表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四話 『田宮ひろ子』


A「ね! 出ないんですよ検索しても。存在してないんですよ。アイドルも歌も!」


 


 確かに検索しても出てこない。若くして亡くなったとはいえ、インターネットの検索に引っかからないわけない。


 


 やはり夢なのでは? と思ったが口に出すのをやめた。


 


 


 


A「あともう一つ。最初に検索した時に思い出したんですけど、僕の実家にお爺ちゃんとお婆ちゃんが住んでたことないんですよ……」


 


私「え………」


 


A「普通に会話してた気がするんですけど、あの二人は知らない老人だったんです。」


 


私「あの…… Aさん。やっぱり夢じゃないんですか?」


 


A「ははは。夢じゃないんです。断言できますよ。でも夢じゃないとすると、老人は幽霊ということになるんですかね」


 


 そう言って笑うAさんを見て、私は不気味さを感じた。


 


 


A「最近ね、また会えたんですよ! あのアイドルと」


 


私「……」


 


A「テレビとかでね。時々、映るんですよ。子供の頃に見たままの『アイドル 田宮ひろ子』を見るんですよ」


 


私「そんな…… Aさん、大丈夫ですか?」


 


 Aさんは、落ち着きがなくなってきている。挙動がおかしい。目の焦点も合ってないような感じで、周囲をキョロキョロ見回している。


 


 


私「Aさん」


 


A「ほら! あそこ! ひろ子ちゃんやん! 『季節をむかえに』歌いよるやん!」


 


 さっきの女性のノートパソコンを指さしてAが大声をだす。


 


私「ちょっとAさん」


 


A「ほらおるやん! そこにも! あっこにも! ひろ子ちゃん歌いよるやん!」


  


 Aさんは血走った目で店内をフラフラと歩き回り、パソコンや窓ガラス、しまいには他人のスマートフォンの画面まで覗き込んで騒ぎ出した。当然アイドルなんてどこにも映っていない。


 


私「Aさん! Aさん!」


 


 Aさんは、しばらく騒いで泡を吹いて倒れた。騒然とするカフェの中で、私は見てしまった。


 


 ざわざわしている店員や客をよそに、老夫婦らしき“もの”がAさんをずっと見てニヤニヤと笑っていた。


 


 


 


 Aさんは無事だったが、今後どうなるのだろうか? 存在しなかったアイドル『田宮ひろ子』とは。そして『老夫婦』は幽霊だったのか。Aさんが子供の頃に見たお爺ちゃんとお婆ちゃんは、私がカフェで見たあの二人なのか。


 


 例えば『田宮ひろ子』と『老夫婦』が幽霊や呪いだとすると、目的はなんなのか。私には見当もつかないが…… ところで『老夫婦』を見てしまった私はどうなってしまうのだろうか。


 


 


 


 気のせいだと思うが深夜に目が覚めた時、かすかに軽快な昭和っぽいアイドルソングが聴こえてくる気がする。


 





 私はどうなってしまうのだろうか…………


 


 


 





 おしまいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ