『未知のダンジョン』 鉄壁の強敵達
あれから数時間後。事後処理と使い魔契約を終えた僕は、ラスペリ達を連れ再びダンジョンに潜っていた。
もうトーンからの依頼は達成したので、この地に留まる理由はないからだ。
ちなみに、ヒュキノストールの毒にやられたリザードマン達の方は、ランクアップさせてヒュキノストールロードになったアサイドに、リソースの魔法を使って出した解毒剤を与えた結果、全員生きながらえた。
ヒュキノストールがリザードマン達に使った毒が、遅効性だったのも幸いだった。でなければ、リザードマン達はストゥリクトが盾にしていた石のように、ドロドロのぐずぐずになって全滅していただろう。
あと、ヒュキノストールに投げ飛ばされたトーンとローンの二人は、全身打撲とかになっていたが、とりあえず生存はした。
そして、ダンジョンに入る前に少しトーンと話して、仲間を助けたこととヒュキノストールを引き取ったことで御礼を言われた。
ローンの方は、仲間の仇が討てなくて渋い顔をしていたけど、ヒュキノストールを倒せなかった自分が悪いと思う。
あと、別れる時にトーンから追加で頼みごとをされたけど、あの頼みごとを果たすことはあるのだろうか?
・・・まあ、それは運しだい。今は心の隅に置いておこう。
外のことを回想した後は、真っ直ぐ『挑戦者の扉』の前まで進んだ。
さて、ここで新しいボス部屋に入ることになるのか、それともストゥリクトと戦った部屋のままなのか、少しドキドキしてきた。
心を落ち着ける為に、ラスペリ達の姿を見る。
全員どっしり構えていて、非常に安心出来た。
ただ、アサイドの姿が少し浮いて見えた。やっぱりいろいろ混ざっているせいかな?
アサイドの姿は、基本フォルムは男性型。頭は亀で、背中には甲羅を背負っている。腕は両手とも蟹バサミで、全身に蛇が巻き付いた感じになっていた。身体のあちこちから蛇頭が飛び出していて、それぞれ目が動いたりしているので、個別に生きているように見えた。
他の三人は一種類の生物だけど、アサイドは見事に三つの生物の特徴が出ていた。
まあ、これから同じようなモンスターを使い魔にすれば、気にならなくなっていくことだろう。
「さて、それでは早速」
みんなを見たら気持ちも落ち着いたので、ぶっつけ本番という気持ちで『挑戦者の扉』を開いた。
すると、ボス部屋に広がっている光景が目に飛び込んできた。
「何これ?」
ボス部屋は、砂漠から透き通るような水晶の森に変わっていた。
どうやら、バジリュークスのボス部屋とは別の部屋になっているようだ。
とりあえず、『挑戦者の扉』を完全にくぐり、ボス部屋に入った。
地面から突き出した水晶を眺めながら、視線をあちこちに向けた。そして、ボス部屋の中心でボスらしき影を見つけた。
「《アウェイク》・・・えっ!?」
早速星遊戯盤を起動させて、名前とLevelを確認した。
エレメンタルクリスタル Level80
そして、確認したLevelに驚いた。バジリュークスのLevelが50だったはずだ。敵のLevelが一気に30も上がってしまった。さすがにLevel差が50もあるボスモンスターの相手は無謀だと思った。しかし、今までのパターンからすると、必ず戦闘自体は発生してしまうとも思った。希望的観測を含めても良いのなら、このボスモンスターの僕への好感度によっては、戦闘を回避出来るかもしれない。けど、それは僕個人の話だ。おそらく、ラスペリ達には適応されない。確実にエレメンタルクリスタルはラスペリ達使い魔達と戦う。
けど、ランクアップしたばかりで、Levelが初期化されているラスペリ達には、僕よりも激しいLevel差が存在している。
みんなの基本スペックは、ランクアップで向上しているけど、相手のスペックがわからないので、どうしても不安が出てくる。
外観から何かわからないかと、エレメンタルクリスタルを観察してみる。
エレメンタルクリスタルの外観は、形状が三角形の八面体で、材質は足元にある水晶と近いように見えた。色は常に変化していて、明暗彩度も常に違うものになっていた。もっとも、暗い色の時でも輝度は高く、美しいという印象を僕は持った。
外観からはこれくらいしかわからなかった。なんせ、観察したとおりやたらシンプルだったからだ。今までのボスと違い、モチーフがわからないので、能力や戦い方の推測が難しかった。
あとは、名前から推測するくらいかな?エレメンタルクリスタルのエレメンタルはおそらく元素という意味だと思う。それと、ゲーム関連の知識によれば、エレメンタルと似たような名前のモンスターは、魔法攻撃型が多いとあった。まあ、あの外観で体当たり以外に物理攻撃は出来ないだろうから、エレメンタルに当て嵌まる可能性は高そうだ。
次にクリスタルの部分。クリスタルの意味は、水晶。または結晶という意味だったはずだ。足元の水晶を見るに、今回は水晶の方だろう。
水晶は鉱物だから、エレメンタルは属性だと地属性にあたると思う。耐久力が高そうなイメージだ。
あと水晶や結晶は、ゲームだと魔力の触媒や、マジックアイテムの素材・材料として出てくることがある。その法則が適応されるなら、エレメンタルクリスタルはかなり強力な魔法を扱える予感がした。
今までのモンスター達との戦いを振り返ってみるに、魔法攻撃型の相手はいなかった。全員物理攻撃とモンスターの種族能力で押してくるやつばかりだった。
それは今一緒にいるラスペリ達も同じだった。
エレメンタルクリスタルとの戦い、いったいどうなるんだろう?
またドキドキしてきた。
キィィィィン!!
「何これ?」
また僕が心を落ち着けようとしていると、エレメンタルクリスタルと周囲の水晶が共鳴をはじめた。
・・シ・・
何事かと思っていると、水晶の共鳴音がだんだん言葉に聞こえてきた。
ワ・シ・ス
「わしす?」
少しずつとだがはっきりとしてきた。けどまだ何を言いたいのかがわからない。なので、聞き逃さないように耳を澄ました。
ワレシメス
「われしめす?我示すかな?」
さらに進行すると、何と言っているのかがはっきりとわかった。けど、どういう意味だろう?
ワレシメス、アルジニツカエルニタルツヨサヲ
「我示す、主に仕えるに足る強さを?てっ、またこのパターン!?」
さらに新たなる言葉を追加されて、エレメンタルクリスタルが何を言いたいのかがわかった。どうやら、ヒュキノストールと似た思考回路をしているようだ。そして、これは相手が戦闘をする気満々であることを意味していた。
勘弁してもらいたい。ただでさえLevel差が激しいのに、相手がやる気満々だとさらに戦いが厳しくなる。
キタレ
「来たれ?」
僕がこれから始まる戦いに頭を痛めていると、エレメンタルクリスタルは今までと違うことを言った。
来たれ。おそらくだけど、今の言葉は僕やラスペリ達にたいするものではないと感じた。
じゃあ誰に言ったのかということになるけど、プレイヤー視点で確認したけど、この部屋に僕達以外の名前はない。
エレメンタルクリスタルはいったい誰に呼びかけたのだろう?
ブゥンッ!ブゥンッ!ブゥンッ!ブゥンッ!ブゥンッ!
そんなことを疑問に思っていると、エレメンタルクリスタルの周囲にいくつもの魔法陣が出現。その出現した魔法陣の中から、小型のエレメンタルクリスタル達が出て来た。
プレイヤー視点で確認すると、名前は何々のエレメンタルとなっていた。
名前からすると、エレメンタルクリスタルの下位種だと思う。
何々のエレメンタル達の姿は、基本的にはエレメンタルクリスタルと同じだけど、微妙な差異があった。
まずはサイズ。エレメンタルクリスタルの20mくらいの巨体にたいして、何々のエレメンタル達は30cm程度の大きさしかなかった。
次にその色。何々のエレメンタル達は、その何々の部分によってそれぞれ色が違っていた。
火のエレメンタルなら赤。水のエレメンタルだったら青といった感じで、その元素の本来の色ではなく、イメージカラーが体色になっているみたいだ。
最後に、エレメンタル達のLevelは全員50だ。一体一体がバジリュークスと同Level。ボスが増えたと思っていいのだろうか?あと大きさはともかく、属性がバラけているのが気にかかった。
普通、モンスターはランクアップして属性が枝分かれしていくものだと思っていた。なのに、召喚?された下位種の属性が多彩過ぎる気がしたのだ。
ランクアップは、Levelが100になることで、強さが一段階上がるシステムのはずだ。けど、この光景を見た後だと、どれが今のエレメンタルクリスタルの元の姿なのか想像が出来ない。
それとも、ボスモンスターはランクアップ前の姿とは関係の無い下位種でも出現させられるのだろうか?あるいは、ボスモンスターは突然発生するだけで、ランクアップ前に位置するモンスターとは繋がりがない?
うーん?
ハナテ
「えっ!?」
僕が頭を悩ませていると、エレメンタルクリスタルから今までにない単語が聞こえてきた。
微妙に不吉な感じの。
ブゥンッ!カッ!
エレメンタルクリスタルの声と共に、エレメンタル達の表面に魔法陣が出現した。そして、ほとんど溜めもなく魔法がこっちに向かって発射された。
「うわっ!?」
僕は、慌ててその場所から飛びのいた。
ドォカン!
僕が避けた直後、火の玉や水の玉などがさっきまでいた場所に命中した。
とくに穴とか空かなかったので、威力はたいしたことはないようだ。
あと、命中するまでのスピードもあんまり早くはなかった。
その点では安心出来た。けど、これはサイズダウンしているエレメンタル達の話。エレメンタル達よりも、何十倍も大きなエレメンタルクリスタルの魔法の威力は今のところ不明。だけど、今のエレメンタル達の攻撃で、エレメンタル達が魔法攻撃型なのは確定した。
エレメンタルクリスタルが大きな魔法を使おうとしたら、確実に止めるようにしないと。
キタレ
そんな風に考えていると、エレメンタルクリスタルがまたエレメンタル達を召喚した。
最初の時で十体。今ので十体追加され、現在エレメンタル達の数は二十体となっている。
どうやら、エレメンタルクリスタルが一度に召喚出来るのは、十体までのようだ。いや、まだ本気を出していない可能性も充分にあるかな?
ハナテ
再びエレメンタルクリスタルが攻撃命令を出し、先程の倍の魔法が飛んで来た。
「うわっ!」
これも普通に回避出来た。けれど、やはり攻撃の手数が増えたので、さっきよりは避けにくかった。
キタレ ハナテ
そして再びエレメンタルクリスタルの召喚と攻撃命令。三十体のエレメンタル達から、さらに量の増した魔法攻撃が飛んで来た。
「どわっ!」
さすがに魔法の数が三十にまでなると、回避もギリギリになってきた。この調子で数を増やされると、すぐに回避が間に合わなくなる。そろそろ対応しないと。
「みんな、お願い!」
善は急げと、ラスペリ達に攻撃を頼んだ。
コクリ
頼まれたラスペリ、ブルーム、ストゥリクト、アサイドの四人は、早速攻撃を開始した。
僕はそれを横目で捉えつつ、後ろに下がって花化しているみんなの護衛にまわった。ラスペリ達なら、すぐにエレメンタル達を片付けられるだろうとこの時は思っていた。しかし、少し経つとその考えが間違いだったとわかった。
ラスペリ達は、今までの戦闘と同じように普通に攻撃しているのに、エレメンタル達の数が一向に減らない。
プレイヤー視点で見ると、体力の方もあまり減っていない。どうやら、ダメージをあまり受けていないようだ。
キタレ ハナテ
さらに悪いことに、エレメンタルクリスタルはエレメンタル達の召喚を続けている。
エレメンタル達の数が減らないのに、どんどん援軍が召喚されてきて、敵の攻撃が激しさを増していく。
やっぱりエレメンタル達の魔法は威力が低く、それが救いと言えば救いだが、数にものを言わせてこられると、たまったものではない。威力が低くても、ダメージが蓄積していくからだ。しかも、魔法の命中率もエレメンタル達が増えるごとに向上してきている。どんどん回避するスペースが減ってきているからだ。このまま敵の数を減らせず、援軍を召喚され続けたら、ダメージの蓄積でこっちが倒されることになる。
ラスペリ達はわりと強力な力で押してきたけど、今回のエレメンタルクリスタルは地味に攻めてくるタイプのようだ。けれど、地味とはいえ逆に堅実。
ここは早めに対処した方が良いと思った。
「《スター》、星定軌道」
なので、僕も攻撃に加わることにした。数を減らすのなら、この魔法に限る。
生み出した『星』達が、エレメンタル達目掛けて飛翔して行く。そして命中。エレメンタル達をそれぞれの重力圏に捕らえていった。あとは圧縮吸収されるのを待つばかりだ。
キタレ ハナテ
しかし、少し待ってもエレメンタル達を吸収することは出来ず、さらなる増援をされた。
エレメンタル達は、Levelが高いからステータスも高いらしい。今までの雑魚敵に有効だった攻撃も、ボスモンスタークラスのLevel持ちには通用しないのかもしれない。
エレメンタル達は雑魚敵だと思っていたのに、悪い情報だ。いや、でも魔法の威力がたいしたことがないのは事実。ひょっとしてエレメンタル達のステータスは、極振りタイプなのかもしれない。
体力か耐久力にほとんどのステータスがいっていて、攻撃関係の能力が低い可能性だ。
Levelの高さに比べて魔法の威力が低いことと、ラスペリ達の攻撃や『星』でもあまりダメージを受けていないことを踏まえると、そういうことだろうと思った。まあ、これについては、敵を一体でも倒して手駒にすればわかることだ。
なら、今からすることは決まっている。ダメージ無視の即死攻撃をすれば良いだけの話だ。
「《ブラックホール》シュート!」
僕は、真ん中にいるエレメンタル達目掛けてマイクロブラックホールを発射した。
『星』は防げても、空間さえも捩曲げるマイクロブラックホールなら防ぐことは出来ないはずだ。というか、マイクロブラックホールを防ぐような敵とは戦いたくもない。
フセゲ
攻撃の結果を見守っていると、エレメンタルクリスタルのそんな声が聞こえてきた。
何かするつもりなのかと見ると、大半のエレメンタル達が後退。その内一体だけが『星』状態のマイクロブラックホールに向かって突っ込んでいった。
その結果、マイクロブラックホールはその突っ込んで来たエレメンタルだけを飲み込み、やがて蒸発した。あとには、かなり大きな魔石とステータスカードだけが残された。
「ええー」
まさかこんな方法でマイクロブラックホールを防がれるとは思ってもみなかった。ブラックホールは魔力消費が500。僕の総魔力の約7分の1の魔力を注ぎ込んだ攻撃で、倒せたのがエレメンタル一体だけ。
はっきり言ってコストパフォーマンスが悪い。
さらに悪いことに、エレメンタルクリスタルはまたすぐに追加召喚してくるということだ。
効果はあったとしても、これではイタチごっこも出来やしない。
次の手を考えなければいけない。その為には情報がいる。
「みんな!ステータスカードと魔石を回収して戻って来て!」
コクリ
情報を得るなら、手駒でステータスを見るに限る。
ラスペリ達は、僕の頼み通り落ちていた物を回収して戻って来た。
なので早速ステータスカードを経験値に変換して吸収した。
ポーン!
ついでにLevelも上がった。やっぱり、Level差が20もあると、ある程度アイディアルの効果で減少していても、それなりの経験値が入るようだ。
火のエレメンタル
【体力】
5000/5000
【魔力】
7000/7000
【筋力】 1
【耐久力】10000
【敏捷】 1
【器用】 1
【精神】 50
【属性】火
【能力】
火魔法 熟練度:1、体力自動回復、魔力自動回復、同属性攻撃吸収、エレメントチャージ、エレメントブースト、エレメントリンク、エレメントタイムズ、エレメントテリトリー
「うわー」
エレメンタルのステータスを確認した結果、こんな情報が出てきた。
ステータスは予想通りの極振りタイプ。体力・魔力・耐久力の値が偏っていて、代わりに筋力・敏捷・器用は全て1。ヒューマンの赤ん坊にも負けそうな値をしている。
申し訳程度に精神に振られているけど、筋力などよりは若干マシな程度。
これなら魔法攻撃の威力がたいしたことがなかったことに納得がいった。
それにしても、いくらなんでも極端過ぎるような気が?体力が5千、魔力が7千、耐久力が1万。
合計値ならラスペリ達もどっこいどっこいだけど、ここまで極端になられると堪らない感じだ。
そりゃあ、耐久力が1万もあればダメージがほとんど無いわけだよね。しかも、これってLevel1の初期ステータスなんだからさらに堪らない。Level50のエレメンタルに、Level80のエレメンタルクリスタルのステータスはどうなっていることやら。
少なくとも極振りステータスがさらに極端になっていることは確実だ。
さらにマズイのは、能力の方も強力なのが揃っていることだ。
火魔法は、普通に火の魔法だからそこまでの脅威じゃない。けど、それは今の話だ。熟練度があるから、積み重ねで強力な魔法も使えるようになるはずだ。
次に 体力自動回復と魔力自動回復。この二つも地味に嫌だ。ただでさえエレメンタル達は耐久力が高くてダメージを与えられないのに、体力を回復されたらダメージの蓄積も出来ない。魔力の回復も、魔法の使用回数が増えるうえに魔力切れを狙えなくなってしまった。
イグジスタンスやムーンライトで魔力を回復しながら魔法を連発する僕が言えたことじゃないけど、相手にはしたくないタイプの組み合わせだ。
残る同属性攻撃吸収、エレメントチャージ、エレメントブースト、エレメントリンク、エレメントタイムズ、エレメントテリトリーなどの属性・エレメント系の能力も問題だ。
同属性攻撃吸収は、同じ属性の攻撃を吸収無効化する能力。火のエレメンタルには火が効かないということだ。
エレメントチャージは自分が使用する同じ属性の攻撃を強化する能力。
エレメントブーストは、魔力を消費して自分が使用する同じ属性の魔法の威力を増加させる能力。
エレメントリンクは、魔法の熟練度で威力に補正が入る能力。
繰り返し使用してこられると、今の威力の弱い魔法でもいずれ脅威になるということだ。短期戦が不可能なのに、長期戦も問題があるなんて、どう戦えば良いのやら。
エレメントタイムズは、自分を中心とした一定の範囲内にいる同属性の数だけ自分のステータスに補正が入る能力。
困ったことに、この能力の数に敵味方の識別はない。敵である僕達でも、属性が一致すると相手のステータス上昇に貢献してしまうのだ。
あまり属性が被らないことを祈った。
最後にエレメントテリトリー。この能力は、自身を中心にある種の領域というか、結界を張る能力だ。効果は、この結界内では他のエレメンタル達が受ける、この能力の発動者と同じ属性攻撃の威力の減衰。
同属性攻撃吸収と違って無効化とまではいかないけど、他の属性のエレメンタル達の属性耐性を引き上げる厄介な能力だ。
しかも、この能力は重複が可能。このままエレメンタル達の数を減らせずに増えられると、すぐに減衰から無効化の段階にまでいってしまう可能性が高かった。
総合評価。エレメンタルクリスタルは、今までで一番厄介な最強ボスモンスターだ。
ついでに無敵という項目も追加されそうで、泣きたい。
どうやって倒そう?
「星天輝導」
エレメンタルのステータスに暗い気持ちになったけど、今は最優先で確認することがあった。星天輝導を使って、ラスペリ達の未来を知ることだ。
すると予想通り、拳大の黒い星と赤い星が、ラスペリ達の周りで不吉な輝きを放っていた。
こうして目に見える形で死亡フラグが立つと、悲しくなってきた。
いや、今は沈んでる時じゃない!主である僕がラスペリ達を守らなくちゃ!
僕は使命感などに燃えた。
「みんなはみんなの護衛について!エレメンタル達の相手は僕がする!」
エレメンタルクリスタルの反応からして、僕が殺される可能性は低い。ちょっと不安だけど、今回は僕が前衛を勤めなくちゃ。
「早く!」
いつもならみんなコクリと頷いてくれるのに、今回はみんな躊躇ってすぐには動いてくれなかった。だから、嫌だったけど頼むのではなく命令した。
コクリ
今度は四人とも僕の指示に従ってくれた。
さあ、戦闘準備を始めよう。
「《アレインヂメント》、《サンクチュアリ》」
魔力補給源としてイグジスタンス改を配置。さらに聖域の魔法を発動させて防御領域を展開する。
僕の証明にイグジスタンス改の巨体が出現し、足元には白く輝く巨大魔法陣が展開された。
これで戦闘準備は完了。今からが本番だ。
キタレ ハナテ
エレメンタルクリスタルは、こちらの準備を待ってくれたみたいで、こちらの準備が終わると同時に召喚と攻撃を再開してきた。
ヒューン ドォカン! ヒューン ドォカン!
飛んで来た魔法は、聖域の境界に着弾。境界を突破することは出来ずにその場で霧散した。
初めて使ったけど、聖域の魔法は問題無く発動しているようだ。
「防御はこれで問題無し。じゃああとは、こっちからも攻撃していくだけ。《ブラックホール》」
僕は、再びマイクロブラックホールをエレメンタル達目掛けて発射した。
フセゲ
すると、またさっきのパターンでエレメンタルクリスタルは対処してきた。
エレメンタル一体を盾にして、他のエレメンタル達は無傷で生き残った。
けど、これは始めから想定の内だ。一度防がれた攻撃が、二度目からは通用するなんて甘いことを考えてはない。
今回は完全な長期戦狙いだ。今の僕のステータスと能力では、短期戦が無理な以上、この選択しか僕には出来ない。
聖域で攻撃を防ぎながら、僕のよくやる熟練度上げをやる。今回は『星』はばらまかず、オリジンをベースに使っていく。これで熟練度の上昇と、星力増加によるステータスアップを狙っていく。あと、焼け石に水だとは思うけど、ブラックホールで一体ずつでもエレメンタル達に退場してもらう。こちらは経験値によるLevelUPも狙いだ。
とりあえずしばらくはこの手で様子を見る。
しばらくして駄目そうなら、またその時に判断すれば良い。まあ、そう判断する余裕があるかどうかは微妙だけど。
エレメンタル達のエレメント系の能力を思い浮かべて、長期戦でも勝率が低いことに頭を痛めた。というか、長期戦も下手に長引かせると勝率が完全に0になってしまう。
「それでもやらないといけないんだよね。《オリジン》」
あれから数時間は予定通りにことを運べた。
相手の魔法攻撃はまだ弱く、敵の数も三桁程度だったからだ。けれど、もう視界の端から端までエレメンタル達に展開されてしまった。
このボス部屋を圧迫するように増えていくエレメンタル達には辟易した。
これでもブラックホールで地道に削っていっているのにだ。やはり向こうの展開能力の方が上だ。
こちらもオリジンとLevelUPで地道にステータスを上げているけど、今だエレメンタル達にさえ対抗出来ずにいる。
もうさすがに品薄なのか、新しい星属性魔法も出ないし。
だけど、今のところ戦況は破綻していないので、このまま今の作業を続行することにした。
体感時間で一日が経過した頃、状況に変化があった。敵がボス部屋全体を埋め尽くしたのだ。
聖域の境界の外は、もうどこを見てもエレメンタル達が四桁単位で見えるのが現状だ。
もうこれだけすし詰め状態になると、エレメント系能力がフル稼働していると思う。
まあ、こっちはずっとオリジンとブラックホール、それにサンクチュアリの魔法しか使ってないので、実際にどうなっているのかはわからないけど。わざわざ試してみる気にもならないし。
けど逆にすし詰め状態で助かっている部分もある。
増えたエレメンタル達は、三角形の面をくっつけ合って隙間の無い壁のようになっている。その為、現在攻撃を放っているのは、境界外でこちらを取り囲んでいる一番前の列のエレメンタル達だけになっている。後方にいる他のエレメンタル達が攻撃しようとすると、仲間に当たる。
あと、さすがにこれだけ密集していると、もう一体だけを盾にする方法は使えないので、ブラックホールが複数体をまとめて倒せるようになっている。
まあ、倒した端から補給されるので、一向に数が減らないのが現実だけど。
それでも減っているのは事実だし、経験値は入ってくるんだから良しとしないと。
それにしても、聖域の魔法がここまで優秀だとは思ってなかった。
ほとんど零距離からエレメンタル達の攻撃を受けているのに、中には攻撃がまったく入ってこない。全部聖域の境界で防がれてる。
ステータス向上で聖域の強化はされているとは思うけど、ここまで長持ちするとは、正直思ってはいなかった。
聖域の魔法の効果は、聖域内で発生する一定以下のダメージの無効化。この一定の部分は術者の力量。つまり、僕のステータスによって決定される。
他には、聖域の味方の一時的なステータス向上。耐性などの防御面が特に向上する。
あといくつかは、発動時に自分で設定出来たけど、上の二つで足りそうだったから特に設定はしていない。
デメリットは、この魔法展開中は発動地点から動けなくなること。一定以上のダメージだと、聖域全体に負荷がかかること。
聖域の設定を追加すると、使用魔力と維持する難易度が上がること。
最後に、生身ではそういつまでもこの魔法は発動し続けることが出来ないこと。
まあ、それは生身の話。アバターを触媒に使っている僕には関係がない。
さらに、アバターだと疲労も無ければ寝食も必要無い。魔力さえあれば、ずっと聖域を維持することも不可能じゃない。
「さあ、まだまだ頑張ろう!」
聖域の魔法をおさらいし、戦いを続行した。
さらに体感で一日経過して三日目。再び戦いに変化が訪れた。
エレメンタル達の熟練度が増して、エレメンタル達が使用してくる魔法の威力が上がってきたのだ。
零距離で威力の上がった魔法を撃たれるのは、とても冷や冷やした。
けれど、今のところ聖域は問題無く持っている。
というか、魔法を連射しているわけではないとはいえ、魔法の熟練度の上がりが遅いような?
そんな気がしてならなかった。
僕の時は、熟練度が一つ上がっただけでいくつも新しい魔法が出てきたのに、なんでだろう?
不思議には思ったけど、理由なんてわからないので、戦闘を続行することにした。
Levelと熟練度が上がって、新しい能力や魔法は出てきたけど、現状を打開出来そうなのはなかったからでもある。
ただ、エレメンタル達の魔法の威力が向上してきたので、こちらもビカムを聖域に使って、聖域の強化をしておくことは忘れない。
さらに体感で一日経過。エレメンタル達に、今度は魔法以外の変化が出て来た。補給されるエレメンタル達の中に、今までいなかった何々がついたエレメンタル達が交じりだしたのだ。
名称的にわりと不吉な感じの。今までは火、水、風、土、雷、光、闇のエレメンタル達だけだった。
新しく補給されたエレメンタル達は、炎、氷、嵐、鋼、虹、聖、邪とついていた。名前からすると、最初に出て来ていたエレメンタル達の強化版というか、複合属性型という印象を受けた。
新たに飛んで来るようになった魔法も、そんな感じだし。
けど、その新しいエレメンタル達は、僕にとっても都合の良い存在だった。
最初のエレメンタル達に比べて経験値が多めで、LevelUPを加速させてくれるからだ。
Levelが上がってLevelUPが遅くなってきていたのに、おかげさまでLevelUPの速度が多少は改善出来た。
別に耐久力とかは強化されていない点も、倒す手間を他のエレメンタル達と同じにしてくれていた。
だけど、そろそろ状況を打開するのが出てこないかなぁ?と、いうのが正直な感想だ。Levelも、星力も、ステータスも、魔法も、能力も、順調に増えてきてはいる。
魔法や能力に関しては、現状は打開出来ないだろうけど有用なものが多く追加された。
けど、それは今をどうにかしないと役に立つ機会が巡って来ない。
さらに問題なのが、ラスペリ達が焦れ始めたことだ。
自分達が戦いに参加出来ないこと。主である僕だけを戦わせていること。周囲を敵に囲まれていること等などで、かなりストレスを感じているようだ。
早めに対処しないと、暴れだしそうだ。
僕には、自分のスペックに望みを託すしか出来なかった。
体感で五日目。戦闘は相変わらずの膠着状態だ。
向こうは魔法攻撃一辺倒だし、こちらも相変わらずブラックホール一辺倒。
決着のつきようがない。
こっちが強くなっても、差はまだある。今までは能力や魔法押しだったから、単純なステータス比べにはまだ慣れてもいない。
強くなってきている実感は微妙だ。
こんなことなら、加護は普通に受けておいた方がよかったのかもしれない。
まあ、あの時は安定と安全な生活を望んでいたから、しかたがない。いや、それは今もそうだけど、たかが数日でこんな状況になるのは完全に予想外だ。
「うん?」
そんなことを考えつつも五日目の戦闘をしていると、エレメンタル達側にまた変化が起こった。
また新たな種類のエレメンタル達が追加されてきたのだ。しかも、一つ前の炎等の時とは違い、Levelも65に上がっていて、明らかにパワーアップバージョンだ。
サイズも、30cmから一気に2mにまで巨大化した。まあ、エレメンタルクリスタルに比べたらまだまだ小さいけど。
何々の部分は、灼熱、潮流、竜巻、金剛、稲妻、清浄、瘴気と、内容が僕の持っている魔法と似たようなラインナップとなっている。明らかにエレメンタル達の名前が物騒になってきている。
「《ブラックホール》シュート!」
一応まだマイクロブラックホールが効く相手か試してみた。結果は、まだ有効だった。
なので、戦闘はこのまま続行することにした。
エレメンタルクリスタル戦、体感で六日目。ここまで戦闘が長引くと、さすがに精神的に疲弊してきた。
けど、まだ強くなっていっている実感がある僕は良い。だけど、そろそろラスペリ達のストレスが限界に達しようとしていた。
昨日から、エレメンタル達に向かってラスペリ達も攻撃を開始しだしている。だけど、ステータス面と能力の影響でまったく効果が無く、ラスペリ達のストレスを増大させることになっている。
「はあっ」
そうなってからは、僕の口から自然とため息が出てくるようになった。
もう、今日明日中にどうにかしないと、完全にマズイ。
まさか聖域が破れたからではなく、味方のストレスのせいで長期戦が駄目になりそうになるとは思ってもみなかった。
さらに時は進んで七日目。今日なんとか出来なかったなら、潔く全滅した方が良いかもしれないというのが素直な僕の現在の心境だ。
外は一向に減らないエレメンタル達でいっぱい。中はストレスで暴走寸前の使い魔達が四体。
僕の方も、Level、熟練度共に数十上がったのに、今だ状況を打開出来そうにない。
希望は潰えそうだ。けど、まだ諦めるわけにはいかない。
自分だけならともかく、花化したみんなの命と使い魔達の命を預かっているんだから。
「おっ!・・・げっ!?」
七日目をはじめてすぐ、ようやく現状を打開出来そうな能力が大量に手に入った。そして、相手側の戦力強化も最終局面に突入したようだ。
相手側に、10m近いサイズの新エレメンタル達が出現した。しかもLevelは75。召喚者であるエレメンタルクリスタルと遜色無いLevelになってきた。
種族まで同じになっていないことが唯一の救いかな?
あと、名前の方も自然現象を突破したみたいだ。
時間、空間、熱量、重力、因果、夢幻、混沌、虚無、螺旋。もう元素じゃなくて概念の名前がついていた。
しかし、これはマズイ。聖域の魔法は、ダメージは無効化出来るけど、それ以外の要素は耐性の向上しか出来ない。
空間のエレメンタルの能力に、対象を転移させるような能力があったら積みだ。他のみんなが外に連れ出されたら一斉攻撃でアウト。
僕が外に連れ出されたら、聖域が消滅してみんなアウト。
空間のエレメンタルは早めに倒さないと危険だ。
なら、手段を選ばずに片付ける!
「《ワームホール》」
時空トンネルの出口を空間のエレメンタルの傍に展開。
直接ブラックホールを当てて消滅させる!
「《ブラックホール》スマッシャー!」
現在出現している空間のエレメンタルは三体。
その三体にワームホールを隣接させ、マイクロブラックホールを零距離で発射した。
聖域の外側。空間のエレメンタルがいたそれぞれの位置で、マイクロブラックホールが展開していった。
やった!と、思った。
「えっ!?」
しかし、すぐに驚くことになった。
マイクロブラックホールに飲み込まれたはずの空間のエレメンタル達が、いつの間にか別の場所に出現していた。
「空間転移?うん?・・・位置交換?ううん、違う。これは・・・」
それを見て、空間転移で移動したのかと思ったけど、すぐに違うと思った。
なぜなら、空間のエレメンタルが今いる場所は、さっきまでは他のエレメンタル達がいた場所だったからだ。じゃあどういうことなのかと考えていると、マイクロブラックホールが蒸発した時に複数枚のステータスカードが出てきたことで、ある一つの仮説を考えついた。
おそらく空間のエレメンタルが今使った魔法は、一定の範囲の空間を入れ換える魔法だ。これが位置交換だった場合、空間のエレメンタルともう一体のエレメンタルの位置が入れ代わるだけのはずだからだ。
けど、実際には一体以上の位置が前と変わっていた。
けど、空間転移にしろ位置交換にしろ、まさかマイクロブラックホールを回避されるとは思わなかった。
あの魔法がこっちに適応されるのなら、さっき考えたことが現実になってしまう。なんとかしないと。
「《シェア》、《スィリーズ》、《ブラックホール》シュート!」
そう思った僕は、早速さっき出た魔法を発動させた。発動させた魔法は共有と連続、そしてブラックホール。
共有の魔法でエレメンタル達が受けるダメージを共有させ、連続の魔法でダメージを与えた数だけブラックホールを分散連続起動させる。
今までは一発撃ったら再使用までに補給を許していたけど、この方法ならエレメンタルクリスタルの召喚スピードを上回れる。
当然消費魔力も馬鹿にはならないけど、LevelUPで魔力がかなり増大している今の僕ならなんとか賄える。
そんな思惑のもと発動した魔法は、一応は予想通りに効果を発揮していった。
まずは手近なエレメンタル一体に命中。マイクロブラックホールが展開。さらに、展開と同時にその場所から複数の『星』が周囲にばらまかれた。ばらまかれた『星』はエレメンタル達にぶつかって発動。
そんな感じで次々とエレメンタル達を飲み込んでいった。
それに比例して魔力の消費速度も倍々になっていった。
一気に魔力が減って、さすがに脱力感をおぼえた。
聖域の外の光景がどんどん歪んでいく。マイクロブラックホールが周囲の光等も飲み込んでいくせいだ。
この魔法は成功とみて良いだろう。
ただし、それは自然現象系のエレメンタル達にはの話だ。
概念系の空間のエレメンタル達の方には、かなり抵抗されて効果がいまひとつだった。
空間のエレメンタルの場合は、さっきの空間交換などで自分か『星』を転移させて攻撃を回避していく。
まあ、それでもスペースの関係で一体は倒せたけど。
時間のエレメンタルの場合は、『星』の時間を少しだけ停止させて、その内に逃げたり、自分の時間を停止させてマイクロブラックホールに耐え切ったりしていた。
マイクロブラックホールの展開時間の短さをついた対処の仕方をされて、かなり驚いた。
他の概念系エレメンタル達も、それぞれの方法でマイクロブラックホールを回避、無効化していた。まあ、共有の魔法の方でダメージは普通に受けているけど。
新しい魔法のエレメンタル達への有効性がわかると、互いの力の比べあいが始まった。
僕はマイクロブラックホールでエレメンタル達を削る。
エレメンタルクリスタルは召喚で補給を続ける。
二進一退の攻防がしばらく続いた。ちなみに二進が僕の方だ。少しずつ、けれど揺るぎなくエレメンタル達の数を減らしていった。
それから半日。ボス部屋内のおよそ三分の二のスペースからエレメンタル達を排除することに成功した。残りはエレメンタルクリスタルを含めて、昨日の三分の一だ。
三分の二のエレメンタル達を倒してステータスカードを吸収したことで、こっちのLevelもさらに上がった。今ならエレメンタルクリスタルともまともに戦える!
エレメンタルクリスタルのステータスがどうなっているかはわからなかったけど、僕はそう思った。
さらに戦闘を押し進め、共有の魔法効果で概念系エレメンタル達を間接的に倒すことに成功した。
物理は回避出来ても、魔法的な効果は防ぎきれなかったようだ。
残りはエレメンタルクリスタルだけ。
けど、少し不安になってきた。
概念系エレメンタルと一緒に、エレメンタルクリスタルにも共有の魔法をかけていた。なのに、全方位からのダメージ共有を受けてもエレメンタルクリスタルの体力はまだ半分も残っていた。
体力量がかなりおかしい。
もともとLevel1のエレメンタルの体力も四桁もあった。その上のエレメンタルクリスタルの初期体力が五桁あっても不思議じゃない。不思議じゃないけど、十倍程度の体力なら十体分の共有ダメージで体力がゼロになっているはずだ。
エレメンタルクリスタルの体力量に辟易した。
体力が自動回復していることを考慮しても、たまったものではない。
まあ、加減を間違って倒してしまう危険がないことを前向きに捉えて、朗報と思っておこう。
ともかく、戦闘状況は戦闘開始前の状態近くまでに戻せた。あとは使い魔契約にまで持っていくだけだ!
ようやくこのひたすら長かった戦いを終わらせられる。
「《キャンセル》、《フライ》」
もう守りを気にする必要はないので、聖域の魔法を解除。そして、飛翔の魔法で空中に飛び上がった。
目指すはエレメンタルクリスタルのもと。
キタレ ハナテ
エレメンタルクリスタルは、新たなエレメンタル達を召喚。飛んでいる僕を攻撃してきた。
幸い召喚されたのは初期のエレメンタル達だったので、僕はその火や水といった攻撃を難無くかわした。
「星力光弾」
そして、回避の合間に新しく得た能力で反撃していった。
星力光弾は、星力を直接攻撃手段にする能力。エネルギーそのものを放つので、相手の耐久力を無視して一定のダメージを与えられる。
まあ、威力自体はたいしたことはないので、エレメンタル達を倒そうと思ったら、それなりの数を撃たないと駄目だけど。
まあ、エレメンタル達相手には牽制程度の意味しかない。
本命はこの次に使う魔法だ。
「《ディスコード》」
星力光弾で動きを止めた一体に、不協和音の魔法を発動させた。
リィィン!リィィン!
すると、魔法の対象にしたエレメンタルから、澄んだ音が周囲に響き渡った。
リィィン!リィィン!リィィン!リィィン!リィィン!
その音に共鳴するように、他のエレメンタル達からも澄んだ音がでだした。
エレメンタル達の音は周囲に響き続け、それに比例してエレメンタル達の体力が減少していった。
これが不協和音の魔法の効果だ。
この魔法は、まず第一に対象としたものの固有振動波を周囲に発し始める。そして、その固有振動波が一致するものが周囲にいた場合、そのものからも固有振動波を発生させる。
固有振動波の発生源が二つを越えると、物質の共鳴現象が起こる。
互いの固有振動波が共鳴・増大。その固有振動波を受けたもの達全てにダメージが発生するという、雑魚敵必滅魔法だ。当然、固有振動波の発生源数が増えれば増える程にダメージが増大していく仕組みだ。
ついでに言うと、自分自身が音叉とかになるので、耐久力や防御力はダメージ減少の役には立たない。
まさにエレメンタル達にうってつけの魔法だ。
ついでにエレメンタルクリスタルの方にもダメージがいってくれるとなおよし。
まあ、種族に多少ズレがあるから効果が無い可能性が高いけど。
そうこうしているうちに、召喚されていたエレメンタル達が全滅した。
どうやら、この方法で問題無くエレメンタル達に対処出来るようだ。
効果はわかっていても、やっぱり実際に効果があるかどうかはこの目で見てみないとわからないものだから、これで安心出来た。
キタレ ツラナレ
「えっ!連なれ?」
確かな手応えを確認した直後、エレメンタルクリスタルが再び召喚を行った。あと、召喚の後の言葉に今までになかった言葉が追加された。
ブゥンッ!ブゥンッ!ブゥンッ!
僕の正面。僕とエレメンタルクリスタルとの間に新しいエレメンタル達が出現した。
ただ、今までと違う点がいくつかあった。
まずは出現したエレメンタル達の種類だ。今までは統一感がないランダムで召喚されたという感じだったのに、今回は赤一色。全部が火のエレメンタルで統一されていた。
次に、召喚されたエレメンタル達の位置が、何故か十字を描いているように見えるのだ。
今までのエレメンタル達は、積木かブロックのような感じでまとまっていたので、それなりに違和感があった。
この今の状態がさっきの連なれという言葉の結果なんだろうか?
ハナテ
そう考えていると、エレメンタルクリスタルから攻撃の指示が出た。
火のエレメンタル達は、今までの単体円形ではなく、全員で一つの十字型の魔法陣を展開した。
「えっ!?」
バシュッ!
そのことに驚いていると、十字型魔法陣から複数の火弾がこちらに向かって発射された。
「わっ!?」
それを見て、慌てて回避行動をとった。
「えっ!?うわっ!なんで!?」
しかし、今回は容易に回避は出来なかった。
原因は、まず火弾の弾速が今までに速かったこと。次に、一度回避した火弾がこちらを追尾してきたからだ。
しかも、火のエレメンタル達がどんどん攻撃を追加してくるので、すさまじく面倒なことになっている。
前日のエレメンタル達と同じように、今回は僕の回避スペースが潰されていく。
「けど、ホーミング対策は手持ちにあるんだよね。《リード》」
ただ、面倒ではあっても今の僕には対処方法があった。
僕は誘導の魔法を発動。
全ての火弾をある一点に向かって誘導した。
誘導先は、エレメンタルクリスタルだ。火のエレメンタル達に命中させることも考えたけど、同属性吸収があるので無意識なことはしなかった。
ドォッカーン!
火のエレメンタル達が放つ火弾は、次々とエレメンタルクリスタルに命中していた。
まあ、威力が弱いのでエレメンタルクリスタルにダメージはなかったけど。
キタレ ツラナレ ハナテ
火弾を受けたエレメンタルクリスタルは、攻撃を受けたことなど気にしていないようで、今度は風のエレメンタル達を召喚した。
また、エレメンタルクリスタルの連なれの指示に従って、火のエレメンタル達と合流。
今度は、火と風のエレメンタル達が交互にくっついて、環状になった。そして、今回は二重の魔法陣が展開された。
ボォウ!
魔法陣が完成すると、魔法陣から炎の竜巻が発生。こちらに向かって飛んできた。
「うわっ!あちち!」
今度の攻撃も回避したけど、炎の竜巻から出てくる熱風で火傷しそうになった。
「うー。物量から質に攻撃手段を変えてきたか。少し力押ししてみようかな。《スーパーセル》、《グラウ゛ィティ》」
攻撃手段を豊富にされると面倒だったので、それらを封じることにした。
今まで使ってこなかった天災級魔法の一つを、重力魔法で補助して発動させた。
魔法が発動すると、僕の正面に白い魔法陣と、黒い魔法陣。正反対の色の魔法陣が同時に展開した。そして、その魔法陣から多数の物体がエレメンタル達とエレメンタルクリスタルに向かって発射された。
それが何なのかは目視では具体的には視認出来なかったけど、朧げな見た目だと透明な線と、透明な筒がエレメンタル達に向かって伸びているように見えた。
ヒュン!ヒュン!ガキィン!ドォカン!
発射されたそれらは、エレメンタル達にほぼ全てが命中。すごいスピードでエレメンタル達の体力を削り取っていった。
そう、文字通り削り取っていったのだ。発射された攻撃を受けているエレメンタル達の身体が、ステータスなんて関係無いとばかりにどんどん消失していく。
硬質の物がぶつかり合う音を周囲に響かせながら、エレメンタル達の姿が次々消滅していっているのだ。
数分もしないうちに火と風のエレメンタル達は全滅した。
その後も魔法は続き、最後に残ったエレメンタルクリスタルの身体に命中し続けている。
「スーパーセル。意外と恐ろしい魔法だったんだ」
削り取られ、消滅していくエレメンタル達の姿を見ていた僕の口からは、自然とそんな感想がもれた。
スーパーセル。この魔法から発射されている物の正体は、たんなる水と氷だ。
もともとスーパーセルという言葉は、ある気象現象を指している。
どのような現象かというと、集中豪雨と雹が降り注ぐことだ。
本来は上から下に向かう魔法だけど、重力魔法で落ちる向きを横向きに変更した結果が現状だ。
てっきりエレメンタル達相手には効果が無いと思って今まで使わなかったけど、今回のこれでその認識を改めた方が良さそうだ。
なんせ、ただの水と氷がウォータービームかマシンガンの様相でエレメンタル達を削っていったのだ。
こんな魔法、耐久力が低い相手に使ったら、削る暇も無く消滅させてしまう光景が簡単に想像出来てしまう。
とりあえず、この戦いが終わったらこの魔法の使用を控えることに決めた。
「おっ?」
プレイヤー視点でエレメンタルクリスタルの体力を見守っていると、エレメンタルクリスタルに新たな動きがあった。
ブゥンッ!
エレメンタルクリスタルの表面に、いくつもの魔法陣が出現。その魔法陣を中心に、光の膜がエレメンタルクリスタルを包み込むように展開していった。
その結果、エレメンタルクリスタルに命中していた水と氷がエレメンタルクリスタルに当たらなくなった。
当然、エレメンタルクリスタルの体力減少も停止。
現在エレメンタルクリスタルは、体力自動回復の効果で体力を回復中だ。
こちらの攻撃が効かなくなったのであれば、やがては満タンまで回復することだろう。
倒すつもりはないけど、これ以上の延長戦は勘弁してもらいたかった。
「エレメンタルクリスタル」
ギ?
「もう君の力は充分示してもらったよ。だから、次で終わりにしてくれない?」
なので、駄目元で交渉してみた。
ゼ ノゾム ママニ
「ありがとう」
駄目でもともとだったのに、エレメンタルクリスタルからはいろよい返事が返ってきた。なので、心の底から感謝を述べた。
メグレ
感謝を伝えた直後、エレメンタルクリスタルに今までにない力が集中しだした。僕の要望通り、最後の一撃を繰り出そうとしているようだ。
「おっと、見ている場合じゃなかった。僕の方も始めないと。いくよ!《カンステレイシャン》《フォース》」
それを見た僕も、最後の一撃の準備をはじめた。
力の集中とともに、エレメンタルクリスタルの身体が虹色の輝きを放ち出した。
魔法が発動すると、僕の周囲の空間が歪み、周囲が数多の星が煌めく宇宙に変わっていった。
エレメンタルクリスタルの身体が乱回転を始め、夥しい数の魔法陣がボス部屋を埋め尽くしていった。
周囲に広がる宇宙が厚みを増していき、その中で煌めく星達の間で無数の光が飛び交っていった。
やがて、ボス部屋を埋め尽くしていた夥しい数の魔法陣が集約。エレメンタルクリスタルの正面で、万色の輝きを放つ精緻な巨大魔法陣を構築した。
飛び交った光は数多の星達を繋ぎ、数限りない星座を宇宙に描いていった。
エレメンタル フォース!
「カンステレイシャンフォース!」
互いの準備が整うと、同時に魔法を発動させた。
エレメンタルクリスタルが構築した万色の魔法陣からは、今まで召喚されてきた全てのエレメンタル達の攻撃が同時に放たれた。
たいして僕の方は、周囲に展開している宇宙から、あらゆる物質とエネルギーが吹き出した。それは、エレメンタル達が使ってきた火や水などの既存のものに加え、ダークマターなどのこの世界では詳しく認知されていないものが多量にあった。というよりも、そのダークマターなどの方が全体の九割九分をしめていた。
ドォカーン!!
両者の魔法は中間点で激突。一瞬だけ拮抗してみせ、あとはこちらの魔法が一方的にエレメンタルクリスタルの魔法を押し返していった。
ボォーン!
そして、魔法はエレメンタルクリスタルに直撃。
エレメンタルクリスタルの体力を、残り一割まで減らした。
アルジニ ツカエル
そうすると、エレメンタルクリスタルからそんな声とともに、ステータスカードが飛んできた。
僕は、迷わずそのステータスカードを手に取り、使い魔契約をかわした。
こうしてエレメンタルクリスタルとの長かった戦いは終わりをむかえた。
エレメンタルクリスタルと契約したあとは、エレメンタルクリスタルの名付け。ステータスカードと魔石の回収。
それらを行い、作業が終わったら星遊戯盤を解除してすぐに眠りについた。
『未知のダンジョン』攻略中のステータス
リュウセイ
Level:80
年齢:18
種族:アステリアン
【補正】全項目+10451
【体力】
15500/15500
【魔力】
3500000/3500000
【星力】
10450/10450
【筋力】85
【耐久力】 83
【敏捷】12400
【器用】12040
【精神】66500
【幸運値】50%
【属性】星
【称号】
世界を渡った者、死を経験した者、■■■の盟友、インセクトキラー、暴星の葬者、繰り返す者、夢羊の羊飼い、赤き天災、白の猛威、マタンゴルーラー、魔石製造機、アメデルフィネルーラー、樹のユグドラシルに認められた者、青の厄災、バジリュークスルーラー、ヒュキノストールルーラー、エレメンタルキラー、エレメンタルーラー
【能力】星遊戯盤 Level:58
星属性魔法 熟練度:64
《オリジン》《ビックバーン》《オリジンティック》《ビギニングライト》《カオス》《スター》《コスモス》《ビカム》《ブラックホール》《ホワイトホール》《ワームホール》《バタフライエフェクト》《ガンマ線バースト》《パルサー》《フレア》《メテオライト》《シューティングスター》《コメット》《グラウ゛ィティ》《カーレント》《ウ゛ォーテクス》《ラーウ゛ァ》《ウェイブ》《サンダー》《トルネード》《アースクエイク》《イラプション》《アウ゛ァランシュ》《シムーン》《スーパーセル》《ドラウト》《フラッド》《ファフロツキーズ》《リソース》《サンライト》《ムーンライト》《スターライト》《オーロラ》《クラウド》《レイン》《ストーム》《スノーストーム》《フォグ》《ミラージュ》《エクスプロージョン》《フリーズ》《ドライ》《コンプレッション》《イクスパンション》《サンクチュアリ》《フライ》《リード》《カンステレイシャン》《フォース》・・・
眷属召喚 Level:1
眷属生成 Level:1
星地変転 Level:2
星空変転 Level:1
星定軌道 Level:25
星座祝福 Level:1
魔石交換 Level:31
星駒交換 Level:1
元素変転 Level:1
星天輝導、星刻閲覧、星間転移、星界庭園、仮想星夜、星器召喚、星物召喚、星光領域、星境力場、星護衛群、限定起動、高速起動、限定加速、限定透過、擬似星盤、星下減衰、始源混沌、終焉虚無
【祝福・加護】
ルシフェルの祝福
【職業】
星導司Level:58
【備考】記憶欠落状態態
持ち駒
アバター・アイディアル×1
アバター・ウィッシュ×1
アバター・レコード
アバター・スピリット
アバター・ドラゴン
アバター・ネメシス
アバター・ユートピア
アバター・タリスマン
ファミリア・マタンゴロード=ラスペリ×1
ファミリア・アメデルフィネロード=ブルーム×1
ファミリア・バジリュークスロード=ストゥリクト×1
ファミリア・ヒュキノストールロード=アサイド
ファミリア・エレメンタルロード=ウ゛ァース
ブラッドーバット×1
ケイウ゛モールド×1
アテナオウル
×16
ハンターズホーク
×14
フレイムビー×81
ブラッティリーチ
×42
アラクネスパイダー
×25
サイレントスネーク
×35
ランマッシュ
×51
デザートスコーピオン×29
貯水ラクダ×45
貯水サボテン×23
ポイズントード×42
マッドスネーク×51
ウイル・オ・ウィスプ×165
イグジスタンス改×1
各種エレメンタル×57~17246
キャンドルファルロス×1
ソルジャースケルトン×15
スペクター×3
ファントム×3
ホーント×3
ポルターガイスト×1
ドッペルゲンガー×1
スプラウトコクーン×34
フラワーバタフライ×3
アーミーアント×1
ドリームシープ×4ル
デススコーピオン×3




