表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

メルカの苛立ち

 6話目です。

 北澤さんの練習を目の当たりにしたメルカの反応は…

 この日は放課後にも関わらず、音楽室の前は野次馬でイッパイになっていた。

 学年で一番の人気者の北澤留琉奈がアイドルコンテストに出るのだ。

 練習している所に人が集まらないワケがない。

 北澤さんは野次馬なんか意識せず、レッスンに集中していた。

 今日は彼女1人だけで、佐貫さんがいない。

 美穂は近くで野次馬たちの行動に目を光らせている今井さんに話しかけた。

「今日は佐貫さんは?」

「静香? 用事が有るからって先に帰ってるよ」

「帰ったんだ。北澤さんは1人で練習、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。歌も振り付けも、殆ど覚えているみたいだし。1人で練習してても平気だよ」


 私はちょっと気になってる事を今井さんに問うてみた。

「ねえ…、佐貫静香って…、何者なのかな?」

「はぁ? 何者なのかって?」

「ちょっと…、不思議なコだよね?」

「静香が? ただの人間だよ?」

「見れば分かる」

「地球人だし、正真正銘の女の子だよ。私たちと同じ17歳だしね」

「だから、見れば分かるって」

 人間だとか、地球人だとか、私たちと同じ17歳だとか…

 分かりきった返事をするから呆れ返っちゃう。

 今井さんたら、私をからかっているのかな?

「アンタ、静香の何を知りたいの?」

「何か音楽的な活動しているのかなって? 歌も踊りも凄く上手いし」

 今井さんは間を置いて答えた。

「別にぃ…、大した事やっていないよ? 中学の時まで地元の少年少女合唱団に入っていたぐらいだけだから」

「それだけ?」

「他に何か有るって言うの?」

「大いに有りだね。北澤さんに対して、歌や振り付けを教えているじゃなーい?

 教え方が上手いし、まるでプロが指導しているみたい」

「プロだなんて、オーバーな言い方。ずっとコーラスやって来たんだから、自然と教え方が上手になってるだけの事だよ」

 今井さんは上手く言葉を並べてテキトーに誤魔化しているつもりのようだけど、私には薄々感じている。

 佐貫さんがフツーの女子高生ではないって事をね。


 私はもっと、深く追求しようとした。

 ところが隣にいる安田さんが怖い顔で横ヤリを入れて来る。

「なーんで静香の事を、根掘り葉掘り訊くんだよ?」

「別に根掘り葉掘り訊いていないでしょう? ただ」

「悪いけどよ、静香の事を色々と詮索しないでくれよな? アイツ、個人的に深い事情が有るんだからよ」

「どんな事情?」

「言えねーよ。自分のプライベートの事、訊かれたくないからね静香は」

「佐貫さん、ワケ有りの女の子なんだ?」

「まあな」

 私はこれ以上、訊かない事にした。

 男っぽい性格でマジ、怖い安田さんを敵に回したくないからだ。このコ、怒らせたら始末に負えないしね。


 この時だ。

「メルカ、どこに行くの?」

 立ち去るメルカを、美穂が追いかけ始めた。

 何か有ったのかな?

 私も後を追ってみる。

 メルカは玄関の所で立ち止まると、近くに放置してあった椅子を蹴飛ばしてしまった。

 何だか気が荒くなっているみたい。

 美穂が話しかける。

「どうしたの? 急に帰るとか言い出して」

 一呼吸し、気持ちを落ち着かせたメルカ。

「ちょっとね」

 穏やかでは顔をしているメルカを、美穂も私もジッと注目した。

「北澤さんの練習を見て、ショックでも受けた?」

「まあね」

「自分が思っていた以上に、北澤さんのレベルが高いって事を認識しているんだ?」

「思いたくはないけど…」

「そう、思わざるを得ないって事だね?」と私。

「うん」

 美穂が北澤さんを評価する。

「態度は横柄で生意気、その上に自惚れ屋と来た。こんな北澤さんだけど、あのコはあのコなりに頑張っているからね」

「あーもぉ! 悔しいな!」

「悔しい?」

「あんなにレベルが高かったなんて思わなかった。あのコを甘く見ていた私が馬鹿だったよ」

「自分を卑下する事は、NGだって言ったハズだよ」

「卑下だなんて」

「メルカはメルカなりに、一生懸命頑張ればイイじゃん」

「気休めは、よしてよッ!」

 目を剥き、声を張り上げたメルカの態度に私たちは凍り付いた。

 私が口を開く。

「美穂は、アンタの事を心配してあげているんだけど」

「私がルルナに勝てないって言うの!? 冗談じゃない!」

「そんなに剥きにならなくても!」

「私ぃ、決めた!」

「何を?」

「曲を変えるから」

「曲を変える?」

「アニメの曲じゃ、ルルナに勝てないから別のヤツにする」

「どんな曲にするつもり?」と美穂。

「まだ決めていない」

「何を歌いたいと思ってる?」

 メルカは少し考えてから答えた。が…

「ノーコメント」と言って、答えるのを拒否しちゃった。

「言えないの?」

「言えない」

「どうして、言えないの?」

「まあ色々有ってね」

「どんな事?」

「いちいち答えるのは面倒クサイなぁ。本番まで私は極秘で練習したいの。だから美穂も友恵も、顔突っ込まないでね」

 メルカはこう言って、先に帰ってしまった。

 キョトンとなる私と美穂。



 メルカが曲を変える。

 果たして、どんな曲にするのかな?

 続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ