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『未知のダンジョン』 立ち往生と因縁の相手

「何もいない?」


『挑戦者の扉』をくぐった先は、今までのボス部屋の数倍の大きさがあった。

ただ、その中で待っているはずのボスモンスターの姿がなかった。


「もう倒されちゃってる部屋かな?」


あるいは、僕の索敵を無効化している?いや、今までのパターンだと、自分から僕の目の前に出て来そうだ。

そうなると、答えは前者だね。


「仲間にするボスがいないのなら、さっさと次の階層に行こうっと。ええっと出口は・・・あれ?出口が複数ある?」


出口を探してみると、後ろの扉を除いてこのボス部屋には扉が五つあった。


正面、左右、上下。上と下の扉は目視ではわからなかったけど、能力にはしっかり引っ掻かていた。

「計六つ。ダンジョンって、縦横以外にも広がっていたんだ」


僕は、それらの扉を見てようやくその可能性に思い到った。てっきり、ダンジョンは上下に伸びているものだと思い込んでいた。


さて、進行方向に新しい選択肢が出来たわけだけど、どれに進もうかな?


やっぱり、今までなかった上下左右の扉を調べてみよっかな。


「ネクサス、まずは左の扉に行ってみてくれる」

『わかりました』


ネクサスは、左に向かって飛んだ。


「うん?開かない?」


左の『挑戦者の扉』を開こうとしたけど、開かなかった。

押してみたり、引いてみたりしたけど駄目だった。

発想の転換で上下左右にスライドさせてみようとしたけど、これも駄目だった。


「じゃあ、次は右の扉の方に行ってみよう」

『はい』


今度は、反対側の『挑戦者の扉』に向かった。


「こっちも開かない」


が、反対側の扉も開かなかった。


「もともと開かない扉だった?それとも、やっぱりこの部屋にはボスがいる?・・・とりあえず、他の扉も確かめてみよう」


それから順に扉が開くかどうか確認していった。

結果としては、四方の扉は全滅。

上下の扉は完全には開けていないけど、開閉が可能なことが確認出来た。


ただ、隙間から覗いた限り、上下の扉の先は小部屋らしく、階段とかはなかった。


「さて、現在外に出られないことがわかっちゃったなぁ。これからどうしよう?みんなどう思う?」


どうしようか迷ったら、他人の意見を聞くにかぎる。


『外に出られませんし、上と下の小部屋を調べたらどうでしょう?』


コクリ


ネクサスの意見に、ラスペリ達も賛意を示した。


「わかった。じゃあ、上から調べてみよっか」

「はい」


僕達は、まずは上の小部屋に向かった。


「本だね」

『本ですね』


上の小部屋の中には、大量の本が置かれていた。

四方の壁から天井まで本がぎゅうぎゅうに詰まっていた。


「何の本だろう?」


近くの本を一冊手にとって読んでみた。本の内容は、何かのレシピのようだった。

それからしばらくの間、小部屋の中にある本を読みあさった。


それなりに読みあさった結果、この小部屋にある本達は、様々なことを伝えるものであることがわかった。

内容としては、神話、歴史、文化、技術、生物のこと等などだ。


僕としては、アイテムの作り方や料理と薬のレシピ、各種魔法の使い方や魔法理論が書いてある本の存在が嬉しかった。


やっぱり、使い道がある知識の方が嬉しいものだ。

けど、全部を読んでる時間は無いんだよなぁ。この本、持って帰れないかな?あっ!でもこの本に持ち主がいる可能性はあるんだよね。その辺りのことはちゃんと調べておかないと。


「《星刻閲覧》」


僕は、この小部屋の過去を調べた。

ここに本が置かれた時間まで過去を閲覧した結果、この本達はダンジョンの宝箱に入っている類いの物であることがわかった。

この小部屋が出来た時、ダンジョンから吐き出された宝箱の中身がここの本達の正体なのだ。


「宝箱の中身だったら、お持ち帰りしても問題無いか。けど、結構量があるなぁ。どうしよう?」


自分的には、全部お持ち帰りしちゃいたいんだよねぇ。


「ふむ。たしか星物召喚に良い物が。《星物召喚》!」


足元から、お目当ての物が競り上がってきた。


「良しと。それでは試しに」


召喚した物を手にとり、その中に近くにあった本を入れてみる。

入れた本は、入れた途端に消失した。


「うん、問題無さそうだ。この亜空間バック」


僕が召喚したのは亜空間バックというアイテム。バックの中に無数の亜空間が形成されていて、バックの入口サイズならなんでも入る、ゲームのアイテムボックスのようなバックだ。


「みんなお手伝いお願い」

『わかりました』


コクリ


それからは、みんなで本をどんどん亜空間バックの中に入れていった。


「さて、じゃあ次は下の扉だね」

『はい』


本を全部詰め込んだ僕達は、次は下の扉に向かった。




「こっちは、・・・何だこれ?」


下の小部屋には、いくつかの台座が設置されていて、その上には何かが置かれていた。


「うん?これってたしか、・・・そうだ上にあった本の中にあった」


台座の上にある物が、上で見た本に載っていたことを思い出した僕は、亜空間バックからその本を探した。


「ええっと、・・・あった!これこれ」


お目当ての本を見つけた僕は、その本をから目の前にある物の正体を探した。


「何々、ふむふむ。・・・げっ!」


僕は、本を読み進めていった結果、台座にある物の正体を知って、思わずうめき声をもらした。


「これは置いたままにしていた方が良いな。SAN値に自信もないし」


僕は、置かれている物はそっとしておくことにした。


「みんな、上に戻るよ」

『わかりました』


コクリ


僕達は、下の小部屋を後にした。


ただ、この時の僕は気づいていなかった。もう見た時点で遅かったことに。

そのことは、後々上のボス部屋で知ることになった。


「さて、上の小部屋で収穫はあったけど、外には出られそうにないし、これからどうしようかな?」


僕は、目先の目的が無くなってしまい、これからどうするか悩んだ。


『主様、事態が動くまで本でも読まれてはいかがですか?』

「そうだね、そうしよっか」


ネクサスの提案に頷き、まだ読んでいない本を読むことにした。


それからしばらくの間は、ただ本を読んで過ごした。




ギィ


「うん?」


しばらく本を読んでいると、『挑戦者の扉』が開かれる音がした。

音のした方を見ると、誰かが部屋に入ってくるところだった。


「誰が来たのかな?とりあえず、隠れようか」

『わかりました』


アロガンド王国軍のことがあったので、まずは様子を見ることにした。

僕達は、見つかる前に上の小部屋に隠れた。

ここなら気づかれる可能性はほとんどない。


扉を少し開き、ボス部屋に入って来た人の姿を確認した。


「あれ?なんでまだこんな所にいるんだろう?」


入って来た奴は、知っている相手だった。

入っ来たのは、ダンジョンに入って二つ目のボス部屋で戦った相手。樹のユグドラシルだった。

ただ、樹のユグドラシルの傍には、他に何人かの人がいたけど。

あの後、仲間と合流でもしたのだろうか?

けど、それでも今ここにいる理由がわからなかった。


たしか、最後に見た時は転移で去って行ったはずだ。

樹のユグドラシル達も、僕みたいに迷子になっているのだろうか?


僕は、黙って彼らの様子を観察した。




「何もいませんね」


樹のユグドラシルは、ボス部屋の中を確認してそう言った。


「そうだな。誰かがボスを倒して、まだボスが復活していないんじゃないか?」


樹のユグドラシルの言葉に、背丈の高い猛禽類のような眼をした男がそう言った。

ちなみに名前の方は、フレースウ゛ェルグだ。


「それならさっさと行こうぜ」


長髪で、アビスさんと似た印象を受ける男がそう言った。

ちなみに名前はフェンリルだ。名前からすると、狼系の人族かもしれない。

多分、そのせいでアビスさんと似た印象を受けたのだろう。


「そうだな」


フェンリルの言葉に賛意を示したのは、最後の引き締まった体つきをした男だった。

名前は、スレイプニルとなっている。




「全員、北欧神話に出てくる名前だ」


北欧神話の中心たる世界樹ユグドラシル。世界樹の頂上にいる鷲の姿の巨人フレースウ゛ェルグ。神喰らいの神狼フェンリル。北欧神話の主神の相馬であるスレイプニル。


四人の名前を確認した僕は、自分の中の知識と名前を照合した。

結果、それで間違いないと判断した。


「けど、これって偶然なのかな?」


能力で確認したいじょう、彼らの名前は偽名ではないはず。それとも、この世界の名前としては一般的なんだろうか?


疑問が出てきたが、とりあえず彼らの観察を続けることにした。


彼らの行動パターンは、僕とたいして変わらなかった。

手近な『挑戦者の扉』を開こうとして開けず、四方の扉の開閉を試していった。当然というか、結局全ての扉が開かなくて立ち往生することになった。


彼らは今のところこの部屋や、僕達のことには気がついていないようだ。


いつ気づかれるかわからないけど、彼らの観察を続行する。




数時間程経過した。が、彼らの方でも収穫は何もなかった。

このボス部屋、いったいどうなっているんだろう?


ガタン


「ガタン?」


このボス部屋のことを考えていたら、後ろから何かが揺れる音が聞こえてきた。

そちらを見ると、暴れるブルームをラスペリ達が羽交い締めにしていた。


「いったいどうしたの?」


なんでそんなことになっているのかわからなかったので、率直に尋ねた。


『主様、ブルームはユグドラシルとやらをぶん殴りたいそうです』


すると、ネクサスがこう言ってきた。


「ブルームが樹のユグドラシルをぶん殴りたい?ああ、まだ恨んでたんだ」


僕は、ブルームと樹のユグドラシルとの間にある因縁を思い出して、ブルームが暴れた理由に納得がいった。

まあ、自分を無理矢理使役していた相手をぶん殴りたい気持ちはわからないでもない。

けど、ブルームだけを突撃させて良いものやら?


『何を考えておられるのです?』

「うん?いや、ブルームだけを突撃させて良いのかと思って」

『えっ!?ブルームの突撃はお許しになられるのですか!』

僕の返答に、ネクサスから驚きの声が上がった。

よく見ると、ラスペリ達や張本人のブルームも驚いている様子だった。


「うん。それがどうかしたの?」


けど、僕にはみんなが驚いている理由がさっぱりわからなかった。


『い、いえ。ただ、私どもは主様ならやめるように言われると思っていまして』

「ああ、そういうこと。たしかに進んで危ないことはしてほしくはないけど、彼だと少し事情が違うからね」


ネクサス達の考えが間違っているわけではなかったので、僕はそう答えた。


『と、言いますと?』

「ブルーム個人の因縁を、僕の願いだけで止めたりはしないってこと。それに、樹のユグドラシルとは僕も因縁があるしね」

『因縁と言いますと?』

「それはね」


僕は、マールさんやブラド、ラキアちゃんに遠征組のことを知らないメンバーに話して聞かせた。


「と、いうわけだよ」『なるほど。主様もあの男に恨みがあるのですね』

「恨みまではいかないと思うけど、確執はあるね」

『そうですか』


僕がそう答えると、ブルームを羽交い締めにしていたラスペリ達が、ブルームから手を離した。

ついでに言うと、ラスペリ達全員の敵意が樹のユグドラシルに集中しだしたように感じた。


「みんな?」


みんなの急な雰囲気の変化に、戸惑いを覚えた。


『主様、私どもに奴らを襲撃するご許可を』

「えっ!襲撃!?」

『はい。私ども一同で、奴らを見事打ち倒してご覧にいれます』

「そ、そう。うーん、どうしよっかな?みんなで行くのならブルーム一人を突撃させるよりは良いけど。・・・わかった、みんな行ってきて良いよ。けど、危なくなったら引き戻すからね」

『わかりました。皆行きますよ』


ネクサスがそう言うと、ラスペリ達とネクサスの姿が小部屋から消えた。

どうやら、星間転移を使ったみたいだ。みんなの反応が、下のボス部屋の方に出現した。


星間転移は、同一空間内を移動する能力。

奇襲にはもってこいだ。

それに僕の方も、最初の戦闘時に樹のユグドラシルに奇襲を受けたので、ちょうど良い意趣返しになって満足だ。


おっと、そんなことを思っている場合じゃなかった。

いつでも引き戻せるように戦闘の推移を見ておかないと。


僕は、下で起こっている戦闘を観戦する為に下を覗き込んだ。




「何なんだこいつら!」

「わからん。強さはともかく、数からしてこの部屋のボスではないはずだ」

「じゃあいったい何なんだ?」

「わからん」


ラスペリ達の襲撃をうけたフェンリル、フレースウ゛ェルグ、スレイプニルの三人は、そんなことを言い合いながらみんなの攻撃を捌いていた。


「おいユグドラシル、どうかしたのか?」


フェンリルが、ストゥリクトの放つ石杭を回避しつつ、会話に参加してこないユグドラシルを訝しそうに見た。


「いえ、半分以上知らない相手なのですが、二体程最近見た覚えのある相手がいます」

「どいつのことだ」


フレースウ゛ェルグが、アサイドの毒攻撃を風で逸らしながらユグドラシルに尋ねた。


「あそこにいる。キノコ型の奴と、今私に蔓を伸ばしている花型の奴です」


ユグドラシルは、襲い掛かるブルームの蔓を、自身も腕から蔓を出して迎撃しながら、フレースウ゛ェルグにそう答えた。


「そうか。で、どんな状況で見た相手なんだ?まあ、相手のこの様子からすると、とても友好的な接触じゃなかったんだろうがな」

「ええ、まあ」


それから樹のユグドラシルは、自分と僕達との間にあったことを仲間に話し出した。




「それってお前が全面的に悪いだろう」

「そうだよな。迷子の子供に一方的に奇襲を仕掛けたあげく、花にしちまったんだから」

「ついでに無理矢理使役していたモンスター。これだけ条件が揃って恨まれていないわけはないだろうな」


ユグドラシルの話を聞き終えた三人は、口々にそう言った。


「いや、たしかにそれだけ並べると私が悪者だが、私だってあの時点ではダンジョンがこんなことになっているとは知らなかったんだぞ!」


樹のユグドラシルは、必死の様子で仲間達に説明した。


いわく、あの時点では彼らを自分のアジトに侵入して来た侵入者としか判断のしようがなかった。

弱そうなのは自分を騙そうとするフェイクで、実際には上の階層に仕掛けていた罠を突破出来るだけの力を持った相手だと思っていたなど、あの時点での自分の認識をユグドラシルは説明していった。


「それはたしかに同情の余地はあるな」

「けど、それってこいつらには関係無いよな?」

「そうだな。彼らにとっては、ユグドラシルに無理矢理使役されたことも、奇襲を受けて仲間達を花にされたことも、ただユグドラシルにやれたことでしかないからな」


三人はユグドラシルの釈明を聞いて、多少はユグドラシルに同情したようだけど、それでもお前が悪いという目でユグドラシルを見ていた。


どうやら、ユグドラシルの仲間達は比較的常識人のようだ。というか、こうしてユグドラシルの話を聞いてみると、やっぱりお互いに行き違いがあったことがわかった。

もっとちゃんと話ておけばよかった。


まあ、それも過去の話。スレイプニルの言うとおり、僕達にとってはすでにやられたことでしかない。


こんな話を聞いたからといって、今さらブルーム達に攻撃を中止させるつもりはない。


マールさん達を花に変えてくれた分の礼は、きっちりと返さないとね。

にしても、やっぱり四人とも強いな。


僕は、決意を新たにしつつ、下の戦闘内容を見てそう思った。


なんせ、それなりの時間ユグドラシル達は話をしていたけど、その間もラスペリ達の攻撃は続いていたんだから。


ラスペリは徒手空拳で攻撃を仕掛けていたけど、スレイプニルはユグドラシルの話に耳を傾けながらその攻撃を危な気なく捌いていた。

話をしていたユグドラシルの方も、ブルームの蔓を弾きながら普通に釈明をしていたし。


フレースウ゛ェルグは、ストゥリクトの石化の砂とアサイドの泡攻撃を風で散らしてまったく寄せ付けていなかった。


フェンリルも、ウ゛ァースの魔法攻撃を簡単に回避した上、ちょいちょいウ゛ァースに攻撃を仕掛けていた。


ネクサスはまだ参戦していないし、ラスペリ達もまだ全力を出していないとはいえ、素直に四人をすごいと思った。


けど、樹のユグドラシルの話も一通り終わったし、そろそろ全員本気にさせた方が良いかな?あるいは、僕が参戦するのもありか。

けど、僕は後衛。ここから支援攻撃をする程度に留める方が良いかな?。


どうしようかな?


・・・うん、まだ戦況を見てるだけで良いか。

ネクサスの戦闘能力もこの際見ておきたいし。


僕はまだ手出ししないことに決めた。




『そろそろ私もいきましょうか』


ネクサスはそう言うと、今までの上空から四人を牽制するのを止め、攻撃態勢に移行した。

ネクサスの全身から、ドラゴンの風格。それをもたらす圧倒的な魔力が周囲に溢れ出しはじめた。


「何だこの魔力!」

「この魔力の規模、ただのドラゴンではない?」

「ユグドラシル、あのドラゴンについては何か知らないのか?」

「いえ、私が会ったのはさっきも言ったとおり、目の前の二体だけです。あのドラゴンについては何も・・・」

「そうか」


ネクサスが戦闘態勢をとったことで、ユグドラシル達四人も警戒しだした。


『私の内に宿りし星器が一つ。星瓶アクエリアスよ、顕現したまえ!』


ネクサスは、ユグドラシル達のことは気にせず、僕が与えた星器の顕現を開始した。

ネクサスが星器の名前を宣言すると、ネクサスの鱗の一部が揺らめき、そこから3m近いサイズの巨大な水瓶が出現した。


「なんだあのでかい壷!?」

「わからん。だが、かなり強い力を感じる。おそらくはかなり高位のマジックアイテムが何かだ」


フェンリルは、突然出現した水瓶にひどく驚いた様子だ。

また、フレースウ゛ェルグも同様に驚いていたが、こちらは星瓶をマジックアイテムと判断して、かなり警戒しているようだ。


「が、あんな壷を出して何のつもりなんだ?てっきり、ドラゴンブレスか強力な魔法を撃ってくるかと思ったのに?」


スレイプニルの方は、もっと直接な攻撃がくると予想していたようで、現状の意図に悩んでいるようだ。


「いえ、ひょっとするとブレスや魔法なんかよりもマズイものかもしれません」


ユグドラシルは、何かを察したように仲間にそう言った。


樹のユグドラシルは、何を察したんだろう?


僕自身、まだ実際に星器を使ったことがないから、あれがどんな性能や効果を持っているのかわからないのに。


自分の能力が、自分よりも前に敵に何か理解されるのって、変な感じ。


「ユグドラシル、それはどういうことだ?」


フレースウ゛ェルグが、ユグドラシルにそう尋ねた。


「あれをフェンリル達は壷と言っていましたが、おそらくアレは水瓶です。となれば、本当に重要なのは水瓶の方ではなく、中身の液体です」

「液体?そういえば何かチャプチャプいっているな」

「ええ、よく見てください。器の水瓶よりも、中身の方から強い力がここまで漂ってきています」

「・・・たしかに」


ユグドラシルの話を聞いていた他の三人は、水瓶から中身に注意を向けた。そして、水瓶の中身から何かを察して、ユグドラシルの言葉に頷いた。


『ほうっ、そこまで察しますか。さすがに主様が関心を持っているだけはありますね』


ネクサスの方も、このユグドラシルの推察には感心したようにそう言った。


ネクサスからそう言われたユグドラシル達は、さらに警戒を強めた。

どうやら、ネクサスの余裕の態度が警戒を強めた理由のようだ。


『ラスペリ、ブルーム、ストゥリクト、アサイド、ウ゛ァース。星の力を受け取れ!《カーレント》』


ネクサスは、警戒しているユグドラシル達から、ラスペリ達の方に視線を移してそう言った。

ネクサスがそう言うのと同時。

星瓶から大量の煌めく深紅の液体が溢れ出した。

さらに、その直後にネクサスが使用した流れの魔法で、その溢れ出した液体が溢れ出した端からラスペリ達のもとに運ばれて行った。


「こちらに来ない?いったい何をするつもりだ!」

『なぁに、ラスペリ達に力を与えるだけのことだ』

「何!?・・・これは!?」


スレイプニルは、ネクサスのこの行動の理由をネクサスに問うた。

ネクサスは、そんなスレイプニルに可笑しそうに笑いながら答えた。

スレイプニルは、ネクサスのその言葉を訝しみ、視線をラスペリ達に向けた。

そして、ラスペリ達の変化に驚きの声を上げた。


他の三人も、ラスペリ達の変化にそれぞれ驚いているようだ。


かくいう僕も、ラスペリ達の変化には驚いている。


現在、ラスペリ達の身体からはとてつもないプレッシャーが周囲に放たれている。

かつて、ダンジョンボスの彼らと対峙した以上の貫禄が今のラスペリ達にはあった。


このラスペリ達の目に見える形でのパワーアップは、やはり先程の液体が原因だろうか?


「いったいどうなっていやがるんだ!?」


フェンリルは、現状の変化にかなり戸惑っているようだ。

他の三人も、フェンリル程ではないが、ラスペリ達のパワーアップにそれなりに動揺しているように見えた。


『これが神酒ネクタールの効能だ』


「神酒ネクタール?」

「神酒。神の酒か?」

「神の酒と彼らのパワーアップに、いったいどんな関係があるのだ!」


ネクサスは、動揺している彼らに深紅の液体の正体を告げた。

そして、ネクサスの言葉を聞いた全員が、神酒のことを疑問に思った。


ユグドラシル達は神酒ネクタールの存在自体に。

僕は、その神酒ネクタールと星瓶アクエリアスの関係性に。


僕の中の知識によれば、神酒ネクタールはギリシャ神話に登場するお酒の名前だ。

そして、星瓶アクエリアスのアクエリアスは、日本語に直すと水瓶座。

この水瓶座は、その神話に登場した少年と、彼が持たされた酒瓶がモチーフとなった星座のはずだ。


ここまでくると、星瓶アクエリアスと神酒ネクタールの関係は、神話由来だと考察出来る。

が、なぜ神話に登場するようなアイテムを召喚出来るのかとか、別な疑問も出てくる。

少々考えたが、やはりこういうものはいくら考えても答えが確定しない。


ネクサスに後で確認することにした。


『神酒ネクタールの力は今からその身で味合わせてやろう。さあ、第二ラウンドの始まりだ!』


僕が考え込んでいる間に、ネクサスはそう宣言した。






『未知のダンジョン』攻略中のステータス


リュウセイ

Level:80

年齢:18

種族:アステリアン

【補正】全項目+10451

【体力】

15500/15500

【魔力】

3500000/3500000

【星力】

10450/10450

【筋力】85

【耐久力】 83

【敏捷】12400

【器用】12040

【精神】66500

【幸運値】50%


【属性】星


【称号】

世界を渡った者、死を経験した者、■■■の盟友、インセクトキラー、暴星の葬者、繰り返す者、夢羊の羊飼い、赤き天災、白の猛威、マタンゴルーラー、魔石製造機、アメデルフィネルーラー、樹のユグドラシルに認められた者、青の厄災、バジリュークスルーラー、ヒュキノストールルーラー、エレメンタルキラー、エレメンタルーラー、ドラゴンテイマー


【能力】星遊戯盤 Level:58

星属性魔法 熟練度:64

《オリジン》《ビックバーン》《オリジンティック》《ビギニングライト》《カオス》《スター》《コスモス》《ビカム》《ブラックホール》《ホワイトホール》《ワームホール》《バタフライエフェクト》《ガンマ線バースト》《パルサー》《フレア》《メテオライト》《シューティングスター》《コメット》《グラウ゛ィティ》《カーレント》《ウ゛ォーテクス》《ラーウ゛ァ》《ウェイブ》《サンダー》《トルネード》《アースクエイク》《イラプション》《アウ゛ァランシュ》《シムーン》《スーパーセル》《ドラウト》《フラッド》《ファフロツキーズ》《リソース》《サンライト》《ムーンライト》《スターライト》《オーロラ》《クラウド》《レイン》《ストーム》《スノーストーム》《フォグ》《ミラージュ》《エクスプロージョン》《フリーズ》《ドライ》《コンプレッション》《イクスパンション》《サンクチュアリ》《フライ》《リード》《カンステレイシャン》《フォース》・・・


眷属召喚 Level:1

眷属生成 Level:2

星地変転 Level:2

星空変転 Level:1

星定軌道 Level:25

星座祝福 Level:1

魔石交換 Level:31

星駒交換 Level:1

元素変転 Level:1

星天輝導、星刻閲覧、星間転移、星界庭園、仮想星夜、星器召喚、星物召喚、星光領域、星境力場、星護衛群、限定起動、高速起動、限定加速、限定透過、擬似星盤、星下減衰、始源混沌、終焉虚無


【祝福・加護】

ルシフェルの祝福


【職業】

星導司Level:58


【備考】記憶欠落状態態


持ち駒

アバター・アイディアル×1

アバター・ウィッシュ×1

アバター・レコード

アバター・スピリット

アバター・ドラゴン

アバター・ネメシス

アバター・ユートピア

アバター・タリスマン

ファミリア・マタンゴロード=ラスペリ×1

ファミリア・アメデルフィネロード=ブルーム×1

ファミリア・バジリュークスロード=ストゥリクト×1

ファミリア・ヒュキノストールロード=アサイド

ファミリア・エレメンタルロード=ウ゛ァース

ファミリア・アステリアンドラゴン=ネクサス

アテナオウル

×1

ハンターズホーク

×1

フレイムビー×1

ブラッティリーチ

×1

アラクネスパイダー

×1

サイレントスネーク

×1

ランマッシュ

×1

デザートスコーピオン×1

貯水ラクダ×1

貯水サボテン×1

ポイズントード×1

マッドスネーク×1

ウイル・オ・ウィスプ×1

イグジスタンス改×1

各種エレメンタル×57~15246


キャンドルファルロス×1

ソルジャースケルトン×1

スペクター×1

ファントム×1

ホーント×1

ポルターガイスト×1

ドッペルゲンガー×1

スプラウトコクーン×1

フラワーバタフライ×1

アーミーアント×1

ドリームシープ×1

デススコーピオン×1



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