9話
ヒーロー隊とヒロイン隊、合わせて十人の活動は街に定着しつつあった。商店街の人々は「ヒーローさんたちがいると安心だ」と口にし、老人や子どもたちも笑顔を見せる。市役所の広報誌には全員の集合写真が掲載され、隊長として悠真と柚月の名前が紹介された。
だが、活動の裏側では小さな亀裂が生まれていた。
ある日の清掃活動。悠真が仲間に指示を出そうとすると、年上の隊員が眉をひそめた。
「なぁ悠真、なんでお前が仕切るんだよ。隊長だからって偉そうにするなよ」
悠真は言葉に詰まった。確かに自分は隊長だが、年齢も経験も浅い。仲間の視線には苛立ちと不満が混じっていた。
「いや、別に偉そうにしてるわけじゃ……ただ効率よくやろうと思って」
「効率?俺たちはボランティアだぞ。そんなに真面目にやる必要あるか?」
冷たい言葉に、悠真は胸を刺されるような感覚を覚えた。
一方、ヒロイン隊でも似たような空気が漂っていた。柚月が子どもたちの見守りを丁寧に指示すると、別の隊員が小さく呟いた。
「……真面目すぎるんだよな、柚月は」
その声は悠真の耳にも届いた。彼は思わず柚月を見たが、彼女は静かに微笑み、何も言い返さなかった。
活動後、悠真は柚月に声をかけた。
「……俺、隊長なのに全然まとめられてない。みんな反発してる」
柚月は少し考えてから、静かに答えた。
「隊長だからって、全部を仕切る必要はないと思う。みんなの意見を聞いて、一緒に考えればいいんじゃない?」
「でも、それじゃ俺の存在意義が……」
「存在意義は、みんなを導くことじゃなくて、みんなと歩くことだよ」
その言葉に、悠真ははっとした。承認欲求に囚われていた自分が、仲間を「まとめる対象」としか見ていなかったことに気づいた。
――俺は、隊長としてどうあるべきなんだろう。
街の人々からは称賛され、学校では冷笑され、仲間からは反発される。三つの世界の狭間で、悠真は新しい課題に直面していた。




