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道化師は笑う  作者: 無縫


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7/16

心に残る僅かな疑問

被害者へ事情聴取を終え、神薙と操楽は車に乗った。

「随分悲しんでいましたね」

操楽が口を開く。

「無理もない。妻を殺されたのだから」

「ですね」

苦い思い出を思い出したかのような顔をした。二人の間で不穏な空気が流れる。

エンジンがかかり車はゆっくりと走り出す

フロントガラスの向こうに、夕日の赤が長い影を道路に落としていた。

操楽が続ける。

「一人目の被害者、斎藤さんへの事情聴取はどうしますか」

「今日はもう遅い。明日の昼頃に伺いに行こう。今日は署に帰って情報をまとめよう」

「了解しました」

しばし沈黙が車に落ちる。

やがて署の建物が視界に入ると二人の表情には再び職務の緊張が戻っていた。

「さぁ、戻って整理をしようか」

車は警察署の駐車場に滑り込み赤い空の下で止まった。

署内の会議室に入ると刑事たちは机に資料を広げた。

被害者すべての証言を書き出す。

「やはり笑うという証言が多いな。快楽殺人犯か。長身・男・笑う…か」

少しの沈黙が続き、一緒に事件を追う佐藤が言う。

「あの…少し気になったのですが。今回襲われた兄弟の澄乃さんに関してなんですが、鈍い音で起きたという証言ですがおかしくありませんか」

「何がだ」

「あの家族は今回父・母・娘さんの3人が殺されたんです」

「そうだな」

じっと佐藤をみつめる

「弟さんの陽翔さんの証言から推測するに犯人は一人。誰が最初に殺されたにしろ悲鳴が聞こえるはずでは?」

「確かにな。犯人が複数とは考えられないか?1人があの兄弟をなぶっている間にほかの犯人が逃走手段の確保や自分らにかかわる証拠の隠滅。そのためあの兄弟からしたら犯人は一人のように感じる」

神薙は顎に手を当て、目を細める。

「確かにもし操楽の推測が本当ならばおかしな話だ」

「そうですよね」

それぞれが資料に目を落とす。

「操楽、そういえば弟さんは元気か」

「元気にやっていますよ。今は遠くに住んでいますが。佐藤さんもまた会ったとき遊んであげてくださいね」

その顔はどこか悲しそうだった。操楽そして神薙が。

「そうか」

上の蛍光灯を見てまぶしそうに目を細めていた。

壁に貼られた証言の断片が、じわじわと一人の人間の輪郭を作っていく。

しかし、いまだ決定的証拠はない。

神薙は気まずくなり立ち上がって言う。

「コーヒー買ってくるが、佐藤と操楽何か欲しいのあるか」

「同じやつでお願いします」

「僕も」

「分かった」

ドアを開けると階段を下りて暗闇に消えていった。

「神薙さん怒っていなかったな」

「佐藤さん、そんなことはないです。怒っているに決まっています。ほんとに申し訳ないことをしました」

「その気持ちはちゃんと神薙さんに心に届いていると思うよ」

一方そのころ町はずれの薄暗い倉庫。

「まだまだ足りない。早く完治してくれないかな、あの兄弟」

ひび割れた鏡に映る自分の顔を覗き込み凶器に満ちた笑みを浮かべる。

倉庫には血の付いた衣服とくつそしてバット。

それらを袋に詰めながら次の計画を練っていた。

すべてを詰め終わると袋だけを残し、誰かに電話をしながら車を走らせていた。

署の時計が音立てて進む。

「明日の事情聴取は斎藤さんですか」

神薙は無言で頷き窓の外の夜を見やった。

その表情は近づく闇を読み取ろうとするようだった。

プルルルル。電話の音がけたたましくなる。

電話を取り30秒ほど話したところで切れた。

「誰からだ」

「神薙さんすいません。弟からです。ほんとに申し訳ないのですか今日は帰らしてもらいます」

「あぁ、わかった。明日は昼からだ。ゆっくりしてこい」

「ありがとうございます。失礼しました」

ほかの刑事に一礼するとともに去っていった。

署の階段を駆け下り車に急いで乗る。そして車を町はずれへと走らせた。



お読みいただきありがとうございました。

期末テストがもうすぐ勉強と両立して頑張っていきます。

もしよければ評価のほど宜しくお願い致します。

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