第三話 「検索してみて下さいよ」
Aさんの話はこんな感じだった。
私「なんか不思議な話ですね。深夜に歌番組なんて」
A「そうなんですよ。そのアイドルが歌ってる録画がずっと繰り返されてました」
私「そのアイドルだけなんですか? 『田宮ひろ子』だけ?」
A「はい。『田宮ひろ子』の『季節をむかえに』だけがしばらく繰り返されてました。と言ってもそんなに長くは起きてなかったんでしょうけどね」
私「Aさん。夢でも見てたんじゃ……」
A「じゃないんですよ。お爺ちゃんたちから聞いた時にメモってたんですよ。朝起きて確認しました」
私「ふーむ……」
A「で! ですよ。話はここからなんです。僕も深夜のテレビのことは、すぐに忘れてしまってたんですよ。おっしゃられたように、夢の中の出来事だったかのようにね。ずっと、大人になるまで……」
私「はぁ」
A「今では当たり前のようにインターネットも普及してますよね。三十歳くらいの時だったかな? ふと、思い出したんですよ。あのアイドルを」
Aさんはカフェの少し離れた席に座る大学生風の女性のノートパソコンの画面を遠目に覗のぞきながら、私に「どう思います」そうつぶやいた。
私「はい? どうって?」
A「スマートフォンありますよね? 検索してみて下さいよ。『アイドル』『田宮ひろ子』『季節をむかえに』を」
私は言われたとおりに、検索した。