第30話 孝の話(その2) ー孝から見た二人の関係ー
どうも、今回も担当となりました、孝です。
今回のテーマは、愛唯さんの下宿についてです。
第27話で愛唯さんが触れていましたが、確かに、愛唯さんの下宿のアイデアのオリジナルは僕(=孝)です。
そして、確かに、第27話で愛唯さん言うとおり、ほとんどの悪知恵のオリジナルも僕(=孝)です。
まあ、周辺からは『くそ真面目』とは言われていますが、決して悪知恵を思いつかないわけでなく、単に、勇気がないから、その悪知恵を実行しないだけなんです。。。
でも、愛唯さんは、その悪知恵を躊躇なく実行してしまうんです。だから、撫山教授から「愛唯君に知恵を授けるんじゃない!」と、よく叱られます。
ははは。。。
先日も撫山教授から叱られました。
愛唯さんが毎日購買の欠品のチェックをしているから(第25話)、購買の方から、CCコースの先生方に「業務妨害だ」って抗議が来たらしくて。。。
「購買には『もうあきらめてくれ』って頼んだけど、
これ以上、『愛唯君に知恵を授けるな』! このバカモンが!!
お前ら(=愛唯と孝)が、ほぼ毎日、
適当な口実を見つけては外出しているから、
守衛達からも『なんとかしてくれ』って言われてるんだ!
いいか、絶対、これ以上、
『愛唯君に知恵を授けるんじゃない』! わかったな!!」
って言われちゃいました。
ははは。。。
まあ、愛唯さん、程度ってものをわきまえないから。。。
ははは。。。(苦笑い)
話を戻すと、ほとんどの悪知恵は、3月に軟禁されて、それを『何とか自分で工夫できないか?』って考えたものです。
先日、撫山教授から叱られましたが、『購買で扱っていないものや欠品を見つけて、それを理由に外出する』ってのも、3月に考え出しました。ま、あの時は、愛唯さんと付き合う前だったので、付き添ってくれる人がいなかったので、実行不可でしたけど。。。
愛唯さんの下宿のアイデアを考えたのも3月でした。そう、まだ愛唯さんと付き合う前の話です。あの時、第14話で述べたように、寮には『あの時の喘ぎ声』が聞こえて、眠れないときがあったんです。だから、静かに眠れる場所が欲しかったんです。
そして、たまには大学の外で寝泊まりして、気分転換したかったんです。でも、第14話で少し触れているように、実家に帰っても落ち着けないんです。
だから、『第3の場所がないか?』って思案していたんです。
第28話で、最初のGPSスマホの調査に失敗した後、GPSスマホについて、いろんな文献を調べました。すると、GPSには計測誤差があることを知りました。同話で、担当官は
「大学の敷地から許可を得ずに、1歩でも外に出た場合は
警察・自衛隊に通報される」
と言いました。
でも、本当は、計測誤差を考慮に入れて、
「大学の敷地から計測誤差を超えて外に出た場合に、
警察・自衛隊に通報される」
と仮説を立てたわけです。
この仮説が正しいなら、「大学の敷地から、計測誤差内に下宿しても、バレない」じゃないかと思ったわけです。
これとは別の話なんだけど、第13話で、土日祝日はやることがないので、大学内を細かく調べてました。そこで、1カ所だけなんだけど、抜け穴を見つけていました。
仮説を検証するために、ある夜、抜け穴から計測誤差を超えない程度に大学を抜け出してみたんです。約1時間、そこにいたんだけど、何の反応もなかったので、僕の仮説が正しいと確信しました。
僕の仮説に自信をもったので、次の夜も抜け穴から大学を抜け出して、大学敷地から計測誤差内の距離にあるアパートを探したんです。
すると数棟あって、しかも空き室もいくつかありました。
つまり、
『バレないように、大学の敷地から計測誤差内の下宿で寝泊まりする』
ことは可能だと分かりました。
でも、いざ、契約しようとして考えた時、それは不可能だと気付いたんです。というのも、『不動産屋は大学敷地の計測誤差内の距離にない』からです。
つまり、内見や契約の際に、どうしても外出許可申請をして、不動産屋に行く必要がある。
ここで、申請書には行く場所(=不動産屋)を記載しなくてはならず、そこでバレてしまいます。
というわけで、、、
『大学の敷地から計測誤差内の下宿なら、大学からこっそり脱出してもバレない』は、お蔵入りしていたって訳です。
愛唯さんと付き合いだして、すぐだったと思います。課室で僕が勉強していたら、愛唯さんが後ろから抱き着いて、こう言ったんです。。。
「ねー、孝~。私ね、大学のそばで下宿したいと思うんだ。。。
でもね、、、大学の外だと、孝にすぐ会えないじゃない?
何か良いアイデアってな~い?」
と、聞かれたので、お蔵入りしていたアイデアを教えました。
そこから、愛唯さんすごかった!
何がすごかったって言うとね。。。
愛唯さん、例の『怖い笑顔』を浮かべて、つまり、優子さんが命名した『悪魔の笑顔』を浮かべると(第21話)、
「購買の不動産窓口に行ってくる!」
と、走って行きました。
それから、大体2時間ぐらいだったと思うけど、愛唯さんは走って課室に戻ってきて、開口一番。
「がはは。契約してきた!」
購買まで走って行って、2時間後に契約して、戻って来たわけ!
考えてみてくださいよ。。。
購買の不動産窓口に行って、
購買の不動産窓口から不動産屋に連絡とって、
いくつかのアパートの空き室を内見して、
不動産屋で契約して、
戻ってくる。
これ、普通、2時間でできないでしょ?
もう、驚いちゃいました!
で、、、笑っちゃいました!!
「ははは。。。愛唯さんって面白い!」って。。。。
もっと驚いたのは、引っ越しにかかった日数で、、、
契約した翌日の昼過ぎに、課室に愛唯さんが入ってきて、開口一番。
「がはは。引っ越してきた!」
契約した翌日に、もう引っ越してきたわけ!
更に、驚いちゃいました。。。
愛唯さんは女の子だよ、女の子!
男と比べて、引っ越しの荷物は何倍になるわけ?
しかも、愛唯さんにとって、初めての一人暮らしですよ?
契約した翌日に引っ越してくるなんて、あり得ないでしょ?
だから、やっぱり、笑っちゃいました!
「ははは。。。本当、愛唯さんって面白い!」って。。。。
実は、愛唯さん、下宿の件を応用して、僕の家庭教師のバイトを探してきました。。。
生徒の家が、大学の敷地からGPSの計測誤差の範囲なら、
『バイトしていることバレない』から。。。
ああ、僕ら100分の1の男性は、
『大学から外出できないからバイトができない』んです。。。
まあ、学内のバイトがないわけじゃないけど、募集人員少ないし、おまけに時給も安いし。。。
もちろん、僕ら100分の1の男性は、学費免除に、食費や光熱費等の寮費の免除があるんだけど、それ以外の生活費は、給付型奨学金の年額50万円でやりくりしないといけないんです。。。
教科書等の文具代や、生活必需品の購入費や、衣料費で、もうギリギリなんです。。。
特に、第20話の通り、男性用衣服を扱う業者がほとんどいない状態なので、買うと1着ウン万円は当たり前、ウン十万円することも珍しくない。。。
もちろんウン十万円なものは論外なので、それでもウン万円のもので抑えたとしても、季節ごとに1着ずつ買うのが精一杯なんです。
ま、武さん(愛唯の亡き弟)の形見(=古着)で、当面はしのぐつもりですが。。。
なので、愛唯さんがバイトを見つけてくるまで、デートの勘定は、ほとんど愛唯さんの奢りでした。
もう、『肩身が狭く』って、、、『狭く』って。。。
バイト代が入るので、デート代がやっと割り勘になりました。愛唯さんには感謝です。
話を戻すと、愛唯さんは、大学の敷地からGPSの計測誤差の範囲で、家庭教師を探している家庭を見つけてきた訳です。
でも、これはあくまで『机上の空論』です。
これを探してくるのは『至難の業』じゃないですか?
でも、愛唯さんはやってしまうんです。
そう、『愛唯さんの行動力はハンパない』んです。
そう、これも、笑っちゃいました!
「ははは。。。愛唯さんって、本当、面白い!」って。。。
皆さん、わかる?
僕(=孝)ぐらいの知恵なんて、ちょっと勉強すれば、思いつくことなんです。
でも、『愛唯さんの行動力は天性のもの』なんです。
だから、『この物語の主人公は愛唯さん』なんです。
でも、愛唯さんってこんな人だったかな~。
パンデミックの前までは、『おしとやかなお嬢さん』って感じで、
里子さんの恋人だった聡君を除いて、
『男子クラスメート全員の憧れの的』だったんです。。。
だけど、付き合ってみると、全然違うんです。。。
じゃあ、どっちが好きか?って言われれば、今の愛唯さんの方が好きです。
だって、今の愛唯さん、本当に、『面白い』んだもん。。。
愛唯さんの勝ち誇ったように胸を張って、「ガハハ」と笑う姿を、
僕は『また見たくなる』んです。。。
そして、『その姿を見れば見るほど』、愛唯さんのことが、
『もっと好きになる』んです。。。
実は、『机上の空論』でも、愛唯さんに知恵を授けてしまうのは、
『その姿をまた見たいから』でもあるんですけど。。。
これは愛唯さんやクラスメート、特に撫山教授にはナイショ。。。
今話は『孝から見た二人の関係』でしたが、
次話は『愛唯から見た二人の関係』の予定です。
今話と対比して次話を読んでいたただけたら、幸いです。