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道化師は笑う  作者: 無縫


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プロローグ

甘い匂いと笑い声が、まだ家の中に満ちていた。

瑠子の誕生日。姉の澄乃と僕はプレゼントのコスプレを買い、ケーキ屋に立ち寄りケーキを買った。

それは遊びだった。だが、家族で笑いあう時間の中で、それはかけがえのない幸せの象徴だった。

夕食テーブルは戦場のような賑わい。唐揚げの奪い合いに声が飛び交う。

ケーキにろうそくを灯し、妹がふーっと吹き消す。。赤いイチゴと白いクリームに照らされた笑顔は、確かに生きている幸せそのものだった。

ろうそくに炎は一本だけ天井までまっすぐと伸び、柔らかい光を巻いていた。

僕はその時、特に意識はしていなかった。けれど、無意識の奥で、幸福はいつまでも続かなかいのかもしれないという小さな影を感じていたのだろう。

しかし、夜は突然、静寂を切り裂いた。

ドアの破壊音。狂気に満ちた足音がじわじわ家に忍び寄る。

父と母、妹が床に倒れ、血がじわじわと広がる。

現実を理解できず、ただ立ちすくむしかなかった。

目の前で姉がバットに打たれ、倒れる。

全身に激痛が走る中、僕は必死に姉を抱きしめた。

「…生きて…生きて」

姉のぬくもりが失われていく中、無意識にそれを繰り返した。

生きて生きて生き抜いて

この願いを背負うことになることはまだ知らない。

殺人鬼は満足そうに去り、残されたのは血の匂いと静寂。

それでもかすかに暖かい姉の背中が、僕の生きる意味になる。

姉の言葉が耳に響く。あなたは一人じゃない。

気がつくと病室にいた。

暗く冷たい夜の記憶は途切れ、断片だけが脳裏によぎる。

「陽、起きたのね」

その声に、痛みの中でも守られてきた事実を感じる。

血と恐怖の夜が、僕たちの人生を決定的に変えた。

そしてこの光を胸に、僕は、僕たちは、犯人を追うことで旅の扉をまだ震える手で押し開けるのだった。

ケーキの2本ろうそくは天井へと空へと伸びてゆく。

その線は、まるで姉の思いが未来へと次世代へと届こうとしているようだった。


1月7日の0時00分に1話目投稿しますので気になった方は読んでいただけると幸いです。

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