第97話 苦かった新婚生活(その6) ー ヨメンズの喧嘩対策 ー
(前話からの続き)
旧優子の下宿での第1回ヨメンズ会議は続く。
【ヨメンズの喧嘩対策】
私はバカ(=孝)の3つの悩みのうち、最後の3つ目の悩みを話した。
「3つ目の悩みなんだが、
孝はヨメンズ内で喧嘩が絶えず、喧嘩の仲裁に疲れている。
先日、思い余って、優子と瀬名に手を上げてしまったことを後悔している。
『最低だった』
って。(第94話)」
それを聞いた優子と瀬名は落ち込んだ。
優子は第95話と同様、頭を抱えて下を向いた。
「あっちゃあああ。」
そして瀬名は目をつぶり下を向いた。
「あー。」
瀬名は口を開いた。
「あれは私達(=優子、瀬名)が悪いのよ。。。」
優子も同意した。
「そうだな。。。
つまらないことで喧嘩してしまった私達(=優子、瀬名)が悪い。。。」
私は口を開いた。
「もちろん、孝の暴力は論外だ。孝には当然反省してもらう。
でも、、、あの喧嘩の原因はなんだったんだ?」
瀬名が渋々答えた。
「あの日、旦那様(=孝)とスーパーに買い物に行ったんだけど、
果物が少し高くて、それでも買ってしまったの。。。
それを優子さんに咎められたの。。。」
優子が補足した。
「孝には時々外出が必要だし、そのためには外出許可が必要だ。
だから、許可を得て外出したスーパーへの買い物は、
少々高くても買わざるを得なかったと思う。
瀬名の判断は間違っていない。
でも、つい、、、
家計簿のこと(第92話)で頭がいっぱいで、咎めちゃったんだ。。。」
私はあきれた。
「そんな些細なことで、取っ組み合いの喧嘩になったの?」
優子は罰が悪そうに答える。
「うん。。。
今は、なんでこんなことで、
取っ組み合いの喧嘩をしちゃったのか、反省している。。。」
瀬名も申し訳なさそうに答える。
「そう、あれは、旦那様(=孝)より、私達(=優子、瀬名)が悪いの。。。」
私はバカ(=孝)の研究室の様子を話した。
「今まで黙っていたんだけど、
研究室から孝は共同住宅に帰るのを嫌がるんだ。
私が帰宅を促して、やっと帰り支度を始めるんだ。
ため息交じりに(第94話)。。。」
優子と瀬名はショックを受けた様子で、同時に「「そんな。。。」」とつぶやいた。
ショックを受けた様子の優子と瀬名には悪いとは思ったが、構わず話を続けた。
「たぶん、喧嘩の仲裁に疲れちゃったんだと思う。。。
だって、優子と瀬名の間だけじゃない、、、
私と優子の間でも、私と瀬名との間でも、喧嘩が多いじゃないか。。。」
優子はため息交じりにつぶやいた。
「そういえば、『ほとんど毎日、喧嘩している』な。。。
私達(=ヨメンズ)。。。」
瀬名もため息交じりにつぶやいた。
「それを、今まで、ずっと、旦那様(=孝)が仲裁してきたんですもんね。。。」
私はうなずき、話を続けた。
「そう、孝の負担は大きい。
それで先日、思い余って、優子と瀬名に手を上げてしまったんだと思う。。。
もちろん、暴力は論外だけど。。。」
瀬名は顔を下に向け、語った。
「喧嘩を減らさないとダメね。。。」
優子は顔を斜めに傾け、悩んだ。
「でもさ、喧嘩を減らすと言っても難しいよ。。。
だって、一夫多妻だと喧嘩の種なんて、いっぱいあるじゃん。。。」
確かに、性格や考え方の異なる4人が一緒に暮らしていると、喧嘩の種なんてそこら中に転がっている。
優子は続けた。
「結局、小さな喧嘩は仕方がないから、
取っ組み合いの喧嘩にまで発展しないよう、工夫するしかないと思う。
そして喧嘩を小さく収めて、
後日、冷静になった頃にヨメンズで話し合おうよ。」
優子はさらに続けた。
「もし、喧嘩の原因に孝も関係しているなら、
後日、ヨメンズから孝に申し入れる。
そして、ヨメンズ自身のことは即日実行しよう。
これで喧嘩の種が減って、喧嘩も減るかもしれないよ。。。」
私は優子の意見に賛同した。
「そうか。。。定期的にヨメンズだけで会議をしようか?」
瀬名も同意した。
「そうね。。。定期的にヨメンズだけで会議をしましょう。」
こうして、毎週月曜日の朝、旧優子の下宿にヨメンズは集まって会議を行うこととなった。
実際、ヨメンズだけで話すってのは良い。
だって、『バカ(=孝)に対する愚痴や悪口の出放題』だから。。。
「あのバカ(=孝)! 〇〇〇!!」
「そうね~。。。孝は本当に×××!!」
「本当! 旦那様(=孝)って△△△!!!」
ま、こうやって、ヨメンズは憂さ晴らしをしている。
がはは。。。
話を元に戻そう。
ヨメンズ会議の定期開催の了解したが、瀬名が思案顔でつぶやいた。
「でも、、、『喧嘩を小さく収める』ってどうやるの?」
私と優子は思わず、「「あ!」」と叫んだ。
そう、、、『喧嘩を小さく収める』ってのも簡単ではない。
優子も困った顔で語った。
「うーん。。。
喧嘩の組み合わせなんて、ヨメンズだけに絞っても3通りあるし、、、
孝を含めれば6通りあるから、きりがない。。。
しょうがないからさー、こうしない?」
と、優子は『喧嘩を小さく収める方法』を提案した。
その提案を聞いて、瀬名は戸惑った。
「えー! それ、、、かわいそう。。。」
優子は浮かぬ顔で答えた。
「そう、かわいそうなんだけど。。。
でも、どんな喧嘩の組み合わせでも使える方法って、
これしか思いつかないんだよね。。。」
私も瀬名も渋々同意した。
「たしかに、かわいそうなんだけど、それしかないと思う。。。」
「そうね。。。」
優子は意を決したように、もう一つの提案をした。
「ちょっとかわいそうなことをするから、『その代わりにこれを誓わない』?」
と、もう一つの提案をした。
その提案については、私と瀬名に文句はなかった。
「当然よ!」
「もちろん!」
こうして、優子の『喧嘩を小さく収める方法』を実施することとし、その代わりに『誓い』を立てることにした。
こういった、様々な政策により、結婚生活はやっと安定し始めた。
・平日のコミュニケーションタイム導入(第92話)
・土日のデート日導入(第92話)
・ヨメンズに趣味推奨(第93話)
・愛唯とバカ(=孝)の研究室配属(第93話)
・優子とバカ(=孝)のテニスタイム(第95話)
・ヨメンズ3人平等に扱う(第96話)
・ヨメンズ会議導入(今話)
そして喧嘩も減っていった。
でも、喧嘩がゼロになったか?というと、、、残念ながらゼロにはならなかったんだよね。。。
後の優子 :「何言ってんの!
いつも愛唯が私達(=優子、瀬名)を出し抜こうとして
喧嘩になるんでしょ!」
後の瀬名 :「まったく、油断も隙もありゃしない。。。」
後の愛唯 :「うっさい!
あんたたち(=優子、瀬名)だって、
出し抜こうとするじゃない!」
後の優子 :「圧倒的にあんた(=愛唯)の方が多いと言ってるの!」
後の瀬名 :「大体、愛唯さんと優子さんと私(=瀬名)で、
3:1:1ってところですね。。。」
後の愛唯 :「・・・」
まー、そりゃ、バカ(=孝)の愛を三等分にすべきだというのは頭ではわかる。
頭ではわかるのだ。。。でも、、、心は別なのだ。。。どうしても、独占したいと思うものなのだ。。。
こればっかりはどうしようもないのだ。
後の優子 :「愛唯のやつ、自分を正当化しだしたわよ。」
後の瀬名 :「本当だ。」
後の愛唯 :「・・・」
で、喧嘩が勃発すれば、いつもバカ(=孝)に責任を擦り付ける『決まり』となっている。
で、いつも私が責任を擦り付ける。
「こういうことになったのも、このバカ(=孝)がハーレムなんか作るからよ!
全部、このバカ(=孝)が悪い!」
バカ(=孝)は慌てて反論する。
「えー!? 今の喧嘩に僕は関係ないじゃないですか!
そもそも、僕はハーレムなんか作りたくなくって、
それを愛唯さんと優子さんが無理やり・・・(第79話)」
その反論をいつも私は強引に押し切る。
「黙れバカ(=孝)! それもお前を守るためだったろ! 結局お前が全部悪い!」
そして、それに優子と瀬名は同意する。
「「そうよ! そうよ!」」
仕方なく、バカ(=孝)は黙って受け入れる。
ま、何か言いたげだが。。。
「・・・」
実はな、ヨメンズ全員、バカ(=孝)に喧嘩の原因を擦り付けるのは、理不尽な八つ当たりであることはわかっているのだ。
わかっているのだが、、、喧嘩があまり大きくならず、小さく収めるには、、、バカ(=孝)に原因を擦り付けるしかないのだ。。。
ヨメンズ全員、バカ(=孝)に理不尽な八つ当たりをして、申し訳ないと思っている。
そう、優子が提案した『喧嘩を小さく収める方法』とは、
『喧嘩の原因は、全てバカ(=孝)に擦り付ける』だ。
だから、バカ(=孝)には言っていないのだが、ヨメンズ全員が合意していることがある、
『喧嘩の原因をバカ(=孝)に擦り付ける以上、
自分のことより、バカ(=孝)を守ることを最優先にする。』
と。。。
そう、これがヨメンズの『誓い』だ。
なんとか結婚生活を安定させた愛唯、優子、瀬名、孝の夫婦ですが、実際はこんな対策では全然足らないでしょうね。。。
たぶん、新婚早々だから、なんとかこの対策で何とかなったと思います。
特に、『孝を守ることを最優先』にするなんて、新婚早々にしかできません。
愛唯、優子、瀬名に子供が生まれたら、その子供を最優先にしないといけませんし。。。