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『深淵の樹海』第一階層 大量発生

三日目の朝。僕達は、洞窟の前に集まっていた。


「さて、それでは行くとしようか」

「そうだね。けど、食料とかは持っていかないの?」


僕は、腰に剣を差して戦う準備はしているのに、食料とかは準備していないブラドを不思議に思って聞いた。


「ああ、基本日帰りだからな。けど、ちゃんと食料は準備しているぞ」

「え!どこに?」


僕は、ブラドとラキアちゃんの周囲を確認したが、何も見つけられなかった。


「ここによ」


僕がキョロキョロしていると、ラキアちゃんがおもむろにドレスの袖に手を入れた。次にラキアちゃんが袖から手を抜いた時には、手を入れる前には持っていなかったはずのパンが握られていた。


「え?どうなってるの?手品?」


僕は、今の一連の動きからそれを連想した。


「違うわ。まあ、どうやっているのかわからないと、手品と勘違いするのも無理はないけど。あのね、これは《影空間》という闇魔法よ」

「《影空間》?」

「そうよ」


それからラキアちゃんから、この魔法について説明してもらった。


その《影空間》という魔法は、自分専用の空間を構築して、任意の影からその構築した空間に繋げる魔法らしい。


僕のイメージでは、闇魔法版のアイテムボックスといった感じだ。


「便利そうだね」

「ええ、かなり便利よ。ただ、こっちの能力も制限があるのよね」

「制限って聞いて思いつくとこだと、質量や重量とか?」

「そうね。出入口にした影以下のサイズの物しか出し入れ出来ないし、入れられる重量とかにも限界があるわ」

「まあ、そこまで便利な能力はやっぱりないよね」

「そうなのよね」


やっぱり無制限の収納能力とかは、加護とかみたいに神様から貰わないと手に入るわけないみたいだ。


「食料のことはわかったよ。あとは、僕達はこの格好でいいんだけど、二人は武器だけでいいの?」


ブラドは剣。ラキアちゃんは鞭しか装備していない。防具はいらないのかな?


「ああ、俺達ウ゛ァンパイアは防具はあまり必要じゃないからな」

「そうなの?」

「ええ、私達ウ゛ァンパイアには強い再生能力があるから、わざわざ重たい鎧とか着ないのよ」

「そうなんだ」


ウ゛ァンパイアの再生能力。どれくらいまで再生出来るのかな?興味あるけど、今はいいか。


「もう疑問はないか?無いならそろそろ行くぞ」

「うん、お願い」


僕が頷くと、ブラドが僕を。ラキアちゃんがマールさんの手をそれぞれ取った。次の瞬間には、周囲の景色が次々変わっていった。

洞窟の前から森の中へ。木の少ない所から、木の多い所へ。明るい所から、暗い所へ。

瞬きする間に、景色が変わっていった。


あれから体感でおよそ一時間。今だに僕達は《影渡り》を続けていた。


「今どの辺りなの?」

「今ちょうど半分といったところだな」

「そう」

つまり、徒歩五日の距離を二時間にまで縮めているってことか。


それからさらに一時間、転移を僕達は繰り返した。そして、体感で質問した時と同じくらいの時間が経過した時、唐突に転移が終わった。

僕達は、鬱蒼と生い茂る森の中に立っていた。


「着いたの?」

「ああ、此処がダンジョンの入口だ」


ブラドは、森の一点を指差した。


「入口?とくに何もないみたいだけど?」


ブラドの指差した先には、ただ森が広がっているばかりだ。


「もっとよく見てみろよ」

「うん」


ブラドに言われるままに、もう一度さっきの場所を見てみる。


「うん?」


すると、森の一部が歪んで見えることがわかった。というか、ある一定の範囲の境界がおかしなことになっていた。本来繋がっている部分が途切れていたり、まったく違う木と草がくっついて見える。


「何これ?」

「わかったか?それがダンジョン化している影響だ。ダンジョン化したせいで、その辺りの空間がおかしな繋がり方をしているんだ。ダンジョン化している場所だとそれなりに見られる状況だから、ダンジョン化しているかのわかりやすい目安にもなる」

「へぇー」


これは覚えていた方がいいな。


「さて、じゃあそろそろ入ろう」

「わかった」


僕達四人は、空間の歪みに入って行った。


「うわー」


入った先には、ダンジョン名どおりの深い樹海が広がっていた。


「迷いそうだね。というか、これってもう遭難する規模なんじゃ?」


樹海を目の当たりにした現在の気分は、富士樹海に迷い込もうとしている馬鹿の気分だ。こんな樹海に好き好んで入る人の気がしれないレベルだとも断言出来る。しかし、今からこの樹海に好き好んで入る馬鹿の自分を思うと、なんともいえないが。


「安心しろ。たしかに見た目は遭難しそうな樹海だ。実際に遭難者が出たこともあったそうだ」

「駄目じゃん」


遭難者が出たことのあるダンジョンで遠征って、エスト村の人達は何を考えているんだろう?


「いや、あったそうだ。過去系だ。ここ五十年程は、遭難者は出ていない。だから、それ程心配することはない。第一、たとえ遭難したとしても、俺達の《影渡り》を使えば、ダンジョンからの脱出は難しくない」

「本当?」

「本当だ!」


僕は、ブラドの正面から見ながら確認した。ブラドは、真っ直ぐな目で保証してくれた。ブラドの目に嘘を言っている様子がなかったので、安心した。


「それならいいんだ。それで、今からダンジョンを進んで行くけど、このダンジョンに順路とかあるの?」


遭難の心配が無くなれば、後はどうダンジョンを進んで行くかだよね。


「順路とかはとくにないが、オススメの攻略ルートはあるぞ。あれにそって行けばいい」

「あれ?」


ブラドが言うあれが何か見てみると、目の前の草むらの一部に、明らかに人為的に切り開かれた跡があった。


「これって遠征組が通った後?」

「多分そうだろう。この跡を辿って行けば、次の階層に着くだろう」

「たしかにそうだね」


まあ、先行している遠征組が遭難していた場合は、二次遭難の危険があるかもしれないけど。


そんな不吉な考えが一瞬頭を過ぎったけど、そんなことにはなっていかいだろうと、その妄想を脇に退けた。


「じゃあ、それで行ってみよう」

「「「おー!」」」


僕達四人は、遠征組の通過した場所を進み出した。




樹海に入って数分。すぐに樹海に入ったことを後悔することになった。《シードラーウ゛ァ》の繁殖期。他のモンスターがどうなっているのか、まったく考えていなかったことを、現在進行系で僕は後悔している。


「リュウセイ、そっちからも新手が来たぞ!」

「リュウセイ、そっちに行ったわ!」

「竜星さん、また増えました!」


僕が後悔している間も、マールさん達の緊迫した声が飛び交っている。


現在僕達四人は、樹海に入ってすぐの所で絶賛戦闘中だ。

理由は簡単。入ってすぐにモンスターと遭遇したからだ。始めは《シードラーウ゛ァ》を含めた数体のモンスターと遭遇して戦闘になっただけだった。けど、戦闘している間に後から後からモンスターが乱入して来て、かれこれ30分近くの間ずっと僕達は戦闘をし続けている。

モンスターの種類も時間経過で増えていき、今では十種類近いモンスター達を同時に相手にしている。救いがあるとすれば、モンスター達同士でも潰しあってくれているくらいだ。いや、潰しあっているというよりも、経験値を稼いでいると言った方が正しいのかもしれない。潰しあっているモンスター達というのは、ほとんどが《シードラーウ゛ァ》対その他のモンスターという構図だし。星遊戯盤のプレイヤー視点に写っているモンスター達のLevelも、着々と上昇してきている。最初は全員Level1とか2だったのに、今では3や4が普通にいるし、高いところで5や6の奴までいるのが現状だ。もう《影渡り》で逃げるか、《スター》で一掃した方がいいかもしれない。



僕は少し考えて、敵を一掃する方を選択した。


「マールさん!ブラド!ラキアちゃん!僕の後ろへ」

「はい」

「なんでだ?」

「なんでよ?」


マールさんは、すぐに僕の後ろに移動してくれた。


「今から敵を一掃する魔法を使う。僕から離れていると、巻き込まれるよ!」

「なっ!わかった、すぐ行く。ラキア!」

「わかったわブラド」


ブラドとラキアちゃんも、慌てて僕の後ろに移動した。その結果、三人が抑えてくれていたモンスター達もこちらに押し寄せて来た。なので、すぐにモンスター達を一掃しないとまずい。


「《リプレイスト》(交代)、《スター》」


思い立ったらすぐ行動。僕は、三人が来てくれたことを確認して、駒の入れ替えと魔法の発動を行った。

前衛を任せていたスケルトンをゴーストに替え、《スター》で『星』を発生させた。今回の『星』は、相手が多過ぎるので今出来る最大サイズの15cmで出現させた。あとは、この『星』にゴーストを憑依させて、ラジコンよろしく『星』を動かせばいい。


「ゴースト、行け!」


今回のゴーストは、昨日のゴーストとは違い、僕の駒。『星』の重力に影響されることはなく、すんなり『星』に憑依した。


「さあ、食い散らかしてこい」


プレイヤー視点を使って、ゴーストをモンスター達に突っ込ませた。『星』が移動する度、近くにいるモンスター達が『星』の引力に引き寄せられて宙を舞った。『星』に触れたモンスターは圧縮され、次々と消えていった。『星』は縦横無尽にモンスター達の間を飛び回り、端からどんどんモンスター達を消していく。

しかし、モンスター達の供給スピードはまったく衰えていなかった。減らした端から新たなモンスター達がなだれ込んで来る。プレイヤー視点で見るボード上は、モンスターのすし詰め状態。吸い取っても吸い取っても切りがない感じだ。が、モンスターが減っていることは事実。もう、この階層のモンスターを全て吸い込むつもりで『星』を動かした。




あれから3時間。ようやく最後のモンスターが『星』の餌食となった。


「終わった?」

「みたいですね」

「の、ようだな」

「そうね」


僕達四人は、ようやく肩の力を抜いて一息つけた。


僕達の周囲は、現在最初の木々の生い茂った樹海から、木々が姿を消した広場のようになっていた。こうなったのは、僕達の戦闘と『星』が原因だ。戦いの余波で木々が吹き飛ばされたり、折れたりした上、僕の『星』の重力で無事だった植物達もねこそぎ圧縮消滅させてしまったのだ。


「はあっ。ダンジョンってこんなに面倒なものなんだね」


ゲームと現実は違い過ぎると、疲れた頭で思った。


「いや、いくらなんでも多過ぎる」

「そうなの?ダンジョン攻略はこれが初めてだから、これが普通だと思ったんだけど?」

「そんなわけあるか!いくらなんでもこれだけのモンスターを一度に相手にするようなダンジョンなんて普通はないぞ!明らかにおかしい!」

「そうね。私達が以前来た時は、こんなことにはならなかったし」


ラキアちゃんも、昔を思い出すような目をしながらブラドを肯定した。


「けど、それじゃあ今はどうしてこうなっているんだろう?」


これが普通じゃないなら、普通じゃない原因があるはず。


「わからん。わからんが、これはかなりまずいかもしれないぞ」

「どういうこと、ブラド?」

「ダンジョンの入口でこれだ。先に行っているルベル達、下手をすると全滅しているかもしれないぞ」

「なっ!・・・いえ、たしかにその可能性はあるわね」


ラキアちゃんは、ブラドの言葉に一瞬顔を引き攣らせた。僕やマールさんも、多分同じ顔をしたと思う。ブラドの言ったことは、今の戦闘を経験した僕達には否定する要素が見当たらないんだから。

「じゃあ、先に進む?それとも援軍を呼びに行く?確か遠征に出たのは八日前なんでしょう?今ならまだ浅い階層にいるとは思うけど」

「そうだな。いつもの日程なら、ダンジョンに潜って三日というところだから、このモンスターの数ならわりと浅い階層にいるかもしれない。お前達は、どう思う?」


ブラドに意見を求められて、皆少しの間どうするか考えた。


「僕は潜った方が良いと思う」

「そう考えた理由はなんだ?」

「僕の《スター》なら、モンスターの一掃は多分可能だと思うから」

「まあ、これを見る限り出来そうだな」


ブラドが周囲を見て、出来そうなことを認めた。


「ラキアはどう思う?」

「私は一度帰った方が良いと思うわ。ルベル達が浅い所にいるのなら、リュウセイの魔法で助けに行けるとは私も思うけど、もしもルベル達が深い所まで行っていたら、私達の手にはおえないわ」

「それも、言えてるな」


ブラドは、ラキアちゃんの意見も認めた。この意見は、僕も認める。僕の提案は、遠征組が浅い階層にいることが第一条件。ダンジョン攻略が初心者の僕には、そこまで長時間の戦闘を続けられる自信はない。

けど、引き返して救援を出してもらうのも、それはそれで手遅れになる危険がある。


「サマエルはどう思う?」

「私は、今すぐに助けに行った方が良いと思います」


マールさんははっきりとそう言った。マールさんのこの強い発言には、ブラドもラキアちゃんも驚いたようだ。かくいう僕もそうだ。てっきりマールさんは、僕の判断に従うと言うとパターン的に思っていた。けど、なんで今回は違うんだろう?


僕には、そこが不思議だった。


「あっと、理由を聞いてもいいか?」

「はい。今からご説明いたします。と言ってもそんな難しい理由ではありません。その遠征組らしき人達は、ここから十層下にいます」

「何故そんなことが判るんだ?」


マールさんの言葉を聞いた全員が疑問に思った。


「それは、私達エンジェルには死に行く者の魂の波動を感じる能力があるからです」

「なるほど」


死者は天使によって死後の世界に運ばれるんだから、マールさんがそういう能力を持っていてもおかしくはない。けど、少し気になる部分が。


「マールさん、その能力は死に行く者の波動を感じる能力なんですか?ということはひょっとして」


頭の中を、嫌な想像が過ぎった。


「ええ。三人程魂が肉体から離れようとしています」


マールさんは、足元を見ながらそう告げた。


「それって、本当に遠征組の人達なんですか?別の生物を勘違いしているとか?」


駄目元で確認してみた。


「いえ、間違いなく人間の魂の波動です。たしかに遠征組である確証は私にもありません。しかし、人間が死にかけていることだけは保証出来ます」


マールさんからは嫌な保証をされてしまった。この事実を知ってしまった以上、その人達を見捨てるわけにはいかない。


「ブラド、十層ってどれくらいで潜れる?いや、《影渡り》ですぐに飛べるのかな?」

「リュウセイ、行く気なのか?」

「さすがに知っちゃった以上、ほおってはおけないでしょ」

「まあ、そうだな」

「それで、さっきの質問の答えはどう?」

「そうだなぁ?」


僕の質問に、ブラドは腕を組んで考え込みだした。


「《影渡り》は無理ね。それと十層までとなると、最低でも三日はかかるわね」


ラキアちゃんが、考え込んでいるブラドの隣でそう言った。


「ちなみに理由は?」


ブラドと違ってあまり考えずに言われたので、その根拠がわからなかった。


「そうね、それは今から説明するわ。まず最初に《影渡り》が出来ない理由だけど、《影渡り》自体はやろうと思えば可能なの。ただ、この下の階層もモンスターが大量発生している可能性が高いでしょう。その上、さっきのモンスター達みたいにLevelが上昇しているモンスターがいる可能性は十分あると思うの。下手に《影渡り》で飛ぶと、物量と強化されたモンスター達でこちらが危ないかもしれないわ。だから、《影渡り》で移動するのは駄目よ」

「たしかにその可能性は高いでしょうね。少なくとも、下にいる人達の内三人は死にかけているんですから」

「そうね。私やブラドよりも遠征組のLevelは低かったけど、それでもこのダンジョンのモンスターに致命傷をおわされる程低かったわけじゃないわ。それに、十層も降りているなら私達が知っているLevelよりは上でしょうし」

「そうなりますよね。あとは、降りるのに最低三日は必要だと言った理由は何ですか?」


僕にとっては、そちらの日数の出所の方がわからない。


「そうね、それも説明するわ。まず前提としては、遠征組のルベル達が到着から三日目で十層にいるからよ」

「まあ、そうだね。けど、それって十人以上いる遠征組の話でしょう?ブラドとラキアちゃんの方のLevelが遠征組よりも高いとはいえ、僕達は四人しかいないんだよ。それでも最低三日。裏を返すと、最速で三日で着けるってことでしょう?どんな計算をしたの?」

「行軍スピードを考えると、そこまで差は無い計算よ。この階層のモンスターを一掃したあなたの魔法を計算に含めれば、十分にいけると思うわ」

「そうかな?」


この階層のモンスター達を一掃するのにおよそ3時間ちょっと。それかける十階層で最低30時間。そこに階層移動時間に、食事や休憩、睡眠時間の諸々を含めると、どう頑張っても三日では不可能だと思うけど?


「あなたが考えていることは間違っていないわ」

「えっ!?」


僕、また顔に出てた?


「各階層のモンスター達を一掃するなら三日じゃ無理よ。けれど、次の階層に行くのに邪魔なモンスターを一掃するだけなら、そこまでの時間は必要ないわ。あの魔法を真っ直ぐ放って、直線距離で各階層を進んで行くだけですもの」

「あー、たしかにそれなら時間はそれほど必要じゃないかな?」


何となくいける気になってきた。


「それじゃあ決まりだな」


いつの間にか考え込んでいたブラドが戻って来ていた。


「そうだね。行こう!」


「「「おー!」」」


満場一致で、遠征組の救援に行くことが決定した。そして、僕達は下を目指して移動を開始しようとした。


「おっと、回収するのを忘れていた」


移動直前になって、《スター》の解除とステータスカードを回収していないことを思い出した。慌てて魔法の解除に向かった。一階層分のモンスターを倒しておいて、Levelが一つも上がらなかったら、笑い話にもならないよ。


「《キャンセ」

「あっ!ちょっと待ってください竜星さん!」

「ル》」


僕は、『星』に触って魔法を解除した。途中、マールさんから待ったがかかったけど、そのまま魔法を解除してしまった。

まずかったかな?

一瞬そう思ったが、すぐにマールさんが解除を止めた理由がわかって、それどころじゃなくなった。


「うわっ!?」


『星』を消滅させた瞬間、大量のステータスカードと小石が出現して、僕の方になだれ込んできた。そして、僕はそのまま大量のステータスカードと小石に埋もれて気を失った。




「竜星さん!竜星さん!しっかりしてください」


僕は、身体をガクガクと揺さ振られて目を覚ました。


「う、うーん」

「竜星さん、目が覚めたんですね!?」


目覚めて最初に見たのは、泣きながら自分を抱きしめるマールさんの姿だった。


「あれっ、マールさん。どうしたんですか?」


僕はぼうっとした頭で、そうマールさんに問い掛けた。


「どうしたんだじゃありません!竜星さん、危うく死にかけたんですよ!」


マールさんから、そんな悲鳴混じりの叫びを聞いた。そして、それで頭がだんだんはっきりしてきた。そうだ、たしか何かが押し寄せて来て。

寝る前にあったことを必死に思いだそうとして、そんなことを思い出した。しかし、それ以上のことはすぐには思い出せなかった。ただ、身体のあちこちがとても痛かった。

視線を周囲に向けると、こちらを心配そうに見ているブラドとラキアちゃんの姿が見えた。

僕と目が合うと、二人は安心したような顔をした。

視線をさらに巡らすと、山積みになっているステータスカードと、魔石の山が目に入った。この時点で、寝る前に何があったのかを思い出した。

そうだ、『星』を解除した後にステータスカードと魔石の雪崩に襲われたんだ。


「心配をかけてすみません、マールさん」


状況を思い出した僕は、僕を抱きしめているマールさんの頭を撫でて落ち着かせながら、心配をかけたことを謝った。


「もう少し気をつけてください竜星さん。今回は無事でしたけど、下手をすれば圧死していましたよ?」

「はい。今度から気をつけます」

「よろしい」


そう言うとマールさんは、僕の頭を一撫でして僕から離れた。


「僕はどれくらい気を失っていましたか?」


どれくらい時間を無駄にしちゃったんだろう?


「せいぜい30分くらいだ。それと、お前が気を失っている間に、俺達はステータスカードを吸収させてもらった。今残っているのは、お前の分だ。量が量だからな、早めに経験値に換えろ」

「わかった。けど、いくらなんでも多過ぎない?皆もっと吸収してくれない?」


ブラドは、自分達はもうステータスカードを経験値にしたって言っているけど、僕が最後に見た時からあまり減っているようには見えなかった。


「いや、ほとんどのモンスターを倒したのはお前の魔法だろう?基本的に経験値に換えられるのは自分が倒した奴のステータスカードだけなんだから、残りはお前が吸収するしかない」

「うーわかったよ。けど、ステータスカードは吸収するとして、魔石の方はどうしよう?」


ステータスカードは経験値にすれば無くなるんだけど。魔石の方はねぇ・・・。


僕は、三m近い高さの魔石の山を見てどうしようか悩んだ。


「そうですね。たしかにこれだけの数の魔石はさすがに持ち歩けませんよね。・・・そうです!」


マールが何か思いついたようだ。


「何か思いついたんですか?」

「ええ。この魔石全部、竜星さんの駒の強化に使ってしまいましょう!」

「ああ、その手がありました!」


たしかに今ここで全部消費してしまえば問題無い。それに、駒も強化出来て一石二鳥だ。


「じゃあ、早速やってみます」


僕は早速ステータスカードの吸収と、魔石の消費を開始した。


それから一時間後、僕達は樹海を踏破して次の階層に降りて行った。

『深淵の樹海』第一階層踏破時のステータス


リュウセイ

Level:18

年齢:18

種族:アステリアン

【補正】全項目+18

【体力】

260/260

【魔力】

2600/2600

【星力】

16/17

【筋力】23

【耐久力】 21

【敏捷】 280

【器用】 130

【精神】 320

【幸運値】50%


【属性】星


【称号】世界を渡った者、死を経験した者、■■■の盟友、インセクトキラー、暴星の葬者


【能力】星遊戯盤 Level:5

星属性魔法 熟練度:2

《オリジン》、《ビックバーン》、《オリジンティック》、《ビギニングライト》、《カオス》、《スター》、《コスモス》、《ビカム》


眷属召喚 Level:1

眷属生成 Level:1

星天輝導

星地変転 Level:1


【祝福・加護】

ルシフェルの祝福


【職業】星導司Level:5


【備考】

記憶欠落状態態


持ち駒

アバター・アイディアル

×1

ブラッティーバット×1

ケイウ゛モール

×1

キャンドルン

×1

スケルトン

×14

ゴースト

×10

シードラーウ゛ァ

×324

サイレントオウル

×16

ハンターホーク

×14

ミリタリーアント

×136

ハニービー

×81

マウンテンリーチ

×42

ハンタースパイダー

×25

ステルススネーク

×35

バインドウ゛ァイン

×106

ジェットパイン

×87

スルーウィロウ

×34

ウォークマッシュ

×51



×67

ナラ

×32


ソルジャースケルトン

×1

スペクター

×1

ファントム

×1

ホーント

×1

ポルターガイスト

×1

レイス

×1

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