8話
ヒーローとヒロイン、合わせて十人の活動は街に少しずつ根付いていた。老人たちは「ヒーローさんがいると安心だ」と口にし、小学生は「ヒーローとヒロインが見守ってくれる」と胸を張る。商店街の人々も「街が少し明るくなった」と笑顔を見せる。
市役所の広報誌には、十人全員の集合写真が掲載された。制服姿で並ぶその姿は、街の新しい象徴のように見えた。記事の中で隊長として名前が紹介されたのは悠真と柚月だったが、特別なクローズアップではなく、あくまで「代表者」としての扱いだった。
だが、学校に戻れば空気はまるで違った。悠真の同級生たちは、広報誌を見て冷笑を浮かべる。
「おい、新聞に載ってたぞ。ヒーローだってさ」
「ははっ、内申点狙いだろ?必死すぎ」
「隊長だって?名前だけじゃん」
揶揄と嫉妬が混じった声が、背中に突き刺さる。悠真は机に突っ伏し、聞こえないふりをした。だが、心臓の鼓動は早まり、耳の奥で言葉が反響する。
放課後、廊下で同級生に肩をぶつけられた。
「ヒーロー様のお通りだ」
わざとらしい声に、周囲の笑いが広がる。悠真は歯を食いしばり、何も言い返せなかった。
一方で、活動の場では違った。商店街の人々は「隊長さん、頼りにしてるよ」と声をかけ、老人は「ありがとう」と頭を下げる。柚月も、活動の合間にふと目が合うと、ほんの少し微笑んでくれる。その微笑みが、悠真にとっては何よりの救いだった。
――街では称賛され、学校では冷笑される。俺は、どこで本当のヒーローになれるんだろう。
その問いが、悠真の胸に重く沈んでいった。




