表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

夏と、世界への希望のにおい

 夏特有の、においがする。


 それは火をつけた、蚊取り線香のにおいだ。

 このにおいは子供のころ、夏休みの大部分を過ごした、田舎のおじいちゃんの家を思い起こさせる。


 日中は、虫取りでかいた汗。

 おやつのスイカ。

 そして夜には、手持ち花火と、蚊取り線香のにおい。


 おじいちゃんもおばあちゃんも、もういなくなってしまったけど……このにおいを()いでいると、(なつ)かしさと、あのころ抱いていた、世界に対してのいとおしさが(よみがえ)ってくる。

 だから何か落ち込むことがあったときは、蚊取り線香を()き、あのころの気持ちを取り戻すことにしている。


 ……そうしているうちに、蚊取り線香が燃え尽きた。


 ありがとう、と私は心の中でお礼を言う。

 ありがとう。

 夏と、世界への希望のにおい。


 このにおいがあれば、私は明日からも、生きていけるんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ