第一話 Aさんの子供の頃の話
怪談や不思議な話の収集が趣味の私。都内某所、とあるカフェで最近知り合ったAさんにインタビューした時の話です。
まずは、知り合いのAさん(四十代)からこんな話を伺いました。
━Aさんの話━
これは僕の小学校に入ったばかりの頃、昭和の時代の話です。
深夜に時々、目を覚ますことがあった。静かで暗い部屋。子供の僕はとても不安な気持ちになりました。なんとなくわかるでしょ? ここからが物凄く長ーい時間に感じるんです。このまま夜があけないのではないかと思えたほど…… そのうち寝てしまうんですけど。
ある日、また深夜に目が覚めました。怖い夢をみたのか、僕はとてもドキドキして目を覚ましました。枕元にあるデジタル時計のボタンをおすと、安っぽいライトがついて大げさにデカい文字で時刻を表示する。
【3︰00】
午前三時ちょうど。「あ、ピッタリ!」と思いましたが、これから長く不安な時間が始まると思うと、また怖くなって布団をかぶり目をギュッとつむりました。
布団の中で丸まっていると、かすかに歌声が聴こえるんです。
歌声とメロディーは明るい雰囲気だったので、僕の不安を少し和やわらげてくれました。
でも、こんな時間になんだろう? そう思って、恐おそる恐おそる布団から顔を出しました。
僕は「あれ?」と思いました。
テレビがついているんです。消し忘れていたのか? いやいや違う、さっき時計を見た時は消えていた。部屋の隅にある小さなブラウン管テレビの画面は、四畳半の子供部屋をぼんやり照らしていたのを記憶しています。
実家は九州の田舎。今にして思うとこんな時間にテレビ放送なんて、なかったはずなんですがね。
耳を澄まして、なんとか聴こえるほどの音量。そして画面の中には一人の女性……