エピローグ
停電騒ぎから数日後、街は落ち着きを取り戻していた。商店街の人々は「ヒーローとヒロインがいてくれて助かった」と口々に語り、新聞や広報誌には十人の活動が大きく取り上げられた。市役所の制度は一時的な話題ではなく、街に根付く可能性を示し始めていた。
市長は記者会見で言った。
「この制度は、単なるパフォーマンスではありません。若者たちが街を支え、人々が協力し合う姿こそが未来の希望です」
その言葉に、悠真は胸の奥で静かな誇りを感じた。内申点のために始めた活動が、いつの間にか街の記憶となり、自分自身を変えていた。
学校では相変わらず冷笑もあった。
「ヒーロー様、新聞にまた載ってたな」
「どうせすぐ終わる制度だろ」
だが悠真は、もうその言葉に揺れなくなっていた。街で見た笑顔、助けを求める声、そして仲間と共に乗り越えた混乱。それらが彼の心を支えていた。
活動の終わり、夕暮れの商店街で柚月が静かに言った。
「悠真くん、あなたは本当にヒーローだと思う」
その言葉は短かったが、悠真にとっては何よりの報酬だった。承認欲求ではなく、純粋な尊敬と信頼の眼差し。彼がずっと求めていたものが、そこにあった。
街の灯りがともり、冬の空に星が瞬く。悠真は深く息を吸い込んだ。
――俺は、内申点以上のものを手に入れた。
未来はまだ不確かだ。高校受験も控えているし、制度がいつまで続くかもわからない。だが、街の人々の記憶の中に「ヒーロー」としての自分が残る。それだけで十分だと思えた。
そして、柚月と共に歩んだ日々は、青春の一ページとして確かに刻まれていた。




