第31話 愛唯の話(その2) ー愛唯から見た二人の関係ー
どうも、愛唯です。
まずは第30話のバカ(=孝)のバイトについて、2月、まだ100分の1の男性の真実を知らなかった頃、100分の1の男性に対する、
授業料全額免除、給付型奨学金、寮費免除、大学内での食費免除
は恵まれすぎていると思った。(第2話)
しかし、実際のところ、100分の1の男子学生は、軟禁され、バイトができなくなるため、バイトで生活費や学費を稼ぐ苦学生というのは不可能だ。そういった学生は、何もしなければ、退学を余儀なく選択せざるを得ない。すなわち、これは優遇策ではなく、『救済策』に近いのだ。
実は、第22話で、寮の多くの100分の1の男性が自炊していないと言ったが、このことも、バイトができないことに起因する。
なぜなら、冷凍宅配弁当を食す限りは、『大学内での食費免除』で、政府が費用を肩代わりしてくれる。でも、自炊の場合、スーパー等で生鮮食料品を購入した費用は自費だからだ。
つまり、バイトができないため、生活費を抑制せざるを得ず、I大学の寮の多くの100分の1の男性は、自炊せず、冷凍宅配弁当で我慢せざるを得ない。
そうは言っても、バカ(=孝)は気分転換のため、定期的に学外に連れ出す必要がある。そのためには、先立つもの(=お小遣い)が必要であり、私(=愛唯)が家庭教師のバイトを探したってわけ。
まあ、バカ(=孝)から、
「愛唯さんの下宿を応用して、大学敷地からGPS計測誤差内にある家に、
家庭教師に行くという手がありますが。。。
そもそも、大学敷地からGPS計測誤差内にあって、
かつ家庭教師のニーズのある家庭を探さないといけないので、
これは机上の空論です。」
と言われていたんだけど。。。
実は、私(=愛唯)ね。。。
バカ(=孝)が『机上の空論』と言うものを、実現して、孝を驚かせてみたくなるんだ!
だって、『バカ(=孝)の反応が面白い』んだもん。。。がはは。。。
どうやったか? というと、、、
実は下宿の大家さんに頼んで、大学の敷地からGPSの計測誤差内にあり、かつ中高生のいる家庭をいくつか紹介してもらったんだ。
さらに、大家さんには事前に連絡してもらって、家庭教師が必要か、聞いてもらった。
で、そこ1件1件に電話したり、訪問したりして、やっとバイト先を見つけた。
もちろん、バイト先には、大学には内緒にすることを約束してもらったけど。。。
バカ(=孝)と一緒に、こういった『悪事』をやっていると、中学時代、校則をギリギリかわしていた時(第26話)の『血が騒ぐ』んだ。
しかも、バカ(=孝)の悪知恵は、なんというか知性があってね、、、
『とっても面白い』のさ。。。
さっきも言ったように、バカ(=孝)が『机上の空論』と言うものを実現して、
『驚かせると面白い』のさ。
他にも、バカ(=孝)が想定しているスピードより速く実現させて、
『驚かせても面白い』のさ。
バカ(=孝)がどんなふうに驚くか?って言うとね。。。
まずは数秒間、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするんだ。。。。
そのあと、大声で笑い出して、こう言うんだ。。。
「ははは! 愛唯さんって、本当、面白い!」
そして、最後に私(=愛唯)に微笑んで、こう言うんだ。
「ありがとうございます。愛唯さん。僕のためですよね?」
バカ(=孝)の一連の表情変化(驚く→笑う→微笑む)を、見るのは『快感』なんだ。。。
だから、『また見たくなる』んだ。。。
そして、『その表情変化を見れば見るほど』、バカ(=孝)のことが、
『もっと好きになる』んだ。。。
だから、バカ(=孝)が『机上の空論』って言うものを実現させて、
『驚かせてやりたい』んだ。。。
さて、今日の課室にて、
100分の1男性は行動制限がありストレスを抱えている。
100分の1男性の行動制限は仕方がないとは思う。
でも、たまには繁華街で遊ぶのも気分転換に必要だ。
いや、本音を言おう。
私(=愛唯)がバカ(=孝)と繁華街で遊びたいってのが大半である。
というか、、、『ほとんど』である。
しかし、私(=愛唯)は良い知恵が浮かばない。
こういう時、わざと甘い声で、課室に勉強しているバカ(=孝)を後ろから抱いて、こう甘える。
「ね~孝~。二人でさ~。映画見に行こうよ~。
映画見に終わったらさ~、デパートでショッピングしようよ~。
行こう、行こう、行こうよ~」
バカ(=孝)は腕を組み、天井を見上げて、答えた。
「うーん、繁華街に行く場合、100分の1の男性は、
一人当たり最低5人の付き添いがいります。
たとえば、愛唯さんと愛唯さんのご両親と、
うちの母と妹とと一緒に行くとか。」
うーん、悪くはないが、もうすこし別のアイデアがないかしらと思って、さらに甘えてみる。
「いーやーだー。
だって、孝は私(=愛唯)の両親に遠慮しないといけないし、
私(=愛唯)は孝のお母さんに遠慮しないといけないから、
見たい映画が見れない可能性があるじゃなーい。
なにか別のアイデア考えてよー。」
バカ(=孝)は天井を見上げて、つぶやいた。
「うーん、それじゃ。。。」
さあ、バカ(=孝)、アイデア言ってみな。。。
そのアイデアをバカ(=孝)が驚くスピードで実現して見せるから。。。
そして、バカ(=孝)の驚く顔と、笑って、私に微笑む一連の表情変化を、また見たいのだ。。。
まあ、このバカ(=孝)の出したアイデアがCCコースの女子全員を巻き込む、ちょっとした騒動となるのだが、それはかなり先の話。。。
主人公の愛唯にとって、恋人の孝は、彼女の長所である行動力を大いに発揮する場を与えてくれる存在なのです。かつ、その行動力を喜んでくれます。つまり、彼女にとって、孝は得難い存在なのです(第31話)。
孝は100分の1の男性で、大学に軟禁されていますから、ほとんど何もできません。
孝にとって、主人公の愛唯は彼女の卓越した行動力から、彼の長所である知恵を実現してくれます。やっぱり、孝にとっても、愛唯は得難い存在なのです(第30話)。
愛唯と孝は互いを必要とし、互いの長所を発揮し合い、万能感を得て、興奮を覚えていく。。。
その興奮を覚えれば覚えるほど、二人の絆はますます強くなっていく。。。
そんなカップルなのです。
40歳未満の男性が100分の1となった社会を切り開くとすると、こんなカップルではないかと思いついたのが、この駄作を書こうと思ったきっかけでした。
ま、これは『ラブストーリーではない』のかもしれませんが。。。
そして、愛唯と孝は『男女の枠』以外の部分で結びついているため、特に私達の世界では、こんなカップルは多くはないでしょう。