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約束果たしにダンジョンへ

チュンチュン


「ううーん」


その日は、小鳥の囀りで目を覚ました。起きぬけに見たのは、知らない天井だった。


僕は、寝ぼけた頭で現状を確認した。

自分が今寝ているのはふかふかのベット。そして、ベットの置かれている場所は馴染みのないものだった。

そこまで確認しても、現状がよくわからなかったので、昨日の記憶をあさった。その結果、すぐに該当する記憶が見つかった。というか、僕は絶賛記憶喪失中なので、昨日のこと以外に記憶はなかった。


とりあえず昨日の記憶を確認した結果、自分が今置かれている現状が理解出来た。


まずここが何処かというと、アークさん達の家だ。次に家に泊めてもらった経緯だけど、村人達と歓迎会で食べ明かして、さすがにフラフラしていたので、何処か休める所がないかアークさんを見つけて聞こうとしたんだ。けど、聞きに行った時にはアークさんもう酔い潰れていたんだよね。アークさんの周りの村の人達も、大概酔っ払ってるか酔い潰れている人ばかりで、どうしようか悩んでいたら、一足先にカインズくんを寝かせに家に帰ったソフィアさんがアークさんを迎えに戻って来た。なので、ソフィアさんにどうしようか相談した。すると、ソフィアさんから村に来たばかりで帰る場所が無いでしょう?なら、サマエルさんと一緒に家においでなさいと言われた。困っていたので、僕はソフィアさんのこの提案にいちもにもなく頷いた。そして、マールさんを呼ぼうと思ってマールさんを探した。すぐにマールさんは見つかった。マールさんは、今だに元気な村の人達と飲み比べなどをしていた。マールさんが楽しそうにしていたので、邪魔しては悪いと思い、マールさんの傍に書き置きを残して先に休むことにした。僕とソフィアさんは、酔い潰れたアークさんを家まで運び、そのまま僕はアークさん達の家に泊めてもらった。


そして、現在に到る。


「もう朝ですか。マールさんは書き置き見てくれたかな?」


僕は、昨日のことを回想して、まずはそれが気になった。天使であるマールさんが酔い潰れるかはわからないけれど、この家に来ていないのなら探しに行かないと。そう考えた僕は、ベットから起き上がり、身仕度を調えてソフィアさんに朝の挨拶をしに向かった。



「おはようございます!」


僕は、台所で朝食の準備をしているソフィアさんを見つけて、元気良く朝の挨拶をした。


「おはよう、リュウセイくん。良く眠れた?」


僕を認めたソフィアさんからそう聞かれた。


「はい!ふかふかのベットで良く眠れました」

「そう、よかったわ。朝食にはまだ少しかかるから、少し待っていてね」

「わかりました。あっ、一ついいですか?」

「どうかしたのリュウセイくん?」

「はい。結局あの後にマールさんは来ましたか?」


僕は、マールさんのことを確認した。


「ええ。あの後に家に来たわ」

「今はどちらに?」

「リュウセイくんがいた部屋の隣で寝ているわ。大分飲んだみたいだから、アーク共々今日は二日酔いでしょうね」

「そうですね」


僕は、昨日マールさんの傍にあった酒樽の数を思い出して、ソフィアさんの予想に同意した。


「おはようございます、竜星さん、ソフィアさん」


僕とソフィアさんがそんなことを話ていると、マールさんが顔を出した。


「おはようございますサマエルさん」

「おはようございますマールさん」


僕は、マールさんに挨拶を返した。そして、マールさんの顔を見た。言葉は大丈夫みたいだけど、顔色が悪ければ休んでいることを奨める為だ。しかし、マールさんの顔色はいたって普通だった。あれ?


「どうかしましたか?」


疑問が顔に出ていたらしく、マールさんにそう聞かれた。


「いえ、昨日結構飲んでいましたから、二日酔いになっているかなぁ、と思ったんですけど元気そうだなぁ、と」

「ああ、私なら大丈夫ですよ竜星さん。私達天使は、お酒で酔っ払ったりはしませんから。どちらかと言うと、力の源になります」

「力の源?」


僕は、マールさんの言っていることが良くわからなかった。一緒に話を聞いていたソフィアさんも首を傾げている。


「そうです。お酒の類は、御神酒や神の晩餐会でも出て来るゆうしょある飲み物。お酒は私達天使や神といった高位存在の必需品なんです」

「へぇー、そうなんですか!」


僕は、該当する知識があったので、マールさんの話をすんなり納得した。


ソフィアさんの方も、納得したように頷いている。


こっちの世界にも、神様とお酒に関する神話でもあるんだろうか?


僕は、マールさんの話に納得したソフィアさんを見て、そんな疑問を覚えた。


「それにですね。状態異常【酩酊】なら、自力で治療出来ますよ」

「え!この世界だと、二日酔いも状態異常扱いなんですか!」

「そうですよ」

「へぇー」


ゲームだと、【酩酊】なんて状態異常があるものはないし、まだお酒を飲んだことはないから、どんな内容かよくわからないな。


マールさんの話を聞いて、そんなことを思った。


「それはそうと竜星さん、今日の予定はありますか?」

「予定ですか?そうですねぇ?」


マールさんに聞かれて、今日しなければいけないことを考えた。


「あっ!あります」


そして、昨日した約束を思い出した。


「今日は何をするんですか?」

「昨日約束した、カミューラさんの所で能力を調べてもらうことと、ベルグさんに装備を見繕ってもらうつもりです」

「そういえば昨日そんな約束をしていましたね。けれど、ベネラさんとの約束は良いんですか?」

「そっちはカミューラさん達との約束の後の方がいいでしょう。精霊との契約よりも、能力の確認や装備の充実が優先度が高いですから」

「そうですね。ベネラさんとの約束に時間制限があるわけではないですし」


マールさんも納得してくれたようなので、今日はこの二つをメインに行動しよう。


「あのー」


僕とマールさんが今日の予定をたてていると、遠慮がちにソフィアさんに声をかけられた。


「どうかしましたか、ソフィアさん?」

「サマエルさんは回復魔法を使えるんですよね?」


ソフィアさんは、マールさんにそう確認した。


「はい、初期魔法ですけどキュアが使えます」


マールさんは、ソフィアさんの質問を肯定した。


「でしたら、出かける前にアークの治療をお願い出来ませんか?アークは、治療した後は道案内に使ってくれてかまいませんし」


ソフィアさんは、マールさんにそう頼んできた。


そういえば、アークさんは昨日酔い潰れていたな。


僕は、昨日アークさんをここまで運んで来た時の様子を思い浮かべた。


あの様子なら、確実に今日は二日酔いだろう。それに、アークさんに道案内してもらえば安心だ。やっぱり来たばかりの村で、勝手に動き回るのはマズイだろうし、村の人が一緒の方がなにかと良いと思った。


「マールさん、僕からもお願い出来ますか」


そう思った僕も、ソフィアさんに続いてマールさんに治療を頼んだ。


「それくらいかまいませんよ。では、行ってきます」


マールさんは、そう言うと何処かに向かって歩き出した。アークさんのいる部屋が判るのだろうか?


僕はそう思ったが、マールさんについて行かずに待つことにした。


それから少し経ち、ソフィアさんが朝食の準備を終える頃になって、マールさんがアークさんを連れて戻って来た。


「おはよう」

「おはようございます」


僕はアークさんに挨拶を返した。


「アークさん、少しいいですか?」

「なんだい、改まって?」

「今日、カミューラさんとベルグさんの所に行くつもりなんですが、一緒に来てもらえませんか?」

「ああ、その話ならサマエルさんから聞いているよ。私は別にかまわないよ」

「それなら、今日はよろしくお願いします」

「わかった」


アークさんに村での道案内を頼んだら、あっさりOKがもらえた。アークさんの言い方からして、マールさんの方からも頼んでいてくれたみたいだ。


マールさんに視線をやると、頷かれた。僕もマールさんに頷いた。


マールさんありがとうございます。


「おとうさんたち、おはよう」


僕達がそんなやり取りをしていると、カインズくんも起きて来たようだ。


それから僕達は、みんなで朝食をとった。




朝食を終え、僕達は家の前に集まった。


「それで、カミューラとベルグの所、どちらを先に行きたいとかあるかい?」


アークさんから集まってすぐにそう聞かれた。


「そういうのはとくにないです。あえていえば、近い方から行きたいです」


僕は、思ったことをそのまま答えた。


「それならベルグの所からだね。ついておいで」


僕の答えを聞いたアークさんは、そう言って歩き出した。

僕とマールさんは、アークさんの後ろについて移動を開始した。



「ベルグの家はここだよ」


歩くこと少し。たくさんの煙突が付いた、周囲の家より大きな煉瓦作りの家の前でアークさんがそう言った。


「ここがベルグさんの家ですか」


僕とマールさんは、その家を見た。


僕の感想としては、いかにも鍛冶師の工房といった感じの家に見えた。


コンコン


「ベルグ、いるかい?」


アークさんは、ベルグさんの家のドアをノックした。


・・・・・・


が、返事は帰って来なかった。


「まだ寝ているのか?」

「アークさんと同じで二日酔いになっているんじゃないですか?」


ノックした状態で首を捻っているアークさんに、自分の予想を話した。


「そうかもしれないね。じゃあ、先にカミューラの所に行こうか?」

「はい、お願いします」


僕達は、ベルグさんの家からカミューラさんの家に向かって移動を開始した。


しかし、何故かアークさんは村の外に向かって歩いている。


「アークさん。カミューラさんの家は村の中に無いんですか?」


僕は、前を歩いているアークさんにそう確認した。


「そうだよ。カミューラは、危ない実験をすることもあるから、村から離れた場所に居をかまえているんだよ」

「そうなんですか」


僕は、アークさんの説明で納得がいった。


それからは、世間話をしながらカミューラさんの家に向かった。




「あそこがそうだよ」

「あそこですか?」


あれから二時間近く森の中を歩いて、突然アークさんが足を止めて、何かを指差しながらそう言った。


僕は、アークさんが指差したものを確認して、アークさんに確認した。


「そうだよ」

「けどあれってぇ・・・」


アークさんからは肯定の返事が来た。しかし、僕の目にはそれが家には見えなかった。


僕は、もう一度アークさんが指差している場所を確認した。

そこには、いかにもな見た目な洞窟があった。蝙蝠なら住家にしていそうだが、ウ゛ァンパイアのカミューラさんが住むには不向きな場所に見えた。なにより、あの洞窟で実験に失敗したりすると、生き埋めになりそうだ。


僕の頭の中では、実験の失敗イコール爆発というイメージだった。


「大丈夫だよ。あの洞窟の中は、ダンジョン化してるからね。外から見るよりも中は広いんだよ」

「ダンジョン化ですか?」


僕は、アークさんの言葉の一部に反応した。


「そうだよ。ああ、来訪者のリュウセイくんにはこれも説明しておかないといけないね」

「できればお願いします」

「わかった」


それからアークさんは、この世界のダンジョンについて話始めた。


「この世界ではね、大量の魔力が一カ所に集中すると、そこがダンジョン化するんだ」

「はーい!それは場所だけですか?」


アークさんの今の言い方だと、場所以外の何かもダンジョン化しそうなので質問してみた。


「いや、条件さえ整えばアイテムなんかもダンジョン化するよ。ただし、ダンジョンの維持にも大量の魔力を必要とするから、魔力溜まり以外で発生したダンジョンは、長く存在出来ないよ」

「そうなんですか。ちなみに、その魔力溜まりって何ですか?」

「魔力溜まりっていうのは、世界に満ちている魔力の濃度がある一定期間以上高い場所のことだよ。このビギナの森なんかがそのさいたるものだよ」


アークさんは、腕を広げてこの森を示した。


「へぇー、そうなんですか。それなら、この森にはダンジョンがあの洞窟以外にもあるんですか?」


僕は、カミューラさんの家?を指差しながら尋ねた。


「ああ、この森の中にはあの洞窟以外にもダンジョンがいくつも点在しているよ」

「おおー!」


僕は、アークさんの言葉に興奮した。

魔力でダンジョンが発生するということは、おそらくだけどダンジョン内にはモンスターが発生しているはず。どんなモンスターがいるんだろう?


僕は、自分の中にある王道パターンという知識から、そんなことを考えた。


「ダンジョンの発生の仕方はわかりました。じゃあ、今から行く洞窟も含めて、ダンジョン内はどうなっているんですか?」


僕は、好奇心を抑えずにアークさんに質問した。それに、今からダンジョンに入るのだから、これは知っておいた方がいいだろう。


「ダンジョンの中かい?それは基本的には、発生時の魔力溜まりの状態で変わるね」

「魔力溜まりの状態ですか?」


魔力溜まりって、魔力が濃い状態を指しているんだよね?魔力溜まりに状態なんてあるのかな?


「そうだよ。魔力溜まりにも、魔力の偏りや流れがあるからね。魔力が濃いもの程ダンジョン内の環境に影響を与えるんだよ。そうだなぁ、カミューラがいるあのダンジョンを例にしようか」

「はい」


僕は、アークさんの話に集中した。


「まず前提条件の確認だよ。あの洞窟は、ダンジョン化する前は普通の横穴だったらしいよ」

「らしい?あの洞窟は、アークさんがこの森に来る前にダンジョン化したんですか?」


アークさんは、昨日自分は新参者だって言っていたから、そういうことなんだろう。


「そうだよ。この洞窟がダンジョン化したのは大分前らしいよ。だから、私が今からする説明は村の人から聞いた伝聞になるよ。この洞窟の詳しいことが知りたくなったら、カミューラに聞くといいよ」

「わかりました」


僕は、素直に頷いた。


やっぱり伝聞よりも、住んでいる人の方に聞いた方が詳しくわかりますからね。


「さて、次に当時の環境についてだね。当時は、この洞窟の中には蝙蝠やモグラが住んでいた。その関係で、この洞窟ダンジョンに出現するモンスターは、それらが基本になっているね」

「出現ですか?」


出現ということは、ダンジョンのモンスターは生物じゃない?もしダンジョン内のモンスターが生物なら、生息しているとアークさんは言うと思うから、そういうことなんだろう。


僕は、視線を隣のマールさんに向けた。


「どうかしましたか、竜星さん?」


マールさんは、僕の傍にやって来た。


「今のアークさんの言葉で疑問に思ったんですけど、この世界のダンジョンモンスターって、生物じゃないんですか?」

「そうですよ」


僕の質問を、マールさんはあっさり肯定した。


「ダンジョンモンスターは、基本的に実体化した魔力の塊にすぎません。ただ、ダンジョンの外から他の生物やモンスターが入り込んで住み着いた場合は、生物としてのモンスターも出るようになりますけどね」

「へぇー、そういう仕組みなんですか」


この世界のダンジョンにいるモンスターは、基本的にはゲームに出て来るモンスターと同じなのか。


僕は、そんなことを思った。


「次にいくよ。このダンジョンの地形は、元の洞窟から地下に向かって行くタイプだよ」

「はーい。地形が洞窟タイプなのはわかりますけど、なんで地下に向かって行くんですか?」

「それはだね、洞窟の魔力性質が土と闇だからだよ」

「魔力性質に、土と闇?」

「ああ、魔力性質っていうのは環境によって魔力につく属性の薄いやつだね。詳細はカミューラとかに聞いた方がわかりやすいよ」

「そうですか」


アークさんは、そう言って話を次に進めた。


「それで、土と闇で地下に向かって行く理由だけど、これは私もよく知らないんだ。魔力性質が関係しているのは知っているけど、それ以上のことは全然だね。ただ、洞窟タイプのダンジョンは基本的に地下に広がっていくということだよ」

「そうなんですか」


魔力性質か。わりと気になるから、今度カミューラさんかマールさんに聞いてみよ。


「さて、今はこれくらいかな?そろそろカミューラに会いに行こうか」

「はーい!」

「わかりました」


話はここまで切り上げになった。


僕達は、あらためて洞窟に向かって歩き出した。




洞窟の中は薄暗く、幅は人が六人横並びになれる程度。高さは、自分二人分なのでだいたい三メートルを越えるくらいだった。


僕とマールさんは、アークさん先導のもと洞窟内を進んで行った。


洞窟を進んで行くと、だんだん暗くなっていった。


しかし、誰もそのことを気にしていなかった。


「もうそろそろだよ」


あれから一時間程度経って、アークさんが唐突にそう言った。


「もうそろそろですか?けど、とくにそれらしい物は見えませんよ」


僕は、アークさんの後ろから正面に目を凝らしたが、進む先に光源や建物は見つけられなかった。


「ああ、正面には何も無いよ。カミューラの家の入口はこっちだよ」


コンコン


アークさんはそう言うと、洞窟の壁を小突いた。


「そっちですか?」


僕は、正面から視線をズラして、壁づたいにものを見た。しかし、僕には何も発見出来なかった。


「本当に何かあるんですか?」


何も見つけられなかったので、アークさんに確認した。


「本当だよ。もう少し先に、偽装されたカミューラの家の入口があるんだ」

「偽装。そういうことですか」


僕は、アークさんの偽装という言葉に納得がいった。偽装されているなら、見つけられなくてもしかたがない。


僕は、そう思った。


それから僕達は、さらに洞窟を進んで行った。


「ここだよ」


そうして歩いていると、アークさんが急に立ち止まって、そう言い出した。


僕は、アークさんが立ち止まった辺りにある壁を観察した。しかし、かなり近くで見ても僕にはただの壁にしか見えず、偽装を見破ることは出来なかった。


「カミューラ、入るぞ」


僕が落ち込んでいるなか、アークさんはそう言って僕が見ていた壁の一部を触った。


ゴゴゴゴゴ!!


すると、アークさんが触った隣の部分が動き出して、壁に入口が出来た。


「さあ、行こう」

「「はい」」


僕とマールさんは、アークさんに言われるままにその入口に入って行った。


入った入口の先は、今までの洞窟のようなゴツゴツした道ではなく、ちゃんと整備されている平らな道だった。


僕達は、その道を進んで行った。そして、その道。いや、あえて通路と呼ぼう。やがて通路を抜けると、かなり広い空間に出た。


「うわぁー!」


通路を抜けて開口一番、僕の口から感嘆の声がもれた。なぜなら、通路の先にはかなり大きな西洋のお城が建っていたのだ。


「アークさん、アレがカミューラさんの家なんですか?」


僕の口からは、自然とそんな疑問が出ていた。


アレはどこからどうみてもお城。エスト村の家いえを見た後だから、余計に違和感があった。


吸血鬼。ウ゛ァンパイアの住家としてはそれらしいが、そういう問題ではないだろう。


「ああそうだよ。もともとは普通の家だったんだけど、ダンジョン内で増築していって、あんなになったらしいよ」


アークさんは、僕の表情見てそう補足説明をしてくれた。


「まあ、とりあえず行こうか」


僕達は、お城に向かって歩き出した。




「カミューラ、いるかい?」


あれからすぐにお城に到着すると、アークさんは大きな声でカミューラさんを呼んだ。


・・・・・ガタッ!


しばらく返事はなかったが、しばらくすると遠くの方から物音が聞こえてきた。どうやら、カミューラさんの方は家にいたようだ。


さらに時間が経過すると、カミューラさんが誰かを連れて僕達の所にやって来た。


「ベルグさん!それと、誰?」


カミューラさんと一緒に出て来たのはベルグさんと、昨日の歓迎会では会っていない人?だった。


まあ、人と言っていいかは疑問だけど。


僕はその人を見てそう思った。なぜなら、その人の頭部が骸骨だったからだ。しかし、頭部以外に骨が見えないので、本物かは微妙だ。胴体は、しわ一つ無い執事服を着こなし、手は汚れ一つ無い白い手袋を着用している。足には滑らかな黒い革靴をはいている。頭部を除けばどこからどうみても立派な執事さんに見える。さらに、横にいるのがウ゛ァンパイアのカミューラさんだから、執事がいること(吸血鬼といえば貴族のイメージ)も骸骨であること(ウ゛ァンパイア自体がアンデットなので、同族を雇用していてもおかしくない)もありえなくはない。


「はじめまして。あなた方が新たな来訪者の方達ですね。私は、カミューラ様にお仕えしております執事のセバスチャンと申します」


そう言うとセバスチャンさんは、綺麗に一礼した。


「あ、はい。現在村でお世話になっている竜星といいます。それでこちらが」

「同じくお世話になっているサマエルです」


僕とマールさんも、お辞儀を返した。


「それで、今日はどんな用事だアーク?」


僕達の挨拶が終わると、カミューラさんがアークさんに今日の用件を尋ねた。


「いや、俺はただの道案内だよ。今日カミューラに用があるのは、リュウセイくん達だよ」

「そうなのか?」


カミューラさんは、僕達に確認してきた。


「はい、昨日お約束した能力のことについて来ました」

「おおっ!それで早速来てくれたのか」

「はい」

「そうか。それなら準備が必要になるな。セバスチャン、オプションパーツと測定機器を訓練施設に持って来てくれ」

「畏まりました」


カミューラさんが何か指示をすると、セバスチャンさんは一礼して城の奥に向かって行った。


「さて、では行こうか」


カミューラさんは、そう言うと何の説明もせずに歩き出した。その後を、ベルグさんとアークさんも一緒に歩いて行った。

僕とマールさんは、一度顔を見合わせて互いに頷き合い、すぐに三人を追いかけた。




複雑に入り組んだ通路を黙々と進み、やがて拓けた広い空間に出た。

そこは、城という場所から考えると王様と謁見する場所に酷似していた。ただ、城という建物から見たらそんな感じというだけで、王座や段差などの無い平坦な場所だったが。


「さて、セバスチャンが来るまでに少しステータスカードを見せてくれないか?」


カミューラさんが近づいて来て、そう言われた。


「わかりました」


僕は、ズボンのポケットからステータスカードを取り出して、カミューラさんに渡した。


「確認するから少し待ってくれ」


カミューラさんは僕にそう断りを入れると、ステータスカードを操作しだした。


「おう坊主、俺も見ていいか?」


僕達がカミューラさんの様子を見ていると、ベルグさんがそう言ってきた。


「かまいませんよ。というか、意見が欲しいので是非見てください。アークさんもお願いします」

「おう、ありがとうな」

「わかったよ」


僕は、ベルグさんだけではなく、アークさんにもステータスカードを見てくれるように頼んだ。


不明なことは、みんなで考えた方が答えに辿り着ける確率があるだろうし。


僕はそんなことを思いつつ、僕のステータスカードを見ている三人の様子を眺めた。


僕が眺めていると、三人の表情がだんだん変わっていった。カミューラさんは興味深そうに。ベルグさんはただ驚いたように。アークさんは難しい顔に。三者三様の顔になった。


やっぱり、こっちの世界の人達から見てもおかしいステータスなのかな?


「どうですか?」


僕は、三人の感想を聞いてみることにした。


「大変興味深い」

「俺にはよくわからないが、たしかにおかしいな」

「称号のところ。こういう表示は見たことがないな」


三者三様の返事が返って来た。しかし、やはり答えはかんばしくなかった。この三人の返答で、この世界の人達から見ても僕のステータスがおかしいことが確定してしまった。


「やっぱりおかしいですか?」


「おかしいな」

「おかしいぞ」

「おかしいね」


一応確認してみたが、異口同音の答えで肯定された。


「認識の擦り合わせをしたいんですが、何処がおかしいですか?」


少し凹んだけど、認識の共有の為に三人に聞いた。


「まずは、私の知り合いだった来訪者に比べてステータスがかなり低いのが挙げられるな」


カミューラさんは最初にステータスのことを挙げた。僕はステータスのことを言われるとは思っていなかったので、驚いた。


「えっ!僕のステータスって、そんなに低いんですか?」

「たしかにそうだな。リュウセイの年齢を考えるなら、この世界の平均よりは上になるんじゃが」


ベルグさんもカミューラさんに同意した。


「たしかにそうだね。私が知っている来訪者のステータスも、Level1の段階で平均三桁は越えていたからね」


アークさんからは、具体的な事実が告げられた。


「平均三桁・・・」


僕のステータスで一番低いのは耐久力の3。一番高いのが魔力の100。平均は良くて二桁だ。他の転生者達との間に、そこまで差があるとは思ってもみなかった。これが加護を持つ者と持たない者との差だろうか?しかし、ベルグさんの言葉から考えると、この世界の同い歳の人よりかは上らしい。つまり、この世界の人からはそこまで異常には見られないということになる。それなら、当初の目標である安全で安定した生活をするのには、何の支障もないということになる。こう考えると、ステータスが低くても問題は無さそうだ。


「それはしかたがありませんよ」


僕がそんなことを考えていると、今まで黙っていたマールさんが三人にそう言った。


「どういうことだ?」


カミューラさんが首を傾げた。他の二人も同様だ。


「カミューラさんとアークさんは、来訪者達のステータスを見たことがおわりなんでしょう?それでしたら、加護・祝福の欄も見たことがおわりでしょう?」

「「ああっ!」」


サマエルさんの言葉を聞いたカミューラさんとアークさんは、納得がいったように声を上げた。その反面、僕とベルグさんは状況に取り残されていた。


「そういえば私が見たあいつのステータスカードの加護の欄には記載があったな」

「私が見たのにもありました」


二人は、それぞれ自分の記憶を引っ張り出すようにそう言った。


「そうでしょう。その来訪者の方達のステータスが平均三桁だったのは、その加護をおかげです。逆に、加護が無い場合のステータスは竜星さんよりも劣っているはずです」


マールさんは、僕達にそう言った。

それを聞いた三人は、そういうものなのかと頷いた。

そして、僕の方はマールさんの言葉が気になった。他の転生者達のステータスは、加護の無い状態だと僕よりも低い?そう言い切るということは、つまり僕のステータスは素の状態で比べるなら、平均よりも高いということだろうか?


「僕のステータスって、平均よりは高いんですか?」

「そうですよ。竜星さんの世界の転生者の方達の普通のステータスは、平均二桁ですから」

「へぇー、そうなんですか」

「そうなんです。ステータスに三桁の項目がある人なんて、全体の一%もいませんよ」

「逆に言えば、一%はいるんですか?」

「いますね。ただし、その一%に人間は皆無ですけどね」


「えっ?」


人間は皆無って。仲間がいて、自分はおかしくないって思った矢先にそう言われて、気落ちした。というか人間は?人間以外も転生者になっているってこと?


「あのー」

「なんですか竜星さん?」

「その一%の人間以外はどんな人達なんですか?」

「そうですねぇ・・・」


マールさんは、僕の質問に若干考え込んだ。いや、記憶をあさっているのだろうか?


「ふむ、だいたい思い出せました」


天使のマールさんが思い出さないといけない程少なかったようだ。


「それで、人間以外にはどんなのがいるんですか?」

「鬼とか妖怪とか魔物とかですね」

「そうなんですか」


マールさんが挙げた名称は、それなりに意外なものだった。しかし、もとの世界の記憶が無く、天使であるマールさん達を見ているので、そういうのも転生するだぁ~、という感じである。

他の来訪者達が聞いたら、そんなわけあるかー!!というかもしれないけど。


僕は、そんな風に思った。


「鬼に妖怪、魔物。それはいったいなんだい?」


僕はとくに気にならなかったけど、僕達の話を近くで聞いていたカミューラさんが話に食いついた。カミューラさんの目は、かなり輝いている。


「それはですね」


マールさんは、律義にカミューラさんの質問に答え始めた。


残された僕を含めた男三人は、マールさん達のやり取りを眺めながら、それが終わるまでたわいのない話をした。




「カミューラ様、お待たせしました」


僕達がしばらくそんなことをしていると、大きな機械?を荷車に載せてセバスチャンさんがやって来た。


「おおセバスチャン!待っていたぞ」


セバスチャンさんに声をかけられたカミューラさんは、マールさんとの話を中断してセバスチャンさんに駆け寄った。


「ご命令のものはこちらでお間違えありませんか?」

「ふむ・・・。うむ、大丈夫だ」


カミューラさんは荷車の上の者を確認すると、セバスチャンさんに頷いた。


「そうですか。せれではカミューラ様、私は仕事に戻ります。ご用向きの際はお呼びください」

「わかった」


カミューラさんがそう言うと、セバスチャンさんは去って言った。



「さて、話の続きを聞きたいところではあるが、こちらを先にやってしまおう」


カミューラさんは、残念そうにマールさんを一瞥して僕の方を見た。


「どこまで話したかな?」

「ステータスまでです」


僕は、最後に話をした所を言った。


「そうだったな。それでは機材が来たことだし、ステータスカードをバージョンアップさせるとしよう」

「バージョンアップですか?」


僕はそんなことが出来るのかとマールさんを見た。


すると、マールさんも知らないようで首を横に振った。


「そんなことが出来るんですか?」


転生前の話だと、この世界の生物は皆ステータスカードを持っていると説明された。人間ではなく生物。この言い回しだと、おそらく動物やモンスターなどもステータスカードを持っていると予想出来る。つまり、ギルドが発行するような人為で製造されているのではなく、生まれた瞬間には持ち主と一緒に存在している。理とか世界法則の類なんだろう。そうなると、人為的なバージョンアップなど可能なんだろうか?


「ふむ。その顔を見るに、だいたい何を想像しているのかはわかる」


どうやら顔に出ていたようだ。僕は、そんなにわかりやすいのだろうか?


「さて、それで答えだが・・・可能だ。無論、誰もがバージョンアップを行うことが出来るわけではない。出来るのは、この世界で私だけだ」


カミューラさんは、はっきりとそう言った。


「出来る理由をお聞きしても?」


僕は、遠慮がちに質問した。


この世界でカミューラさんだけがバージョンアップを行える。その理由がかなり気になった。


「理由は簡単だ。バージョンアップを考えて試したのが私だけという話だ」

「はあ」


納得がいくような、いかないような、微妙な返答をされてしまった。というか、カミューラさんは何故そんなことを思いついたんだろう?


僕の中で、根本的な疑問が沸き上がった。


「付け加えるなら、私がこのことを思いついたのは、来訪者からゲームという物のことを聞いたからだ」


またカミューラさんに見透かされたらしく、僕が質問する前にカミューラさんが答えてくれた。


「ゲームですか?」


しかし、バージョンアップを考えた理由が転生者からゲームの話を聞いたからって。


「そうだ。そいつはな、ステータスカードを見てよくわかりにくいとほざいていたのだ。私の目の前で何度何度もな!」


カミューラさんは、イライラしたようにそう叫んだ。


たしかカミューラさんって、電化製品を参考に魔道具とかも作成したとか昨日言っていたよね?それで、その転生者の人はカミューラさんの前で何度も何度もステータスカードがわかりにくいと言っていたと。ひょっとしてその転生者の人って、確信犯なんじゃあ?


今のカミューラさんの様子を見て、僕はそんな風に感じた。


視線をカミューラさんからズラしてみると、他の三人は黙って頷いた。どうやら、みんなも同じ考えのようだ。


「あのー、それでバージョンアップすると具体的にはどうなるんですか?」


僕はいまだにイライラしている様子のカミューラさんにそう質問した。


「うん?ああ、そのことか。詳しいことは見た方が早いな。だから今は簡単に説明するぞ。まず第一に称号・能力・加護・祝福のより詳細な内容が見れるようになる。第二に、今まで反映されていなかった情報も所有者が望むと表示される。逆に、ステータスカードの情報を隠すことも可能になる。最後に、メニューなどのお役だち機能もついてくる」


「「お役だち機能?」」

なんだそれ?僕とマールさんは、同時にそう思ったらしく、意図せず声を揃えてそう言った。


「うむ。このお役だち機能こそが私の傑作の一つだ。あいつのゲームの話などを参考に、ゲームのメニュー画面や検索機能などをステータスカードに実装したのだ!」


「「はあ、そうなんですか」」


メニュー画面。ステータスカード自体ゲームや文庫みたいな要素なのに、これからさらに向こう側に近づくのか。ファンタジーとしてはどうかとも思うが、便利になるのは良いことだろう。僕は、そう結論した。


「それで、バージョンアップって何をすればいいんですか?」

「それはだな」


僕がそう尋ねると、カミューラさんはセバスチャンさんが持って来た荷車の上から、何かを抜き取って僕に手渡してきた。


「なんですか、これ?」


カミューラさんから手渡されたのは、見た目は革製の黒いカードケースだった。免許証などを入れておくあれだ。


「それがステータスカードをバージョンアップさせるオプションパーツだ」

「これがですか?」

「そうだ」

「ステータスカードを入れればいいんですか?」

「ああ。ステータスカードをそのオプションパーツに入れて、血を一滴垂らせばオプションパーツの術式が発動。ステータスカードのバージョンアップが開始される」

「血を垂らす理由は何ですか?」


ステータスカードって、転生前からあったんだから魂から情報を反映させているはずだよね?血を、肉体情報をかける理由って何だろう?


「血を取り込むということは情報を取り込むこと。魂以外の情報も取り込めば、それだけ反映される情報も多くなるのだ」

「そうなんですか」


そういう理由なんだ。ある意味想定内かな?あれ?けど僕の血ってどうなっているんだろう?


僕の頭の中で一つの疑問が沸き上がった。

僕は死んで転生した。魂運用局でステータスカードを見た時には種族の項目がなかった。魂だったから?それかステータスカードの仕様かもしれないけど、昨日の自己紹介の時にみんなは種族を入れていた。つまり、種族は自己紹介の時に言うのがこの世界の定番だということだと思う。そうなると、ステータスカードにも情報が記載されている気がする。僕の転生後の種族って、どうなっているのかな?人間っていう種族は聞いた中になかったから、やっぱりヒューマンになっているのかな?・・・まあいっか。


少し考えて、最終的にそう結論した。バージョンアップした後に確かめればいいんだし。


「じゃあとりあえずやってみます」

「ああ」


僕はカミューラさんからオプションパーツとステータスカードを受け取り、その二つを組み合わせた後に血を垂らした。

ポウッ


僕の血を受けたステータスカードが淡く発光した。そして、黒かったステータスカードの色が、若干透明になった。


「上手くいったようだな。それでは改めて君のステータスを見てみようか」

「わかりました」


カミューラさんがそう言うと、みんなが集まって来て僕のステータスカードを覗き込んだ。




ヤテン リュウセイ

Level:1

年齢:18

種族:アステリアン

【補正】全項目+2

【体力】

10/10

【魔力】

100/100

【筋力】5

【耐久力】  3

【敏捷】  10

【器用】  10

【精神】  20

【幸運値】50%


【称号】世界を渡った者、死を経験した者、■■■の盟友


【能力】星遊戯盤 Level:1、星属性魔法 熟練度:1


【祝福・加護】

ルシフェルの祝福


【属性】星


【職業】星導司

Level1


【備考】

記憶欠落状態




「お~!本当にいろいろと増えてる!」


僕は、変化したステータスカードを見て驚いた。項目がいろいろ追加されていて、本当にバージョンアップされていた。


「うむ。情報の反映は上手くいったようだな。しかし・・」

「謎が増えたな」

「ああ。なんだこの種族と祝福。それに備考の内容も気になる。何なんだ記憶欠落って?記憶喪失の間違いじゃないのか?」

「たしかにおかしな箇所が増えていますね」


僕がバージョンアップした事実に驚いたのにたいして、僕のステータスカードを見た他の四人は、カードに新たに表示された内容に驚いていた。


「えっ?」


僕は四人が口々に言った言葉が気になり、あらためてステータスカードの項目をよく見た。すると、たしかにおかしな内容が増えていた。種族が人間やヒューマンじゃなくてアステリアンとかになっているし、いつの間にかルシフェルさんから祝福をもらってもいる。それから、アークさんの言うとおり僕は記憶欠落ではなく、記憶喪失なんじゃあ?


「リュウセイ」


僕は頭を悩ませていると、カミューラさんから声をかけられた。


「・・・はっ!な、なんですか?」


悩んでいたせいで、若干反応が遅れてしまった。


「とりあえず詳細を確認してみてくれ。バージョンアップ後のステータスカードは、タッチしなくても望めば内容が浮かび上がるからな」


「わかりました」


僕はカミューラさんに言われたとおり、わからない箇所の詳細が知りたいとステータスカードに望んだ。


ブンッ!


すると、手の中のステータスカードを中心に、魔法陣が僕の周囲に出現した。そして、さらに魔法陣から黒い何かが浮かび上がった。


「メニュー画面?ステータスウインドウ?」


浮かび上がったそれは、僕の知識だとそう表現出来るものだった。


透明度が高く、向こう側が透けて見える厚みのない黒い長方形の板というか画面。その画面に規則正しく映る白い文字達。表示されている内容は僕が望んだものだ。しかし、表示形式がまんまゲームのチュートリアルやヘルプのような感じになっている。


「ふむ。こちらも上手くいったな。さて、それでは順番に見ていくか」

「わかりました」


表示した内容はカミューラさん達にも見えているようだ。僕達は、表示された内容を上から順に見ていった。



【種族】アステリアン


■■■の眷属たる種族。星属性の■■たる■■■の補佐をする役割を持つ。星属性の魔法を操り星の運行に介入する権利する。また、地脈とうの星のライフラインの制御・使用が可能。



称号

■■■の盟友

□□□□□□の一角である■■■の盟友に送られる称号。


効果:モンスター敵対値(中減少)

モンスターから悪意や敵意をもたれにくくなる。


属性耐性(中上昇)

各属性によるダメージや効果の影響を、ある程度自分の意思でレジスト(抵抗)出来るようになる。


属性親和性(中上昇)

各属性との相性が上がる。属性を含む技、魔法、アイテムなどの修得・加工期間などが短縮される。



能力

星遊戯盤

遊戯盤の範囲について

駒の入手方法について

駒の操作方法について

駒の種類について

駒のランク(位階)について

駒の・・・

駒の・・・

以下、ヘルプメニューの如く細かい内容が表示。


星属性魔法

星属性の魔法が使用可能。


星属性の魔法の対象範囲

重力・熱、光等のエネルギー・ダークマター等を含む物質・星の運行によって発生する各事象および概念・星が保持しているリソースなど。



祝福

ルシフェルの祝福

魂運用局のセラフィム、ルシフェルよりの祝福。


効果

光・闇属性使用時に効果大上昇。

光・闇属性との相性大上昇。

魔力上昇値上昇率大上昇。



属性【星】

存在の調和と変遷を可能とする属性。

強打・弱点属性無し。

全ステータス成長率増加。



星力

星属性魔法オリジンによって生成されたエネルギー。世界創造時に使用された最初のエネルギー。エネルギー効率、エネルギー変換率がともに高く、全原子・全属性を内包する魔力の上位互換エネルギーである。



職業【星導司】

■■■の眷属の専用職業。星に存在するもの達が司力を導き扱うことが可能。

星力所有量に応じて全ステータスに補正が入る。



備考【記憶欠落状態】

死亡時、■■■の手によって記憶を抜かれた状態。記憶喪失と違って自然回復不能。



・・・ツッコミどころが多いな。


表示された内容を見て、僕はそんな感想を搾り出した。


逆に搾り出さなければ何も思えなかった。実際のところ、マールさん達四人も僕の詳細情報を見て沈黙している。というか、詳細になっているところはなっているけど、詳細不明なところももれなく増えている!黒い四角に続いて、白い四角まで出てきたし!僕のステータスはいったいどうなっているんだ!?


僕は、頭を抱えた。


「予想以上に謎なステータスだな」

「「「うん」」」


カミューラさんが呆れたようにそう言うと、他の三人は頷いた。みんな思うことは同じようだ。


「それにしても、見たこともない箇所にはほとんど黒い四角が入っているな。何故名前が出ないのだ?これが名前というわけではあるまい?」

「そうですね」


そんな名前だと逆におかしいし。


「マールさんは何かわかりますか?」

「いえ。ですが、ルシフェル様かさらに上の方々ならあるいは。後でこのデータを送っておきます」

「お願いします」


ルシフェルさんはともかく、上の方々?神様のことかな?それだったら、きっと知っているよね。


僕は、黒い四角については丸投げすることにした。


「ふむ。そこはなんとかなる当てがあるのか?」

「はい、大丈夫なはずです」


カミューラさんの確認に、マールさんがそう請け負った。


「そうか。ではそちらは結果待ちにしよう。後に残るのは、内容に不明な点はないが、やたらと強力な内容のやつだな」


カミューラさんは、残っている能力、祝福、属性の箇所を見ながらそう言った。


「たしかにそうですね」


強力というか、カバーしている範囲がやたらに広い。全部組み合わせると、出来ないことの方が少ない気がする。


「ふむ。せっかくここに来たわけだが、試せそうなのは星遊戯盤と星属性魔法くらいか。祝福や属性も試してみたくはあるが、対象となる光・闇属性関係が無いので祝福は無理。属性の方も、イマイチ何をすればわかるのか微妙。まあ、こちらは星属性魔法の範囲が広がっていけば判明することだろう」


カミューラさんは、一度部屋を見てからそう結論した。


「じゃあカミューラさん、今からは能力を試すってことで良いんですか?」

「ああ、そのつもりだ。早速始めようと思うが、不都合がある者はいるか?」


カミューラさんの確認に、手を挙げる者はいなかった。


「ふむ。では始めるとしよう。リュウセイ、アーク、この部屋の真ん中に移動してくれ」

「わかった」

「あれ?アークさんも一緒にですか?」


アークさんはカミューラさんに言われて歩き出したが、僕は歩きださずにカミューラさんにそう確認した。


「ああ。対人効果も調べたいからな。それに、私は離れて観察するつもりだから、もし事故や暴走が起きた時の為に対象出来る人間が傍にいた方がいいだろう?」

「そうですね」


暴走や事故。ゲームだとありえないけど、ここは現実。たしかにそうなる可能はあるな。


僕はカミューラさんの言葉に納得がいき、アークさんの後を追いかけた。



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