはアレでしょ」


ブラドが首を傾げていると、ラキアちゃんがイグジスタンスを指差した。


「そうだよ。さっきの光はあのイグジスタンスが発射したものだよ」

「イグジスタンス?それがあのゴーレムの名前か?」

「あっ、やっぱりアレって、ゴーレムの区分なの?」

「それ以外の何に見えるというんだ?それと、さっきの質問の答えは?」

「僕には、ゴーレム以外にも見えるよ。それと、僕のプレイヤー視点に映っているアレの名前は、イグジスタンスになっているよ」

「そうか。ちなみに、ゴーレム以外だと何に見えるんだ?」

「ロボット」

「ロボット?それはなんだ?」

「うーんと、魔力で動いていない金属ゴーレムのことかな?」


あるいは歯車の塊とも言えるかな?


「つまりはアイアンゴーレムの亜種ということか?」

「その認識でもいいかな?」


未知の存在を教えるには知識が足りなかったので、それで良いことにしておこう。


「たしかにロボットに見えますね」

「あっ、やっぱりマールさんから見てもそう見えますか?」

「ええ。私から見てもロボットに見えます。それで、アレは何なんですか?」

「アレですか?アレはですね・・・」


僕は、先程見たままを三人に説明した。


「厄介な相手のようですね」

「そうだな」

「そうね。けど、このダンジョンにあんなモンスターはいたかしら?」

「少なくとも、前に来た時には見た覚えがないな」

「私もないわね。それで、アレをどうしましょう?」


ラキアちゃんが、僕達に意見を求めてきた。


「逃げることをオススメするよ。幸い階段はそこにあるんだから」

「私も竜星さんに賛成です。早く下にいる人達を助けに行かなくてはなりませんから」

「そうだな。俺もリュウセイの意見に賛成だな。ラキアはどうなんだ?」

「私はアレを今倒した方が良いと思うわ」

「なんでだ?」

「だって、ルベル達を救助したらまたここを通るのよ。怪我人がいる状況であんな攻撃をするアレの相手なんて出来ないでしょう?」

「それは一理あるな」

「たしかに今戦っていた方が楽だよね」


少なくとも死にかけているのが三人はいるんだ。そんな三人をかかえた状況であのレーザーを回避するのは困難だろう。


「けれど、アレはかなり厄介そうですよ?ここで時間を取られてしまうと、下にいる人達が危険ではないですか?」

「たしかにそれもいえてますね」


ラキアちゃんとマールさんの意見。どちらも一理あるから困るんだよな。


僕は、意見を変えるべきか悩んだ。


「サマエル。あなたの意見もわかるわ。けれど、アレを放置は出来ないと思うのよ」

「何故そう言えるのですか?」

「アレがこのダンジョンに場違いだからよ」

「場違いだから?」

「そうよ。こんな森の中にゴーレム。違和感バリバリよ。そうすると、あのゴーレムがこのダンジョンのモンスターではない可能性が出て来るわ。もしそうなら、あのモンスターはダンジョンモンスターのルールに縛られない。下手をすると下の階層まで追って来るわよ」

「うわー、ありそうだ」


僕は、ラキアちゃんのこの考えに共感した。たしかにイグジスタンスにはその可能性がある。それに、アレがこのダンジョンのモンスターではないなら、どの階層にどれだけいるのかわかったものじゃなかった。追いかけてくる以前に、下の階層にうじゃうじゃいる可能性もある。そして、それが遠征組が死にかけている理由の可能性はかなり高いとも思った。


「マールさん」

「ええ。私も倒しておいた方いいと思う方に気持ちが傾いています」

「そうだな。下にもいた場合、挟み撃ちにされる可能性もあるしな」

「やっぱりまだいると思う?」

「アレの出所が不明な以上、その可能性は捨てきれないだろう?」

「そうだよね」


僕達全員、ラキアちゃんの意見に傾いた。


「それじゃあ、アレと戦うでいいかしら?」

「うん」

「はい」

「ああ」


僕らは満場一致で戦うことにした。けれど・・・


「問題はアレとどう戦うかだよね?」

「そうですね。私達にもあの攻撃は十分な脅威です」

「そうだな。あの閃光のスピードは、回避出来るようなものじゃない」

「なら接近戦を挑む?私達には《影渡り》があるから、あの閃光に立ち向かわずに接近戦に持ち込めると思うわよ?」

「そうだなー?」


ブラドはラキアちゃんの意見を考え始めた。


「僕はそれは止めた方が良いと思うよ」

「なんでかしら?」


僕は懸念事項があってラキアちゃんの案を止めた。


「下手に近づくと、回避が出来ないと思うんだ」

「それは離れていても同じだと思うわよ?」


普通だったらラキアちゃんの意見は間違っていないんだけど。


「いや、離れていれば僕があの攻撃を防げるんだ」


これはさっき一回防げているから、間違いない。


「防げる?アレを?本当に?」


ラキアちゃんを含めた三人から、疑わしげな眼差しを向けられた。


「じゃあ、証拠を見せるよ。ポルターガイスト!ファントム!」


僕は三人に出来ることを証明する為に、駒を動かした。


「あっちを見ててよ」


僕は、離れた位置にファントムで作り出した幻を指差して、みんなに見てもらった。


「何アレ?あなたが二人いる?」


みんなは、二人に増えた僕を見て驚いたようで、こっちとあっちを見比べだした。


「あっちはファントムの能力で作り出した幻だよ。まあ、見ててよ」


ギラッ キュイーーン


僕が三人にそう言っていると、僕の幻を認識したらしいイグジスタンスが、幻の方を向いてレーザー発射の準備を始めた。みんなが見守る中、レーザーの独特のチャージ音だけが周囲に響いた。


カッ!


そしてチャージが終了すると、配置した幻目掛けてレーザーが発射された。しかし、レーザーは幻に当たる前にポルターガイストで配置しておいた『星』に命中。幻とは見当違いの方向に直進していった。


「どうですか?」


僕は、胸を張って結果を三人に見せた。


「「「・・・」」」


今の光景を見た三人は、口を大きく開けて固まってしまった。


僕は、三人が戻って来るのを待った。

『深淵の樹海』第二階層進行時のステータス


リュウセイ

Level:18

年齢:18

種族:アステリアン

【補正】全項目+18

【体力】

230/260

【魔力】

2600/2600

【星力】

6/17

【筋力】23

【耐久力】 21

【敏捷】 280

【器用】 130

【精神】 320

【幸運値】50%


【属性】星


【称号】世界を渡った者、死を経験した者、■■■の盟友、インセクトキラー、暴星の葬者


【能力】星遊戯盤 Level:5

星属性魔法 熟練度:2

《オリジン》、《ビックバーン》、《オリジンティック》、《ビギニングライト》、《カオス》、《スター》、《コスモス》、《ビカム》


眷属召喚 Level:1

眷属生成 Level:1

星天輝導

星地変転 Level:1


【祝福・加護】

ルシフェルの祝福


【職業】星導司Level:5


【備考】

記憶欠落状態態


持ち駒

アバター・アイディアル

×1

ブラッティーバット×1

ケイウ゛モール

×1

キャンドルン

×1

スケルトン

×14

ゴースト

×10

シードラーウ゛ァ

×324

サイレントオウル

×16

ハンターホーク

×14

ミリタリーアント

×136

ハニービー

×81

マウンテンリーチ

×42

ハンタースパイダー

×25

ステルススネーク

×35

バインドウ゛ァイン

×106

ジェットパイン

×87

スルーウィロウ

×34

ウォークマッシュ

×51



×67

ナラ

×32


ソルジャースケルトン

×1

スペクター

×1

ファントム

×1

ホーント

×1

ポルターガイスト

×1

レイス

×1

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