第58話 下宿での飲み会
集団デートから2週間たった、11月初旬のことだった。
第56話で、優子・瀬名・里子と約束した飲み会を私の下宿で行った。もちろんバカ(=孝)も参加した。
そもそも、バカ(=孝)は、ものすごい酒豪だし。。。
酒やつまみは、参加者(私(=愛唯)、優子、瀬名、里子、バカ(=孝))がお金を出し合って、スーパーで購入し、一部は優子と瀬名が料理した。
ちなみに、瀬名の料理は絶品だ。瀬名本人曰く「趣味は料理」とのこと。
こうして、つまみは豊富なのだが、、、里子とバカ(=孝)は、つまみはいつも同じで、、、なんとザーサイとメンマだ。
里子はバカ(=孝)に語った。
「このつまみは聡(=里子の元恋人)から教えてもらった。」
バカ(=孝)もうなずき、答えた。
「僕も、聡君から教えてもらいました。」
私も、優子も、瀬名も、ザーサイとメンマを酒の肴に食べようと思わないのだが、、、あの2人は必ず食べる。
里子が、私の下宿の飲み会に参加するようになったきっかけは、5月の連休の頃、することがなくって、私の下宿で、私とバカ(=孝)で飲んでいて、里子が下宿に偶然遊びに来たんだ。
そして、食卓の上に、ザーサイとメンマがあり、バカ(=孝)がつまみとして食しているのを見たんだ(第36話)。
それ以来、私の下宿で飲み会を行う時は、彼女はかならず参加するようになった。。。
そして、、、私の下宿で飲み会をするときは、かならず、里子とバカ(=孝)は差しで飲んでいる。
バカ(=孝)はザーサイをつまみながら、うれしそうに里子に語る。
「いやー、里子さんがいてくれて、助かります。
酒の肴としてザーサイとメンマが良いことを
理解してくれるの、里子さんだけですもん。。。」
里子もメンマをつまみながら、ホッとした表情で、バカ(=孝)に語る。
「私もだ。。。
時々、部のメンバーと、部室とか、大学周辺で下宿している子の部屋で
飲むんだけど、酒の肴としてザーサイとメンマを、
一緒に食す奴がいなくてな。。。
孝だけだよ。。。」
バカ(=孝)はちょっと寂しそうな表情で里子に語る。
「でも、こうして、里子さんと飲んでいると、、、
聡君と飲んでいるみたいです。。。」
里子もちょっと寂しそうな表情で、うなずきバカ(=孝)に語った。
「そうだな。。。
孝と一緒に飲んでいると、聡と飲んでいる気になる。。。」
そう、里子とバカ(=孝)は差しで飲んでいるが、実際は聡君と3人で飲んでいるのだ。。。
飲み会の話題は、バカ(=孝)は男子クラスメートの思い出を語ることが多い。
特に聡君に関することをよく話す。それは里子と差しで飲んでいることも関係しているが、バカ(=孝)曰く、「聡君は特にエピソードが多い」ということもある。
ただ、
「僕が、直接見たわけでなく、聡君自身が語ったなんですけど、、、」
と前置きして、聡君のエピソードを語る。
最初は
聡君が20歳の誕生日の時、
サッカー部の仲間から、トイレの個室に閉じ込められ、
「おめでとう!」と言われ、
個室の上から、バケツで何杯も水をかけられ、
トイレの個室なので逃げ場がないので、
びしょびしょになった話
を語り、
次に
サッカー部の仲間と飲んで、酔っぱらったあげく、
大学近くの池へ行って、仲間同士で池へ落とし合った話
を語った。
最初のびしょびしょになった話については、里子はあきれて、こう答えた。
「そういえば、
あいつ(=聡)が20歳の誕生日の日、誕生日を祝ってやろうと
練習が終わるまで待っていたら、びしょ濡れでやってきたけど、、、
あれってそういうこと?」
次の池へ落とし合った話については、里子も初耳だったらしく、竜二(=元チームメート、第36話~35話、第50話、第51話)にスマホで電話をかけた。
そして、再びあきれた表情で話した。
「竜二に確認したけど、事実だって。。。
私は、あいつ(=聡)の恋人だったから、あいつはバカだとは知っていた。。。
バカだとは知っていたけど、こんなにバカだったの?」
優子も笑いながら、語る。
「男って本当にバカね~」
バカ(=孝)は応じる。
「ええ、男ってバカです。
でも正確に言えば、
『男はバカです。でも女の子がいないと、もっとバカ』です。
女の子がいないと、ストッパーが外れて、
とんでもなくバカになっちゃうんですよね~。
たぶん、里子さんが見ているところでは、
バカになることをセーブしていたんだと思います。
女の子がいないところでは、僕達は下ネタ満載トークでしたもん。
その『下ネタ満載トークの中心は、聡君』でしたけど。。。」
里子は半ば恥ずかしそうに笑った。
「やめてー!!
あいつ(=聡)は、私の前では下ネタ一切しゃべらなかったけど、
男の子の前では下ネタ満載だったの?」
バカ(=孝)は笑って答える。
「ええ、
女の子がいないところじゃ、『話す言葉の半分は下ネタ』でした。」
里子は片手で頭を抱えながら、半ば笑いながら、つぶやいた。
「あいつ(=聡)、私の前では猫かぶっていたのか。。。」
優子も笑いながら、私に語り掛けた。
「ねえ、
翔(=優子の元恋人)も、健司(=愛唯の元恋人)も、バカだったけど、、、
私達がいないときは、もっとバカだったのかしら?」
私も笑いながら答えた。
「がはは。。。そうかもしれないわね。。。」
(健司(=愛唯の元恋人)、あなたは私がいないところでは、
本当はどんな人だったの?)
でも、もう、、、それを確かめることはできない。。。
バカ(=孝)は遠くを見るよう目で、すこし寂しそうにつぶやく。
「懐かしい。。。でも、もう戻れない。。。」
そう、バカ(=孝)も、パンデミック前の、『友人たちとバカなことして遊ぶ日々』には戻れない。。。
バカ(=孝)は私に語り掛けた。
「愛唯さん、
僕の夢は『僕の孫が友達と遊んでいる姿が見たい』って言いましたよね?」
(第3話)?
私はうなずいた。
「ええ、覚えているわ」
バカ(=孝)はほほえみ、夢を少し詳細に語った。
「その夢をもっと正確に言うと、、、
『僕の孫が【友達とバカなことして遊んでいる姿】がみたい』です。」
私はうなずき、「そうか」と答えた。
里子もうなずきながら、バカ(=孝)に語り掛けた。
「そうね、私の孫が聡みたいな恋人と付き合っていて、、、
その恋人が聡のような『バカなことして遊んでいる姿』はみたいわ。」
バカ(=孝)の男子クラスメートの昔話は、当時下宿していた友人宅でのおでんパーティとか、カラオケ大会とか、ゲーム大会とか、いろいろだ。。。
しかし、驚くのは、男子クラスメートの素顔だ、その都度、私は里子に尋ねた。
「(亡くなった男子クラスメートの)彼は本当はこんな人だったの?」
里子はうなずき、答えた。
「ああ、それは私が聡から聞いた話と同じだ」
私は今更ながら反省する、『いままで男子クラスメートの表面しか見ていなかった』と。
バカ(=孝)は聡君の思い出話を再び始めた。
「でもね、聡君は、僕達と飲むとき、いつも僕らに話したんですよ。
『里子は男勝りにみえるかもしれない。
でもそれは里子の真の姿じゃない。
本当は、とてもやさしく、心配りがとても細かい女の子なんだ。
だから、男子は里子への接し方を注意してほしい。』
って。。。」
私達(愛唯・優子・瀬名)は驚いて、里子に顔を向け、3人同時につぶやいた。
「「「え?」」」
戸惑いながら、里子は口を開いた。
「あいつ(=聡)ったら、そんなことを。。。
ええ、高校2年の秋に、部活のキャプテンを命じられてね(第45話)。。。
そのときは、キャプテンとして、チームを引っ張らないといけないので、
男勝りを演じなきゃならなかった。。。
もうキャプテンじゃないけど、今更、変えられなくて、
男勝りを演じている。。。
でも、それがたまに辛くて、あいつ(=聡)と二人でいるときは、
いつも甘えていた。。。」
瀬名は戸惑いながらも、里子に向かって微笑み、「そうか。」とつぶやいた。
里子は亡き恋人(=聡)の心遣いに触れたのがうれしかったのだろう。。。
表情には少しさびしさを抱えながらも、微笑んでいた。。。
私は前言を撤回しなければならない。
『いままで、男子クラスメートに対しても、女子クラスメートに対しても、その表面しか見ていなかった。』と。
私はふざけて里子に胸を張って口を開いた。
「もう聡君いないけど、あなたの真の姿を知った3人、
つまり私と優子と瀬名がいるわ。
なんなら、私達に甘えてもいいんだぞ。」
里子もふざけて、私に抱き着いた。
「『姉貴』! ありがとうございます!」
私は少しふくれて、返した。
「誰が『姉貴』だ。 誰が。」
里子は笑いながら、語る。
「だ~って、優子から聞いたわよ。
『昔、愛唯は【女ガキ大将】とか、姉貴】とか呼ばれていた』
って(第26話)。。。」
私は優子に向かって抗議した。
「優子! 私の『黒歴史』をばらすんじゃない(第27話)!」
優子は苦笑いを浮かべ、片手を上げて、私に謝った。
「ふふふ、ごめん、ごめん。」
里子は顔を横に傾けて、話を続けた。
「でもね、優子から愛唯が『姉貴って呼ばれていた』ってことを聞いた時、
腑に落ちたのよ。。。
1つ目は『孝を2度も車のトランクに乗せて大学の検問突破した』り、
(第17話、第20話)
2つ目は『GPSの誤差を利用してこの下宿を孝の隠れ家にした』り、
(第30話)
3つ目は『そのGPSの誤差を再度利用して孝の隠れバイト先を探した』り、
(第30話)
4つ目は
『毎日、購買の欠品をチェックして、それを理由に孝を外出させた』り、
(第22話、第24話、第25話)
5つ目は『大学祭で大立ち回りをした』り、
(第38話)
6つ目は『その大立ち回りの経験から集団デートを企画した』り、
(第55話)
7つ目は『購買にワザと欠品を生じさせた』り、
(第41話)
よくもまー、こんなに悪事ができるものか?って、
『昔、姉貴と呼ばれていた』なら可能かも?
ってね。。。」
私は反論した。
「後半の3つはあんたも共犯だったでしょ!」
里子は顔を横に振り、私の反論について、反論した。
「いや、愛唯、
『全部、あんたが、最初に手を出して、
しかも自発的に実践していた』じゃない?
私も命じられればやるかもしれないけど、
命じられない限りはできないよ。」
それに優子がニヤリと笑って加わった。
「まー、愛唯、振り返ってみれば、
孝と付き合い始めた4月から、今まで(11月)の、たった半年余りで、
よくぞこんなにやらかしたよね?
後半3つは私も加わったけど、愛唯の熱意に『つい』って感じで。。。」
瀬名もニヤリと笑って加わった。
「後半3つは、多くの人を巻き込んでるけど、
普通の女の子では、あんなふうに多くの人を巻き込むなんて、
『ありえない』ですもんね。。。」
おいおいおい、みんな(里子・優子・瀬名)して、私が『姉貴』であることを認めろってか?
たしかに、振り返ってみれば、『いろいろやらかしてる』。。。
考えてみれば、、、よくぞ、、、『今まで無事だったもんだ』。。。
だが、私は絶対に『姉貴』ではないぞ!
しかし、、、くそ、、、反論材料が見つからない。。。
そこにバカ(=孝)は微笑みながら、助け舟を出した。
「愛唯さん、僕は全部僕のために行ってくれたって思ってますよ。
愛唯さんのおかげで、本当に快適に過ごさせてもらっています。
本当にありがとうございます。」
そう言うと、バカ(=孝)は私に頭を下げた。
ナイス、バカ(=孝)! これでごまかしてやれ!
私(=愛唯)はふざけ半分でバカ(=孝)に抱きつき、甘えた声で語った。。
「孝~。そうなの~。
それぜ~んぶ、孝のために、仕方なくやったことなの~。
なのに、こいつら(里子・優子・瀬名)ったら、私をいじめるの~。
ねえ~。かわいそうな私を癒して~」
バカ(=孝)は「いいですよ」といって、私の頭を軽くなでた。
一方、里子・優子・瀬名は呆れた顔で見つめあった。
里子は、「あほらし」と言うと、優子と瀬名は「「うん」」とうなずいた。
里子は聡の思い出話を始めた。
「あほらしいから、話題をかえるね。
聡はよく男子クラスメートのこと話していてね。
その中にも、孝のこともあったよ。
聡は
『孝は頭脳自体が俺(=聡)と比べて、数段上だ。
加えて、努力家だから、到底かなわない。』
って。
聡はこうも言っていた、
『孝は性格も悪くない。』
って。
あのときは聡の言っていることの真の意味がわからなかった。
今になって、やっと、その意味がわかった。
孝、あんた頭脳が私達より数段上だよ。
あんたは『井の中の蛙』というけれど。。。
そして、聡の言うとおり、『性格も悪くない』。」
それについては、私も同意だ。聡君の実家に弔いに行き、パンデミックへの戦い方を聞いた時、頭脳が数段上と感じた(第4話)。
そして、図書館で、優子と一緒に勉強したとき、バカ(=孝)は大変優しい男性と知った(第11話)。
私は瀬名をちらりと見た。瀬名はうなづいている。
(瀬名、やっぱり、あなた。。。
パンデミックの前から、、、たぶん大学1年生の時から、、、
気づいていたのね。。。 )
里子はさらに話を続けた。
「でも聡はこうも言っていた。
『でも、それ以外の部分が、孝はスコーンと欠如しているんだ』
って。
『なんとかしようと、ファッション雑誌を見せても、
【なぜそのファッションがよいのか理解できない】
って、もう困ったやつだ』
って言っていた。」
バカ(=孝)は笑いながら、私に語り掛けた。
「ははは!
いつもそれで愛唯さんを困らせてますね。。。
『このバカ!』って。」
私も微笑みながら、やさしくバカ(=孝)に語り掛けた。
「本当、『このバカ』」
里子は聡から聞いた話を続けた。
「聡はね、、、
『課題提出時は男子クラスメートは
全員孝の世話になっている。』
って。。。
実は、課題提出時には、私は聡に見せてもらってたから、
つまり、私も、間接的に孝の世話になっていたけど、、、
でも、パンデミック後の授業再開時は困ったね。。。
聡が亡くなって、課題レポートを見せてもらう相手がいなくて、、、
結局、瀬名の世話になったっけ。。。」
私が答えた。
「私と優子は、入学以来、ずっと瀬名の世話になっていたわ。。。
私と優子だけでなく、里子以外の女子クラスメートは全員、
瀬名の世話になっていたわね。。。」
優子が引き継いだ。
「つまり、、、
パンデミック後の授業再開した2年生後半は、
全員、瀬名の世話になったわね。。。」
里子は微笑み語る。
「いやー、私、脳筋だからさ。。。
パンデミック後の2年生後半を乗り切れたのは、瀬名のおかげだよ。。。」
優子も微笑み、瀬名に語り掛けた。
「私も、3月に学びなおして(第11話~第14話)、
少しマシになったけど(第42話、第44話)、、、
2年生までは落第スレスレの低空飛行だったから、
瀬名がいなかったら、3年に進級できなかったかもしれない。。。」
私も瀬名に語り掛けた。
「私なんか、瀬名がいても、3年生の進級が危うい状況だったから(第1話)、
瀬名がいなかったら、確実に落第してた。。。」
瀬名は恥ずかしそうに、俯いて、両手の人差し指をつき合わせてながら、口を開いた。
「違うんです。。。」
私、優子、里子は戸惑いながら、「「「え?」」」とつぶやいた。
瀬名は両手の人差し指をつき合わせてながら、俯きながら、話を続けた。
「パンデミック前、つまり2年生前半までの提出課題は、
私も、孝さんに教えてもらっていたんです。。。」
優子は驚きながら、瀬名に問うた。
「じゃ?
パンデミック前の2年生前半までの私と愛唯の提出課題も、
元を辿れば、孝の提出課題ってこと?」
瀬名は黙って頷いた。
瀬名は続けた。
「パンデミック後の2年生後半の提出課題は、
まだ孝さんが生き残っているのかわからなかったので、
私の能力のみで作成したんですけど、、、
私達が3年に進級した後、一部の先生から、私に教えてくれたんですが、、、
私の提出課題に一部誤りがあり、
それが、女子クラスメート全員に、波及してしまったそうです。。。」
私、優子、里子は驚き、再び「「「え?」」」とつぶやいた。
瀬名は俯きながら、話を続けた。
「本来なら、全員不合格か、全員課題再提出になるところだったんですけど、、、
パンデミック後の2年生後半は、成績が悪化した学生が多くって(第1話)、、、
先生達は話し合って、目をつぶって単位を出したそうです。。。」
私は戸惑いながら問うた。
「『目をつぶって』って、どうして?」
瀬名は答えた。
「男子学生が、孝さんを除いて、全員亡くなって、
しかも、
パンデミックの頃の経済危機で何人かの女子学生が退学に追い込まれて、
CCコースは学生が半分以下に減少している状況で、
さらに多くの落第者を出すと、
CCコース自体を閉鎖にする口実を、大学当局や政府当局に与えかねないと、
先生方は判断したらしくって。。。」
優子は唖然として瀬名に問うた。
「そういえば、2年生後半は、単位認定が大甘だったけど(第1話)、
あれって、そういうこと?」
瀬名は再び、黙って頷いた。
里子は驚きながら、私と優子を見て語った。
「それにしてもさー。」
『スリーバック』である、私と優子と里子は顔を見合わせ、3人同時に叫んだ。
「「「やばかったあああ!」」」
こうして、下宿の飲み会の夜は更けてゆきました。。。




