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『深淵の樹海』第五階層 白の猛威とロード

「さて、魔法陣はこれで良し。マタマタタンゴはどうかな」


魔法陣が消えたのを確認して、先程マグマウェイブを喰らわせたマタマタタンゴの方を見た。


あちこち焼け爛れているが、プレイヤー視点ではまだ体力が残っているのでまだ生きているようだ。


「あれだけの天災に見舞われて生きてるなんて、さすがはボスですね」

「そうね。凄まじい生命力だわ」

「同感だ」

「そうですね」


マタマタタンゴが生きていることに、みんなで揃って呆れた。


「けど、体力は残り二割を切っています。すぐにトドメをさせますよ」


早速倒れ伏すマタマタタンゴに、次の魔法を放つことにした。今度は、さっきみたいなことにならないように気をつけながら、魔法を選択した。


「それじゃあ《ラ」


ブシュウー!!


そして、いざ魔法を発動させようとした瞬間、倒れ伏すマタマタタンゴの傘の部分から、色とりどりの粉。たぶん胞子が大量に噴き出した。


「なっ!」


条件反射的にまずいと判断。魔法の発動を中止して、慌ててマタマタタンゴから距離をとった。


距離をとってすぐに、マタマタタンゴがどうなっているのかを確認した。


今のがマタマタタンゴの最後の足掻きならまだ良い。けど、そうではなかった場合は・・・。


嫌な予想ばかりしながら確認したマタマタタンゴは、その予想を裏付ける姿になっていた。


マタマタタンゴの身体。降り積もっている灰。砕けた岩石。一部の冷えて固まったマグマ。それらの各所から、凄まじいスピードでキノコが生えてきていた。


その生育速度はブラックホールで吹き飛ばした時の比ではなく、あっという間にキノコの。マタマタタンゴの森が出来上がろうとしていた。


「ヤバイ!」


身の危険を感じた僕は、途中からは生育を見るのを諦めて、マタマタタンゴからさらに距離をとった。


こんな近くにいたら、苗床にはされなくてもマタンゴに囲まれてしまうし、全身というか皮膚に張り付く形でマタンゴが生えてきそうな気もしたのだ。


ボス部屋の壁際まで逃げ、そして後ろを振り返った。


「うっ!?」


そこには、マタンゴの森が出来上がっていた。


中心部にマタマタタンゴ。そのマタマタタンゴから円形に、傘の色とサイズの違うマタンゴ達が順番に生え、隙間を小型マタンゴ達がびっしりとうめつくしている。

少し目を離した隙にこれとは、呆れた繁殖力だ。その上、今も絶賛胞子と菌蕈を放出中のようだ。大気にだんだん色が付いてきている。


「これはさすがに」


ここまで胞子が舞っている以上、もう火気厳禁だ。そうなると、どうやってこれから攻撃しよう?


目の前で大繁殖されると、どうすればいいのか困る。ここはひとまず、目先のことから解決していこう。


「《スター》」


手始めに、こちらに向かってきている胞子に菌蕈、小型マタンゴ達から身を守ることから始めた。


《スター》で自分の周囲に大量の『星』を配置。その『星』達に胞子等の吸収をさせた。これで、今いる壁際の部分を安全地帯にすることが出来た。


現在、迫り来る胞子も菌蕈も小型マタンゴも、ことごとく『星』に吸収されていっている。


仲間を気にせず敵を一掃したいこういう時、この魔法はやはり便利だ。


しかし、これからどうしよう?こちらへの干渉は防げているとはいえ、これで出来るのは膠着状態まで。こちらからも討って出ないと、いつまでもマタマタタンゴ達を倒せない。

だけど、手持ちの魔法は天災級とかばかり。ここは、相手の繁殖力とこちらの吸収力の勝負といこう。


「《ブラックホール》シュート!」


行動指針を決めた僕は、早速行動を開始した。


胞子、菌蕈、小型マタンゴ達のような比較的小さなものは『星』で自動吸収させ、マタマタタンゴ達のような大きなものはマイクロブラックホールで削っていった。


イグジスタンスの能力でこちらの魔力は無尽蔵。体力面もアバターの身体で問題無し。


持久戦に持ち込んで、ゆっくり確実にマタマタタンゴ達を削っていく。こちらと違い、マタマタタンゴの繁殖力は有限のはず。違ったとしても、効果がかけらも無いということはないだろう。


そんな想定のもと、僕はただただ攻撃を繰り返していった。




あれから体感で2時間が経過した。


現在は、こちらが優勢だ。手近な所を『星』で安全地帯に換え、そこからさらに『星』を配置していく。これを繰り返した結果、最初は壁際だけだった安全地帯が、今は部屋の半分を越した辺りにまで広げることに成功した。今では、ボス部屋に浮かんでいる『星』の数は、軽く二百を越えている。


途中からは、星力が不足仕出したので《オリジン》も併用した。そのせいもあって、熟練度の上がりが半端ないことになっている。それもある意味当然か。この2時間近い間、ブラックホールを数十回。スターを二百回以上。オリジンも両手両足の指では数えられない程使っているのだから。これで熟練度が上がらない方がおかしい。


そして、熟練度が上がった結果、新たな魔法を得た。その中には、マタンゴに有効そうなものもいくつかあった。


新しく得た魔法は次の通り。



《リソース》(資源)500~MP

50~SP


《サンライト》(日光)

150~MP

15~SP


《ムーンライト》(月光)

130~MP

13~SP


《スターライト》(星明かり)

100~MP

10~SP


《オーロラ》(極光)100MP

10SP


《クラウド》(雲)

50~MP

5~SP


《レイン》(雨)

150~MP

15~SP


《ストーム》(嵐)

180MP

18SP


《スノーストーム》(吹雪)

150MP

15SP


《フォグ》(霧)

80MP

8SP


《ミラージュ》(蜃気楼)

100MP

10SP


《エクスプロージョン》(爆発)

200MP

20SP


《フリーズ》(凍結)70~MP

7~SP


《ドライ》(乾燥)

120~MP

12~MP


《コンプレッション》(圧縮)

300MP

30SP


《イクスパンション》(膨張)

300~MP

30~SP


《サンクチュアリ》(聖域)

1000~MP

100~SP



また一段と魔法が増えた。今回も気象なんかに関する魔法が含まれていたが、星属性と言えるのかわからないのもまた混じっていた。聖域って、星属性?こう、星域の間違いのような気がした。


さて、この中でマタマタタンゴ達に使えそうなのは、吹雪、凍結、乾燥、圧縮。この四つ辺りかな?火気厳禁だから、逆にすればいいという発想だ。マタマタタンゴ達が繁殖出来ないくらいキンキンに冷やし、キノコに必要な湿気も奪い取る。あとは、萎びた残骸を『星』等で吸い込んでいけばいい。


他に有効的な戦略もないので、この作戦でいくことにした。


「《スノーストーム》!」


決めたのなら即行動。早速マタマタタンゴ達に向けて吹雪の魔法を発動させた。すると、今回は噴火の時と違い、白い魔法陣が自分の正面に出現した。そして、そこから大量の雪と強い寒気をともなった風が吹き出した。


魔法陣から発生した吹雪は、噴火の時と同様に時間経過とともに吹き出していく量が増えていった。そうして吹き出していった大量の雪は、マタマタタンゴ達を横殴りに襲い掛かった。


空気中の胞子も、菌蕈も巻き込みながら、全てを白く染め上げ凍てつかせていっている。


先程までは増殖を繰り返していたマタマタタンゴ達は、吹雪を発生させてから目に見えて動きが緩慢になった。もともと左右に揺れ動きながら胞子等をばらまいている程度の小さな動きしかしていなかったが、それよりもさらに動きが小さくなったのだ。作戦の第一段階としては成功と判断していいだろう。あとは、完全に凍らせるか、乾燥させるかだ。いや、もう増殖スピードが落ちているのだから、これ以上手を加える必要もないか?


・・・これ以上はしなくてもいいか。


吹雪で凍りついていくマタマタタンゴ達の様子を見て、そう判断した。


「《オリジン》、《スター》、《ブラックホール》」


マタマタタンゴ達の動きが鈍っている今のうちに、進行スピードを上げた。イグジスタンスで魔力回復。星力から『星』を生み出し、雪ごと凍りついた小型マタンゴ達を吸い込ませていく。大きなマタンゴ達も、ブラックホールで瞬間消滅させる。相手が増殖しなくなったので、先程までの進行速度が嘘のように安全地帯を広げられた。


それから数分。一応マタマタタンゴを最後まで残し、マタマタタンゴが発生させた下位種を全て片付けた。


「竜星さん、だいたいは片付きましたね」

「はい。あとは、大元のマタマタタンゴを倒せば終わりです」

「そうですね。けど、なんでマタマタタンゴを最後に残したんですか?他のマタンゴを倒すより前に倒してもよかったのでわ?」

「そうかもしれません。けど、噴火後のさっきみたいなことになられても面倒でしょう?完全に行動不能にしてからトドメを刺した方がいいと思ったんです」

「なるほど。たしかに先程のように胞子をばらまかれると面倒ですからね」

「そうでしょう。けど、どうせもう終わりです」


表面が雪で覆われ、微動だにしなくなったマタマタタンゴを見て、そう判断した。


最後は、圧縮した後にブラックホールでいいだろう。


「《コンプレッション》」


そう思い、早速マタマタタンゴを潰しにかかる。


グニュ パリィ! グニャ  バリリィ! ブチブチ!


魔法が発動すると、見えない力に握られたかのようにマタマタタンゴの巨体が押し潰され出した。


表面の凍りや雪を巻き込みながら、少しずつ。けれど確実にマタマタタンゴのサイズを小さくしていった。


あとはブラックホールに放り込めば終わる。そう思ったので、ブラックホールを放つ用意をしておこうと思った。


「あれっ?」


が、すぐにおかしいと思うことになった。


先程まで順調に圧縮出来ていたマタマタタンゴの身体が、途中からいっこうに縮まなくなったのだ。


「膨らんでる?」


いや、逆にさっきよりも膨らんできているような気も?


気のせいかとも思い、マタマタタンゴの変化をじっくり観察した。すると、やはり圧縮されて縮んできていたマタマタタンゴの身体が少しずつ膨らんできていた。よくよく見てみると、マタマタタンゴは傍にある何かを取り込んで大きくなっているようだ。


「あれは?」


その何かを確認してみた。それは、マタマタタンゴの近辺に数多に転がっている岩。いや、岩じゃない!あれは!


「あれはまさか魔石?まさかあいつ、リュウセイがブラックホールで作り出した魔石を吸収しているの!?」


ラキアちゃんも僕と同じ結論を出したようだ。そう、マタマタタンゴが吸収していた岩。もとい、魔石は、僕がマタマタタンゴ達をブラックホールで消し飛ばした結果生成された物だった。

どうやらマタマタタンゴは、戦闘終了後に回収しようと思って置いていたそれらを吸収して膨らんでいっているようだ。


原料を考えると、ある意味共食いをしていると言えるだろう。


「まずいわ!あいつランクアップするつもりよ!」

「ランクアップ?」


僕が意味のない感想を得ていると、ラキアちゃんの口からランクアップという言葉が出てきた。


ランクアップというのは、モンスターがLevel100に到達して起こる現象だ。そして、僕としても、駒のランクアップは馴染み深いものだ。なんせ、このダンジョンに入ってからは魔石がザクザク手に入り、何度も手駒をランクアップさせたのだから。けど、それは僕の能力によるもの。普通のモンスターも、魔石の吸収でLevelUPとか可能なんだろうか?


・・・考えるのは後にしよう。ラキアちゃんが慌てている以上、その可能性が高い。なら、ランクアップされる前に潰す。


「《ドライ》、《グラヴィティ》」


圧縮魔法の上から感想と重力魔法を重ねがけした。


その結果、魔石を吸収して膨らんできていたマタマタタンゴの身体が、干からびだし、再び圧縮されはじめた。


「諦めの悪い」


体積干渉系の魔法を同時に三つも喰らっているのに、マタマタタンゴは魔石を吸収するのを止めなかった。さっきよりもペースは落ちているが、それでも体内に少しずつ吸収していっている。その諦めの悪さというか、生きようとするその行動は嫌いじゃなかった。


パァァァァ!!


「うん?」


だが、そんなことを思っていたせいで、マタマタタンゴを倒すタイミングを逃した。現在、マタマタタンゴの大きさは元の十分の一程度まで圧縮出来ていた。ブラックホールなら、一撃で充分葬りされるサイズだ。

そこまで縮んだマタマタタンゴが突然光だしたのだ。こういう特殊なエフェクトが発生したということは、ランクアップが起こった可能性が高い。ランクアップ前に倒せたのだ。なのに、マタマタタンゴの悪あがきを好ましく思ってしまった為、マタマタにトドメを刺すタイミングを逃してしまった。


そのことを後悔しながら、ランクアップして変化していっているマタマタタンゴの姿を観察した。


マタマタタンゴの身体は光の中で変化していった。まず、数十mあった全長は二m近くまで縮んだ。縮んだ理由は、僕の魔法のせいなのか、ランクアップ先のモンスターの元々のサイズなのかは不明だ。次に、全長が縮んだら体型も変わった。マタマタタンゴの時は、傘、頭兼胴体、足と、キノコをそのまま人型にしたような姿をしていた。人の体型に当て嵌めると、胴長短足と呼ばれる感じだ。

しかし現在の体型は、本体は大人の男性のスタイル。頭部、肩部、腰部、手部、足部にそれぞれキノコの傘がついていることを除けば、八頭身のスラッとしたスマートな体型になっている。

全長が縮んで、スタイルが良くなったという、変な感じだ。


マタンゴロード Level1


ちなみにプレイヤー視点ではこう表示されていた。


直訳で、マタンゴを統べる領主ということになると思う。


「リュウセイ!ぼうっとしている場合じゃないわよ!さっさと逃げなさい!」

「えっ!?りょ、了解!」


僕は、ラキアちゃんに言われて目の前のマタンゴロードが敵であることを思い出した。慌ててマタンゴロードと距離をとろうと一歩後ろに下がった。


「えっ!?」


すると、マタンゴロードの方も一歩こちらに前進して来た。

驚いてまた一歩後ろに下がる。すると、マタンゴロードもまた一歩前に前進して来た。


一歩下がる。一歩進む。マタンゴロードは、こちらが下がった分だけ前に進んで来た。


しかし、してくるのはそれだけだった。攻撃してくることなどはなく、ただついてくるだけだ。マタンゴロードのこの行動に、どうしたら良いのか判断に困った。先程まであれだけ派手に攻撃しておいてなんだけど、人型のシルエットかつ、敵対的でない相手に攻撃するのはさすがに躊躇われた。


隙になることはわかりきっていたが、マタンゴロードの前でこの後どうしようか考えこんでしまった。

僕が考えこんでいる間も、マタンゴロードに襲い掛かってくる様子はなかった。

ランクアップした際に何かあったのだろうか?それとも、ランクアップした際に新たに『■■■の盟友』のモンスター敵対値減少の効果でも発動したのだろうか?いや、元々マタマタタンゴの時点で、直接襲い掛かってくることはなかったか?

そういえばあの巨体ならこちらを圧殺も出来ただろうに、マタマタタンゴは一切そんなことをして来なかったことを思い出した。


よくよく考えてみると、マタマタタンゴはキノコとして繁殖行動をしていただけで、攻撃は一切して来なかった。ボスモンスターということで、僕が一方的に攻撃していただけだった。そう考えると、マタンゴロードに攻撃するのは気が引けた。

あちらは攻撃してこないのに、こちらが一方的に攻撃している。相手がモンスターである点を除いて客観的に考えると、僕が悪者である。

そう思うと、さらにマタンゴロードにたいする攻撃意欲が減少した。

もうマタンゴロードに攻撃する気が枯渇気味だ。

けど、目の前のボスモンスターをほおっておくわけにもいかない。

それが悩みどころだった。




僕がどうしようか悩んでいると、マタンゴロードに動きがあった。


「うん?」


スッ


さっきよりも僕に近づいて来て、僕の正面で片膝をつき何処かの騎士のような姿勢をとった。


「何がしたいのかしらこいつ?」

「さあ?」

「なんかリュウセイに忠誠を誓おうとしているように見えないか?」

「たしかに見えなくはないけど」


マタンゴロードの雰囲気か、その騎士のようなポーズのせいかもしれないが、ブラドの言うとおりそうしようとしている風に見えないこともなかった。


けど、モンスターであるマタンゴロードが忠誠を誓ってくる理由がない。はっきり言って、マタンゴロードの行動は謎だ。


ポォォ!


「今度は何だ?」


マタンゴロードの様子を訝しんでいると、マタンゴロードに新たな変化が起こった。マタンゴロードの胸元が発光して、ステータスカードが飛び出してきたのだ。


「ステータスカード?マタンゴロードは生きているのになんで?」


モンスターが死んだら出て来るはずのステータスカードがどうして?


知識と現在の齟齬に違和感を覚えていると、ステータスカードが僕の正面に移動して来た。


「これをどうしろと?」


答えが返ってくるとは思っていなかったが、一応マタンゴロードに聞いてみた。

すると、答えないと思っていたマタンゴロードの手が動いた。僕とステータスカードを交互に指差し、どうぜと手で表現してきた。


「触ればいいの?」


コクリ


僕の確認に、マタンゴロードが頷いた。


何だかわからないが、とりあえずマタンゴロードの要望通りにしてみることにした。


僕は、ゆっくりとステータスカードに手を伸ばした。


「竜星さん」


ステータスカードに触れようとしたその瞬間、マールさんに呼ばれた。


「どうかしましたか、マールさん?」

「竜星さん。本当に触るつもりですか?罠の危険があると思いますが」

「その可能性あります。けれど、こうして相対してみた感じ、大丈夫だと思います」


マールさんが言うこともわかるが、罠の可能性は低いとみている。というか、ランクアップしているのにわざわざ罠を仕掛ける必要なんかないと思う。


「そうですか。では、私は見届けることにします」

「ありがとうございます」


マールさんに自分の意見を伝え、あらためてステータスカードに手を伸ばした。


ポンッ!


そして、僕の手がステータスカードに触れると、そんな音と白い煙りが発生した。一瞬驚いたが、すぐに煙りは晴れた。

煙りが晴れた後、何が起こったのか確認してみると、触れたステータスカードが消失していた。そして、いつの間にかステータスカードに触れた方の手に何かを握っていた。


「これって?」


その何かを見てみると、それは目の前で膝をついているマタンゴロードにそっくりな駒だった。


僕が星遊戯盤の能力で扱うのと同じアレだ。


なんで倒してもいないのに駒が出て来たんだろう?


・・・!


理由を考えていて、一つの可能性が思い浮かんだ。


ポケットから自分のステータスカードを取り出して、ある部分を確認した。


「当たりだ」


そして、確認した結果予想が当たっていたことがわかった。確認したのは駒の入手方法の欄。その中の一つに、使い魔契約による入手というのがあった。簡単に言えば、モンスターと契約することで契約相手の駒を得るといった方法だ。どうやら、マタンゴロードの今している行動が使い魔契約にあたっているようだ。


「君、僕の使い魔になったの?」


コクリ


念のために確認したところ、マタンゴロードが立ち上がって頷いた。

これで予想が合っていることが確認出来た。


「君が使い魔か。名前とか欲しい?」


コクリ


使い魔契約したらしいので聞いてみたら頷いてきた。じゃあ、名前を考えないと。・・・!


「プラスペリティ。繁栄という言葉を区切って、ラスペリなんてどうかな?」


コクリ


マタンゴロード。ラスペリが頷いた。これで良いようだ。


「そう。じゃあ、これからよろしくね」


コクリ


「さて、最後は何だかよくわからない展開になったけど、これでボス戦は終了かな?」


視線をマタンゴロードから外して周囲を確認する。僕達以外に動いているものは、今だに吹雪を吐き出し続けている白い魔法陣くらいのものだった。後でキャンセルしておこう。


「そのようですね」


マールさんの声が足元からではなく、隣から聞こえてきた。声のした方を見てみると、《潜影》で隠れていた三人が外に出て来ていた。


「じゃあ、後始末をして次の階層に進みましょう」

「はい」

「ええ」

「おう」


三人が頷いたので、早速発動していた魔法の解除作業及び、ステータスカードと魔石の回収を開始した。




あれから一時間程経った。しかし、今回は魔石回収にかなりの時間がかかって今だに後始末が終わらない。理由としては、魔石の一部がマタンゴロードのランクアップで消費されたが、岩サイズの魔石がまだゴロゴロあったからだ。他にも、二百を越える数の『星』を展開していたので、それらをキャンセルして回収するのにも苦労している。


さらに、今回は全体的に魔石が大粒で、手持ちの駒を全て一度ランクアップさせても余っているのも時間がかかる理由となっていた。


しかし持ち帰れない以上、この階層でなんとかするしかない。下手に残して、次のボスが吸収してランクアップされても困るし。


「はあっ。終わりませんね」

「そうですね。まだザクザクあります」

「リュウセイ。お前って魔石製造機みたいだよな」

「そうね。普通は、こんな大量かつ大粒の魔石なんてそうそうお目にかかれないわよ」

「そうなの?」

「はい」「おう」「ええ」


終わらない作業に愚痴ると、ブラドとラキアちゃんにそう言われた。やっぱり現状が少し異常なのか確認してみると、マールさん含めて肯定された。

現状は異常確定らしい。


「まあ、スターにしろブラックホールにしろ、モンスター素材とかを魔石にしていると考えればそこまでおかしくない気も・・・」

「その可能性はあると思います。ただ・・・」

「ただなぁ、その魔法の使い手がお前しかいないからな」

「検証の使用がないわね」

「そうだよね。・・・はあっ」


一応現状に納得のいく理由を探してみた。が、比較が出来ないので推測の域を出なかった。


「リュウセイ、現実逃避はそのくらいにしてちゃっちゃと後始末を終わらせましょう」

「それはわかっているけどラキアちゃん。もう手持ちの駒は全部一回はランクアップさせちゃったよ。あまりランクを上げすぎると、コスト関係で使い勝手が悪くなっちゃうんだ」

「そういえば、あなたの能力にはそんな制限があったわね。大量展開とか平然とやっていたから忘れてたわ」

「いや、それは」


たしかに上の階層で、シードラーウ゛ァを大量展開したりしていたのでラキアちゃんがこの制限を忘れていても無理はないと思った。


「けど、どうせ今回の経験値でそれなりにLevelUPするんだから、気にしなくても良いんじゃないの?」

「それは、あるかもしれないけど」


今回の戦いでは、マタマタタンゴが下位種を大量発生させた為、ラキアちゃんの言うとおり魔石程ではないがステータスカードも大量にあった。これだけあれば、確実にLevelは上昇するだろう。


「うん?LevelUP?」

「どうかしましたか竜星さん?」

「いえ、LevelUPで何かが引っ掛かりまして」

「LevelUPですか?」

「はい」

「何が引っ掛かっているんですか?」

「わかりません。けど、何か大事なことを忘れているような」

「大事なこと。竜星さんがLevelUPで引っ掛かりそうなこと。・・・!」

「何かわかりましたか?」


何かを思い出したようにマールさんがばっと、顔を上げたので聞いてみた。


「はい。基本的なことを忘れていました」

「基本的なことですか?」

「はい。竜星さんが常に使っているアバター・アイディアルのLevelUP時の効果のことです」

「アイディアルのLevelUP時効果?・・・あっ!」


マールさんに言われて思い出した。アバター・アイディアルのLevelUP時効果。普段ステータスにしか理想を反映させてなかったから忘れてた。


「自分の望む理想が、能力に反映される能力」

「そうです。今の竜星さんのステータスなら、たいていの理想は能力に反映出来るはずです」

「わかりました。やってみます」


ポーン!


マールさんに言われたとおり、魔石を活用出来る能力を理想にしながらステータスカードを吸収していった。

そして、数枚吸収したところでLevelUPした。なので、早速ステータスカードで確認してみると、いくつか新しい能力が増えていた。効果を調べていくと、その中の一つが当たりだった


「マールさん!成功です!」

「そうですか。よかったですね」

「はい!」

「なんとかなりそうなのか?」

「うん!新しく得たこの能力で、問題は解決するよ」

「そうか。じゃあ、さっさと後始末を終わらせようぜ」

「うん!」


僕は、新しく得た能力をフル稼働させて後片付けを進めていった。


それから一時間後、僕達は後始末を終えて次の階層に向かった。






『深淵の樹海』第五階層踏破時のステータス


リュウセイ

Level:30

年齢:18

種族:アステリアン

【補正】全項目+355

【体力】

380/380

【魔力】

3800/3800

【星力】

54/354

【筋力】35

【耐久力】 33

【敏捷】 400

【器用】 240

【精神】 540

【幸運値】50%


【属性】星


【称号】世界を渡った者、死を経験した者、■■■の盟友、インセクトキラー、暴星の葬者、繰り返す者、夢羊の羊飼い、赤き天災、白の猛威、マタンゴルーラー、魔石製造機


【能力】星遊戯盤 Level:10

星属性魔法 熟練度:15

《オリジン》《ビックバーン》《オリジンティック》《ビギニングライト》《カオス》《スター》《コスモス》《ビカム》《ブラックホール》《ホワイトホール》《ワームホール》《バタフライエフェクト》《ガンマ線バースト》《パルサー》《フレア》《メテオライト》《シューティングスター》《コメット》《グラウ゛ィティ》《カーレント》《ウ゛ォーテクス》《ラーウ゛ァ》《ウェイブ》《サンダー》《トルネード》《アースクエイク》《イラプション》《アウ゛ァランシュ》《シムーン》《スーパーセル》《ドラウト》《フラッド》《ファフロツキーズ》《リソース》《サンライト》《ムーンライト》《スターライト》《オーロラ》《クラウド》《レイン》《ストーム》《スノーストーム》《フォグ》《ミラージュ》《エクスプロージョン》《フリーズ》《ドライ》《コンプレッション》《イクスパンション》《サンクチュアリ》


眷属召喚 Level:1

眷属生成 Level:1

星天輝導

星地変転 Level:2

星空変転 Level:1

星定軌道 Level:1

星座祝福 Level:1

星刻閲覧

魔石交換 Level:1


【祝福・加護】

ルシフェルの祝福


【職業】

星導司Level:10


【備考】記憶欠落状態態


持ち駒

アバター・アイディアル×1

アバター・ウィッシュ×1

ファミリア・マタンゴロード=ラスペリ×1

ブラッドーバット×1

ケイウ゛モールド×1

ソルジャースケルトン×14

アテナオウル

×16

ハンターズホーク

×14

フレイムビー×81

ブラッティリーチ

×42

アラクネスパイダー

×25

サイレントスネーク

×35

ランマッシュ

×51

イグジスタンス改×1



キャンドルファルロス×1

ソルジャースケルトン×15

スペクター×3

ファントム×3

ホーント×3

ポルターガイスト

×3

レイス×2

ドッペルゲンガー×1

スプラウトコクーン×34

フラワーバタフライ×3

アーミーアント×1

ドリームシープ×4


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