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道化師は笑う  作者: 無縫


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生者の集い

ピエロの情報集めから2週間、あまり成果は出なかった。

ただ中央警察署から家族の死因や現場についての資料が届いた。姉は手を震わせそれを開封する。封筒を開くとそこには赤黒く染まったリビング、臓器が飛び出した家族。目をそらしたくても紙の上の現実が視界を覆う。胸は締め付けられ、息が詰まる。

姉は自然と僕の手を握り締める。死因はバットでたたかれたことによる多発外傷による臓器不全や内臓損傷である。

現場では子供が散らかした足場のない部屋のように家族の臓器や目玉そして血がころり飛び散っていたようだ。

僕は拳を握り心の中で誓う。敵はとるからね。

そんな中ある一通のメールが届いた。

私もあなたのピエロ探しに協力したいと。ユーザーネームには青い蝦夷菊、変わった花の名前だなと思う。青い蝦夷菊の花言葉は信頼。花言葉にメッセージを託したかどうかは知らないが正直信じられない。完全に犯人が僕たち兄弟に近づこうとしているとしか思えなかった。犯人だとしたらこれを逆手に取ればいいんじゃないか。接触出来るなら手段はいとわない。

ネットで投稿されたものを見るとピエロの情報提供を呼びかけるものが多くあった。

「姉ちゃん、この人信じられると思う?」

「わからないけど会うしかないと思う。今のままだったら何も進まないし」

メールで相手と会話していくうちに相手の名前は斉藤朗太。住んでいるところも近いとわかり現状を打破する為に僕たちは会うことにした。

昼下がりの街角。太陽は高く、ビルの谷間に光を落としている。歩道には人々が行きかい、雑多のざわめきが続く。

僕と姉は無言で目的地へと進んでいた。

「あそこで待ち合わせね」

姉がポケットからスマートフォンを取り出し、メールでやり取りした人の名前をもう一度確認する。

「斎藤さんね」

僕も小さくうなずく。

もしものことがあったら姉ちゃんは僕が守る。家族は今姉一人。もうこの人しかいないんだ。

交差点を渡り大きい時計台を目印に待ち合わせをする。そこには1人立っている人がいた。

「こんにちは。あなたが斎藤さんですか」

少し緊張しながら声をかけると彼は微笑みながら「そうです。あなたたちは霧島さんであっていますか?」とまた微笑んだ。

身長高いな。しかもイケメン。これは姉ちゃん見逃さないだろう。

姉を見ると女の目をしていた。うわ…初めて見た。その顔。

「あっちにカフェがあるのでそこでおはなししません?」

こいつが犯人かもしれないという疑いはぬぐい切れない。警戒するに越したことはない。

姉ちゃんは使いもんにならないし。まさかここで姉のデレるシーンを見るとは思わなかった。

風がほんのりと甘くどこからか焙煎した豆のにおいが漂ってくる。

僕らは導かれるように歩みを進める。乾いた靴の音が一定のリズムを刻む。

十字の交差点わたるとガラス越しにきれいに並んだカップや客たちの穏やかな笑い声がかすかに漏れ出す。

扉を開けると鈴の澄んだ音が店内に響く。

中はコーヒーの香りで包み込まれ暖かな空気が頬をなでる。

奥の席に招かれ茶色い木製の椅子に座った。

カウンターから歩み寄ってきた笑顔のバリスタが「ご注文は?」と声をかけてきた。

「カフェラテを三つお願いします」

代表として斎藤さんが対応した。

バリスタは笑顔のまま伝票を書くと「少々お待ちください」と笑顔で返事した。

その姿はカウンター奥へと消えていく。

何から話せばいい。ストレートに聞くのは危ないか?それとも最初は世間話をして…

「この度は犯人を探すのに協力してくれるということで」

姉が最初ストレートに切り出した。

姉ちゃんはやっぱり心強い。自分だけでは何から話していいのかわからず、姉がいなければ今頃気まずかった。

「はい!」

あまりにも底抜けた元気で僕たちの緊張一瞬で解けた。しかし、一つの疑問がまだ僕たちの中にあった。

「なぜ殺人鬼探しに協力してくれるのですか」

間髪入れずに言う。

「私も殺人鬼に大切な人を殺されたからです」

自分で調べていく中で斉藤智央という名前が出てきた。

あいつに殺された被害者の一人だ。私たちと同じく臓器や目玉が飛び散りとても人間がやったように思えないような現場だったらしい。

その男は淡々としかし力強い口調で続けていった。

「私はあいつが憎い。なぜ私の家族を奪う。なぜほかの家族ではないのだ。絶対に許さない」

聞いたことのあるような言葉だった。

「今でも覚えています。ぐちゃぐちゃにされた智央の顔。私の大切な人を襲ったピエロは身長が高く、男だといいます。それ以外の情報は何もありません。自分であなた方のようにネットで犯人の特徴を集めたりしたのですが…何も出ませんでした」

やはり犯人に関する新しい情報は何も出なかった。でも分かったことは斎藤さんの大切な人を殺した犯人と僕の家族を殺した犯人は同じということだ。

「私はあなたたちに出会えて本当に良かった。絶対あいつを捕まえましょう」

僕たちはそれを聞き安堵した。

この人は同じ境遇に立たされた人なんだ。信じていいのだと。

「絶対捕まえましょう!情報交換のために連絡が取れるようにメール交換しませんか?」

姉もこの人と同じなのだろう。家族を殺された恨みは一生消えない。

メールを交換する理由がそれだけなのかはわからないが。

ちょうどメールを交換した後コーヒーが届く。

「お待たせしました」

低く穏やかな声とともにカップがそっとテーブルに置かれる。

ほろ苦いにおいが広がり消え表面には湯気がゆらゆらと立つ。

「「ありがとうございます」」

カップを手にしたまま視線を上げるとマシーンは静かに余韻を残す。

金属の体に光が反射し吐き出された蒸気はまだかすかに宙を舞っている。

別世界にいるような感覚だった。

椅子を引き会計を終える。扉を押し開けると鈴の音とともに生暖かい風が吹く。

「どこか行きたいところはありますか」優しい声で男が言う。何せ私たち兄弟はここに来たのが初めてだったのだ。そこから私たち3人はショッピングモールでゲームをしたりご飯を食べたりした。

そんな中ある議題が私たち三人の中に上がった。どうやってピエロを捕まえるか。そしてどうやってやつをおびき寄せるかだった。やつの足取りは何もわからない。

「まずあいつと遭遇しても勝てるように何か護身用の武器を探さない」

僕が言うと男があるお店へと案内してくれた。少しわき道にそれると陽光のささない道が一本現れた。

「このお店は護身用の武器を取り扱っているので欲しい物がそろっていると思いますよ」

男は古びた1軒のお店を紹介した。

名前には黒煤武具商店とかいてあり入口の電球はチカチカし現代では中々お目にかかれないようなふすまが窓代わりになっていた。それはまるで時代劇の舞台に迷い込んだような世界だった。


読んでいただきありがとうございます。個人的にですが黒煤武具商店の名前気に入ってます。

良ければ評価のほどお願い致します。

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