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街のヒーロー募集中!  作者: 双鶴


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8/12

7話

 冬の午後、商店街は買い物客で賑わっていた。年末が近づき、店先には正月用品が並び、通りには人の波が絶えない。悠真と柚月は、いつものように制服姿で見守り活動をしていた。


 そのときだった。交差点の角で、突然大きな音が響いた。自転車がバランスを崩し、荷物を積んだ台車にぶつかったのだ。台車が倒れ、段ボール箱が散乱し、通りは一瞬で混乱に包まれた。


 「危ない!」


 柚月が声を上げた。箱の中から転がり出た瓶が、子どもたちの足元に転がっていく。人々が慌てて避けようとするが、狭い通りで身動きが取れない。


 悠真は一瞬ためらった。――面倒だ、誰かが片づけるだろう。そんな怠け心が頭をよぎる。だが、柚月の必死な声が耳に届いた瞬間、体が勝手に動いていた。


 「こっちに集まって!危ないから下がって!」


 悠真は旗を広げ、人々を誘導する。子どもたちを安全な場所へ押しやり、瓶を拾い集める。商店街の店主が駆け寄り、老人が「ありがとう」と声を震わせる。


 柚月も必死に段ボールを立て直しながら、悠真に目を向けた。


 「悠真くん、こっちは大丈夫!人を守って!」


 その言葉に背中を押され、悠真はさらに声を張り上げた。


 「落ち着いて!順番に通れば大丈夫です!」


 人々は次第に動きを止め、混乱は収まっていった。瓶はすべて回収され、台車も元に戻された。通りに再び静けさが戻ると、商店街の人々から拍手が起こった。


 「やるじゃないか、ヒーロー!」

 「助かったよ、本当にありがとう」


 悠真は汗を拭いながら、照れ隠しのように笑った。だが心の奥では、確かな手応えを感じていた。


 ――俺は、ただの内申点稼ぎじゃない。本当に街を守るヒーローになれるかもしれない。


 柚月が近づき、静かに言った。


 「……さっきの悠真くん、すごかったよ」


 その一言に、悠真の胸は熱くなった。承認欲求ではなく、純粋な感謝と尊敬の眼差し。それこそが、彼がずっと求めていたものだった。


 街の混乱は収まり、夕暮れの空が赤く染まる。悠真の心には、新しい決意が芽生えていた。


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