『未知のダンジョン』 介入と降臨
転移した先は、激闘を繰り広げているラスペリと光天勇人の中間。
!
「誰だ!?」
僕の突然の出現に、ラスペリと光天勇人は驚いたようだった。
そして、光天勇人は僕を警戒するように後退してからそう聞いてきた。
「斥縛の指輪よ」
僕はそれに答えず、斥縛の指輪を発動させた。
「なっ!?」
斥縛の指輪が発光し、目の前にいた光天勇人を吹き飛ばした。
「勇人さん!」
「ユウト!」
「お兄ちゃん!」
それを見た光天勇人の仲間達は、ブルームとケモノ型マタンゴ達の相手を切り上げて、光天勇人のもとに駆け寄って行った。
「ぐっ、なんだこれ?身体が、動かない!」
光天勇人は、吹き飛ばされた先で身体をよじらせながらそんなことを言った。
「それがこの斥縛の指輪の効果。指輪を中心に斥力を発生させ、斥力に触れた対象を一定時間重力で縛り付けることが出来る」
光天勇人達に指輪を見せながらそう解説した。
「勇人さん!貴方は一体何者なんです!」
天使ミリエルが、地面に転がっている光天勇人を抱き抱えながらそう聞いてきた。
「何者?本当に僕が誰かわからないんですか、来訪者光天勇人。それに堕天使ミリエル?」
僕は、星刻閲覧で二人が僕の顔を見ていないことを把握しているけど、あえてそう言った。
「「えっ!?」」
僕の答えを聞いた二人は、とても驚いているようだった。
「って、誰が堕天使です!」
そして、すぐに我に返った天使ミリエルがそう叫んだ。
「堕天使でしょ。神より与えられた職務を投げ出した」
なので、ありのままの事実を告げた。
「えっ!?」
「堕天使ミリエル。君は、魂運用局の仕事を放り出したあげく、上司である天使ルシフェルになんの報告もせずに此処にいる。これらは普通に規則違反だ。今は白い翼もやがては黒く染まる。見た目が堕ちていなくても、君は堕ちる秒読み段階だ。違うかい?」
「それは・・・」
天使ミリエルは、僕が突き付けた事実に沈黙した。
「お前、本当に誰なんだ?なんでそんなことを知っている!」
斥縛の指輪の効果が切れたようで、天使ミリエルに抱き抱えられていた光天勇人が立ち上がりながらそう聞いてきた。
「君もわからないの?本当に?なら、僕が何者か名乗っても君にはわからないよ」
「くっ」
光天勇人は、悔しそうに舌打ちした。
やっぱり僕が誰かわからないようだ。
星刻閲覧で知っていたとはいえ、被害者である僕のことをまったく覚えていないとは、それだけ彼らにとって僕達との間にあったことが、彼らにとってたいしたことじゃなかったということか。
そう考えると、とても腹立たしくなってきた。
「おいユウト、今の話はどういうことだ」
「ユウトお兄ちゃん!ミリエルお姉ちゃんが堕天使ってどういうこと?」
僕が光天勇人達に怒りを覚えていると、彼らの仲間達が二人を問い詰めていた。
まあ、無理もない。彼女達は光天勇人が来訪者であることは知らされいたが、天使ミリエルについては教えられていなかったのだから。
ただ、教えなかった理由が天使ミリエルが天使らしくなくて、信じてもらえないだろうというのが微妙な感じだけどね。
あっちは取り込み中のようだし、今のうちにストゥリクト達を回収しておこう。
パチンッ!
指を一回弾いて星間転移を発動させた。別に能力発動するのに指を鳴らす必要はないけど、こういうポーズをとっておくと、後々利用出来そうなのでしてみた。
すると、離れた場所にいたストゥリクト達が僕の後方。ユグドラシル達の傍に出現した。
「ユウト!」
ストゥリクト達が転移したことで、今までストゥリクト達が相手をしていた冒険者達も、光天勇人達の傍に集まって来た。
「二組役者は足りないけど、これで今の役者は揃ったな。ネクサス」
『なんでしょう主様?』
「樹のユグドラシル、風のフレースウ゛ェルグ、氷のフェンリル、空のスレイプニル達とラスペリ達を連れて星界庭園に転移して」
僕はみんなを回復させる為に、ネクサスに僕の亜空間にみんなを連れて行くように指示した。
『ユグドラシル達を連れて行くのは構いませんが、何故ラスペリ達まで?私どもは主様と一緒に戦いますよ』
「気持ちは嬉しいけど、戦力が過剰だからみんな一回お休みしてて。それに、あの二人と因縁があるのは僕だけだからね」
ネクサスの言葉は素直に嬉しかったけど、あの二人とのことは自分で片をつけたいんだよね。
『たしかに主様の中ではそうかもしれませんが、主様の敵は私達にとっても敵ですよ』
「そう。それは素直に嬉しいな。けど、今回は自分だけで戦いたいんだ。対人戦もしてみたいし、下手するとみんなを巻き込むしね」
自分の魔法の規模を引き合いに出して説得を試みた。
『それでも私どもが主様の傍を離れる理由にはなりません』「まあ、ネクサス達なら耐えられるだろうしね。なら言い方を変えるよ。少しあっちで待ってて。僕が危なくなったらいつでも介入して良いから」
ネクサスの返事に自分でも納得してしまったので、さっきよりは受け入れやすい提案をしてみた。
『それならば良いです。ですが、主様は魔法使いタイプ。壁役が必要ですね。では、私の眷属を壁役として連れていって下さるのなら、私どもは星界庭園で待機しておきます。いかがですか?』
「うーん。・・・良いよ」
ネクサスの提案を少し考えて受け入れた。
たしかに僕は魔法使いタイプ。別にあえて近接戦闘をする必要もないし、この辺りが妥協点だと思ったからだ。
『提案を受け入れてくださりありがとうございます。では、壁役の召喚を開始します』
「召喚?」
ネクサスは壁役に何を呼ぶつもりだろう?やっぱりエレメンタル達かな?けど、それだったら僕の手持ちの駒にあるし、違うやつかな?
僕は、ネクサスが何を召喚するのか気になった。
『星空より来たれ水瓶座の星霊よ!星瓶アクエリアスを器と成し、この地に降臨せよ!《眷属召喚》!』
ネクサスがダンジョンの天井。その向こう側に広がっている星空に向かって、呼びかける。
ブゥン!
すると、星瓶アクエリアスが空中に浮かび上がり、その下に円形の魔法陣が出現した。
よく見てみると、その魔法陣に描かれている図形は、水瓶座のものだった。
そして、ボス部屋の天井から何かが星瓶アクエリアスに向かって飛来した。
「何だろう?」
光の正体は目視ではわからなかったけど、能力の方では水瓶座の星霊アクエリアスと表示されていた。
謎の光。星霊アクエリアスが星瓶アクエリアスにたどり着くと、星霊は星瓶の中へと入っていった。
カッ!
その直後、星瓶アクエリアスから目を刺さない淡い光が放たれた。
「えっ!いったいどうなるの?」
僕は、その現象に驚いた。
「なんだこの光!?」「勇人さん!」
「ユウト!」
「ユウトお兄ちゃん!」
「総員、警戒を怠るな!」
向こうで一悶着していた光天勇人達や冒険者達も、星瓶から放たれる光を見て驚いているようだ。
皆が浮足立つそんな中、冒険者達のリーダーの男だけは、しっかり状況に対処しようとしていた。
なかなかの好判断だ。
そんなことを思っいると、だんだん発光現象がおさまってきた。
「なんだこれ?」
そして、光が完全におさまると、発光していた星瓶があった場所に何かが居た。そう、あったではなく居ただ。
そこには先程まであった星瓶は影も形も無く、代わりに別の者が居た。
青白い無機質な複数の水瓶と、透明な液体で構成されている10m大の人型の巨人。
それがその場所にいた存在を表す、端的な言葉だ。
能力で見た名前の欄には、アステリアン・アクエリアスと表示されている。
そのことから考えて、この存在がネクサスが召喚した眷属であることがわかった。
『それでは主様、この者を壁として使ってください』
「う、うん。わかったよネクサス。ありがとう」
『いえ。それでは私どもは向こうで回復しております。では』
ネクサスはそう言うと、みんなを連れて転移した。
「さて、じゃあ始めようかアクエリアス?」
ズゥーン! ズゥーン!
僕は、ネクサス達を見送った後アクエリアスにそう尋ねた。僕がそう尋ねると、アクエリアスは僕と光天勇人達冒険者達との間に移動した。
どうやら、このアクエリアスもラスペリ達同様、会話は出来ないようだ。
そんなことを思った後、僕の方も少し移動して戦う準備を整えた。
さて、まずはどんな攻撃をしようかな?
そんなことを考えつつ、アクエリアスの後ろから光天勇人達を見た。
光天勇人達は、アクエリアスの登場にさらに驚いていたが、冒険者リーダーの指示に従って、迎撃準備をしていた。
「さて、結局僕が誰だか思い出せなかったようだけど、そんなことは僕には関係ない。来訪者光天勇人、堕天使ミリエル。僕はこれから君達に報復する!」
僕は、報復を宣言した。もっとも、今からする報復は僕の分ではなく、マールさんの分だけど。
僕の方は、加護を譲渡した形だから報復する権利も手放している。
だけど、マールさんが位階を剥奪された原因が彼らにあるいじょう、マールは彼らに報復する権利がある。
肝心のマールさんが花になっているいじょう、代わりに報復出来るのは僕だけ。
マールさんは報復は考えていないかもしれない。でも、天使ミリエルの上司として、お仕置きは考えているかもしれない。
このチャンスを逃すと、天使ミリエルと出会う機会は二度とないかもしれない。
僕の方は、ボスの好感度や星遊戯盤の能力でダンジョンをわりと安全に行き来しているけど、彼らにはそれは無理だ。
光天勇人と天使ミリエルの能力が高くても、彼らは近いうちにダンジョンで死ぬことになるだろう。
ならば今この時しかチャンスはない。
「アクエリアス、君は壁役だけやってくれれば良いからね」
【そういうわけにはまいりません】
「えっ!?」
僕がアクエリアスに声をかけると、アクエリアスの水瓶から水が出てきて、目の前でそう文字を形作った。
【貴方様お一人で戦わせるわけにはいきません。最初は我が参ります《アクアジェット》】
最初の文字が崩れ、次にその文字を形作ると、アクエリアスは手にあたる部分にある水瓶から、高速で水を噴射した。
「なんだ!?」
「きゃっ!?」
「総員退避!」
アクエリアスから噴射された水が光天勇人達を襲い、彼らをかなり後方に吹き飛ばした。
「へぇー、こんなことが出来るんだ」
僕はその光景を見て、一つ頷いた。
水瓶座の能力はやっぱり水を扱うもののようだ。
「他には何か出来ないの?」
【私に出来ることは、液体の召喚と液体を操作することの二つだけです】
「そう」
僕がアクエリアスに能力を確認すると、今度はそんな文字が宙に描かれた。
液体召喚と液体操作。能力は二つだけなんだ。
少ないとも思うけど、僕みたいに能力のバリエーションが豊富過ぎるのも使い勝手がイマイチだし、これくらいがちょうど良いのかもしれない。
「さて、僕も追撃しようか。別離の指輪よ」
僕は、水でびしょ濡れになっている冒険者達の方を指差し、指輪の一つの効果を発動させた。
ピシィッ!ピシィッ!ピシィピシィッ!
「何だ!?」
指輪が発動すると、冒険者達の周囲でそんな音が聞こえだした。
冒険者達は、音の出所を探してキョロキョロしている。
そんななか、冒険者達がキョロキョロしている間も音は響き続けた。
「おいっ!足元を見てみろ!」
そんな中で、一人の冒険者が足元を指差しながら声を上げた。
冒険者達が、その声を上げた冒険者の指差すものに視線をやると、自分達の足元が凍り付き初めていることに初めて気がついた。
だけど、今さら気がついてももう遅い。
僕は、別離の指輪の効果を限定加速の能力で加速させた。
その結果、水はどんどん氷に変わり、冒険者数人をあっという間に氷漬けにした。
「まずは五人。アクエリアス、追加でアクアジェットをお願い」
【承りました《アクアジェット》】
僕は、五人の冒険者が氷像になったのを確認して、アクエリアスに水を追加するよう頼んだ。
アクエリアスは快く応じてくれた。
再びアクエリアスの水瓶から、大量の水が噴射された。
「させるか!《アースウォール》」
それを見た光天勇人は、足元に手を当てながらそう言った。すると、光天勇人の手から魔法陣が発生。
その魔法陣から土の壁が競り上がってきた。
アクエリアスが噴射した水は土壁に激突。水は冒険者達のもとまで届かず、土壁に激突した後土壁の横へと流れていった。
「土剋水。土は水をせき止めるって、ところかな」
アクエリアスの水が防がれるのを見て、何となくそう思った。
「じゃあ次にいってみよう」
【承りました。《リキッドシュート》】「えっ!?」
次は自分から先に攻撃するつもりで声に出したら、アクエリアスが攻撃を命じられたと勘違いして次の攻撃を開始した。
今度は、水瓶から黒っぽい何かが土壁目掛けて射出された。
ドォッカァーン!!
射出されたものが土壁に命中すると、大きな音を立てながら爆発した。
「はっ?」
僕は、その光景に呆気にとられた。
「退避!動ける者は負傷者を移動させろ!」
爆発で穴ね空いた土壁の向こう側から、冒険者リーダーのそんな叫び声が聞こえてきた。
どうやら、今の爆発で負傷者が発生したようだ。
それを考えると、今の爆発の威力がかなりのものであることがわかる。けど、
「なんで爆発なんておきたんだ?アクエリアスの能力は、液体の召喚と操作。二つだけのはずだろう?」
アクエリアスの能力と、現状が繋がらなくて困惑した。
【そうです】
「おっ!なら、なんで爆発なんてしたの?というか、今射出した黒っぽいものって何?」
僕が困惑していると、目の前にアクエリアスが僕の疑問を肯定する文字を形作った。
なので、もっと根本的な疑問。射出した物体の正体について聞いてみた。
【今のはニトログリセリンです】
「ニトログリセリン?それって、衝撃を受けると爆発するアレ?」
【それです】
「ニトログリセリンって液体のカテゴリーなの?」
ニトログリセリン。たしかに見た目は液体だった気がするけど、液体かと言われるといまひとつしっくりこなかった。
【少なくとも液体の召喚で呼び出せますが】
「そう。なら、ニトログリセリンのカテゴリーは液体ってことでいいや。けど、ニトログリセリンが液体扱いになっているってことは、他にも予想外のものを召喚出来そうだよね。他にはどんな変わったものを召喚出来るの?」
その点が結構気になった。下手な液体を召喚されると、殺すつもりのない冒険者達まで意図せず死なせてしまうかもしれない。だから、あらかじめちゃんと確認しておかないと。
【そうですね?例えば・・・】
「これいじょう好きにはさせません!《ライトアロー》」
アクエリアスが僕の質問に答えようと、水の形を変えようとしたちょうどその時、そんな叫び声を上げながら天使ミリエルが無数の光の矢を放ってきた。
「うん?・・・アクエリアス、それで続きは?」
僕は、天使ミリエルが攻撃を仕掛けて来るのを認識したが、意味の無い攻撃だったので放置した。
【主様!《アクアウォール》】
ただ、アクエリアスの方は僕に向かって飛んで来た光の矢に慌てていた。そして、アクエリアスは急いで水瓶から水の障壁を僕の周囲に展開した。
別に防御なんてしなくても良いのに。
僕がそう思っていると、目の前に迫っていた光の矢達が視界から一時的に消えた。
次に光の矢達を見た時には、光の矢達は全て明後日の方向に飛んで行った後だった。
【いったい何が?】
「放浪の腕輪の効果だよ。自分がターゲットにされた時にランダムで転移させる能力」
僕は、光の矢が障壁に当たらなかったことを訝しんでいるアクエリアスにそう説明した。
【そうなのですか?】
「そうだよ。だから、向こうからの攻撃は気にしなくて良いよ。自動転移で勝手に回避するからね」
【わかりました】
「それじゃあ、あらためてさっきの続きを聞かせてよ」
【わかりました。水やニトログリセリン以外に召喚出来るのは】
「おい!向こうに居たぞ!」
アクエリアスが文字を作っていると、また邪魔が入った。
そんなに離れた場所に転移していないから、すぐに見つかるのはわかる。けど、アクエリアスの答えを邪魔するのは、狙ってやっているのだろうか?
だったら、ただ自分達の首を絞めているだけなのに。
「今度は逃がしませんよ!《ライトアロー》」
僕がそう思っていると、天使ミリエルが再び光の矢を放ってきた。
今度はアクエリアスは防御しなかった。放浪の腕輪の効果が発動。
僕達は再び転移した。が、今回は光の矢は明後日の方向には飛んで行かなかった。
光の矢は、僕達が転移する度に僕達を追尾して来たからだ。どうやら、天使ミリエルの言った今度は逃がしませんと言う言葉は、比喩表現の類いではなかったようだ。
光の矢にホーミングの能力を持たせようだ。
「面倒なことを」
放浪の腕輪を使用しても僕は疲れないけど、光の矢はいつまでも追いかけて来るのでイタチごっこになった。そのせいで、アクエリアスとゆっくり話が出来ない。
【どういたしますか?】
「すぐに片付けるよ。迷走の指輪、導きの腕輪よ」
どうするかアクエリアスに聞かれたので、僕はそう答えながら指輪と腕輪の効果を発動させた。
すると、こちらに向かってきていた全ての光の矢が僕達を見失ったようにフラフラしだした。そして、すぐにまた真っ直ぐ飛ぶようになって、目標目掛けて飛んで行った。
僕が導きの腕輪でターゲットにした冒険者達へ。
「「「うわー!?」」」
今度は冒険者達が光の矢と鬼ごっこを開始した。
【何をなされたので?】
「迷走の指輪で光の矢のターゲットを初期化して、導きの腕輪で新しいターゲットを書き込んであげただけだよ」
アクエリアスの質問に、そう答えた。
「ミリエル!光の矢を消せ!」
「無理ですぅ~!」
冒険者達が光の矢に追いかけ回されている中、光天勇人と天使ミリエルのそんなやりとりが聞こえてきた。
やっぱり天使ミリエルはドジっ娘だ。
「さて、もう邪魔が入るのにはうんざりだ。アクエリアス、もう威力が低いのは実地で見せて」
そんな彼らの言い合いを視界に捉えつつ、アクエリアスにそう頼んだ。
もう悠長に説明してもらわなくても良い。
わからないやつは、ニトログリセリンの時のように後から聞くことにした。
【承りました。《リキッドボール》《リキッドスライム》】
僕の要望を聞いたアクエリアスは、両手の水瓶からそれぞれ別の液体を冒険者達に向かって発射した。
「何だ!?」
光の矢に追い回されていた冒険者の何人かはアクエリアスの攻撃に気づき、慌てて回避行動に移った。しかし、あくまで数人。大半の冒険者達はアクエリアスの攻撃に気づかず、攻撃が不意打ち気味に命中した。
その結果どうなったかというと、アクエリアスが発射した二種類の攻撃の内、ボール状の白い液体を受けた冒険者達は一瞬で凍り付いた。
一方、ぐにゃぐにゃドロドロした銀色の液体を受けた冒険者達は、金属製の像になってしまった。
「「「「はっ!?」」」」
その光景を見た僕と冒険者達の口からは、自然と同じような顔をしてそんな言葉がもれていた。
威力の低い攻撃を注文しただけなのに、なんでこんな光景が展開しているのだろう?
僕は、現実逃避気味にそんなやくたいも無いことを考えた。
「おのれよくも!」
「・・・うん?」
考え込んでいると、そんな叫び声を上げながら冒険者の一人がこちらに突撃してきていた。
【愚かな。《リキッドブレッド》】
ヒュッン!
ブシャアー!!
アクエリアスがそう文字を形作った直後、こちらに突撃してきていた冒険者が腹から血を吹き出しながら倒れた。
・・・・・・・・
その光景を見た誰もが沈黙した。
「「「「うわぁぁぁ!!」」」」
そして、冒険者達の多くは一斉に逃げ出した。
光の矢達は、そんな冒険者達を追って行った。
逃げ出さずに残ったのは、光天勇人と天使ミリエル。その仲間の二人。冒険者リーダーのいたパーティー。あとは二つ三つのパーティーだけだった。
安直な思案で作った予定とは違ったけど、話す価値と意味のある人間を残すことに成功した。
さあ、ここからは戦いだけではなく、会話もしていこう。
邪魔者がいなくなったいじょう、ようやく邪魔されずに話が出来る。
まあ、ここまでやっておいて相手が会話してくれるかはわからないけれど。
そう思いつつ冒険者達を見た。




