第93話 苦かった新婚生活(その2) ー ヨメンズ・ホビー・ウオー ー
(前話からの続き)
前話からの続きで、平日のコミュニケーションタイムはヨメンズ1人に30分しかない。
だから、ヨメンズ各々どうしても満たされない思いは生まれてしまう。
まあ、平日のコミュニケーションタイムが、ヨメンズ1人あたり30分だと短すぎるという意見もあってね。
増やすことも検討したが、結局30分に落ち着いた。
後の瀬名 :「愛唯さん、何言ってんですか?
コミュニケーションタイムを試しに45分に延ばしたら、
愛唯さんが昼ご飯のコミュニケーションタイムで、
『エッチにまで持ち込もうとしたから』じゃないですか!」
後の優子 :「まったく、昼ご飯の前の挙動がおかしかったから、、、
見張っていたら、案の定。。。」
後の愛唯 :「(ごまかし笑い)がはは。。。」
後の孝 :「何言ってんですか!
愛唯さんだけでなく、『優子さんも瀬名さんも』、
コミュニケーションタイムでエッチしようと企てたから、
仕方なく30分に限定したんじゃないですか!」
後のヨメンズ:「「「(ばつが悪そうに) はい。すみません。」」」
バカ(=孝)よ。スマン!
実はヨメンズ内で平日のコミュニケーションタイムで、どこまで持ち込めるかってゲームになってしまってな。。。
キスより上のことを持ち込めないと勝ちきれないってことで、ヨメンズは暴走してしまったんだ。。。
本当にスマン!
(ごまかし笑い)がはは。。。
話を戻すと、『埋めきれない思い』は、バカ(=孝)1人では、時間がいくらあっても足りない。
加えて、私達(=ヨメンズ、バカ(=孝))は大学4年生だ。就活、進学、卒業研究で忙しい。
要するに、『埋めきれない思い』は、バカ(=孝)1人では対処不能だ。
だから、『ヨメンズ1人1人が自分で埋める』しかない。
そこで、『ヨメンズ1人1人は趣味を持ち、趣味に没頭して、埋めきれない思いを埋めましょう』と、バカ(=孝)から提案されたって訳。。。
まあ、これが『ヨメンズ・ホビー・ウオー』の幕開けとなったんだけど。。。
『ヨメンズ・ホビー・ウオー』の口火を切ったのは瀬名だった。
瀬名はもともと趣味は料理、とくにお菓子作りだったのだが、そのお菓子作りを結婚後も趣味とした。
瀬名は、その趣味として作ったお菓子を、夕食後に、私達(=愛唯、優子、バカ(=孝))に振る舞った。
「どうぞ、作った菓子です。 デザートとして召し上がってください。」
私と優子は思わず、「瀬名ありがとう」と礼を言った。
だが、瀬名は勝ち誇った笑顔を私と優子に向けた。
瀬名が趣味としてお菓子作りをした意図を、私は瀬名のこの笑顔から察した。
そして心の中で叫んだ!
しまったあああ! やられたあああ!
瀬名の奴に出し抜かれたあああ!
瀬名の奴、実益を兼ねて、趣味としてお菓子作りを選びやがったあああ!
バカ(=孝)の胃袋を掴む気だあああ!
私は悔しさのあまり、床の上をのたうち回り、床を叩いた。。。ま、あくまで『心の中で』なんだけど。。。
そう、瀬名に『食』を制されてしまった!
瀬名が『食』を制するなら、優子は『衣』を制した!
優子も実益を兼ねて、趣味として洋裁を始めた。
実は、昔から、私が優子と知り合った中学の頃から、この手のことが優子は得意だった。
大学1年生の秋、翔(=優子の元恋人)のために、手編みのマフラーを編んだりしてたし。。。
パンデミックの直前、1回目の大学2年生の9月は「今度は手編みのセーターだ!」張り切ってたし。。。
残念ながら、翔(=優子の元恋人)はあのウイルスで亡くなってしまって、その機会は訪れなかったけど。。。
話を戻すと、集団デートの後、クラスメートの瑛子が持ってきた彼女のお兄さんの形見の衣服が、バカ(=孝)にはすこし大きかったことを覚えているだろうか(第57話)?
それをバカ(=孝)のサイズに合うよう、優子は仕立て直したんだ。
仕立て直すときに、バカ(=孝)のサイズを測ったりするから、
バカ(=孝)に体に堂々と触れる機会があるから、正直「やられた」って思ったよ。。。
一方、これは我が家の家計には大きくプラスでなー。
ほら、男性衣服は買うと安くてもウン万円、ウン十万円するのも珍しくない(第20話、第56話)。
そのウン万円やウン十万円の出費を抑えることができたのは、当時まだ学生だった私達(=ヨメンズ、バカ(=孝))は助かった。
他にも、パンデミックの頃、高校生だった武(=愛唯の弟)や、桂子の弟の形見の衣服(第57話)が、23歳のバカ(=孝)には似合わないものもあり、それらをパッチワークで新たな衣服を作ったりして、『優子ブランド』を調子に乗って作っていたな~。
ま、たまに失敗したこともあったけど。。。
調子に乗って失敗するのは、中学の頃からの優子のパターンだ。。。
がはは。。。
さて、私の趣味なのだが、、、そもそも無趣味なのだよ。。。
最初は考えたよ。。。まあ『衣』は優子、『食』は瀬名、、、となると『住』かな?とは。。。
DIYとか、ガーデニングとか考えたんだ。。。
でも、、、ほら、、、私ったら、『ガサツでズボラ』だし。。。
そもそも初心者だし、、、優子や瀬名のように、、、実益を兼ねたレベルのものは無理だ。。。
こうして、『ヨメンズ・ホビー・ウオー』は私の不戦敗、つうか大敗北で終わると思われた。。。
だが、ここで、『天の助けがあった』のだよ!
(誇らしげに)がはは。。。
ほら、私達(=ヨメンズ、バカ(=孝))は4年生だから、卒業研究しないといけないから、配属先の研究室を決めなくてはならない。
配属先の研究室を決めるとき、撫山教授から以下の指示があったんだ!
「おまえら(=愛唯と孝)。
どこの研究室に行っても良いが、同じ研究室に行くように。」
という訳で、バカ(=孝)が撫山教授の研究室を希望していたので、私も撫山教授の研究室所属となったのだ!
ちなみに、優子と瀬名も同じ研究室を希望したのだが、撫山教授から「夫婦4人全員は勘弁してくれ」とのことで、優子と瀬名は別の研究室の所属となった。
で、所属先の研究室が決まると、山ほど論文を渡された。
最初の論文は和文だったけど、それでも専門用語で何が書かれているのか、チンプンカンプン。
2番目以降は英文だったから、もうサッパリ。。。
バカ(=孝)もお手上げ。。。
しょうがないから、研究室の先輩(大学院生)にその都度尋ねるのだが、彼女達も忙しいので、基本的なことは教えてくれるのだが、手取り足取りって訳にはいかない。
しまいに、大学院生の先輩から、こう言われた。
「何が書かれているのか、自分なりに解釈して、4年生同士で議論しなさい。
議論していくうちに理解が深まっていくから。
ある程度、議論してから、それから質問して。
たぶんその方が、理解が早いから。」
ということで、夕方、住宅に帰ると、バカ(=孝)と論文の内容を議論するようになった。
これで正々堂々、バカ(=孝)と共同住宅で話ができるようになったのだよ!
(勝ち誇ったように)がはは。。。
その様子を見た、優子と瀬名は悔しそうにした。そして優子は私に言ったよ。
「悪いんだけど、卒業研究の議論は研究室でやってくれる?」
ということで、夕食の後は、私とバカ(=孝)は研究室に戻って、論文の内容を議論するようになった。
いやー、研究室は良いよ。優子と瀬名がいないからさ。。。
もうベタベタし放題!
ベタベタしても、引き離される心配がない(第94話)!!
研究室には私とバカ(=孝)の机もあってさ、時々、研究室の机に向かっているバカ(=孝)の後ろから抱いて甘え放題!
「ねー孝ー。 頭が疲れたからさー。 大学の近くの喫茶店に行かない?」
バカ(=孝)は困って返す。
「ダメですよー。
優子さんと瀬名さんに黙って喫茶店に行ったら。。。
この前だって、こっそり行こうとしたら、
ロータリーの前で待ち伏せされたじゃないですか?」
どうも、同じ撫山研究室に配属された4年生の誰かと、優子と瀬名は密かに連絡をとっているらしく、この手のことはすぐにばれる。
ち!
バカ(=孝)は代わりに提案する。
「代わりに学食近くの自販機に行って、
ジュースかコーヒーでも買ってきましょう。」
私はため息をつき、答えた。
「そうしますか。。。」
ということで、休憩がてら、2人で学食近くの自販機に行くことが多くなった。
一方、あまりにベタベタしていたので、しまいに撫山教授から怒られたけどね。
「おまえら(=愛唯と孝)。
研究室でベタベタするんじゃない!
ベタベタするなら共同住宅でしろ!」
いーじゃん、共同住宅では優子と瀬名に遠慮して、ベタベタできないんだから。。。
でも、まあ、これで、私のバカ(=孝)とのコミュニケーション不足は解消し、『ヨメンズ・ホビー・ウオー』は私の大勝利で終わったのでした!
後の瀬名 :「卒業研究は『趣味』ではないんじゃない?」
後の愛唯 :「うっさい!
大体、私のコミュニケーション不足が解消されたから、
私の平日のコミュニケーションタイムは返上したでしょー。
その分、あんた達(=優子と瀬名)に振り向けたじゃない?
あんた達(=優子と瀬名)のコミュニケーションタイムが、
毎週2時間半から、3時間半か4時間に増加したじゃない?
あんた達(=優子と瀬名)だって、良かったじゃないの?」
後の優子 :「まあ、そうなんだけさー。」
後の瀬名 :「でも、なんか気に食わない。」
こうしてヨメンズとバカ(=孝)とのコミュニケーション不足は緩和されたんだけど。。。
実は新婚生活の問題はヨメンズとバカ(=孝)とのコミュニケーションの問題だけじゃなかったんだ。
特にバカ(=孝)に対する負担は重かった。
その話は次話以降に。
(次話に続く)