壁に耳あり障子に目あり
警察車両のサイレンが低く響き渡る。自宅の前で手錠をかけられている斉藤は,警察官に囲まれながらパトカーに押し込まれる。彼の眼は虚ろだった。
後部座席へと座らせられ警察車両のドアが閉まる。
警笛の音とともに車は町を駆け抜ける。街灯が窓にちらつき、彼の顔を一瞬ずつ照らす。
「本当にしてないんだよ。信じてくれ」
必死の訴えに助手席の佐藤は振り返ることなく言った。
「信じられるわけないだろう」
「朝はあんなものはなかったんだ…」
「言い訳は署で聞くが…本当にあの袋はお前のではないのか?」
「あぁ、そうだ。信じてくれ」
藁にもすがる思いで横に座る神薙を見た。
「神薙さん思うところがあるのですか?」
「いいや、聞いてみただけだ」
警察署の前に車がゆっくり到着する。
車の扉が開き、手錠をかけられた斉藤が背中を見せる。その背中には、逃れられない運命が影を落としていた。警察官に連れられ建物へ向かった。
署内の自動ドアが開くと、ひんやりした空気と蛍光灯の光が流れ込む。
斉藤は無言のまま警察官に先導され廊下を歩く。
規則正しい蛍光灯の明かりが床に等間隔の影を落としていた。
すれ違う職員たちが一瞬視線を向けるが誰も言葉を発しなかった。
手錠の鎖が揺れ、金属音が静かな空気を切り裂いた。
やがて分厚い鉄の扉の前にたどり着く。
警察官が無言でカギを差し込みガチャと重たい金属音を鳴らす。
「入れ」
押し込まれるように中に入ると取調室の灰色の壁と冷たい蛍光灯が彼を包み込む。
椅子に座らされ、机を挟んで後から来た神薙がゆっくりと腰を下ろす。
その瞬間、背をわずかにかがめた。手が机の陰に隠れる。
もう片方の手で机の上に置いてある録音機に手を伸ばし赤いランプが点滅する。
「さて…」
目を細め書類を机に広げた。
「話を聞かしてもらおうか」
机の上の書類が二枚、音を立てておかれた
「あなたが今まで殺した人の名前。そして今回あなたの家から発見されたごみ袋の中身です」
「私はやってない。何度言えばわかるんだ!」
机の向こう側で刑事が身を乗り出す。目は鋭く声は冷たい。
「じゃあ誰がやったんだ。お前の家から、このごみ袋が出てきたのが何よりの証拠じゃないか」
「それは私のじゃないんだ。本当だ。本当なんだ。朝そんなものはどこにもなかった」
「じゃーなんだ。誰かがあんたをはめたと言いたいのか」
刑事の視線は揺るがない。
「噓をつくのはやめろ。お前がやったんだろ」
取調室には二人の呼吸だけが響く。
男はうつむき、唇をかみ否定を繰り返す。
「違う…違うんだ」
だが、神薙の目にはそんな言葉ですら虚ろな言い訳にしか聞こえなかった。
急に扉が開かれ操楽が入ってきた。
「神薙さん取り調べ中失礼します。斉藤の部屋を探した結果他にも血だらけの服。そしてこれまでの犯行で使われた凶器と思われる刀や銃が発見されました」
もう一度神薙は斎藤を強い眼差しで見る。
「本当にしていないんだ!!信じてくれ」
必死に訴えた。でも、それは神薙に届くことはなかった。
「操楽、変わるか?話したいことは少なからずあるだろう」
「はい。ありがとうございます」
神薙が外に出るとすぐに扉の鍵を内側からから完璧しめた。
これでもう外から侵入はできない。
そして録音機の電源を消す。
その不審な行動に斉藤は困惑した。
「一体あんたは何がしたいんだ」
床に椅子を引きずりながら荒々しく座る。時間がないと言わんばかりに。
「斎藤さんあなたが犯人ではないことはわかっています。少し協力してくれませんか」
虚を突かれた。まさかあれだけの証拠が出て自分を信じてくれる人がいようとは。
「協力?どういうことだ」
30分後取調室からでてきた。
操楽はそのまま会議室に向かうと他の刑事と会った。
「斎藤が容疑を認めました」
「本当か!」
急いで神薙は取調室に向かう。
扉を開けるとそこには初めとは違い未来を見据えた背中があった
また椅子にゆっくりと腰かけ、肘をついた
「操楽から聞いたが容疑を認めるんだな」
「はい。私がやりました」
はっきりと言い切った。神薙は少し疑いの目を向けたが信じた。
「彼を牢へ連れていけ」
扉の向こうで待機していた刑務官が扉を開け入ってくる。
手錠をかけられたまま斎藤は一本の長い廊下を歩かされた。
靴音だけが規則的に響く。
やがて重たい鉄製の扉の前で足を止める。
「ここだ」
看守の低い声とともに電子錠がかちりと音を立てて解除される。
中は狭いコンクリートの独房。簡素なベッドとトイレが置かれ、冷気と消毒のにおいが漂っていた。
背中を押されて中に入る。
でもわかっていた。すぐここから出られると。
「これで敵がとれるよ。智央」
お読みいただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
テストを乗り越え次の投稿も頑張っていきたいと思います。




