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茶色の場合  作者: Kwyt
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シルクロード

――1936年1月 参謀本部


「田尻君、日独英華満蒙回西蔵新疆防共協定が成立した。たいした中身はないが、実質国際連盟のようなものだ。やはり華満が両方入った協定が成立したことは大きかった。満州国が中華に承認されたようなものだからな。中の安定は英の望むところだし、独の影響力が増えるのをきらったらしい」

「ソ連の侵略を受けたときに陸軍の移動に協力するという条項は大きいですよ。極東シベリアだけで戦っても第2次シベリア出兵にしかなりませんから」


――1936年2月 浜松高等工業学校


「高柳助教授、満鉄経済調査会の十河です。テレビジョン装置の量産と放送の開始について、ご相談させてください。ご存知のように奉天では国民ラジオの生産がすすんでいます。最近はソラと名付けた独自設計の高周波用5極管を使って、スーパーヘテロダインラジオ、軍用電探なども作れるようになってきました。これにテレビジョンを加えていきたいのです」

「小型ブラウン管を使った受像機でよければ、いまの技術の組み合わせで量産できるでしょう。撮影、放送はどうしますか」

「アイコノスコープの国産化、超短波での通信、放送を考えています」

「通信ですか」

「軍の偵察機用、日満会議用など用途は多いと思います」

「ああ中継すれば満州の様子が直ちに本土で見れると、それは面白いですね。私でできることであれば協力いたしましょう」


――1936年3月 満鉄経済調査会


「天然ガスパイプラインのめどが立ちました。これでアルミニウム生産コストが下げられます。また、米国では天然ガスを低温で液化する特許がでています。ガソリンや軽油の代替として使えるかもしれません」

「おい、保存はどうするんだ。鉄のタンクか?」

「飛行機で使うのは工夫が必要ですが、トラックでは問題ないです」

「なるほど。蒙古での移動を考えるならいいかもしれん。燃料を運ばなくてもすむからな」


――1936年3月 理化学研究所


「朝永先生、東北帝大の岡部です。マグネトロンの理論研究についてお話をさせていただきたいのですが」

「発振の制御がしたいとか」

「はい。発振させてすぐ位相や周波数が安定しないと、反射波から位相差が取り出せないのです」

「ずっと発振させていてはだめなのですね」

「はい。起点がわからないので」

「それでは周波数を意図的に変化できればどうですか」

「ああ、なるほど周波数変化のタイミングをパルス開始のタイミングの代わりにつかうのですね。ドップラー変位がわからなくなるのは。。ああ周波数を変えない部分を作れればいいのか」

「なるほど。周波数変化と固定を繰り返させたいと。なんとかなるかもしれません」

「予算は田尻少将にいえばもらえると思います」


――1936年4月 海軍技術研究所


「内蒙からの陶土でなにか面白いものは見つかったかね」

「陶土ではないですが、包頭産の希土類を混ぜると種類によりいろいろ性質が変化して面白いです。高磁性、高硬度、高絶縁、高伝熱の磁器などいろいろ作れます」

「蛍光体の色や残光時間が調整できるだけではないということか。装甲板やモーターに使えそうだね」


――1936年4月、呉海軍工廠


「参謀本部の田尻少将が、こんなことをいってきました」

・積載量80t

・巡航速度25ノット

・航続距離1200km

・対空兵装[ボフォース40mm]

・軽量磁器装甲

・電探、通信機装備

・位置測定網対応

・1000台ロット

・液化天然ガス燃料

・不整地・砂漠走行可能

「なんでこれを海軍に持ってくる」

「酸素魚雷の気室製造能力に期待しているようです。上モノは輸送艦と同じですし。シュトルヒ載せろといわれないだけましです」

「気室を安く作る手を考えんとな。プレスでどこまでいけるかやってみるか。クロムは使えるのか」

「トルコから買えるので問題ないそうです」

「ゴムは」

「合成できるようになりました」

「サスペンションは」

「加速度計を使って能動的に制御するといいようです」


――1936年8月 参謀本部


「スターリンが数千人規模の粛清を進めています」

「これは対ソ工作を進める好機です。北満で国境紛争が多発しているのも都合がよろしい。まずは外蒙とブリヤート向けの国民ラジオでしょう」


――1936年10月 海軍技術研究所


「新しい装甲板、磁器の固定法はどうだね」

「セメダインという接着剤が売られていたので、買って接着してみたら、案外うまく行くようです」

「だいじょうぶなのかね。それは」

「加工や組み立てに金をかけるわけにもいかないので。1発持てば合格ですし。もう一つ、厚みが出ると信管の発動がずれて爆弾の破壊力が減るので、薄い中空の板を貼るのも有効なようです。障子のような構造で」

「焼き物に障子に糊か。くろがねの浮かべる城はどこにいった」

「みんな沈みました。これからは書院造りです」


――1936年11月 参謀本部


「田尻君、なんだねこの西方工作というのは」

「包頭、銀川、ウイグルから始めて天山南路再建です」

「いや、どこに何を運ぶ」

「極端なことをいえばなにも運ばなくてもいいのですが、目標としてはバクーに軍隊ですな」

「そんな補給が持つわけがないだろう。政治より数字じゃなかったのかね」

「燃料と水は現地調達できますので、あとはトラックの台数だけのことです。内蒙での天然ガス液化と、大型液化天然ガストラックの試験がうまくいったので、玉門、ウルムチ、クチャ、カシュガル周辺などシルクロード上に多数ある天然ガス田を同様に開発し、燃料供給中継地点とします。一部パイプラインを引く必要はありますが、鉄道を引くのよりはるかに簡単で安価です」

「ええ」

「まずは甘粛とウィグルのガス田開発ですな。トルコとフィンランドを防共協定に引き入れる工作も必要です」


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