7話
冬の午後、商店街は買い物客で賑わっていた。年末が近づき、店先には正月用品が並び、通りには人の波が絶えない。悠真と柚月は、いつものように制服姿で見守り活動をしていた。
そのときだった。交差点の角で、突然大きな音が響いた。自転車がバランスを崩し、荷物を積んだ台車にぶつかったのだ。台車が倒れ、段ボール箱が散乱し、通りは一瞬で混乱に包まれた。
「危ない!」
柚月が声を上げた。箱の中から転がり出た瓶が、子どもたちの足元に転がっていく。人々が慌てて避けようとするが、狭い通りで身動きが取れない。
悠真は一瞬ためらった。――面倒だ、誰かが片づけるだろう。そんな怠け心が頭をよぎる。だが、柚月の必死な声が耳に届いた瞬間、体が勝手に動いていた。
「こっちに集まって!危ないから下がって!」
悠真は旗を広げ、人々を誘導する。子どもたちを安全な場所へ押しやり、瓶を拾い集める。商店街の店主が駆け寄り、老人が「ありがとう」と声を震わせる。
柚月も必死に段ボールを立て直しながら、悠真に目を向けた。
「悠真くん、こっちは大丈夫!人を守って!」
その言葉に背中を押され、悠真はさらに声を張り上げた。
「落ち着いて!順番に通れば大丈夫です!」
人々は次第に動きを止め、混乱は収まっていった。瓶はすべて回収され、台車も元に戻された。通りに再び静けさが戻ると、商店街の人々から拍手が起こった。
「やるじゃないか、ヒーロー!」
「助かったよ、本当にありがとう」
悠真は汗を拭いながら、照れ隠しのように笑った。だが心の奥では、確かな手応えを感じていた。
――俺は、ただの内申点稼ぎじゃない。本当に街を守るヒーローになれるかもしれない。
柚月が近づき、静かに言った。
「……さっきの悠真くん、すごかったよ」
その一言に、悠真の胸は熱くなった。承認欲求ではなく、純粋な感謝と尊敬の眼差し。それこそが、彼がずっと求めていたものだった。
街の混乱は収まり、夕暮れの空が赤く染まる。悠真の心には、新しい決意が芽生えていた。




