第78話 バレンタインデートはしたけれど。。。
特別合宿も終わり、バレンタインデー直近の土曜日、CCコース3年生は、特別合宿の慰労を兼ねて、集団デートに出かけた。
慰労に加え、特別合宿の企画、準備に多大な貢献をしてもらった、優子・瀬名・里子へのお礼という意味もある。
それに、集団デートは、バカ(=孝)の孤独を防ぐための交流の場として有益であり、数か月に1度実施している。
バカ(=孝)の婚約者としては、将来の『懸け橋』を担う私としては(第77話)、交流の場としての集団デートは、重要性が増したこともある。
え? 集団デートは、いつもの如く、バカ(=孝)を着せ替え人形にして遊んで、衣服選びで盛り上がったよ(第56話)。
ただし、今回は上下1着のみ、だって大量の古着があるから(第57話)、無理に大量に買う必要ないから。
例の如く、揉めたけど(第56話)、今回は多数決で決めたよ。
ま、ブーブー文句があったけど。
あ、バカ(=孝)の衣服選びの最中に、優子が近づいてきてね。小声で尋ねてきたよ。
「ね、あんた達(=愛唯と孝)、いつ結婚するの?」
私も小声で答えた。
「うーん、、、諸事情があって、卒業後になると思う。。。」
ちなみに、私とバカ(=孝)の婚約については、撫山教授と優子しか知らない。
私は小声で続けた。
「すまないけど、私とバカ(=孝)の婚約については、皆には黙っていて。
結婚の時期がかなり先になりそうだから。」
優子は首を縦に振って、答えた。
「わかった。」
すでに、バカ(=孝)と話し合っていてね。
大学3年生の2月時点で、すぐに結婚するメリットは余り多くなく、卒業後にすることにしたんだ。
その間、婚約した事実が発覚すると、いろんな憶測を生む恐れがあり、これもバカ(=孝)と話し合った結果、婚約については当面秘密にすることにしたってわけ。
食事会は焼き鳥だった。もちろん、私とバカ(=孝)は前回と同様(第56話)、お酒は1滴も飲まなかった。
トピックスとしては、里子とバカ(=孝)は砂肝を注文してね。
聡君(=里子の元恋人)の好物だったそうで、2人とも、砂肝を食しながら、聡君を懐かしんでいたね。
で、、、バレンタインデーは、やっぱり婚約者として、バカ(=孝)と二人っきりで楽しみたいじゃないか!
しかしだ、、、集団デートと二人っきりのデートという、2正面作戦は経済的に無理なのだよ。
実は、集団デートでバカ(=孝)の衣服を上下1着のみと限定したのは、これが理由。
前回みたいに上下何着も買って(第56話)、スッカラカンになるわけにはいかなかったってわけ。
ということで、私の下宿で、すこし贅沢な夕食を楽しむことにした。
ま、平日だったし。。。
え? 自作チョコレート?
がはは。。。料理下手な私じゃ、というより『ガサツでズボラ』な私じゃ、絶対無理。
実はな、大学1年生のとき、当時の恋人、健司に自作チョコレートを渡そうとして、大失敗したのだよ。
当然、バカ(=孝)のために、自作チョコレートとか、調理するなんてしなかった。
ま、バカ(=孝)も調理駄目だし(第77話)、お互いさまってことで。
がはは。。。
なので、デリバリとか、お取り寄せで、少し豪華な食事を、下宿で楽しんだってわけ。
え? その夜はどうなったかって?
がはは。。。 はい! ガッツリやりました!!
まあ、集団デートも、下宿での豪華な夕食も楽しかったよ。。。
一応。。。
でもね、バカ(=孝)が拍子法行為に行く前と比べると、そこまで楽しくはなかったんだ。。。
どうしても、『もし、明日再び、バカ(=孝)が拍子法行為が命じられたら、どうしよう?』って、頭を過るんだ。。。
本当のことを言うと、集団デートの企画も、下宿でのちょっと豪華な夕食も、一時でもいいから、拍子法行為を忘れたかったからなんだ。。。
でも、拍子法行為を頭から消し去ることはできなかった。。。
あの拍子法行為の恐怖は、私とバカ(=孝)の心を支配し続けている。。。
集団デートをしても、、、下宿でちょっと豪華な食事をしても、、、激しく求めあっても、、、『拍子法行為の恐怖を忘れることはできなかった』。。。
実は、バカ(=孝)が拍子法行為から帰ってきてから、私とバカ(=孝)は、拍子法行為をはじめとする精子提供について調べた。
もう婚約したからってことで、バカ(=孝)から、精子提供契約書を秘密契約条項(第70話)も含め、写しを見せてもらった。
その結果、拍子法行為から逃れる方法はあるにはある!
だが、私とバカ(=孝)は、その方法は使えない!
というより、使いたくないんだ!
それは、『一夫多妻を受け入れ、かつ多くの子供を産むこと』なんだ!
具体的には、妻1人に対して1年間、子供1人に対して1年間、拍子法行為を含む精子提供は免除される。
つまり、私とバカ(=孝)が結婚すれば、たった1年間だけだが、拍子法行為から逃れることができる。
もし、拍子法行為を含む精子提供から永遠に逃れたければ、『一夫多妻を受け入れ、多くの子供を産む』しかないってわけ!
バカ(=孝)は語る。
「これは、100分の1の男性に、一夫多妻を選択させるための、
アメとムチのムチですね。。。」
ムチが拍子法行為なら、実はアメもある。
例えば、妻が2人目以降なら、学生の場合、その妻に対し、100分の1の男性同様に、
給付型奨学金
授業料全額免除
光熱費を含む住宅費全額免除
を受けることができる。
学生結婚も可能だろう。
妻は男性と違って外出自由なので、ちょっとバイトすれば、生活が成り立つレベルの特典があるからだ。
この特典は秘密でもなんでもなく、公開されているから、いつもの如く、マスコミは「100分の1の男性に対し過保護だ」って囃し立てているけど。。。
まったく、こいつら(=マスコミ)は、全体を把握することなく、煽ってばかりだ!
話を戻すと、国はアメとムチを駆使して、
『一夫多妻を受け入れ、多くの子供を産む』よう、誘導しているってわけ!
拍子法行為は強行採決して導入された(第71話)。
強行採決してまで導入した、国の意図はそこにあると、私とバカ(=孝)は気付いたってわけ。。。
当然、私は『一夫多妻など、まっぴらごめん』だ。
バカ(=孝)は私一人のものだ。誰にも触れさせやしない!
バカ(=孝)も『一夫多妻を受け入れる気は毛頭ない』。理由は以下の通りだ。
「僕も一夫多妻を受け入れる気はありません。理由は3つあります。
最初の理由は、歴史的に多くの妻を娶った男性はいますが、
彼らは権力者やお金持ちです。
結婚相手の女性の満たされないものを、
権力や財力で補うことができたからです。
僕にそんなものはないから、結婚生活の破綻は目に見えています。
2番目の理由は、僕自身は不器用で、
複数の結婚相手を、うまくバランスがとれません。
やっぱり、結婚生活の破綻は目に見えています。
3番目の理由は、これが最大の理由ですが。。。
僕は、生涯、たった1人、愛唯さんだけを愛したいです。。。」
よって、私達(=愛唯と孝)は、『一夫多妻は絶対拒否』することにして、2人きりで暮らすことを選択したってわけ。
たった1年間だが、私とバカ(=孝)が結婚すれば、バカ(=孝)は、拍子法行為を含む精子提供義務から逃れることができる。
じゃあ、その『結婚時期はいつがよいのか?』ってのが難しい。
これは、『拍子法行為がいつ命じられるの一番困るのか』ってことに起因する。
拍子法行為が卒業後に命じられるのが一番困る。
なぜなら、私は就職希望だし、バカ(=孝)は進学希望だ。
就職後だと、私も仕事を抱えているだろうから、拍子法行為を行ったバカ(=孝)を、ちゃんとケアできない恐れがある。
だから、就職後に結婚するのが良い。
優子に「諸事情があって、(結婚は)卒業後になると思う。」と答えたのは、これが理由。
就職後の早い時期に私が妊娠出産して、なるべく短いサイクルで子供を産めば、それだけバカ(=孝)を精子提供義務が免除される期間が長くなる。
でも、まさか入社1年目や2年目で、妊娠して産休を取るわけにはいかない。
そして産休して復帰して、すぐにまた産休というわけにもいかない。
そう、私の卒業後のキャリア形成や生活の安定にマイナス要因となる。
それに、現在、バカは『たった1人の村人でも、100人の村人にとって重要な人物』となるべく、努力してもらっている。
でも、それが成功するとは限らない。
となれば、保険の意味で、私も入社後、ちゃんとキャリア形成する必要がある。
常識的には、妊娠出産時期は早くても入社3年目以降だろう。
そして2人目以降の子供の出産も、2,3年間は空けないといけない。
つまり、就職後に結婚したとしても、拍子法行為対応しなければならない期間が、どうしてもできてしまうのだ。
言い換えれば、
拍子法行為を含む精子提供義務の免除と、
私達(=愛唯と孝)のキャリア形成と
生活の安定を、
全部満足できる形で成立しないのだ。
このことは、私とバカ(=孝)の進路希望に迷いを生じさせた。
私は入社早々、会社には迷惑だが、妊娠出産時期を早めることを考えた。
しかし、そのときバカ(=孝)は言った。
「だったら、僕は、進学をあきらめ、就職します。」
その言葉は私を激怒させた。
「バッキャロー!
今から(=3年2月)、進路を進学から就職に切り替えて、
簡単に就職できる状況じゃねーだろ!!
お前ら、100分の1の男性は就職難の状況なんだぞ!
(第70話)
俊君の自殺を忘れたか!
彼は就職難と拍子法行為のダブルパンチで自殺したんだぞ(第70話)!!
テメーは、さっさと進学しやがれ!!
何のために、先生方が、テメーに、特別課題を施したと思っているんだ!
テメーが永遠の試練に生き残るためだろ!!(第76話)
そうして磨いた頭なら、大学院に行け! アホ!!」
だが、バカ(=孝)も言い返した。
「愛唯さんに多大な負担をかけてまで、進学したいとは思いません!
僕のキャリアと同様、愛唯さんのキャリアだって重要です!!」
私とバカ(=孝)の、最初の大ゲンカだった。。。
私が間違っているとは思わない。。。
でも、バカ(=孝)も間違っていない。。。
長い目で見れば、私とバカ(=孝)は、自分自身と相手のキャリア形成を尊重しなくてはならない。。。
もちろん、私はバカ(=孝)は大学院へ進学すべきだと思っている。
これについては迷うべきではないと私は思う。
となると、私が進路を変えるという手がある。
たとえば、私も大学院に進学すれば、バカ(=孝)が大学院進学後に拍子法行為を命じられても、私がケアできる。
しかし、これには3つ問題がある。
まず、大学院と言うところは、24時間365日、研究に没頭することが求められる。
『バカ(=孝)が拍子法行為を命じられた時のケア』なんて、不純な動機で進学するところではない。
もう一つは、進学しても、いつかは就職する。
やっぱり、就職してしばらくは妊娠出産できないわけで、問題の先送りにもなっておらず、問題を引き延ばしているだけにすぎない。
さらには、先回の拍子法行為において、私はただ泣いているだけだった(第72話)。
何とか乗り切れたのは、優子・瀬名・里子のおかげだ(第73話)。
彼女達は卒業後は就職の予定だから、私一人が大学院に進学したとして、拍子法行為から戻ってきたバカ(=孝)をどこまでケアできるか?という問題もある。
バカ(=孝)と話し合ったが、、、結局のところ、とりあえず、以下のことしか決めることができなかった。
・卒業までは結婚しない。
・孝は進学一本、私は就職か進学かを考える。
つまり、すくなくとも、卒業までの1年間、再び、バカ(=孝)は拍子法行為を命じられる可能性がある。
その恐怖が私達(=愛唯と孝)を支配していた。。。
だから、せめて一時でも、拍子法行為を忘れるよう、集団デートや下宿での豪華な食事を企画した。
でも、、、駄目だった。。。
バカ(=孝)は口数が少なくなった。。。表情が乏しくなった。。。考え込むことが増えた。。。
バカ(=孝)は追い込まれている。。。
そして、私も悩んでいた。。。
私も追い込まれていた。。。
どうしたら良いのか?
だが、アイデアが浮かばない。。。
焦りばかりが募る。。。
私もバカ(=孝)も限界を迎えようとしていた。。。
ちょうどそんな時、2月も末の頃だった。。。
私の下宿に、夜8時頃、優子が訪ねてきた。
私達はコタツを囲んで話をすることにした。
彼女は私の左手に座ると、口を開いた。
「ねえ、愛唯。
あんた達(=愛唯と孝)、最近、何か悩んでいるよね?
相談に乗ってあげるから、話してみな。。。」
(次話に続く)




