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第86話 I大学での結婚パーティ(その1) ーパーティ開始にあたってのスピーチー

【結婚パーティ概要】

結婚式のあった、土曜日の午後、I大学の学食を借り切って、結婚パーティを開いた。

 



結婚パーティには、CCコースの先生方、CCコース3年生クラスメート、寮にいる100分の1の男性とその恋人を招いた。

 

あ、、、久美子さん(第31~33話、第40話、第51話)も、綾子さん(第49~50話、第68話)も招いた。

 

ちなみに、学食を借り切ってくれたのは、CCコースの先生方だ。

 

  

 

食事はデリバリを大量に頼んで、立食パーティ。食事代は学生と先生方のカンパで賄った。

 

ジュース、酒類は、里子を中心にCCコース3年生クラスメートが、近くのスーパーから買ってきてもらった。

 

 

  

まあ、一応、主賓ってことで、、、ヨメンズはスーツ、バカ(=孝)は背広で参加した。




パーティの開催にあたり、ヨメンズとバカ(=孝)のスピーチとなった。


順番はバカ(=孝)→私→優子→瀬名となった。

 

 

【孝のスピーチ】

バカ(=孝)は演台に上り、笑顔でスピーチを始めた。


「どうも、孝です。

 

 今日、1年前、軟禁生活が始まった時、あの苦しかった時を支えてくれた、  

 愛唯さんと優子さんと結婚出来てうれしいです。

 

 そして、パンデミックの前から親しかった

 瀬名さんとも結婚出来てうれしいです。

 

 特に、瀬名さんは、入学以来、パンデミックの前は、

 女子クラスメートの中で、唯一親しく接してくれました。 

 瀬名さんの厚意にずっと気が付かず、申し訳ありません。

 

 愛唯さんと優子さんは、一年前、僕が孤独に苦しんでいた時、

 一緒に勉強してくれました。 

 あの時は、本当にうれしかった。。。

  

 特に、愛唯さんは、その後、恋人として付き合ってもらい、

 僕の孤独を解消してくれた、大切な人です。

 

 優子さんは、僕と愛唯さんにとって、良き相談相手です。

  

 瀬名さんは、僕と性格が近く、良き理解者です。

 

 僕は、今日、愛唯さん、優子さん、瀬名さんと結婚しましたが、

 一人一人と結婚したとは思っていません。

 『チームと結婚した』と思っています。

  

 このチームがより良くなっていくよう、努力するつもりです。

 

 今日は、パーティに参加ありがとうございました。」

 


そう言うと、バカ(=孝)は頭を下げ、演台から降りた。

 



 

【愛唯のスピーチ】

次に私が演台に上り、参加者全員を見つめ、笑顔でスピーチを始めた。


「どうも、本日、結婚式を挙げた愛唯です。

 

 ご存じの方もいると思いますが、

 パンデミック前、私には別の恋人(=健司)がいました。

 残念ながら、その恋人はあのウイルスで亡くなりました。

  

 その恋人と孝と比較した場合、一人の男性として見ると、

 その恋人の方が断然上です。」

 

 

 

私は不意に天井を見上げ、天国にいる健司(=元恋人)に心の中で、彼に語り掛けた。


(健司(=元恋人)、

 もし今、あなたが蘇り、私の前に現れて、『僕と結婚しよう』と言われたら、

 バカ(=孝)でなく、あなたを選ぶかもしれない。。。


 それくらい、あなたとの思い出は甘すぎて、そして美しすぎる。。。   )




私は視線を参加者に戻すと、スピーチを再開した。

 

「だって、孝は『頭だけのバカ』で、『頭以外はポンコツ』です。

 でも、一人の人間としてみると、その恋人と孝は、同じくらい好きです。

 

 私とその恋人とは男女の枠で繋がっていました。

 

 しかし、私と孝は、『男女の枠を超えて繋がっている』。

 そんな感じなのです。。。

 

 私と孝と付き合い始めて、多くの達成感を得ました。  

 ま、『悪事』として、いろいろやらかしている訳ですが。。。

 

 そんな達成感は、以前の恋人(=健司)からは得たことがありません。

  

 そう、孝は私に、達成感をもたらしてくれる存在なのです。 

 だから、私と孝は、『男女の枠を超えて繋がっている』のです。

 

 さっき、『悪事』と言いました。  

 確かに私は主犯かもしれませんが、

 優子と瀬名も加わった『悪事』も少なくありません。

 

 さっき、孝が言いましたが、私達はチームなのです。  

 私は孝、優子、瀬名のチームと結婚したのです。

 そのチームと結婚できてよかったと思います。

 ご清聴ありがとうございました。」

 



そう言うと、頭を下げ、円台から降りた。

 





【優子のスピーチ】

優子は演台に上り、笑顔でスピーチを始めた。


「優子です。

 ほんの1か月前まで、結婚できるとは思っていませんでした。 

 だから、この1か月の急激な変化に戸惑っています。

 

 ご存じの方もおられると思いますが、私も愛唯と同様に、

 パンデミック前には別の恋人(=翔)がいました。

 その恋人も残念ながら、あのウイルスで亡くなりました。

 でも、私はその恋人への看病が辛くって、逃げ出してしまいました。

 そしてそのことを、ずっと後悔していました。

 そんな私の心を救ってくれたのが、孝を好きになったキッカケです。

 

 でも、孝は愛唯と付き合っていて、愛唯は私の親友です。  

 孝ことはあきらめる以外にないと思っていました。

 

 そんな時、愛唯と孝の問題、(公式には)『ポンコツカップル』の解消のため、

 愛唯から相談を受けた時、

 私も結婚相手として加わるアイデアを思いつきました。

 

 正直、戸惑いました。

 でも、愛唯と孝が、そのアイデアを受け入れたことを感謝しています。

 ご清聴ありがとうございました。」




そう言うと、頭を下げ、円台から降りた。



 

 

【瀬名のスピーチ】

瀬名は演台に上り、笑顔でスピーチを始めた。


「どうも、本日結婚しました瀬名です。

 私も優子さん同様、ほんの1か月前まで、

 結婚できるとは思っていませんでした。

 

 孝さんを好きになったキッカケは、大学1年生の頃、

 孝さんは私に似ていると思ったからです。。。

 

 でも、私って、臆病だから、

 自分の思いを伝えることができませんでした。。。


 ぐずぐずしている間に、愛唯さんと孝さんが付き合い始めて、  

 孝さんのことはあきらめる以外にないと思っていました。。。

   

 そう、ほんの1か月前まで。。。

  

 1か月前、愛唯さんと孝さんから、結婚してほしいと頼まれた時、

 私には断る理由などなく、こうして結婚することができました。

 

 お二人には大変感謝しております。 

 皆様、今日はパーティへの参加、ありがとうございました。」

 

 


そう言うと、頭を下げ、演台から降りた。 

 





【撫山教授の乾杯の音頭】

撫山教授は演台に上った。


ヨメンズとバカ(=孝)は彼の脇に立った。


彼は参加者に向けてスピーチを始めた。

 

「撫山だ。

 まず、愛唯君。君は孝君をさっき『頭だけのバカ』と言ったが、()()()()()。」

  

  

  

私は思わず抗議した。だって、今やCCコース3年生の中で、第3位の成績なのだ(第43話)!

 

「先生、ヒドーイ!

 そりゃ、大学2年生までは成績悪かったけど、今そうじゃなーい!!」

 

 

 

すると、撫山教授は私に振り返り罵った。

 

「お前(=愛唯)は『行動力だけのバカ』だろ!」

 

 

 

なんだろう、、、私に対するあまりに上手い表現に思わず笑ってしまった。。。

 

「がはは。。。そうか。。。」

 

 

 

優子も吹き出し、横にいた瀬名に語り掛けた。

 

「ふふふ、、、言い得て妙ね。。。」

  

  

  

瀬名も笑いながら返す。


「ははは、、、うん。。。」

 

 

 

 

 

撫山先生は参加者に向き直ると、気を取り直したが、厳しい表情でスピーチを再開した。

 

「まったく。。。

 

 2年半前、あのウイルスが襲った時、CCコースは男子生徒は大学院を含んでも、

 孝君を除いて全滅してしまった(第1話、第2話)。。。

  

 あの時の経済危機で、退学を余儀なくされた女子生徒も少なくない(第1話)。。。

 

 そして我々CCコースの教職員も40歳未満の教員、

 助教だった三貴君と、講師だった岡端君は亡くなってしまった。。。

  

 特に、三貴君は新婚でな~。。。

 奥さんの憔悴しきった姿は見ちゃいられなかった。。。

 

 大学は閉鎖され、我々(=CCコースの教員)は、

 警察・消防・自衛隊・官庁の仕事に廻され、慣れない仕事で苦労した。。。

  

 ようやく、大学に戻ることを許され、大学に戻ってみれば、  

 たった半年間の閉鎖だったんだが、大学は荒れ果てていた。。。

  

 ま、君達、学生はそれを知らんだろうが。。。

  

 それから半年、新入校許可証を配った去年の2月まで、

 荒れ果てていた大学を立て直すのは大変だった。。。

 

 しかも、学生は半分以下となり、残った学生も、遠隔授業ではあったが、

 あのウイルスの精神ショックから立ち直っていないことは明らかで、

 このままだと、定員削減だけでなく、CCコース自体の閉鎖も頭をよぎった。。。

 

 それは、我々教職員の職場が無くなることが意味するからな。。。

 我々教職員にとって、絶望的で、光が見えない状態だった。。。

 

 しかも、三貴君と岡端君が抜けた穴をカバーしないといけないから、

 忙しくってな。。。

  

 さっき言ったように、絶望的で、光が見えない状態で、

 しかも忙しいってのはつらいぞ~。。。」

 


 

他の先生方も厳しい表情で頷いた。

 

撫山先生のスピーチは続いた。

 

「それが、ほんの1年前のことなんだ。。。

  

 我々教職員にとって、真っ暗で、

 希望の光の見えない絶望的な状況だったのは。。。

 

 そして、1年前の新入校許可証を配布した日、孝君は私の個室に来て、  

 亡くなったCCコースの3年の男子生徒を弔いたいから、  

 彼らの連絡先と住所を教えてくれと言ってきた(第2話)。。。

 

 もちろん、個人情報だから、そんなもん教えるわけにはいかない。

 だが、孝君も頑固で引き下がらなかった。。。

  

 そんな押し問答をしている最中、愛唯君が私の個室にやってきた。。。

  

 そのとき、なぜか、

 『愛唯君と孝君を組ませてみたらどうか?』って思いついた。

 

 そして、愛唯君を無理やり説得し、孝君と一緒に、

 CCコースの3年の男子生徒を弔いに行かせた。

 

 その後のことは、皆知っての通り、

 愛唯君と孝君は『I大の最凶最悪コンビ』となった。。。」

 

 

 

撫山教授は厳しい表情から、しかめっ面になって、スピーチを続けた。

 

「だがなー。


 愛唯君と孝君の『I大の最凶最悪コンビ』は、 

 やること、なすこと、危なっかしくってなー。

 

 まずは、『単に外出したいためだけ』に、

 購買にフルーツがないとか(第22話)、

 購買に洗剤がないとか(第22話、第25話)、

 美容院に行くとか(第22話)、

 歯医者に行くとか(第22話)、

 クリーニング店に行くとか(第22話)、

 適当な口実を見つけては、外出許可の申請をほぼ毎日出してきて、

 あきれたぞ!」

 

 

 

私は思わず、笑いながら、問うてしまった。

 

「がはは。。。バレてました~?」

 

 

 

すると、撫山教授は振り返り、私を罵った。

 

「バレバレだ!」

 

 

 

そうか、、、バレバレだったか。。。笑ってごまかすしかない。。。

 

「がはは。。。」

 

 

 

あきれて優子が瀬名につぶやく。


「そりゃ、ほぼ毎日外出してりゃ、バレバレよね。。。」




瀬名は笑って返した。


「ははは。。。」

 



 

撫山教授は参加者に向き直って、しかめっ面のまま、スピーチを続けた。

 

「まあ、こんなものは序の口で、

 

 100分の1の男性は、誘拐拉致されないように、行動が常時監視されているのに、

 こともあろうに、トランクの中に孝君を押し込んで、

 検問を突破しようといていると連絡が入った時は肝を潰したぞ~。

 

 しかも、1度だけでなく(第17話)、2度だ(第20話)。。。

 

 自宅で休養を取っていたら、大学から連絡が入って、

 大学祭で乱闘騒ぎを起こしたと聞いた時は、頭に血が上ったし(第39話)。。。

 

 購買を故意に欠品を起こして、連日、100分の1の男性の多くを、

 欠品を理由に外出させたときは、もう学内で肩身が狭かったし(第41話)。。。

 

 もう、『悪事』ばっか起こしてくれた。。。

 こっち(=CCコースの教職員)は大変だったぞ~。

 

 その『悪事』には、

 優子君も、瀬名君も、そしてCCコースの3年生も加わるようになって、

 頭痛の種が増えた。。。」

  

 

 

そういうと、撫山教授はため息をついた。

 

「はー。(ため息)」

 

 

 

撫山先生は気を取り直して、少し表情を和らげて、スピーチを再開した。

 

「でもなー。。。

  

 時々、我々教職員も、課室をのぞいている。。。

 

 だって、愛唯君と孝君の『I大の最凶最悪コンビ』のやり取りは

 面白くってなー。。。

  

 ついつい笑ってしまうんだ。。。」

 

 

 

他の先生方も微笑んで頷いた。


撫山教授のスピーチは続く。


「そして、騒動の中心のCCコース3年生から、

 あのウイルスの痛手から、I大学の中で、真っ先に立ち直った。。。

  

 活気が戻った。。。

 

 皆よく勉強するようになった。。。

 

 パンデミックの前よりも、皆、まじめに勉強するようになった。。。

 

 授業を準備する我々も、学生が勉強するようになると、  

 授業を準備した甲斐が出てきて、うれしいぞ~。。。

 

 3年生だけでなく、下級生や上級生も活気が戻ってきた。。。

  

 そして、それは他の学科や学部にも波及してきた。。。

 

 今じゃ、学長だけでなく、他の学科や学部の先生からも、  

  『CCコースだけは守らなきゃいけませんね』

 って言ってくれるんだ。。。

 

 まだ、安心はできないが、CCコースは危機を脱しつつある。

 皆ありがとう。

 これをもって、私のスピーチを終える。」



 

そういうと、撫山教授は、紙コップを高く掲げた。

  

「乾杯!」

  

 

 

参加者も「乾杯!」と言い、パーティが始まった。

 

 

(次話に続く)











第34話の後書きで、

 『大学の教職員達の苦悩もいずれ触れるつもり』

と書きましたが、今話の撫山教授のスピーチが該当します。


きっと、大学の教職員は下記の①~③で『希望の光の見えない絶望的な状況』に陥るでしょうね。。。


 ① 40歳未満の男性が100分の1となり、若手の教職員がいなくなり、

   そのカバーをしなくちゃならない忙しさ。


 ② 男子学生が100分の1となり、自らがリストラ対象となる将来の不安。


 ③ 学生達はパンデミックのショックから、なかなか立ち直れない。


ま、この物語では、主人公の愛唯(メイ)の活躍もあり③は解決し、

②は第40話で短期的には解決したことにしてますが。。。


実際は相当難しいと思います。

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