3話
ヒロインの登場は街に新しい風を吹き込んだ。淡い制服に身を包んだ五人の少女たちは、ヒーローと並んで活動を始める。市役所の広報誌は「街を守る新しい力」と見出しを打ち、商店街の人々も「やっぱり華があるな」と口にした。
その中で、悠真の視線はただひとりに釘付けだった。伊藤柚月。隊長として壇上に立つ彼女の姿は、真剣で、凛としていて、悠真の心を一瞬で奪った。
――彼女に認められたい。
その思いが、悠真の行動を変えていった。
横断歩道で旗を振るときも、声を張り上げて「安全第一!」と叫ぶ。老人の荷物を持つときも、わざと大げさに腕を震わせて「重いけど大丈夫です!」と笑顔を作る。商店街の人々は「なんだか張り切ってるな」と苦笑し、同級生たちは「必死すぎだろ」と冷ややかに囁いた。
だが、悠真は気にしなかった。柚月が少しでもこちらを見てくれるなら、それでいい。
ある日、悠真は小学生の登校を見守る活動で、わざと派手に旗を振りすぎてしまった。風に煽られた旗が子どもの顔に当たり、泣かせてしまう。慌てて謝る悠真の姿に、周囲の視線が集まった。商店街の人々は「やりすぎだよ」と眉をひそめ、同級生たちは「ヒーロー失格だな」と笑った。
そのとき、柚月が静かに近づいてきた。
「……無理に目立たなくてもいいんじゃない?」
短い言葉だったが、悠真の胸に突き刺さった。承認欲求に突き動かされていた自分の姿が、急に恥ずかしく思えた。だが同時に、彼女の言葉は悠真にとって新しい挑戦の始まりでもあった。
――どうすれば、本当に彼女に認められるのか。
内申点と恋心、二兎を追うヒーローの物語は、ここからさらに複雑に絡み合っていく。




