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第67話 共通テストで缶詰(その2) ー泊まれないー

(前話からの続き)


共通テスト期間中、寮から一歩も外に出ることができないバカ(=孝)はかわいそうだ。


私はバカ(=孝)に語り掛けた。


「それじゃあさ、、、私の実家に泊ったら?」

 

 

 

バカ(=孝)は困惑した表情で話した。

 

「僕が愛唯さんの実家に宿泊するには、いくつか問題があります。。。」

 

 

 

バカ(=孝)は右手に指を1本立てた。

 

「まず、本来、I大のルールとして、

 大学以外の施設に100分の1の男性が宿泊する場合、

 大人5人が一緒にいる必要があります。

 

 ま、普通の家には、大学のように2~3mの壁はないし、

 セキュリティゲートもありませんから。。。」

 

 

 

バカ(=孝)はふいに苦笑いを浮かべた。

 

「だから、妹の受験がなかったとしても、

 僕の実家に僕が宿泊することはできないんですよ。 

 だって、僕の実家に大人は、母1人ですから。。。」

 

 

 

私は戸惑い問うた。

 

「あれ?  

 正月は私の実家に孝が宿泊したじゃない?

 あのときは私と父と母の3人しか、大人はいなかったけど(第61話)?」

 

 

 

すかさず、撫山教授が私を罵った。

 

「あれは、愛唯君も孝君も飲みすぎて、

 車で帰れないから、仕方ないから許可したんだ! 

 本来あれはダメなんだ!」

 

 

 

私は謝るしかなかった。

 

「がはは。。。すみません。。。」

 

 

 

そうか、それであのとき、すんごく怒られたのか。。。

 

 

 

 

 

私は気を取り直し、再度バカ(=孝)に問うた。

 

「じゃあ、CCコースの女子クラスメートのうち、

 2人を私の実家に泊めればいいじゃん。」

 

 

 

バカ(=孝)は顔を横に振り、答えた。

 

「僕を含めて、少なくとも3人の人が、

 愛唯さんの実家に3泊4日しなきゃいけません。

  

 1泊くらいならともかく、3泊となると、

 愛唯さんのお母さんの負担が重すぎます。」

 

 

 

私はグッと詰まった。

 

そうバカ(=孝)を含め、3人のクラスメートが私の実家で3泊もするんだ。

 

もちろん、家事は私を含め4人が手伝うにしても、母の負担は極めて重くなる。

 

 

 



だが、それでも私は粘った。

 

「じゃあ、

 日中はさらに2人以上の女子クラスメートを集めて、

 孝を含めて6人で遊びに行けばいいじゃん。

 付き添いが5人以上いれば、NOH市の繁華街に行けるわけだし。。。」

 

 

 

だが、バカ(=孝)は再度顔を横に振った。

そして右手に指をさらにもう1本立てた。

 

「4日間も遊ぶお金があるのですか?

 昨日、成人式(第63話、第64話)で、かなりの出費をしたはずですよね?」

 

 

 

私は再びグッと詰まった。一生に一度の成人式ということで、振り袖の着付け等で多くの出費をしてしまった。

その上で、さらに4日間も遊ぶお金はない。



 

他の女子クラスメートも同様だった。

 

優子はうなずき、つぶやいた。


「そうね。。。昨日の成人式でお金をいっぱい使っちゃったし。。。」

 



里子も同様だった。


「しばらくはおとなしくしていないと。。。」




瀬名はため息をつき、うなずき、つぶやいた。

 

「1日くらいは何とかなっても、4日間は無理ですね。。。」

 

 

 

孝は苦笑いを浮かべて話す。

 

「4日間遊ぶお金はないですから、

 結局、僕を含めて、少なくとも3人の人が、

 愛唯さんの実家に4日間もお邪魔することになります。

  

 それは、愛唯さんのお母さんの負担が重すぎます。 

 今回は、僕は寮で過ごすしかないと思います。」

 

 

 

私は渋々同意するしかなかった。

 

「そうね。。。」

 

 

 

 

 

撫山教授は私とバカに声をかけた。

 

「愛唯君、孝君、

 

 孝君は金曜日の朝8時から月曜日の朝10時まで学外に出ることはできぬ。

 

 必要なものの買い物は、木曜日までに終わらせるようにな。」

 

 

 

そう言うと、撫山教授は課室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金曜日、共通テストが始まった。

 

大学入試は受験生だけでなく、大学に軟禁されている男子学生(=100分の1の男性)にとっても大変な数日間となる。

 

まー、どう過ごしていいか困ったね。。。

 

と言うのも、女子学生は入試期間中は大学立ち入り禁止だから、瀬名と里子はそもそも通学しないし。。。




加えて、優子も実家に帰っちゃったし。。。

 

金曜日から月曜日の朝10時まで大学に立ち入ることが禁止されているなら、実家に帰った方が良いって。。。

 

 

 

私も実家に帰ろうかな~と思ったんだけど、結局、一人下宿で過ごした。。。

 

え? 『なぜ、実家に帰らなかったか?』って。。。

 

まあ、それはおいおい。。。

 

 

 

まず、共通テストであっても、『特別課題』は課せられているのでね(第43話)。。。

 

時々、バカ(=孝)のパソコンにテレビ電話で繋げないと進まないのだよ。。。

 

ついでにテレビ電話で会話を楽しんだよ。。。

 

 

 

夜10時半を過ぎるとね。寮の出入口の守衛がいなくなるので、大学の抜け穴からバカ(=孝)は抜け出し、私に会いに来たって訳。

 

そう、これが『私が実家に帰らなかった理由』だ。

 

 

 

夜10時半過ぎなので、あまり大酒はできないが、二人でお酒をちょっと飲んだよ。

 

と言っても、あのバカ(=酒)は物凄い酒豪なので、あのバカ(=孝)にとって『ちょっと』であって、私から見れば『結構な量』なのだが。。。

 

そして、バカ(=孝)の好きなつまみ、メンマとザーサイを出してやった(第58話)。

 

 



 

お酒を飲みながら、私はバカ(=孝)に問うた。

 

「孝~。


 軟禁が開始されたのは去年の3月1日からだったけど(第10話)、

 3月1日以降の入試って、後期日程の入試があったろ?

  

 どうやって過ごしたの?」

 

 

 

バカ(=孝)は苦笑いを浮かべて答えた。

 

「後期日程の入試はI大の場合、1日だけですが、  

 前日と試験日は日中は寮から一歩も出られませんでした。。。」

 

 

 

バカ(=孝)は話を続ける。

 

「寮の仲間が、恋人と前日までにお酒を大量に購入してもらって、

 1日目は寮の仲間と『朝から飲んでました』。

  

 だって、他にすることもなかったし。。。」

 

 

 

私は半ば呆れて笑った。

 

「がはは。。。」

 

 

 

バカ(=孝)は更に話を続ける。

 

「試験期間中、時々、守衛さんが、寮の中を見回りに来たんですが、  

 守衛さんもあきれてました。。。」

 

 

 

バカ(=孝)はため息をつき、話を続けた。

 

「でも、1日くらいは飲んで過ごすこともできるけど、

 後期日程では2日間、寮から出られないから、2日目は困りましたね。

 

 今は卓球台があるけど、あの時は卓球台もなかったし(第13話)。。。

 

 1日中、テレビゲームしていた仲間もいました。。。」

 

 

 

きっと、今回の共通テストも同じなのだろう。

 

寮で過ごさなきゃならない一部の100分の1の男性は、この4日間、どう過ごしていいのか途方に暮れているのだ。

 

実は、共通テスト期間中、ほとんどの100分の1の男性は実家に帰らず、寮で過ごしている。

 

理由はバカ(=孝)と同じだ。

 

 

 

まだ、私とバカ(=孝)は夜8時、抜け穴から抜け出して会えるだけ、他のI大の100分の1の男性より恵まれているのだろう。

 

そして、『うれしくない』が、結果的に『特別課題を課せられているだけ』、時間を潰せるだけ幸いなのかもしれない。

 

 

 

突然、バカ(=孝)は微笑み、私に語った。

 

「今回(=共通テスト)は、夜8時以降に大学を抜け出して、

 愛唯さんの下宿に遊びに行けるからよかった。

  

 愛唯さん、ありがとうございます。」

 

 

 

そういうと、バカ(=孝)は私に頭を下げた。

 

 

 

 

 

こうして、バカ(=孝)は、共通テストの期間中、夜10時半過ぎ、大学を抜け出して、私の下宿で1時間くらい過ごした。

 

寮から一歩も出られなかったストレスを解消していた。

 

私の下宿から寮へ帰るバカ(=孝)を見送りながら、あのときはこんな過ごし方も良いかなと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもね、、、今、、、

 

無理にでも母を説得し、バカ(=孝)を私の実家で3泊4日過ごしてもらえばよかったと後悔しているんだ。。。

 

無理にでも4日間、バカ(=孝)と遊べばよかったと後悔しているんだ。。。

 

 

 

だって、このとき、、、

私とバカ(=孝)に対する『最大の試練がすぐそこまで迫っていた』んだ。。。

 

 

 

その試練の前に、

 

 『恋人として無邪気に交際していた、

  私にとって一番幸せな時期の最後の思い出を作ればよかった。』

 

と後悔しているんだ。。。

 

 

 

そう、このときは、私もバカ(=孝)も、最大の試練が差し迫っていたことに、気付かなかったんだ。。。



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