第82話 結婚に向けて(その2) ー孝の実家訪問ー
(前話からの続き)
結婚を決意した私と優子と瀬名とバカ(=孝)は、両親から結婚の許しを得るべく、
4人の実家を訪ねた。
私と優子の両親からは結婚の許しを得たので、残りは孝のお母さんと、瀬名のご両親から結婚を許しを得ればよい。
【バカ(=孝)の実家】
3番目にバカ(=孝)の実家に、私達(=愛唯、優子、瀬名、孝)に向かった。
いつもなら、孝のお母さんから「帰ってくるんじゃないわよ! このバカ!」と罵られるのであるが、今日に限って、孝のお母さんは無言で私達(=愛唯、優子、瀬名、孝)を客間の和室に通してくれた。
孝のお父さんの遺影のある部屋だ。(第34話)
和室では、私達(=愛唯、優子、瀬名、孝)は正座して、孝のお母さんと孝の妹さんと正対した。
バカ(=孝)は一番前に座り、私・優子・瀬名はバカ(=孝)の後ろに一列で座っていた。
バカ(=孝)が孝のお母さんに頭を下げ、口を開いた。
「母さん。僕、結婚しようと思う。。。
かねてから交際していた愛唯さんだけでなく、
今日ここに連れてきた、優子さんと瀬名さんとも結婚したいと思う。。。」
バカ(=孝)は続ける。
「むろん、一夫多妻は良くないことだと思っている。。。
でも、結婚後の生活と、僕自身を守るためには、
どうしても一夫多妻を選ばざるを得ないんだ。。。
だから、結婚を許可してほしい。。。」
孝のお母さんは厳しい表情でバカ(=孝)を罵った。
「孝。。。 あなた最低ね。。。
『結婚後の生活』? 『あなた自身を守る』?
そんなもん、あなた自身の才覚でなんとかしなさいよ!
そんなことのために一夫多妻なんて選んで、
お嬢さん達を犠牲にするんじゃない!!」
私は慌てて頭を下げ、孝のお母さんに話した。
「孝のお母さん。違うんです。。。
孝に一夫多妻を選ぶよう、迫ったのは『私』なんです(第79話)。。。
孝は一夫多妻を受け入れるのを、最後まで嫌がりました。。。
でも、私が無理やり受け入れさせたんです。。。」
私の告白に、孝のお母さん、孝の妹さん、そして瀬名も驚きの表情を浮かべた。
孝のお母さんは戸惑いながら、問うた。
「愛唯さん、、、どうして?」
すると、優子が頭を下げ、孝のお母さんに話した。
「孝のお母さん。愛唯に代わって、私が説明します。
なぜなら、孝と愛唯に一夫多妻を勧めたのは、
『私』だからです(第79話)。。。」
優子の告白に、孝のお母さん、孝の妹さん、そして瀬名は、再び驚きの表情を浮かべた。
優子は続ける。
「孝は、2月初旬、拍子法行為という、とても辛い経験をしました。。。
それは、孝だけでなく、愛唯にも、辛い経験を強いるものだったのです。。。」
優子の話を私が引き取った。
「その拍子法行為の恐怖は、私と孝を支配しました。。。
それから逃れ、かつ結婚後の生活を維持するには、
どうしても一夫多妻を受け入れざるを得ないと言うのが、
私と優子の結論でした。。。
孝は『拍子法行為を我慢すれば済むことだから』って、
最後まで一夫多妻を受け入れることに抵抗しました。。。
でも、私が無理やり受け入れさせたんです。。。」
優子がそれを一部否定した。
「いいえ、正確には、愛唯と私の2人がかりで、孝を無理やり説得したんです。」
私は再度頭を下げ、結婚の許しを、孝のお母さんに願った。
「お願いです。結婚を許してください!」
優子も再度頭を下げた。
「お願いします!」
すると、バカ(=孝)も頭を下げた。
「結婚を許してください。」
最後に瀬名も頭を下げた。
「私からもお願いします。結婚を許してください。」
孝のお母さんは無言で立ち上がり、前に進むと、バカ(=孝)の脇を抜けた。
そして、私と優子と瀬名に近づき、両手を広げ、私達(=愛唯、優子、瀬名)を抱きしめた。
孝のお母さんは微笑み、私に語った。
「実はね。愛唯さん。。。
さっき、あなたのお父さんから、私のスマホに電話があったの。。。」
私は驚き、「え?」とつぶやいた。
孝のお母さんは続けた。
「あなたのお父さんは、県庁に務めているから、
いずれ、孝は一夫多妻を選択せざるを得ないことを教えてもらった。。。
拍子法行為についても、あなたのお父さんから教えてもらった。。。
確かに、
拍子法行為から継続的に逃れ、結婚後の生活の安定を考えるのなら、
一夫多妻を受け入れるしかないわ。。。」
孝のお母さんは首を横に振って語る。
「でも、だからと言って、
私の息子1人のために、お嬢さん達を犠牲にするのは躊躇いがあるわ。。。」
私は孝のお母さんに縋った。
「でも、、、それを私が望んでいるんです。。。」
優子も孝のお母さんに縋った。
「愛唯だけじゃありません。私もそれを望んでいます。。。」
瀬名も縋った。
「私も。。。」
孝のお母さんは、私達(=愛唯、優子、瀬名)を見渡し、口を開いた。
「そうね。。。
息子を守るために一夫多妻を受け入れてくれた、
三人のお嬢さんを拒むことなどできないわ。。。
お願い。。。息子と結婚して。。。」
私達(=愛唯、優子、瀬名)は同時に答えた。
「「「はい。」」」
孝のお母さんは私達(=愛唯、優子、瀬名)を抱きしめたまま、語った。
「これからは、あなた達(=愛唯、優子、瀬名)は、
『義理の娘でなく本当の娘として扱う』から。。。」
そして、孝のお母さんは、孝の妹さんに顔を向け、語った。
「あなた(=孝の妹)も、このお嬢さん達を、
『義理の姉でなく本当の姉として接しなさい』。」
孝の妹さんは戸惑いながら、「うん」とうなずいた。
さらに、孝のお母さんは、微笑んで、バカ(=孝)に語り掛けた。
「孝。
もう結婚するんだし、妹も進学したから、
これからは、たまには帰ってきなさい。」
バカ(=孝)も戸惑いながら、「うん」とうなずいた。
私は孝の妹さんに話しかけた。
「進学って、どこに合格したの?」
孝の妹さんは、すこし恥ずかしそうに話した。
「県立大学に合格しました。」
瀬名が祝意を示した。
「うわー、おめでとう。。。」
一方、優子と瀬名は、バカ(=孝)があまり実家に帰っていないことに納得できない表情だった。
「そういえば、1年前、
孝はあまり実家に帰っていないと言っていたけど(第14話)、
あれからも、あまり帰っていないの?」
私が答えた。
「数回、一緒に帰ったことがあるけど、
孝には、あまり実家に帰りたくない理由があるんだよね。。。」
(第34話)
瀬名は戸惑いの表情を浮かべる。
「帰りたくない理由って?」
私は曖昧に答えた。
「うーん、、、すぐにわかると思う。。。」
そして、私は孝のお母さん、孝の妹さん、そしてバカ(=孝)を見渡した。
皆(=孝の母、孝の妹、孝)、苦笑いを浮かべていた。。。
ますます、優子と瀬名は困惑の表情を浮かべた。
優子は「何? それ?」とつぶやいたし、瀬名は無言で困惑していた。
ま、その理由はすぐに、彼女達もわかったけどね。。。
例によって(第34話)、『あまり親しくもなかった小学校時代の女子クラスメート』なり、『近所の人』が娘を連れて、押し寄せてきたってわけ。。。
今回は、バカ(=孝)は、
「僕は、もう、3人の女性と結婚しましたので、、、」
と言って、私・優子・瀬名を紹介して、大半の人は黙って帰ったけどね。。。
でも、この前のように諦めきれない人はいてね。。。
例えば、「あと一人なんとか。。。」とか言う人はいたわけ。。。
当然、バカ(=孝)は断ったよ。
「僕は、これ以上、結婚相手を増やす考えはありません。」
ってね。。。
それでもあきらめきれずに、「そんな子達より良い子を見つけてあげるから」とか、「そんなブス達、どこが良いんだ!」とか、失礼なことをぬかす輩はいたわけ。。。
当然、そんな奴らは追い返したわよ。。。
バカ(=孝)は怒ったし。。。
「僕の大切な妻になんてことを言うんだ!」
今回は孝のお母さんも怒ったし。。。
「息子を守ろうと妻になってくれる、この女の子達に何てこと言うの!
もうこの子達は『私の娘』よ!
今の言葉は私の娘への侮辱よ!!」
私だけでなく、優子や瀬名もカチンと来て、えーえー、私と優子と瀬名の3人で、奴らに『悪魔の笑顔』×3を喰らわせてやりましたよ!
追い返した後、優子はため息をついて言ったわ。
「こりゃ、孝は実家じゃ、くつろげないわね。。。」
私はすました顔で答えた。
「だろ? でも、今回はまだマシな方よ。」
瀬名は「えー!?」と叫び、驚いた。
私は苦笑いを浮かべ、少し詳細に説明した。
「今回は、私達3人と結婚したって事実で、帰ってくれた人が大半だったし。。。
去年、私と孝が付き合っていた頃なんか、なかなか帰ってくれなかった。。。」
孝のお母さんも笑顔で語った。
「ま、これからは徐々に減っていくでしょ。。。
これからは、たまには我が家にいらっしゃい。。。」
実は、結婚後、数か月に1度、孝の実家、遊びに行った。
正確には、4人の実家にはローテーションで1か月に1回遊びに行ったので、4ヶ月に1度となるのだが、徐々にこういう輩は減っていた。。。
でも、完全にあきらめてもらうには数年かかったかな。。。
そういう輩を追い返すたびに、優子と瀬名はため息をついた。。。
そして、優子は決まって、こんなことを話した。
「『精子提供は一生に一度で、しかもその成功率は100%ではない』
という事実が重いのでしょうね。。。」
瀬名は優子に顔を向け、こう話した。
「孝さんが結婚したのは、私達3人だから、
『まだ余力があるかも?』って一縷の望みを掛けてなんでしょうね。。。」
(次話に続く)