第83話 結婚に向けて(その3) ー瀬名の実家訪問、そしてけじめー
(前話からの続き)
結婚を決意した私と優子と瀬名とバカ(=孝)は、両親から結婚の許しを得るべく、4人の実家を訪ねた。
私と優子の両親と孝のお母さんからは結婚の許しを得たので、残りは瀬名のご両親となった。
【瀬名の実家】
孝のお母さんからの結婚の許可を得ると、私達(=愛唯、優子、瀬名、孝)は瀬名の実家に向かった。
私も、優子も、当然バカ(=孝)も、瀬名の実家に遊びに行ったことはない。
瀬名の実家は、NOH市のNE区の高層マンションだった。
私達(=愛唯、優子、瀬名、孝)は、応接間に通された。
私達は一つのソファー(=愛唯、優子、瀬名、孝)に座り、瀬名のご両親はもう一方のソファーに座った。
瀬名は真剣な表情で口を開いた。
「父さん、母さん。突然ゴメン。
私、結婚しようと思うの。
今ここにいる、孝さん、愛唯さん、優子さんと。。。」
そして瀬名は頭を下げた。
「お願い。結婚を許して!」
私達(=愛唯、優子、孝)も頭を下げた。
瀬名のお父さんは驚いた表情で口を開いた。
「なんだ。瀬名。。。突然。。。結婚を決断したのはいつなんだ?」
瀬名は頭を下げたまま答えた。
「ほんの数日前。。。(第80話)」
瀬名のお母さんも驚いた表情で口を開いた。
「あなた、どうしてそれを、もっと早く言わないの?
今朝、登校する際にも(第81話)、そんなそぶり、一切見せなかったじゃない?」
瀬名はなおも頭を下げたまま、答えた。
「ゴメン。。。話しにくくって。。。」
瀬名のお母さんは納得いかない表情で、なおも瀬名を問い詰めた。
「そりゃ、話しにくいかもしれないけど、
こうして皆さん(=愛唯、優子、孝)を連れてくる前に、
どうして言ってくれないの?」
瀬名はようやく頭を上げたが、視線を瀬名のご両親から逸らし、答えた。
「ごめん。。。迷ったんだけど、言いにくくって。。。」
瀬名のお母さんはなおも納得のいかない表情で、瀬名に語り掛けた。
「でも、、、だからって。。。」
瀬名のお父さんが、瀬名のお母さんを制した。
「母さん。。。もう止めよう。。。
この子(=瀬名)は昔から、そうだった。。。
いつも自分一人で抱え込んで、自分の思いを誰にも打ち明けない。。。」
そして瀬名のお父さんは、私達(=愛唯、優子、瀬名、孝)に顔を向けた。
「それより、今は、瀬名の結婚の是非について考えよう。。。」
瀬名のお母さんも、その意見に同調した。
「そうね。。。」
瀬名のお母さんが瀬名に問うた。
「そう言えば、瀬名。。。
あなた、片思いの人が、生き残ったって言っていたけど、、、
それが、ここにいる孝さんのこと?」
瀬名が頷き、答えた。
「うん」
瀬名のご両親が微笑んだ。
そして瀬名のお父さんが瀬名に問うた。
「瀬名。。。一緒に結婚する、愛唯さんと優子さんとの関係は?」
瀬名が答えた。
「CCコースのクラスメートで、親しい友人よ。」
瀬名のお母さんが、瀬名のお父さんに語った。
「お父さん。。。
瀬名は内気で、ずっと恋人はいなかったわ。。。
このままでは、精子提供を受けるか、一夫多妻を受け入れるしかなかった。。。
一夫多妻を受け入れるなら、この人達(=愛唯、優子、孝)と結婚するのが、
瀬名にとって、一番よいカタチじゃないかしら?
だって、夫となる人は、瀬名が好きになった人。。。
そして、妻となる人たちは、瀬名と親しい友人なんだもの。。。」
瀬名のお父さんはうなずいて語った。
「そうだな。。。結婚を許す。。。結婚しなさい。」
瀬名のお母さんも、笑顔でうなずいた。
こうして、私達(=愛唯、優子、瀬名、孝)は結婚の許しを得た。
【報告とけじめの墓参りへ】
両親から結婚の許しを得た私達(=私、優子、瀬名、孝)は、孝の父、健司(=愛唯の元恋人)、武(=愛唯の弟)、瀬名の兄、翔(=優子の元恋人)に、結婚の報告と、けじめとして墓参りに行くことにした。
当然、撫山教授から外出許可は得てある。
また、墓参りの順番も特に意味はない。単に最短経路を考えるとこうなっただけのことだ。。。
あ、それと、両親からの結婚の許しを得たため、私と優子と瀬名は3人まとめて、今後は『ヨメンズ』と呼称する。
この呼称は優子のアイデアだ。
前日の土曜日、つまり両親の結婚の許しを得た帰りに、スーパーに寄って花を買った。
そして、ヨメンズとバカ(=孝)は翌日の日曜日に墓参りに出かけた。
【孝の父の墓にて】
まず、最初に孝のお父さんの墓を訪れた。
墓に花を生けると、バカ(=孝)は墓前でしゃがみ、手を合わせて、つぶやいた。
「父さん、僕結婚するよ。。。
まだ学生で、全然未熟なんだけど。。。
社会が許してくれないんだ。。。
愛唯さん、優子さん、瀬名さんを幸せにするよう頑張るよ。。。
天国から見守ってて。。。」
バカ(=孝)が墓前から離れると、ヨメンズ3人は墓前にしゃがみ、無言で手を合わせた。
私は心の中で、こう祈った。
(孝のお父さん、孝と結婚させていただきます。
孝を一生守ります。天国から見守ってください。)
【健司(=元恋人)の墓にて】
2番目に、健司(=元恋人)の墓を訪れた。
墓に花を生けると、私は墓前にしゃがみ、手を合わせ、心の中で祈った。
(健司。 今日は別れに来た。。。
だって、バカ(=孝)と結婚することにしたから。。。
決して、あなたを忘れたわけじゃない。。。
でも、今までありがとう。。。 )
私が墓前から離れると、優子と瀬名とバカ(=孝)が墓前でしゃがみ、手を合わせた。
優子と瀬名は無言だったが、バカ(=孝)はつぶやいた。
「健司さん、愛唯さんと結婚させていただきます。
一生、誠意もって、愛唯さんとともに生涯を送ることを誓います。
だから、見守ってください。」
【武(=弟)の墓で】
3番目に武(=弟)の墓に行った。
墓に花を生けると、私は墓前にしゃがみ、手を合わせ、心の中で祈った。
(武、姉さん(=愛唯)は結婚するの。。。
だから、バカ(=孝)とあなたは義理の兄弟になるわ。。
もし、将来、私が男の子を出産したら、あなたのような男の子が良いな。。。
だから、見守って。。。 )
私が墓前から離れると、優子と瀬名とバカ(=孝)が墓前でしゃがみ、手を合わせた。
優子と瀬名は無言だったが、バカ(=孝)はつぶやいた。
「武さん、愛唯さんと僕は結婚します。
だから、僕と武さんは義理の兄弟になります。
兄弟として、僕達を見守ってください。
お姉さん(=愛唯)は大切にします。
それと、あなたの形見の衣服は、
これからも大切に着させていただきます。。。」
【瀬名の兄の墓で】
4番目に瀬名の兄の墓に行った。
花を墓に行けると、瀬名は墓前にしゃがみ、手を合わせ、つぶやいた。
「兄さん、私結婚するの。。。
それが、兄さんに話した、片思いの人と(第49話)。。。
ほんの数日前まで、結婚できるなんて、思ってもいなかったけど。。。
もしかしたら、兄さんが天国で、私と孝さんを結び付けてくれたのかしら?
お願い、天国から見守って。。。」
瀬名が墓前から離れると、バカ(=孝)と優子と瀬名が墓前でしゃがみ、手を合わせた。
優子と瀬名は無言だったが、バカ(=孝)はつぶやいた。
「瀬名さんのお兄さん、瀬名さんと僕は結婚します。
あなたのような優秀な方と義理の兄弟になるのは光栄です。
瀬名さんは、大学1年生の頃から親しくしてもらっているので大事にします。
どうか、見守ってください。」
【翔(=優子の元恋人)の墓にて】
最後に、翔(=優子の元恋人)の墓を訪れた。
花を墓に行けると、優子は墓前にしゃがみ、手を合わせ、つぶやいた。
「翔。私、孝と結婚するの。。。
あなたのことは大好きだった。。。
あのウイルスがなければ、私はあなたと結婚したと思う。。。
でも、孝があなたの墓参りをした時、
その後、あなたへの手紙を書くよう勧められた時、
私の心は救われた(第7話)。。。
それから、孝のことが好きになった。。。
今思い返してみると、あれって、偶然あなたの墓の近くで、
私と愛唯と孝が鉢合わせたからで、、、
『もしかしたら、私の心が救われるよう、
導いたのは、あなた(=翔)だったのかもしれない』
ね。。。
もし、あなたが導いたのなら、ありがとう。感謝している。。。
あなたが導いたのではないとしても、
私に素敵な思い出をくれて、ありがとう。。。」
そうかもしれない。。。
私がバカ(=孝)を好きになったキッカケは、CC男子クラスメートの弔いに同行したことだが、それには、誰かの導きがあったとしか思えないような、さまざまの偶然の積み重ねだった(第1話、第2話)。。。
そして、私の心は救われた(第5話)。。。
導いたのは、健司(=元恋人)だったのかもしれないし、武(=弟)だったのかもしれない。。。
もし、彼らが導いたのなら、私は感謝しなくてはならない。。。
優子が墓前から離れると、私と瀬名とバカ(=孝)は墓前でしゃがみ、手を合わせた。
私と瀬名は無言だったが、バカ(=孝)はつぶやいた。
「翔さん、優子さんと結婚させていただきます。
どんな言葉をかけて良いのかわからないけど。。。
でも、優子さんを幸せにするよう、精一杯努めます。。。
だから、見守りください。」
翌日の月曜日から、ヨメンズとバカ(=孝)は、結婚に向けて、具体的に動き出すことになる。。。
(次話に続く)




