家路
風。雨。雷。
それら全てが、私に向かって吹きつけていた。
けれど、別にいい。こんな嵐の中では、私の涙さえ雨で覆い隠してくれるから。
──いっそ、雷が当たってくれればいいのに。
ふと、そんなことを思う。
そうしたら、私も彼の元へ行けるのだから。
そう考えながらも、結局は家へ向かう。
そうだ。どうせ私は、あなたを追って死ぬことも出来ない。
じゃあ、生きることは出来るのだろうか?
自問自答していると、ふと、何かの音がした。
辺りを見渡すと道の端に、ぐしょぐしょに濡れた段ボールがあった。
中身を開く。
すると小さい声で、精一杯、声を張り上げている子猫と目が合った。
……そうか。この子も、ひとりなんだ。
気がつくと私は、おいで、と言って子猫に手を差し伸べていた。
子猫はすぐに、私の胸の中に飛び込んできた。
毛皮は濡れ、子猫の体は冷えきってしまっている。
私はそっと、その子を抱きしめた。
──そうだね。ひとりでは無理でも、ひとりとひとり同士なら生きていけるかも知れない。
「帰ろう。私の……ううん。今日からはあなたのでもある家に、ね」
私たちは互いの体温を感じながら、雷雨の中、再び家路を歩み始めた。