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佐貫静香からの提案、そしてハードな練習

 11話目です。

 佐貫さんがメルカの為に協力的になった。

 何だかワクワクしちゃう。

 そこで次の日、佐貫さんは学校の音楽室で実際にメルカの歌を聞く事にした。

 先生大好きって曲を振り付け込みで歌わせたのだ。

 私や美穂も同席して歌のチェックを見学した。

 CDに依るカラオケに合わせながら歌うメルカ。

 佐貫さんは何も言わず、ジッとメルカの歌う姿を観察した。

 表情1つ変えない真剣な眼差しに、私は佐貫さんがタダの女の子でない事を改めて感じた。

 何者なのかは分からないけどね。

 彼女自身、プロの歌手ではないのかって時々思っちゃう事も有るのだ。


 歌が終わると、目を閉じて考え込んじゃうし。

 私はタイミングを見計らって話しかけた。

「どうかなぁ? メルカの歌は?」

 佐貫さんは目を開け、さわやかな笑顔で答える。

「悪くないですねぇ。木之元さんにはピッタリな歌だと思うし」

 え?

 いきなりの展開にメルカは反応を示す。

「まさか…、コンテストでこの曲を歌えって言うの?」

「せっかくだから、そのアニメ曲で勝負に出てみたらどうでしょうか?」

「えー? マジで言ってるの?」

「私は本気ですよ。本番のステージで歌うトコを見てみたいと思ってます」

 私も言う。

「私も同感だよね。アニメ曲を披露するのも悪くないって思ってるから」

「友恵まで、そんな事思ってるんだ」

 更に美穂までもが…

「私も同感かな?」

「美穂も…」

 私たち3人から促され、メルカは考え始めた。美穂は言う。

「もう考える余裕は無いと思うよ。あのアニメ曲を歌うって決めなさいよ」

「アンタたちが、そう言うなら」


 こうして、メルカは先生大好きって言う曲を歌う事に決めた。

 コレに関して、佐貫さんは提案を示した。

「単に歌うだけじゃあ、何だか物足りないですよね。どうせやるんだったら、とことんこだわりましょう?」

「どう、こだわるつもり?」

「ルルナは大人っぽいアイドル路線で迫るから、木之元さんは清純派路線を狙う事を提案しますわ」

「清純派?」

「木之元さんは背が低いから、より少女っぽくアイドルしちゃうんです。ツインテールの髪型をしてフリルの付いた衣装を着ればきっと、可愛いアイドルの雰囲気が出来上がると思いますよ」

 ツインテールの髪型に、フリルの付いた衣装…

 私はあの人気アイドルのコの姿を頭に思い浮かべた。

「レディースQメンバーのマーホがソロで歌う時の姿をイメージして良いよね? 何だかメルカと、雰囲気が近そうだし」

「そうですねぇ」と、佐貫さんも納得。

「マーホって、誰だったっけ?」と美穂。

「夕凪真帆子ちゃん。メンバーの中で最年少の14歳の可愛い女の子ですわ」

「メルカと似ているってワケ?」

「髪型をツインテールにすればね、よりソックリになっちゃうから」

 私はスマホを開いて、保存している画像を美穂に見せた。

 メルカには自身の髪の毛を両手でつかんでツインテールの形にしてもらった。

「わー、そっくり!」

 画像に写っているマーホ本人と、同じ髪型のメルカを見比べた美穂が驚きの表情を見せる。

 ホント、そっくりなのだから。


 メルカのアイドルのイメージが出来上がった。

 より少女っぽい清純派路線で勝負するのだ。

 後は、歌や踊りである。

 可愛いとか、スタイルバッチリグーだけじゃダメだから上手く歌えるように練習しなくてはならないのだ。

 では、どのような練習を行なえば良いのかな?

 佐貫さんが言う。

「私が教えます」

「佐貫さんが?」

「私の知り合いの人が音楽教室を経営してますから、そこを借りて基礎からレッスンしようと思ってるんです。だから私に任せて頂きますぅ?」

「出来るの?」

「大丈夫、私に任せて。上手く出来るよう、みっちりと特訓しますから」

「悪くないねぇ! 佐貫さんに鍛えてもらえれば、メルカは怖い者無しじゃなーい?」

 これには美穂は大賛成である。

「フフ」

 佐貫さんはやる気満々のようだ。


 すっごく頼もしい限りだけど、私は気になる事が頭に浮かぶ。

「佐貫さんが、そんな事を引き受けちゃって大丈夫なの?」

「だからぁ…、上手く出来るよう特訓するから…」

「そうじゃなくて、北澤さんの了解も無しに勝手にレッスン指導しても問題ないのかなって質問してるワケ」

「ルルナは何も関係有りません。これは私独断で決めた事ですから」

「でも佐貫さんは、北澤さんに歌の指導してるんだよね? 別のコ、しかも自分のライバルのコにも歌を教えているって知ったら北澤さん怒るんじゃないの?」

「ルルナにはもう、指導はしていません」

「やっていない?」

「もう結構だからって言って断って来ましたから。今では1人で練習しています」

「じゃあもう、メルカの指導をやっても問題ないんだ」

「もっちろん」

 美穂が目を輝かせ、ハッスルし出した。

「よっしゃー! だーったらぁ、思いっきりメルカに特訓出来ちゃうよねー!

 メルカも本番に向けて、大いに頑張るんだよー!」と言って、美穂はメルカの腕をバシーンと叩いて気合いを入れさせた。

「う、うん!」メルカの方は緊張しちゃって。


 すると佐貫さんの口から意外な指示が出て来た。

「堀川さんと椎原さん? あなた方お2人も、練習に参加して下さいね」

「何で私たちも?」質問したのは美穂である。

「木之元さんが歌う時の、バックダンサーとして踊ってもらいますから」

「エエー!? 私たちがー!?」

 私も美穂も冗談だと思った。

 でも佐貫さんからの説明を聞いて、これは本気だと思わざるを得なくなってしまった。

 本番当日では北澤さんは4人の男子をバックダンサーに従えて歌う予定らしい。

 ダンスが得意な野郎たちを既に選抜してるって言うから、向こうもかなり力を入れてるって事が伺える。

 そこで佐貫さんとしては、同じようにバックダンサーを従えてのステージを考えてるってワケなのだ。

 佐貫さんは説明を続けた。

「ダンサーは4人。堀川さんや椎原さんの他に、ウチのクラスから如月こずえってコをメンバーに誘い入れます」

「あとの1人は?」

「私です」

 何と佐貫さん本人もダンサーのメンバーとして踊るらしい。



 さっそく次の日から練習が始まった。市内の音楽教室を借りての本格的な特訓が始まったのだ。

 ダンスの基礎練習から腹筋運動、発声練習…等など、先ずは基礎から叩き込まれちゃう。

 見た目にはおっとりした雰囲気に思える佐貫さんも、特訓の時は鬼のように厳しい態度を見せるのには驚かされる。

 メルカには終始厳しく教えるし、私たちに対しても容赦はしない。

 ハードな練習続きだから、こっちがダウンしそう。

 メルカの方は小柄な体で気合い入れまくりで、常に前向きに取り組んでいた。

 元来、情熱溢れる努力家でも有るから、一度目標を持ってしまえば全力で取り組む女の子なのだ。

 いつも不器用だからと言ってるメルカだけどね。

 筋が良いから飲み込みが早いって佐貫さんは驚いていた。

 もしかしたら、北澤さんを凌ぐかもしれないって言うし。

 本番の学園祭が近づくにつれて、メルカの歌い方も振り付けも安定して来たようだ。

 私たちの方も踊りが身に付いて来たし。


 佐貫さんによる猛特訓の成果…、

 さぁ、本番ではどうなる?

 続きます。

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