第96話 苦かった新婚生活(その5) ー ヨメンズ一人一人と孝との距離感 ー
(前話からの続き)
旧優子の下宿での第1回ヨメンズ会議は続く。
【ヨメンズ一人一人との距離感】
私はバカ(=孝)の3つの悩みのうち、2つ目の悩みを話した。
「孝は、私達、ヨメンズ(=愛唯、優子、瀬名)の
適切な距離感を掴めないって悩んでいる。。。
孝曰く、
『3人を平等に扱えば、私が不満な顔をする。
と言って、あからさまに私を特別扱いすれば、
優子と瀬名が不満な顔をする。
優子と瀬名が不満に感じず、かつ私を特別扱いする、
絶妙な距離感が掴めない。(第94話)』
って、悩んでいる。。。」
優子が口を開いた。
「愛唯。
それ、孝への要求が高すぎない?
そもそも不器用な孝が、そんな絶妙な距離感を掴むのは無理だろ?」
私は反論した。
「分かっている! これが私のわがままであることは。。。
でも、でも、私にもプライドがあるんだ!
『私と孝は恋人として付き合っていた』って言うプライドがあるんだ!
だから、わがままであるけど、『3人の中で一番じゃなきゃ嫌』なんだ!
分かってくれ!」
そして、私は優子と瀬名に頭を下げた。だって、わがままを通したかったから。。。
瀬名が口を開いた。
「愛唯さん。あなた、『すでに3人の中で一番だ。』って分かっている?」
私は驚いた。
「え?」
瀬名は続けた。
「だって、旦那様(=孝)はあなた(=愛唯)にだけ悩みを打ち明けた。
私達(=優子、瀬名)には何も言ってくれないのに。。。」
瀬名はさらに続けた。
「そして、あなたが怒って、共同住宅を飛び出していった夜、
旦那様(=孝)はあなたにこう言った。
『愛唯さんだけを愛したい』
と(第92話)。
旦那様(=孝)のあの言葉を聞いた時、
私と優子さんはどんなに悲しかったかわかる?」
瀬名は涙ぐみながら話す。
「そりゃそうよね。。。
だって、愛唯さんと旦那様(=孝)は
恋人として付き合っていたのだから無理もない。。。
そう、愛唯さんと旦那様(=孝)の歴史があるから、
たとえ今、『3人を平等に扱っても愛唯さんが一番』なのよ。」
優子が口を開いた。
「愛唯。成人式の前日、孝はこう言ったよな。
『100分の1の男性として、今後生きてゆくうえで欠かせないものは、
愛唯の稀有な行動力と突破力』
だと(第63話)。
もし、孝が今、3人の中で1人だけ選ばなくてならないとしたら、
躊躇なく、愛唯、あんたを選ぶんじゃないの?」
優子も涙ぐむ。
「その意味でも、『3人を平等に扱っても、愛唯、あんたが一番』なんだ!
この悲しみを、私と瀬名の悲しみを理解してくれ!
頼む!!」
そういうと、優子は私に頭を下げた。
瀬名も涙ぐみながら話した。
「だから、愛唯さん、ここはあなたが退いて! お願い!」
そして、瀬名も私に頭を下げた。
優子と瀬名が私に頭を下げた姿を見て、またも私は自分のことしか見ていなかったのだと、思い知らされた。
そう、バカ(=孝)は、
私にだけ悩みを打ち明けたじゃないか!
私だけを愛したいって言ってくれたじゃないか!
いざとなれば、バカ(=孝)はヨメンズ3人の中で私を選ぶって自負もある!
『平等に扱っても私が一番』だったんだ!
一方、私は優子と瀬名の悲しみを思い至らなかった!
優子や瀬名にとって、『バカ(=孝)がヨメンズ3人を平等に扱っても、平等でない悲しみがある』ことに、今まで気付かなかったのだ。。。
そして、何より、、、私のわがままで、バカ(=孝)を苦しめてしまった!
そう、、、私は退かなくてはならない。。。
私は口を開いた。
「わかった。3人平等を受け入れる。
でも、一つだけ、『絶対譲れない条件』がある。
この条件を呑んでくれないか?」
瀬名は戸惑いながら、口を開いた。
「『絶対譲れない条件』って?」
私は『絶対譲れない条件』を話した。条件を話した後、優子は同意した。
「まあ、私が愛唯だったらと思うと仕方がないと思う。」
瀬名も同意した。
「そうね。。。」
私が出した条件を優子と瀬名が受け入れたことをもって、私は3人平等を受けいれた。
この『絶対譲れない条件』については、次話以降で機会があれば説明しようと思う。
後日、私はバカ(=孝)に、ヨメンズ3人平等に扱うように伝えた。
バカ(=孝)は困惑した表情を最初に浮かべたが、数分後ホッとした表情に変わっていった。
さて、2週間後の私のデート日の夜9時、また「愛唯。愛唯。」と優子に起こされた。
「あれ? 優子、もう9時?」
優子はあきれて私に問うた。
「9時じゃないわよ。
何? この空き瓶と空き缶の山?
また朝から飲んでたの?」
私は苦笑いを浮かべて答えた。
「まさかー。 夕方から飲んだだけよ。。。」
瀬名は戸惑いながら問うた。
「それしたって、この飲酒量は何なんですか?
何話しながら、こんな飲酒になったんですか?」
私は笑ってごまかした。
「さー、しこたま飲んじまったから、覚えてないや。。。
がはは。。。」
実はなー。バカ(=孝)の悩みを聞き出したいから、こんなに飲んじまったんだ。
3人平等を受け入れちまったから、私だけがバカ(=孝)の悩みを知り、優子と瀬名に対して優越感に浸りたいんだ。。。
本当のことを言うと、バカ(=孝)は、『私だから悩みを打ち明ける訳じゃない』んだ。
私は『癖を知っているだけ』なんだ。
ある程度飲ませておいて、私が愚痴や悩みを打ち明けると、それが呼び水になって、バカ(=孝)は悩みを打ち明けるんだ。
バカ(=孝)と恋人として付き合っていた頃、二人きりで飲んでいた時に、この癖に気付いたんだ。
そして、付き合っている頃から、定期的にバカ(=孝)と飲んで、バカ(=孝)の悩みを聞き出していた。
付き合っている頃の悩みは外出の自由がないことだったし、先日は結婚生活の悩み(第94話)だ。
で、今回、飲みながら悩みを聞き出すと、結婚生活の悩みは解消され、別の悩みになっていた。
ま、次話も話すのだが、ヨメンズとバカ(=孝)の対策によって、結婚生活は安定化しだしたからでもあるんだけど。。。
ああ、このときの悩みとは卒業研究のことだったよ。実はバカ(=孝)の卒業研究は大変だったんだ。
この話はかなり先のことになるけど。。。
瀬名は悩みを聞き出そうと私にしがみついた。
「もしかして、旦那様(=孝)は何か悩んでいるんですか?
教えてください!」
だが、私はとぼけた。
「だから、本当に覚えてないって!」
がはは。。。瀬名よスマン。
だってなー。これぐらいしか、優子と瀬名に優越感を味わえるものがないんだ。
それに、、、バカ(=孝)の卒業研究の悩みなんて聞いたって、優子と瀬名はどうしようもないじゃないか。
だって、研究室違うんだから。。。
バカの3つの悩みのうち、残り1件については次話で。
(次話に続く)
愛唯、優子、瀬名、孝の夫婦にはそれぞれ苦しみを抱えています。
愛唯 :『愛する人(=孝)を独り占めできない苦しみ』
優子、瀬名:『孝がヨメンズ3人を平等に扱ったとしても、
平等でない苦しみ』
孝 :『愛する人(=愛唯)だけを愛せない苦しみ』
第80話の後書きに、
主人公の愛唯は孝と正式に結婚することになりました。
でもそれは、100分の1の男性の過酷の運命の渦の中心に、
愛唯が入ることを意味します。
そう、これからは愛唯の苦しみが本格化することを意味するのです。
そして、それは一夫多妻の妻となる優子と瀬名も
苦しみの渦に入ること意味します。
と書きました。
そう。彼女達の苦しみが始まったのです。




